というわけで(どういうわけだ?)お久しぶりです。
やっとこさ時間作って最新話を書きあげれました。
半端ない仕事量に忙殺されて・・・うぅ、思い出したら頭痛い・・・
しかし、そんな頭痛いのも吹き飛ぶ嬉しい情報!!
ホロウ・リアリゼーションにユウキちゃん参戦だぜ!いやぁっふぅぅぅぅぅぅ!!!!
もう発売日が今から待ち遠しい!
さて、とりあえずテンションを戻しつつ41話、始まります!
第四十一話 過去の夢
目の前に広がるのは言葉にも出せない程の惨状。
地面に倒れているのは血塗れの女性。
「……姉さん?」
赤みがかった髪の少年は、立ちつくしたまま呟く。
倒れた女性の前にはナイフを握った男がいる。
男はゆっくりと少年に歩み寄り、ナイフを握った腕を振り上げた。
空色の瞳に映ったそれは勢いよく振りおろされて――――
「―――!!」
直後に目を見開いて青年は飛び起きた。
額から―――否、体中が汗でびっしょりになっている。
辺りを見回せば、そこは彼が借りているアパートの一室だ。
ベッドから降りて、青年はカーテンを開ける。
差し込んできた朝陽に目を細め、青年は溜息を一つ吐いて
「……また……あの日の夢か」
言いながら机の上に置いてあった写真立てを手に取った。
そこには優しそうな表情をした夫婦と、無邪気な笑顔をしている男の子と、柔らかな笑みを浮かべた女の子が写っていた。
===============
「困ります」
そう言って少女は目の前にいる、明らかに軽薄そうな男2人組を睨みつける。
しかし、少女の視線など意にも介さずに男達は
「つれなくしないでよぉ~」
「そうそう、暇そうだったから声かけてあげたんじゃん」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて少女の行く手を遮っていた。
(ついてないなぁ……木綿季達と待ち合わせているだけだったのに)
そう思考を巡らせるのは結城明日奈。
今日は休日。
仲のいい女性陣でお茶会をしようと提案し、明日奈は一足先に待ち合わせ場所である駅前に来ていた。
しかし、予定より早く来てしまい、どうやって暇をつぶそうかと思案をしている時に、目の前の男達に声をかけられたのだ。
微妙な表情を浮かべている明日奈。
そんな彼女の様子を見て、男達の声色に険呑さが混じってきた。
「ねぇ、なにシカトしちゃってんの?」
「俺ら傷付いちゃうなぁ~」
言いながら片割れが明日奈の腕を掴んできた。
「は、離してください!」
振り解こうとするも、ビクともしない。
仮想世界ならば細剣を突き付けて撃退もできようが、ここは現実世界。
少女の力では、大の男を撃退など難しいだろう。
焦る明日奈を男たちは、下卑た笑みを浮かべながら強引に連れて行こうとした―――その時だった。
明日奈の腕を掴んでいる男の腕が、何者かに掴まれる。
直後、思いっきり力を込められて男は表情を歪ませた。
「いっ、いてぇ!」
痛みに負けて男は腕を離す。
明日奈が視線を向けた先には
「大丈夫かい?」
赤の髪に空色の瞳の青年、天賀井空人が立っていた。
明日奈を安心させるように優しく微笑んで、男たちに視線を向ける。
「彼女は僕と待ち合わせていたんだ。すまないが、ここらで引いてくれないか?」
穏やかな口調で言う空人。
しかし、声は決して穏やかではなかった。
微かな怒気が含まれている。
向けられる視線は、鋭利な刃物のように感じた。
それに男達は気圧されたように後退っていく。
身を翻し
「お、覚えてろよ!」
と、三文役者の三文台詞を吐き捨てながら、逃げるように男達はその場から去っていく。
その姿が見えなくなって、明日奈は安堵の息を漏らした。
「やれやれ。ナンパはいいけど、やり方がなってなかったな」
空人は溜息を吐きながら言う。
明日奈に視線を移して
「とりあえず、大事なくてよかったよ」
言いながら笑みを浮かべた。
大人の余裕を見せるような綺麗な笑みに、明日奈は微かに頬を紅潮させながら
「ありがとうございました、空人さん」
ぺこりと頭を下げて礼を言う。
「友達と待ち合わせてたのかい?」
「はい、お茶会しようって事になってて」
「へぇ」
それを皮切りに2人は世間話に突入する。
学校での事や、家での事、友人間のことなどが話されていく。
「―――それで木綿季ったら、和人君とのデートに緊張してなかなか寝れずに結局寝坊して遅刻しそうになってたんですよ」
「あはは、ユウキらしいなぁ。―――っと、もうこんな時間か」
ふと自分の腕時計を確認する。
あと5分程で13時半になる所だった。
「あ、すみません。30分も引き止めちゃって」
「気にしなくていいよ。用事はあるけど急ぎじゃないから」
「そう……ですか。あ、お話出来て楽しかったです」
言いながら明日奈は微笑んだ。
それを見て、空人は一瞬だけ表情が固まったが、すぐにいつもの優しげな笑みを浮かべて
「僕も楽しかったよ。それじゃぁ、また」
言いながら背を向けて歩き出した。
「はい」
明日奈は軽く頭を下げ、歩いていく空人を見送っている。
その姿が見えなくなり、いざ自分の待ち合わせ場所に向かおうと振り返る。
するとそこには
「あれ? もういいの?」
「いい雰囲気だったのにねぇ~」
「そうですねー」
三人の少女達がニヤニヤと笑いながら立っていたのだ。
「ゆ、木綿季に里香! 珪子ちゃんも!―――見てたの?」
友人達の様子に明日奈は訝しげな表情を浮かべ、問いかけた。
「いやぁ、雰囲気よかったからついねぇ~」
「明日奈にも春が訪れたんだねぇ。ボク嬉しいよ」
「お二人ともお似合いですよ!」
問いかけに里香は人の悪い笑みを浮かべ、木綿季はしみじみと頷きながら、珪子は力強く答える。
三者三様の答えを聞いて
「ちょ、見てたなら声かけてよ!」
「そんな! お二人の邪魔をする事なんてできませんよ!」
「そうそう」
「だ、だから、空人さんとはそういう関係じゃなくて!」
「明日奈が照れてる。可愛いなぁ~」
「もう、木綿季ぃ!」
顔を真っ赤にした明日奈。
「あはは、ごめん、ごめんってば」
「まったく。ほら、そろそろ行きましょう」
そう言って明日奈は、お茶会をする予定の店へと行くように木綿季達を促した。
三人は頷いて歩き出す。
明日奈は小さく溜息を吐いた。
その時、ふと空人の顔が脳裏に浮かんだ。
浮かんだのは先程一瞬だけ見せた、固まった表情。
驚いていたような、懐かしんでいたような――――そんな感じの表情だった。
立ち止り、空人が去っていった方を見やる明日奈。
(どうしてあんな顔したんだろう……空人さんの事、もっと知りたいな)
そう思考を巡らせ、明日奈は木綿季達の後を追って再び歩き出した。
=====================
場所は変わり、明日奈と別れた空人は所沢市の総合病院のすぐ近くにある障害者施設に訪れていた。
受付で面会の許可を取り、目的の部屋へと歩いていく。
扉の前で立ち止り、軽く深呼吸してからカードキーを差し込んでスライドさせる。
電子音が鳴った直後、扉は開かれ空人は部屋の中に足を踏み入れた。
「久しぶりですね、
そう言って視線を向けた先には、40代後半の女性がいた。
椅子に座り、窓の外に広がる景色を眺めていたが、空人の声に気付いて彼女は振り向いた。
「あらあら。久しぶりねぇ、空人君」
空人の姿を視界に捉え、朱里と呼ばれた女性はニコリと笑う。
彼女の笑みに釣られたように空人も笑みを返し、もう一つの椅子へと腰掛けた。
「身体の調子はどうですか?」
「最近はとても調子がいいわ」
問いかけに笑いながら朱里は答えた。
「そうですか。でも、あまり無理しないでくださいね。そうだ、今日は花を持ってきたんですよ」
言いながら空人は手に持っていた花束を朱里に見せる。
「まぁ、ありがとう」
彼女の言葉に空人は微笑んで返し、立ちあがって近くに備えつけてあった花瓶を手にとり、室内にある洗面台へと持っていく。
中に水を入れて、持ってきた花束を丁寧に差し込んでいき、陽の光がよく当たる窓際へと飾りつけた。
「空人君、大学の方はどう? 勉強ははかどってる?」
「ええ、遅れた分もなんとか取り返せてます」
空人の答えに朱里は微笑んで頷いた。その直後に辺りを見回すように視線を動かし
「そういえば……
そう問いかけた。
瞬間、空人の表情が僅かに曇った。
朱里はそんな彼の様子に気付く事はなく
「もうずっと姿を見てないけど……」
心配そうな表情でそう言った。
沈黙が訪れかけたが、空人は首を振って
「あの人は……仕事が忙しくて、あまり時間が取れないんですよ」
そう言って返す。
「あら、そうなの?」
「はい」
問いかけに空人は頷き
「すみません、そろそろバイトの時間なので……」
「もうそんな時間なのね。忙しい中わざわざ来てくれてありがとう」
そう言ってふわりと朱里は微笑んだ。
空人も笑みを返し
「それじゃぁ、また来ます」
そう言って背を向けて部屋を出ていった。
扉が閉じて、空人はそこにもたれかかる。
視線をネームプレートへと向けた。
「……あの人は……姉さんはもう……死んでるんだよ……母さん」
呟いた空人の視線に映ったネームプレートには―――『天賀井朱里』と表示されていた。
レアアイテムがドロップするクエストの噂を聞きつけたキリト。
アイテムゲットのために、キリトはユウキとアスナ、ソラとパーティを組みクエストへと挑む
次回「クエストへ」