どうもお久しぶりです。
本当はもっと早く更新したかったんですが、体調を崩してしまい更には復帰してすぐに貯まった仕事を片づけるという荒行をしていましたwww
フェアリィダンス編も残りわずかです。
それでは39話、始まります
「それでは今日はここまで。課題ファイル25と26を転送するので、来週までにアップロードしておくこと」
午前中の授業の終わりを告げる鐘が鳴り、教師が大型の電子パネルモニタの電源を落として立ち去っていく。
途端に教室には弛緩した空気が漂った。
和人は端末に差した旧式マウスを操り、ダウンロードされた課題ファイルと一瞥して溜息を吐く。
マウスを引き抜き、端末をデイパックに放り込んで席を立ちあがると、隣席の仲のいい男子生徒が声をかけてきた。
「あ、カズ、食堂行くなら席取っといて」
和人が答えを返す前に、更にその隣に座った男子生徒がニヤリと笑う。
「無理無理。今日は『姫』に謁見だろう?」
「あ、そうかー。ちっきしょう、いいなぁ」
「うむ。まぁ、そういうことだ。悪いな」
言いながら和人は教室を後にする。
薄いグリーンのパネル張りの廊下を早足で歩き、非常口から中庭に出る。
昼休みの喧騒が遠のいて、和人はホッと一息ついた。
真新しいレンガの敷かれた小道を数分歩いていくと、円形の小さな庭園に出る。
ふんだんに花壇が配されたその外周部には白木のベンチがいくつか並び、その内の一つに、一人の女子生徒が腰掛けて空を見上げている。
濃いグリーンを基調にした制服の背に、黒紫の長い髪が流れている。
真直ぐに空を見つめるその横顔に、和人は愛おしさを覚えて笑みが零れた。
「お待たせ、木綿季」
呼びかけながら和人はベンチへと歩いていくい。
女子生徒――紺野木綿季は振り向いて微笑み、その隣に和人は腰を降ろした。
「あぁ……疲れた……腹減った」
「なんか年寄りくさいよ、キリト?」
和人の言葉に木綿季は呆れ顔で言う。
当の彼は伸びをしながら
「実際、この一ヶ月で五歳くらい年取った気分だなぁ……それと―――」
一度息を吐き、横目で木綿季を見て
「キリトじゃなくて和人だぞ。ここじゃ一応キャラネーム出すのはマナー違反だからな」
「あ、そだったね―――って、じゃぁボクはどうなるのさ! バレバレだよ!」
「本名をキャラネームにしたりするからだ。って言っても、俺もなんかバレてるっぽいけど……」
言いながら溜息を吐く和人に、木綿季は苦笑いになる。
和人たちが通っているこの『学校』の生徒は全て、中学、高校時代にSAOに囚われた者たちばかりだ。
積極的殺人歴のあるオレンジプレイヤーこそ、カウンセリングの要有りという事で一年以上の治療と経過観察が義務付けられたものの、和人を含めて自衛のために他のプレイヤーを手にかけた者は少なくない。
さらには盗みや恐喝などといった犯罪行為は記録に残らないのでチェックのようがない為、基本的にアインクラッドでの名前を出す事は忌避されている。
しかし、顔はSAO時代と一緒な上に、プレイヤーネームが本名な木綿季は入学直後に即バレしたようだ。
その彼女とクラスが離れたとはいえ、ほぼ一緒にいる和人もまた正体がバレている節がある。
もっとも、全てをなかったことには出来ないだろう。
あの世界、アインクラッドで過ごした日々は夢でも幻でもない現実なのだから。
それぞれのやり方で折り合いをつけていくしかないだろう。
和人は木綿季の左手に自身の右手を重ねて
「木綿季、身体の調子はどうだ? まだ、リハビリやってるんだろ?」
聞きながら、いたわるように彼女の手を撫でる。
「うん。やっと松葉杖なしで歩けるようになったよ。激しい運動はまだしちゃいけないけどね。ね、和人……」
木綿季は頬を朱に染めて
「ここさ、カフェテリアから丸見えなんだよ?」
そう言った。
瞬間、和人はギョッと目を見開いて顔を上げる。
校舎最上階の大きな彩光ガラスを見て慌てて手を離した。
木綿季は呆れたように息を吐いた。
「ホントにもー、うっかり屋さんにはお弁当あげないよ?」
「うぁ、勘弁」
そっぽ向く木綿季に和人は両手を合わせて必死に謝る。
ちらりと和人を見た後、木綿季はニコリと笑って膝の上のバスケットの蓋を開けた。
中には大きめのサンドイッチが幾つか入っていた。
その中の一つを取り出し、木綿季は和人に差し出す。
受け取ったそれに和人は一口齧りついた。
「こ、この味はっ……」
「へへー。気付いた?」
がつがつと咀嚼して呑みこんだ後、和人は木綿季に視線を向けて
「忘れるもんか。74層の安地で食べたサンドイッチだ」
「ソースの再現に苦労したよー。理不尽な話だよ。現実の味を再現しようとしてSAOで苦労して、今度はその味を再現する為に現実で苦労するなんてさぁ」
言いながら木綿季は苦笑いになる。
「木綿季……」
和人はSAOでの幸福な日々を思い出し、感傷の嵐が胸中に感じながら木綿季を見つめた。
そんな彼の視線に気付いた木綿季は微笑を浮かべて
「マヨネーズついてるよ、和人」
彼の口元のマヨネーズをハンカチで拭った。
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サンドイッチを食べ終えた2人は木綿季が用意したハーブティーを飲みながら、残り僅かな昼休みを過ごしていた。
「そういえば、彰三氏は元気か?」
「あはは。一時期は相当しょげてたよ。何度も謝られちゃった、『人を見る目がなかった。木綿季君にも明日奈にも申し訳ない事をした』ってさ」
「それはまた……」
「明日奈が言うにはCEOやめて半分引退したから、肩の荷の降ろし方に迷ってるみたいだから趣味でも見つけたら元気になるよ、って笑って言ってたよ」
言いながら木綿季は苦笑いだ。
和人はお茶を啜って空を見上げる。
結城彰三が娘の婚約者にと見込んでいた男―――――須郷伸之。
あの雪の日、病院の駐車場で逮捕された須郷はその後、醜くも足掻きに足掻きまくった。
黙秘に次ぐ黙秘、否定に次ぐ否定、最終的には茅場晶彦に全てを背負わせようとまでしてみせた。
しかし、須郷の部下の一人が重要参考人で警察に引っ張られた直後から呆気なく全てを自白し、仮想世界で明日奈が茅場から託された記録映像が決め手となって須郷の逃げ道は無くなった。
更には木綿季の家族の事故死も須郷が糸を引いていたことが露見し、その件でも厳しい取り調べが行われた。
公判が始まった現在では、精神鑑定を申請しているらしい。
主な罪状は傷害及び殺人教唆だが、略取監禁が成立するのかが世間の耳目を集めている。
どちらにしろ重い裁きが下されるのは確実だろうということだ。
行われていたフルダイブ技術による洗脳という邪悪な研究も、結局は初代ナーヴギアでなければ実現不可能と判明した。
ナーヴギアはほぼ全てが廃棄され、須郷の研究結果から対抗措置も可能らしい。
幸いだったのは、300人の未帰還者に、実験中の記憶がなかったことである。
脳に障害を負ったり、精神に異常を来した者は居らず、全員が社会復帰可能とされた。
だが、VRMMOというジャンルのゲームは回復不可能な打撃を被ってしまった。
元々SAO事件だけでかなりの社会的不安を醸成していたところに、今度こそ安全と銘打って展開したALOを含むVRMMOだったが、須郷が起こした事件によって、全ての仮想世界が犯罪に利用される可能性があると目されることとなった。
最終的にレクトプログレスは解散、レクト本社もかなりのダメージを負い、社長以下の経営陣を刷新してどうにか危機を乗り切りつつあるところだ。
もちろんALOも運営中止に追い込まれ、その他に展開されていた5、6タイトルのVRMMOも中止は免れ得ないだろうといわれていた。
そんな状況を根こそぎひっくり返したのが―――――茅場晶彦から託された『世界の種子』だった。
「それで、ヒースクリフさんは結局どうなったの?」
「あぁ……茅場は死んでいたよ。自殺だそうだ」
木綿季の問い掛けに、和人は一度目を伏せ空を見上げて答えた。
SAOをクリアしたあの日、茅場晶彦は自身の脳に超高出力のスキャニングを行ったらしい。
つまりは自分の記憶と思考をネットにコピーしたということだ。
成功する確率は1000分の1もなかったという。
しかし、和人はあの時確かに彼と会話した。
木綿季を助け出したALOで……
「ねぇ、和人。和人ってば?」
思考に耽っていた和人に木綿季が声をかけてくる。
ハッとした表情になって和人は彼女に視線を向けた。
「今日のオフの事なんだけど、ちゃんと聞いてなかったね?」
「悪い。考え事してた」
返ってきた返答に木綿季は呆れた表情になった。
「もう。和人って現実でも仮想でも、気の抜けてる時はうっかりのんびり屋さんだねぇ」
言いながら木綿季は太陽のような笑顔を浮かべ、直後に和人の肩に頭を預けた。
そんな寄り添い合う2人を見ている視線があった。
カフェテリアの西側の窓際の席。
そこからは中庭の様子がよく見える。
視線の先にある2人の仲睦まじい男女の姿を見ている女子生徒がパックのいちごヨーグルトドリンクを勢いよく吸い上げていく。
乙女らしからぬ行儀の悪さに、彼女の向かいの席に座っているもう一人の女子生徒が呆れた表情をしていた。
「もうリズ―――里香さん、行儀悪いですよ。それから覗き見も趣味悪いですよ」
「堅い事言わない! シリカ―――じゃなくて珪子、人がラブラブしてんのは気になるもんでしょうが」
言いながら女子生徒、篠崎里香は中庭から視線を外して座り直す。
そんな様子の里香に、向かいの女子生徒、綾野珪子は溜息をついた。
「それは里香さんだけじゃないんですか」
「あーあ、いい子ぶっちゃって。さっきまであんたも覗き見してたでしょうが」
意地の悪い笑みを浮かべて言う里香に、珪子はムッとした表情でエビピラフをスプーンで掬って口に詰め込み始めた。
その様子に里香は一度息をついて再び中庭に視線を向けた。
二月の初め頃に、和人から木綿季が目覚めたと連絡を貰った里香は大急ぎで彼女が収容されている病院へとお見舞いに訪れた。
病室を訪れ、里香の視界に映った木綿季の姿は今にも消えてしまいそうな妖精のようであった。
その姿に、仮想世界にいた時から彼女に感じていた保護者的感情を大いに刺激された里香は、彼女のリハビリに献身的に協力した。
その甲斐あって木綿季はすぐに元気を取り戻していき、この学校への入学までに退院する事が出来たのだ。
彼女の面倒を見る際に、里香も明日奈と知り合うことになり、木綿季に対して同じように妹を見るような感情を持っている明日奈と意気投合したのは言うまでもない。
今では頻繁に連絡を取ってはお茶会をしている仲だ。
その中にはもちろん珪子も含まれている。
「ね、あんたも今日のオフ会行くんでしょ?」
視線を珪子へと戻して里香は問いかける。
「もちろんですよ。リーファちゃん―――直葉ちゃんにも会いたいですしね」
珪子は当然といわんばかりに頷き、そう答えたのだった。
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エギルが経営する店『ダイシー・カフェ』を目指して和人と木綿季は歩いている。
その2人の数歩後ろを妹の直葉と、明日奈が歩いていた。
手を繋いで並んで歩く和人と木綿季の姿を見ている直葉の表情は少々複雑そうだ。
彼女の隣を歩いている明日奈もそれを察しているが、どう声をかけていいか迷っている。
その時、不意に和人達が立ち止り振り返った。
「なぁ、スグはもうエギルと会ったのか?」
「うん。向こうで二回くらい一緒に狩りしたよ。おっきい人だよねー」
「言っとくけど、本物もあのまんまだからな」
それを聞いて目を丸くする直葉。
木綿季と明日奈はクスクスと笑っている。
「ボクも初めて見た時はビックリしたよ」
「ホントにどっちでも同じだから違和感なかったよね」
言いながら和人達は再び歩き出した。
やがて店の前に辿り着く。
ドアには『本日貸し切り』と書かれた札がかかっていた。
和人が一気にドアを押しあける。
すると歓声と拍手が巻き起こった。
広いとは言えない店内にはすでにギッシリと人がいて、スピーカーからはアインクラッド50層『アルゲート』の街のテーマが鳴り響いていた。
皆の手にはすでに飲み物が入ったグラスが握られており、場はかなり盛り上がっていたようだ。
「おいおい。俺達、遅刻はしてないぞ?」
呆気にとられた和人がそういうと、彼らのもとに里香が歩み寄ってきた。
「主役は最後に登場するもんだからね。あんた達には、あらかじめ遅い時間を伝えといたのよ。ほら、入った入った」
言いながら里香は四人を店内へと招き入れる。
和人の腕を引っ張って店の奥の小さなステージへと招かれる。
そこで一度BGMが途切れ、皆の視線が和人に集中した。
「それでは皆さん! 御唱和ください!! せぇーの!!」
『キリト! SAOクリアおめでとう!!』
合唱と共に幾つものクラッカーが鳴り響く。
呆気に取られている和人に、里香がグラスを握らせて
「かんぱ~~~い!」
皆が一斉にグラスを上げた。
本日行われたオフ会は和人とエギル、そして里香の三人が企画したものだ。
しかしながら和人の知らない所で話は進みまくっていたようで、和人が予想していた人数を上回る人がここに訪れていた。
共に戦った戦友にして親友のソラこと天賀井空人。
第一層の教会で子供達を保護しながら暮らしていたサーシャ。
同じく第一層で『軍』の指導者をしていたシンカーと、その副官をしていたユリエール。
圏内事件で知り合ったヨルコとカインズ。
クライン率いるギルド『風林火山』のメンバーに、22層で釣り師をしていたニシダ。
和人と木綿季の身内という事で参加している直葉と明日奈。
そして、里香と珪子。
彼らの簡単な自己紹介の後、和人のスピーチが行われる(これも予定にはなかった)
それが終わり、エギル特製の巨大ピザが何皿も登場するに及んで宴は完全なカオス状態へと突入していた。
男性参加者からの手荒い祝福と、女性参加者からのやや親密すぎる祝福―――これには木綿季が少々妬いてしまいふくれっ面になったとか―――を受けて、へろへろになりながらカウンター席へと腰掛ける。
「マスター、バーボン。ロックで」
いい加減なオーダーを告げると、ロックアイスに琥珀色の液体を注いだタンブラーが滑り込んできた。
視線を向けるとマスターことエギルがニヤリと笑う。
タンブラーを手にとって恐る恐る和人はそれを飲む。
なんの事は無い、ただの烏龍茶だった。
呆れた溜息をついた和人の隣に、悪趣味なバンダナを頭に巻いたスーツ姿の男性が腰掛けて
「エギル、俺には本物をくれ」
「クライン。この後会社に戻るんだろ?」
和人は呆れた表情でクラインこと壷井遼太郎に問いかける。
「残業なんて飲まずにやってられっか。それにしても……いいねぇ」
言いながら鼻の下を伸ばしまくる遼太郎に和人は溜息をつきつつ視線を向ける。
その先には木綿季と明日奈をはじめとした女性プレイヤー陣が楽しそうに談笑している。
皆揃って容姿が整っているので確かに目の保養とも言えるだろう。
その時反対側の席に、赤みがかった髪と空色の瞳の青年――空人が腰掛ける。
「おつかれキリト」
「あぁ」
互いに持ったグラスを軽く打ちつけて笑い合う。
更に空人の隣にもう一人男性が腰掛けた。
遼太郎と同じスーツ姿だが、こちらはまともなビジネスマンといった感じだ。
『軍』の最高責任者でもあったシンカーである。
和人か彼に視線を向けて
「そういえば、ユリエールさんと入籍したそうですね。遅くなりましたが―――おめでとうございます」
「いやぁ、まだまだ現実に慣れるのに精一杯って感じですけどね。仕事もようやく軌道に乗ってきましたし……」
照れたように頭を掻くシンカー。
すると、タンブラーを掲げたクラインが
「実にめでたい!! そういや、見てますよ。新生『MMOトゥデイ』!」
「いやぁ、お恥ずかしい。まだまだコンテンツも少なくて……それに、今のMMO事情じゃ、攻略データとかニュースは無意味になりつつありそうですしね」
「まさしく、宇宙誕生の混沌……って感じですからね」
シンカーの言葉に空人が頷いて言った。
和人はエギルに視線を向けて
「エギル、どうだ。その後『種』のほうは」
尋ねるとエギルはニヤリと笑って愉快そうに言った。
「すげえもんさ。今、ミラーサーバーがおよそ50……ダウンロード総数は10万、実際に稼働している巨大サーバーが300ってとこだな」
言いながらエギルは傍らに置いてあった小型のノートパソコンを和人達に見せる。
あの日、茅場晶彦から託された『世界の種子』を和人はエギルのもとへと持ち込んで解析を依頼した。
その結果、『世界の種子』は『ザ・シード』という、茅場晶彦が開発したフルダイブ型VRMMO環境を動かすプログラムパッケージだという事が解ったのだ。
簡単に言えば、そこそこ太い回線のサーバーを用意してプログラムをダウンロードすれば、誰でも簡単にネット上へ異世界を作れるというものだ。
和人はエギルに依頼し、誰でも自由に『ザ・シード』をダウンロード出来るように、世界中のサーバーにアップロードしてもらった。
これによって、死に絶える筈だったVRMMOは再び息を吹き返した。
ALOも新しい運営会社にデータが完全に引き継がれて運営を再開している。
新しく生まれたのは、ALOだけではなかった。
中小企業や個人まで、数百にも登る運営会社が名乗りを上げて、次々とVRMMOが稼働したのである。
それらは相互に接続されるようになり、今では一つの世界で作ったキャラクターを別の世界へコンバートする仕組みすら整いつつあるという。
「それはそれとして、2次会の予定は変更なしだよな?」
「あぁ、今夜11時にイグドラシルシティに集合だ」
和人の問いにエギルがニヤッと笑って答えた。
男性陣がカウンターでやりとりしている一方、女性陣は会話に華を咲かせていた。
「そういえばさぁ。明日奈、最近ソラとよく狩りしてない?」
「そうなんですか?」
唐突に言われた言葉に珪子が疑問符を浮かべて明日奈に問いかけた。
「ふぇ! な、なななな、何を急に言い出すの!」
途端に明日奈は慌てたように木綿季に向かって叫んだ。
当の木綿季は疑問符を浮かべている。
「あれ? 違った? 和人と狩りしてたら2人が一緒に狩りしてるのを見かけたんだけど?」
「ほっほ~う? これはkwsk聞くしかないわねぇ~?」
木綿季の言葉を聞いて里香がニタリと笑って明日奈に視線を向ける。
「ま、まさか明日奈さんと天賀井さんがそんな関係だったなんて……」
珪子は2人の関係を頭の中で想像しながら視線を向けた。
「ちょ、違うの! ほら、私も空人さんも同じウンディーネでしょ!? 領地が同じだからパーティーを組む機会が多いだけで、他意はないの! そう無いのよ!」
顔を真っ赤にしながら明日奈は腕をブンブンと振って捲し立てる。
その姿が余計に里香達の好奇心を煽ったようだ。
「ホントにぃ~?」
「怪しいですねぇ~?」
ニヤニヤと笑いながら里香と珪子は明日奈を見ている。
「も、もう! 木綿季ぃ!」
「えぇ~? ボクの所為なの?」
顔を真っ赤にしたままの明日奈に、木綿季は疑問符を浮かべたままで首を傾げた。
「あー。アタシも向こうで相手を見つけときゃよかったぁ~」
「あたしもですよぉ」
「リズもシリカも可愛いから、すぐにいい人が見つかるって」
愚痴る珪子と里香に木綿季は笑いながら言う。
そのまま3人はSAOでの思い出話に突入した。
話題が自分から逸れたことにホッと胸を撫で下ろす明日奈。
その時、視界に何処となく寂しそうな表情をした直葉が見えた。
「直葉ちゃん、どうしたの?」
気になった明日奈は問いかけてみる。
すると直葉は笑顔で
「なんでもないですよ」
そう答えた。
そのまま目の前にいる木綿季達や、カウンターで談笑している和人達を見る直葉。
一瞬、寂しそうな目をしてグラスに注がれたジュースを口にする。
そんな彼女を明日奈は疑問符を浮かべて見ていた。
少女は言う、自分じゃそこまで行けないと
少年は言う、その気になればどこへでも行けると
そして彼らは目指す
再び現れた鋼鉄の浮遊城の頂へ
次回「フェアリィ・ダンス」