ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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今回は早めに投稿できました!
決勝トーナメント第二試合! ここでオリジナルの武器が登場しまっす!



あと、ある二人の扱いが雑になってますwww






では78話、始まります。



第七十八話 ロンゴミニアド

「間もなく決勝トーナメント第二試合を開始します。対戦選手は控室までお願いします」

第一試合が終了してから五分後。

次の試合準備を告げるカナメのアナウンスが会場に響く。

「お、次の試合が始まるみたいだな」

第一試合を勝って戻ってきたキリトが能天気な声で言う。

「うん。ユージーン将軍とアルトって女性プレイヤーの対戦だね」

キリトの言葉に応えるユウキ。

するとクラインが難しい表情で

「でもよぅ。そのアルトっつぅプレイヤーは一体何者だ? 顔は兜で隠しててわかんねぇしよ」

「古参のアスナやリーファも知らないとなると、つい最近になって台頭し始めたプレイヤーなのかしらね」

腕を組みながら言うクラインに続いてリズベットが口を開いた。

それに対しソラは言う。

「……いや、もしかしたら……極力目立たないようにして実力を付けてきたプレイヤーの可能性が高い」

「どうしてそう思うの?」

彼の言葉に疑問符を浮かべながらシノンが問う。

「予選の時、控室のモニターで彼女の試合を見たが、動きに無駄がなかった」

「ソラの言う通りだ。モニター越しだが、構えや動きはVRに慣れたヤツのそれだった。旧SAOでも、似たように隠れて実力を磨いてから攻略組に入ったやつがいた。それと同じパターンかな」

その問いに対し、ソラとキリトが交互に応える。

「どの道、次の試合で全てわかると思うよ。流石に決勝トーナメントで実力を隠したまま戦わないと思うし」

そう言ったのはユウキだ。

それに続くようにクラインが頷き

「ユウキちゃんの言う通りだぜ。きっと……」

そこで一度区切り

「……あの兜の中身はメッチャ美人に違いねぇ!」

真顔でそうのたまった。

そんな彼に対し、キリト達男性陣は溜息を吐く。

女性陣は苦笑いと呆れ顔だ。

「……呆れるの通り越して尊敬するわ」

ぼそりと呟くリズベット。

その時だった。

「お待たせいたしました! これより、決勝トーナメント第二試合を始めます!」

カナメのアナウンスが響いてきた。

「まずはこの方! サラマンダー最強と名高い『猛炎の将』ユージーン選手!!」

紹介と同時に現れたのは深紅の鎧を身に纏い、背に大剣を背負ったサラマンダー、ユージーンが現れる。

途端に巻き起こる歓声が彼の人気を物語っていた。

「続きまして! 素顔を兜で隠したウンディーネの女戦士! アルト選手ぅ!!」

紹介され現れる女性プレイヤー。

フルフェイス型の兜を被り、騎士然とした白銀の鎧を身に纏っている。

右手に握るのは鎧と同じ白銀の、細い体躯には似合わない大槍だ。

互いに決戦場の中央に歩み寄る。

装備の確認をした後、ユージーンからデュエルの申請を行った。

アルトの目の前に現れたウインドウ。

そこに表示された『完全決着モード』がタップされる。

瞬間、カウントダウンが始まり、2人は距離を取ってそれぞれの武器を構えた。

愛剣である伝説級武器『魔剣グラム』を両手で握って構えるユージーン。

対するアルトは大槍を右手の身で持ち、その手を後ろに引いて構えていた。

細身であるにも関わらず大槍を使っているのもそうだが、それを片手のみで持ち構える彼女は間違いなく強敵だとユージーンに感じさせた。

そうこうしているとカウントがゼロになり、デュエル開始のブザーが鳴り響いた。

先に動きだしたのはユージーンだ。

地を蹴って駆け出し、巨体からは想像できない程の速さでアルトへと迫る。

繰り出される斬撃。

アルトは右へとステップを踏み、それを躱す。

同時に大槍による突きが繰り出された。

迫る大槍の先端を、ユージーンは僅かに身体を傾けて回避。

しかし、アルトの攻撃は止んでない。

軽い足取りでバックステップを踏み、瞬時に間を空け、次いで繰り出す連続突き。

同様にバックステップで後退する事で、ユージーンはそれを回避した。

着地と同時に体勢を直し、再び放たれるユージーンの斬撃。

今度は回避しようとはせず、アルトは大槍を構える事で防御態勢を取った。

刹那、ユージーンの不敵な笑み。

大剣と大槍が交差した―――――瞬間、大剣が大槍をすり抜ける。

『魔剣グラム』のエクストラ効果『エセリアルシフト』だ。

これはあらゆる防御をすり抜けると言う効果を持つ。

それを見たキリトは苦笑いになり

「相変わらずのインチキ効果だな、アレ」

そう言った。

かつて、ユージーンとデュエルした時、キリトはこの効果に苦しめられた。

あの時はリーファの剣を借りて、二刀による二段構えの武器防御と連続斬撃によって退けたのだが、もう一度あの効果による猛攻を防げるかと言えば、正直なところわからないというのがキリトの心境だ。

それほどまでにユージーンの持つ魔剣の効果は強力なのである。

すり抜けた斬撃は勢いよくアルトへと迫る。

当の彼女は回避行動と取ろうとするも、一歩遅かった。

斬撃は彼女のフルフェイスの兜へ当たり、ガキィン! という小気味いい金属音が鳴り響いた。

体勢を崩されるアルト。

誰もが好機と思うだろう。

しかし、ユージーンは追撃せずに後方へと跳躍して後退する。

直後に彼がいた場に大槍の切先が突き出されていた。

体勢を崩されながらも、彼女は反撃を繰り出していたのである。

それを察知してユージーンは後退したのだ。

着地し、体勢を直してグラムを構えるユージーン。

対するアルトも崩された体勢を直していた。

直後、彼女の兜に大きな亀裂が入る。

ビシビシと音を立てて、亀裂が広がっていき――――兜は粉々に砕けてポリゴン片が散った。

その瞬間、会場中が静まり返った。

兜が割れて、彼女の素顔が晒されたからだ。

ウンディーネ特有の水色の髪はリボンでポニーテールにして纏めてある。

透きとおるような白い肌に、少し吊りあがった翡翠色の瞳と薄紅色の唇。

一瞬の沈黙。

それを破ったのは――――

「……すっげぇ、美人じゃん!!!」

クラインだった。

開口一番がこれである為、女性陣からまたも呆れ顔をされてしまう。

そんな中

「……凄いな」

「あぁ……段違いだ……」

キリトとソラからそんな言葉が漏れてきた。

その瞬間、ユウキとアスナは2人に鋭い視線を向け

「ソラさん?」

「どーいう事かな、キぃリトぉ?」

冷えるような声で問いかける。

すると2人は慌てたように

「ちょ、ユウキさん?! 違う、そういうんじゃないって!」

「誤解だアスナ!?」

勢いよく手を振ってそう言った。

しかし彼女等は納得いってない様子だ。

キリトは咳払いしてから視線を決戦場に向けて言う。

「クラインじゃあるまいし、俺達が言いたいのはそういう事じゃないって」

後ろから「うぉい!」と抗議の声が聞こえてきたがキリトはそれを綺麗に無視し

「雰囲気……って言うか、空気が変わったんだよ。威圧感が一気に増した」

「さっきまでとはまるで違う……ただ兜が外れて素顔を晒しただけで、こんなにも変わるなんて……」

そう言われてユウキ達も再び決戦場に視線を向けて、意識を集中してみる。

その途端、アルトから感じる威圧、闘気、覇気に息を呑んだ。

同様に、彼女の雰囲気の変化を感じ取っていたユージーンも柄を握る手の力を強めた。

その時だった。

「……まさか、素顔を晒す事になるとは……流石は『猛炎の将』といったところか」

アルトが口を開き、そう言った。

翡翠の瞳でユージーンを見据え

「素顔を晒した以上、私も本気でいかせてもらおう」

「ほう。今までは本気ではなかったと言うのか? 俺も舐められたものだな」

彼女の言葉に、ユージーンは不敵に笑いながらそう返した。

一方のアルトは表情を崩すことなく

「癇に障ったのならば詫びよう。先程までのは、そちらにとっても準備運動のようなものだろう?」

「確かにな……では、ここからは俺も本気でいかせてもらおう!!」

問うてきたアルトにそう返すや否や、ユージーンは地を蹴って駆け出した。

一気に間合いを詰め、大剣を横薙ぐ。

それをアルトは身体を沈みこませて躱し、地を蹴りユージーンの左側面へと移動する。

瞬時に大槍を握る右腕を引き絞って繰り出される突き。

ユージーンはグラムを素早く引き戻し、身体を捻って大剣で防御体勢を取った。

突き出された大槍は大剣によって軌道が逸れる。

瞬間、ユージーンは勢いよく大剣を振り、大槍を弾く。

同時にアルトはステップを踏んで左側へと跳んだ。

大槍を弾かれた衝撃で体勢を崩されるの避ける為だ。

着地し、次いで放たれる連続の突き。

一撃目は躱し、二撃、三撃目は大剣による武器防御でいなすユージーン。

そして迫る四撃目を、右側へと移動する事で躱し、グラムを大きく振りかぶった。

アルトは大槍を勢いよく引き戻し、構えて防御姿勢を取る。

「無駄だ!」

叫び、振り下ろされる大剣。

勢いよく繰り出された斬撃が、大槍に当たる直前――――

「!!」

一瞬、ほんの一瞬だが、大剣が止まったようにユージーンには見えた。

が、次の瞬間には刃は大槍をすり抜けていく。

それを、アルトはほんの少し身体を後ろに退く事で回避した。

同時に勢いよく身体を捻り、時計周りで一回転しながら大槍を握る右腕を横に振るう。

「っ!」

反応に遅れるも、なんとか後退する事でそれを回避するユージーン。

体勢を立て直し、構えながら息を吐く。

対するアルトは不敵に笑い

「どうした? 槍で横薙ぎしてはいけないというルールはないだろう? この程度で止まれば『猛炎の将』の名が泣くぞ」

そう言った。

「……減らず口を!」

表情を歪め、突撃するユージーン。

瞬時に間合いを詰め、繰り出される連続斬撃。

それを軽快なステップで回避していくアルト。

とはいえ先程までとは速さが異なっているのか、あくまで直撃を避けている程度だ。

刃が掠める度に、HPはジリジリと減っていく。

それはユージーンも同じ事。

彼女の槍捌きは達人のソレだ。

同じように繰り出されている連続突きを回避してはいるものの、槍が掠めるたびに彼のHPもジワジワと減っている。

互いのHPはすでにイエローゾーン。

残り時間は1分30秒を切っている。

連続突きを掻い潜り、彼女の左側面に躍り出るユージーン。

振り上げたグラムを、右上から左下へと向けて斬撃が放たれる。

それに対抗し、またも大槍で防護体制を取るアルト。

互いの得物が交差しようとした直前―――またも大剣が止まったように感じるユージーン。

が、それもやはり一瞬で大剣は大槍をすり抜ける。

先程と同様、アルトはまたほんの少し後退する事でそれを回避。

息も吐かせぬ攻防に、観客達からも歓声が上がっている。

「やっぱすげぇな、ユージーンの旦那は。攻撃に一切の鈍りがねぇ」

「けど、あのアルトって人もすごいよ。ユージーン将軍の『魔剣グラム』による攻撃を捌いてるもの」

2人の攻防を見ながら言うのはクラインとリーファだ。

しかし、そんな二人とは違い、キリトは微妙な表情をしている。

「……おかしい」

ポツリと呟く。

それに反応して、ユウキが視線を向けながら

「どゆこと、キリト?」

尋ねてきた。

「いや……さっきの『エセリアルシフト』による攻撃……なんか、軌道が逸れてたように見えたが……」

「そうなのか?」

疑問符を浮かべながら聞くエギル。

「確かに……あの二度の攻撃は必中したように思えたけど……」

それに対し、ソラが訝しげな表情で言う。

「気のせいじゃねぇのか、ソラよぅ?」

彼の言葉にあっけらかんとした様子でクラインは言う。

しかし、ソラもキリトも表情は晴れないままだ。

その間に戦いは終盤を迎えていた。

残り時間は遂に40秒を切ったところだ。

アルトは一度跳躍で後退し、着地と同時に駆け出した。

大槍を握った右手は後ろに引き絞られている。

攻撃の途中で身を引かれたユージーンは体勢が整っていない。

そんな彼に、アルトが勢いよく突撃してくる。

距離が歩数5歩分にまで迫り、大槍が勢いよく突き出された――――瞬間。

「ぬおぉぉ!!」

咆哮と同時に、ユージーンから炎の壁が半球状で放出され、彼女の大槍を押しとどめた。

彼が身に着けているいずれかの防具による特殊効果だろう。

(コレで奴の体勢は崩れる! ……いや、まて……)

思考を巡らせながら向けている視線の先を見て、彼の表情は余裕から驚愕へと変化した。

そう、特殊効果による炎の壁によって攻撃を押し返され体勢を崩すかと思われたアルト。

しかし彼女は体勢を崩すどころか、大槍を突き出したまま前へと進もうとしている。

その刹那、大槍の先端が微かに揺れる。

同時に炎の壁が、槍にまとわりつくかのように渦を巻いていく。

「突き穿て……」

炎の壁に段々と大槍が侵入していき

「ロンゴ……ミニアドォ!!!!」

遂に壁を突破、破壊して大槍がユージーンの胴を深々と貫いた。

「ぐ、がぁぁぁぁ!!!」

その一撃は半分程残っていたユージーンのHPを勢いよく削いでいく。

「おのっ、れぇぁ!!!」

叫び、グラムを振り上げるユージーン。

が、直後に彼のHPはゼロになり、エンドフレイムを散らして爆散。

リメインライトと化したのだ。

「試合終了ぉ!! まさかまさかの大番狂わせだぁ!! あのユージーン将軍を破り、アルト選手が準決勝へ進出ぅ!!」

カナメの声が響き、観客達の歓声が巻き起こる。

そんな中

「うそでしょ……あれが、『聖凱槍ロンゴミニアド』?!」

リズベットが驚愕の表情でそう言った。

「おい、それって……伝説級武器の?」

クラインが掠れた声で問う。

「えぇ。アタシも名前だけしか聞いた事ないし、見るのも初めてだけどね。けど、間違いなくアイツはロンゴミニアドって言ったわ」

リズベットの言葉にキリト達は息を呑んだ。

ふと視線を決戦場に向けるキリト。

するとそこには、視線をこちらに向けているアルトの姿があった。

2人の視線がぶつかり合うも、それは一瞬。

アルトは視線を逸らし、決戦場から去っていった。

 

決勝トーナメント第二戦 試合時間4分55秒。

 

勝者・アルト

 

 

「間もなく第三試合を開始します。対戦選手は控室までお願いします」

カナメのアナウンスが流れ、ソラとリーファが席から立ち上がった。

「さて、僕等の番みたいだ」

「ですね。いい勝負にしましょう、ソラさん」

ソラに視線を向けて言うリーファ。

「頑張れよ、リーファ」

「ソラさんも頑張ってください」

控室に向かっていく2人に、キリトとアスナがそれぞれそう言った。

2人は手を上げる事で応え、控室へと向かっていく。

そうして開始された決勝トーナメント第三戦。

序盤は互角に斬り結んでいたものの、後半で地力の差が出てしまい、数歩及ばずリーファは敗退。

ソラが準決勝へと勝ち進んだ。

続いて行われた第四試合、ユウキVSクライン。

こちらも同様に、互いの持ち味である敏捷を生かして戦う2人。

しかし、こちらもやはり地力の差が出てしまったようで、最終的にユウキがHPを僅かに上回った状態で逃げ切り、勝敗が決した。

これにより、準決勝に進出するベスト4が出揃ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーファ「私達の扱い!!!」

 

 

 

クライン「雑じゃねぇ?!!」

 

 

 




相対する少年と女性戦士。

女は言う、武器は性能だと。

少年は言う、武器は想いの結晶だと。



次回「風王の纏」

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