ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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書きあげた・・・書きあげたよ

ようやくアインクラッド編の折り返しにきたよ・・・

これからもがんばって書き続けよう!

ではご覧あれ!


第十六話 殺意の刃

2024年10月23日 第55層 グランザム

 

「地味なやつって頼んだ筈だけど……」

 

血盟騎士団本部の一室、キリトは自身の恰好を見ながらそう言った。

いつもの黒尽くめの装備ではなく、白を基調としたギルドユニフォームを着せられていた。

先日のヒースクリフとのデュエルに負けたキリトは約束通り、ユウキと共に血盟騎士団に入団することとなった。

その為、いつもの黒尽くめでは目立つからと着替えさせられたのだ。

因みにユウキは全力拒否し、いつも通りの装備である。

 

「ユウキはいつも通りなのに……何で俺だけ?」

 

「さぁ? 団長に負けたからじゃないかな?」

 

キリトの言葉にソラが苦笑いで口を開いた。

ユウキはキリトの恰好を見て笑いを堪えていた。

 

「キリトぉ……白、似合わなさすぎぃ……」

 

「悪かったな……」

 

キリトは溜息を吐く。

そんな時だった、部屋に一人のプレイヤーが訪れる。

斧を背負った重戦士。

 

「失礼しますぞ、副団長」

 

「ゴドフリー? 何かあったのか?」

 

入室してきたのはゴドフリーというらしい。

キリト達も何度かボス戦で前衛の指揮をしているのを見ていたので顔は覚えていた。

ソラの問い掛けにゴドフリーは頷き

 

「実はですな。新たに入団した2人には訓練を受けていただく事になりました。内容は私を含む団員3人とパーティーを組み、ここ55層の迷宮区を突破してもらう」

 

そう言ってキリトとユウキを見る。

するとソラは訝しげに

 

「この2人の管轄は僕だ。彼らの実力は僕がよく知っている」

 

そう言って返す。

 

 

「副団長といえど規律を(ないがし)ろにしないでいただきたいですな? それに、入団する以上は前衛指揮を任されているこの私に実力を示してもらわねば。なに、団長の許可は取ってありますぞ!」

 

そう言ってゴドフリーはフランクに笑ってみせる。

2人はソラに視線を向けた。

返ってきたのは「諦めろ」という意味での首振り。

キリト達は溜息を吐いた。

 

「ユウキ殿は明日、改めて訓練を受けていただく予定なのでキリト殿は今から

30分後、西門に集合ぉ!! がっはははははは!!」

 

それだけ言って高らかに大笑いしながらゴドフリーは部屋を後にした。

キリトからは只々溜息が洩れるばかりだ。

隣でユウキは複雑そうな表情をしている。

 

「なんで、別々なのかな? どうせならキリトと一緒がよかったのに……」

 

少々フテ気味なユウキ。

そんな彼女の頭をキリトは優しく撫でて

 

「すぐに戻るさ。大人しく待ってろよ?」

 

そう言って笑いかけた。

ユウキは頬を赤らめて小さく頷いた。

30分後。

キリトは本部の西門に足を運んだ。

そこにはすでにゴドフリーが来ている。

もう一人のメンバーであろう人物もその隣に立っていた。

その人物を見てキリトは表情を険しくさせた。

痩身の男性プレイヤー、クラディールだった。

 

「……どういう事だ?」

 

彼らの前で立ち止まり、キリトはゴドフリーに問いかける。

それに頷いて

 

「うむ。君らの事情は聞いている。しかし、これからは同じギルドの団員だ。

過去の争いは水に流してはと思ってな!」

 

そう返答を返す。

キリトは微妙な表情をしているが、そこへクラディールが歩み寄ってきた。

キリトの目の前に立ち、深々と頭を下げて

 

「先日は……ご迷惑をお掛けしまして……二度と無礼な真似は致しませんので……どうか、許していただきたい……」

 

謝罪の言葉を述べた。

キリトは微妙な表情になりながら頷いた。

正直、また突っ掛かってくると踏んでいたキリト。

こうして謝罪などするとは思っていなかったのだ。

 

「これで一件落着だな!」

 

そう言ってキリトの肩を叩くゴドフリー。

視線をクラディールに向けると未だに頭を下げていた。

 

「さて、今日の訓練は諸君らの危機対処能力も見たいので、結晶アイテムは全

て預からせてもらおう」

 

改めて訓練内容を説明するゴドフリー。

それを聞いたキリトは

 

「転移結晶もか?」

 

尋ねられたゴドフリーは当然とばかりに頷く。

キリトは目を逸らして思い悩む。

そうしているとクラディールが素直に持っている結晶をゴドフリーに渡した。

視線を再び彼に移すと、フランクに笑ってみせるゴドフリー。

キリトは諦めたように溜息を吐いて、転移結晶を含む全ての結晶をゴドフリーに手渡した。

それを自身のベルトポーチに収めて

 

「よぉし! では出発ぅ!!」

 

勢いよく片手を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第55層 迷宮区前

 

道中、いくらかの戦闘をこなしながら、キリト達は迷宮区の前まで辿り着いていた。

 

「よーし、ここで一時休憩!」

 

立ち止りゴドフリーの号令がかかる。

キリト達は段差に腰を下ろした。

 

「では、食料を配布する」

 

言いながらオブジェクト化した食料袋をそれぞれに投げ飛ばしてきた。

キリトはそれを受け取って中身を確認する。

中に入っていたのは黒パンと水の入った瓶だった。

溜息を吐いてキリトは瓶を手に取る。

蓋を開けて、中の水を飲んでいくキリト。

その時、ふとクラディールに視線をむけた。

彼は食料に一切手をつけず、キリトを見ていた。

その眼はまるで何かを狙っているかのようだった。

そこでキリトはある可能性に気付き、持っていた瓶を放り捨てた。

直後、彼の身体から力が抜けて倒れてしまった。

視界の端では、同じようにゴドフリーもうつ伏せになり倒れている。

自身のHPバーを確認するとそこにはある筈のないアイコンが現れていた。

 

(麻痺毒……!)

 

そう、彼らは麻痺毒を食らってしまったのだ。

2人が倒れたのを確認したクラディールはゆっくり立ち上がり

 

「く……くか……くひゃひゃひゃ!! ひゃぁははははははははははははは!!!!」

 

身体を揺らしながら大きく笑い始めた。

その声には狂気が混じっているのが解る。

ゴドフリーは動けぬ身体を動かそうとしながら

 

「ど……どういう事だ……? この水を用意したのは……ク、クラディール……お前……!」

 

問いかける。

そんな彼に

 

「早く……っ、解毒結晶を……っ!」

 

キリトは叫んだ。

麻痺で自由の効かない身体をのろのろと動かし、ゴドフリーはポーチから解毒結晶を取りだした。

その瞬間、クラディールが跳躍する。

ゴドフリーの目の前で着地し、彼の持っていた結晶を蹴り飛ばしたのだ。

 

「ゴドフリーさんよぉ。馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、あんた筋金入りの脳筋だなぁ?」

 

歓喜の混じった声でクラディールは言う。

そのまま腰の両手剣を抜き放った

当のゴドフリーは未だに混乱していた。

 

「な、何をする!!」

 

構う事なくクラディールはゴドフリーを斬りつけた。

彼のHPが少し減少する。

そしてクラディールのカーソルがオレンジへと変化した。

 

「や、やめろぉ!」

 

「うるせぇなぁ。最後に教えてやるよぉ……いいかぁ?」

 

言いながらクラディールは再びゴドフリーを斬りつけた。

 

「ぐあぁ!」

 

「俺達のパーティはぁ! 荒野で犯罪者の集団に襲われてぇ! 勇戦虚しくも2人が死亡! 俺一人になりながらも見事犯罪者を撃退し生還しましたぁ!! それが、この訓練のシナリオなんだよぉぉ!!! くひ、くひひゃはははははははは!!!!」

 

狂気の混ざった叫びを上げながらクラディールはゴドフリーを斬りつけていく。

彼のHPがレッドゾーンに差し掛かった時、クラディールは剣を逆手に持ち替えた。

そして、勢いよくゴドフリーの背中に突き刺した。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

それにより彼のHPは完全に削り取られた。

訳も解らぬままに、ゴドフリーはポリゴン片となって四散してしまった。

地面に刺さった両手剣を抜いて、クラディールはキリトに視線を向ける。

その表情は狂気と恍惚が入り混じっていた。

ニタニタと嗤いながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「よぉ……おめぇみたいなガキ1人の為によぉ……関係ねぇ奴を殺しちまったよぉ?」

 

そんな彼にキリトは

 

「その割にはずいぶん嬉しそうだな……? なんでお前みたいな奴が血盟騎士団に入った? 犯罪者ギルドの方がよっぽどお似合いだぜっ……!」

 

そう問いかけた。

するとクラディールは歩みを止めて

 

「へぇ……おもしれぇこと言うなぁ? いい勘してるぜぇ?」

 

言いながら自身のガントレットを外して見せる。

そこに描かれていたものを見てキリトは目を見開いた。

漆黒の棺桶、その中から髑髏が笑いながら手招きしている刺青。

忘れる筈がなく、見間違う筈もない。

 

「それは……『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の……!」

最悪の殺人ギルド『笑う棺桶』証をこの男は左腕に入れていた。

 

「けひひひっ! つい最近、精神的に入れてもらったのさ。この麻痺テクもそこで教わったんだぜぇ?」

 

「ばかな……『笑う棺桶』は3か月前に討伐戦があった……主要メンバー含むほとんどが牢獄に送られている筈だぞ……?」

 

「生き残りがいたんだよぉ。今もなお復活を企んでるらしいが……俺はお前を殺せりゃぁ、後はどうだっていいがね!」

 

そう言ってクラディールは再びガントレットを装備する。

 

「さぁて。おしゃべりもこのくらいにしねぇとな。毒が切れちまうぜ」

 

再びキリトに歩み寄る。

剣を逆手に持って、キリトの左手に突き刺した。

 

「っぐ!」

 

刺された事でHPが僅かに減少した。

クラディールは刺した剣を捏ね回すように動かす。

それによってじわじわとキリトのHPは減少していった。

左手から剣を抜き、今度は左足に突き刺してきた。

先程と同じように剣を捏ね回す。

ゆっくりだが確実にHPは減少していく。

 

「どうよ……どうなんだよ? もうすぐ死ぬってどんな感じだよ? 教えてくれよぉ? なぁ?」

 

やがてHPがイエローに差し掛かった時、クラディールは再び剣を引き抜いた。

そして今度は

 

「なんとか言ってくれよぉ? ホントに死んじまうぞぉ?!」

 

叫びながらキリトの腹部に思い切り剣を突き刺した。

それにより、いよいよHPがレッドゾーンに突入する。

 

(俺は……このまま死ぬのか?)

 

諦めたように目を閉じるキリト。

その時、彼の脳裏に少女の姿が浮かぶ。

ユウキだった。

始まりの日から一緒に居たパートナー。

自暴自棄になって離れていたにもかかわらず、再び自分を支えてくれた少女。

そして、キリトは思い出す。

あの74層で、自分がいなくなる事に怯えていた彼女にかけた言葉を。

眼が見開かれ、右手で剣を掴み、今出せる力を入れて引き抜こうとするキリト。

それを見て

 

「なんだよ? やっぱ死ぬのは怖えってか?」

 

クラディールは問いかけた。

 

「あぁ……そうだ……まだ……死ねないっ……!」

 

その返答を聞きクラディールは片手で一度自身の顔を抑えて

 

「くっ! くかか! そうか、そうかよ! そうこなくっちゃなぁ!!!」

 

狂気の表情で再び剣に手をかけて力を入れた。

全体重で突き刺そうとするのをキリトは必死に支える。

それでもじわじわとHPが減っていく。

残り数ドットに差し掛かった瞬間、キリトは死を覚悟してか勢いよく目を閉じた。

 

「死ね! 死ねぇ! 死ねぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇ!!!!」

 

荒野に木魂する狂気の叫び。

その時だった。

何かがクラディールに目掛けて飛び込んでくる。

 

「ぐぼぁ!!」

 

避けることが出来ず、クラディールは宙へと吹き飛ばされた。

後方の岩壁に激突し地に落ちる。

キリトが目を開くと赤く染まった視界に誰かが映る。

 

「ヒール!」

 

その声が響いた直後、残り数ドットだったキリトのHPが全快した。

再び視界が正常になり、目の前の人物を確認する。

紫がかかった黒いロングヘアーに紫を基調とした装備。

彼のパートナーであるユウキがそこに居た。

大きく息を切らし、瞳からは涙が溢れている。

 

「よかった……間に合った……間に合ったよぅ……」

 

「ユウキ……どうして?」

 

ユウキは涙を拭いながら

 

「キリトの位置をモニターしてたんだ……そしたら一人反応が消えたから……

 

キリト、生きてる? 生きてるよね?」

そう問いかけてくる。

キリトは安心させるように

 

「あぁ……生きてるよ」

 

そう言って微笑んだ。

直後にソラも駆けつけてきた。

 

「キリト! 無事か!?」

 

「なんとか……」

 

それを聞いてソラもホッと胸を撫で下ろした。

そして視線をクラディールに向ける。

その目には今までにない怒りが込められていた。

 

「クラディール!! どういう事か説明してもらうぞ!!」

 

言いながら愛剣に手を伸ばす。

が、それをユウキが制した。

 

「ソラはキリトの解毒をお願い……」

 

そう言ってユウキはクリスキャリバーを抜き放つ。

静かに歩み寄った。

当のクラディールは

 

「ユ、ユウキ殿……これは訓練……そう! 訓練でちょっと事故が……」

 

言いきる前にユウキの剣が一閃を放つ。

それは彼の頬を掠めた。

途端にクラディールは形相を変えて

 

「糞がぁ!!」

 

両手剣を振りかざした。

しかし、それよりも速くユウキの斬撃が放たれる。

それは連撃、目にも止まらぬ速さでクラディールを斬りつけていった。

やがて剣先が彼の目の前で止まった。

クラディールは剣を落として跪く。

 

「わ、わかった! 俺が悪かった! もうギルドはやめる! あんたらの前にも現れねぇよ! だから、だから!!」

 

そう命乞いをするクラディール。

しかし、ユウキは構う事なく剣を振り上げた。

クラディールは頭を抱えて

 

「頼むよ!! 家族が! あっちには家族がいるんだよぉ!!!」

 

そう言って懇願した。

それを聞いた瞬間、振り下ろされかけた剣が止まる。

家族と聞いてユウキは躊躇したのだ。

事故で家族を失ったユウキは、それが失われる悲しみを知っている。

それ故に、止めを躊躇したのだ。

しかし、それは罠だった。

クラディールはニヤリと笑い、落とした剣を素早く握る。

そして、ユウキの剣を弾きとしたのだ。

突然の事にユウキは驚く。

 

「あめぇんだよぉ!! (あま)ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

叫びと共に無防備なユウキに斬撃が振り下ろされる。

しかし、それはユウキには届かなかった。

ソラが割って入り左手の鞘で受け止めたのだ。

驚愕するクラディール。

直後、エリュシデータを抜いたキリトがソラの後ろから駆けてくる。

 

「あぁぁ!!」

 

そのまま躊躇なくクラディールを切り裂いた。

 

「げぶぁ!!」

 

それは残っていた彼のHPを容赦なく刈り取った。

身体が光に包まれながら

 

「こ……この人殺し野郎が……」

 

そう呟き、クラディールはポリゴン片となって四散した。

剣を握ったままキリトは膝を落とす。

そんな彼に

 

「キリト……大丈夫か?」

 

ソラが問いかけた。

しばらく沈黙していたが、剣を収めて立ち上がり

 

「あぁ。大丈夫……」

 

振り返る事なくキリトは答えた。

 

「……2人とも、今日はもう帰ったほうがいい。この事は僕から団長に伝える。後日、改めて本部に来てくれ……キリト……無理はするなよ?」

 

「……あぁ」

 

尚も振り返る事なく答えるキリト。

ソラは苦い顔のまま、グランザムへと歩き出した。

残されたキリト達。

 

「……帰ろう……ユウキ」

 

そう言ってキリトも歩き出す。

対するユウキは返事をする事もなく、その後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

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第50層 アルゲード

 

辺りがすっかり暗くなり、夜空には月が浮かんでいた。

ホームに戻ったキリト達は二階の部屋に居る。

キリトは椅子に座り、ユウキは窓から月を眺めていた。

重い空気が沈黙を作る。

やがてそれを破るように

 

「……ごめんね」

 

ユウキが呟いた。

それを聞いてキリトはユウキに視線を向けた。

振り向いたユウキは俯いている。

 

「ユウキ? どうした?」

 

様子がおかしい事を気にしたキリトは優しい声で尋ねた。

すると

 

「……ボクが……ボクが躊躇したから……キリトにあの人を……殺させちゃった……」

 

顔を上げてユウキは言う。

その瞳からは涙が溢れ出ていた。

 

「あれはユウキの所為じゃない」

 

キリトは首を振ってそう言う。

しかしユウキは

 

「違う、ボクの所為だ……ボクはキリトを支えるって……そう決めてたのに……なのに……またキリトに背負わせちゃった……」

 

言いながら涙をボロボロと零していく。

 

「ごめんねっ……ごめっ……ごめんなさいっ……ボク……ボクっ……うぇぇぇ……」

 

ついに堪え切れなくなってユウキは本格的に泣き出してしまった。

支えていく筈の人に重荷を背負わせた。

そう思い込んで止まらなくなったのだ。

キリトは立ち上がりユウキに歩み寄る。

そのまま彼女を抱きしめた。

 

「ふぇ……キリト……?」

 

突然の事にユウキは泣きやんで問いかける。

 

「いいんだ。ユウキの所為じゃない。これは俺が選んだ事だ……俺は君に……ユウキに死んでほしくない。ずっと傍に居たいんだ」

 

そう言って彼女の背に回した腕に力を込めた。

 

「ボク……ボクも……キリトの傍にいたい……ずっと、君の傍に居続けたい……だから……だから……」

 

ユウキもそう返しながらキリトを抱きしめ返す。

 

「なにがあっても、俺は君を現実に返す。最後の瞬間まで一緒に居よう」

 

「ボクも君を護るよ。なにがあっても最後まで一緒に生きようね」

 

そう伝えあい、2人はしばらく抱きしめあった。

やがてキリトは少し彼女から離れて

 

「ユウキ……しばらく前線を離れないか?」

 

「キリト?」

 

言われたユウキは疑問符を浮かべる。

 

「22層の森に……いい物件があるんだ……ここを引き払ってさ……そこに引っ越そう。それで……それで……」

 

そこで一旦区切り、息を吐きユウキを見つめて

 

「け、結婚しよう」

 

そう告げた。

それを聞いたユウキは眼を見開く。

その瞳から一筋の涙が零れた。

ユウキは

 

「……はい」

 

いままでで一番の笑顔で頷いた。

そのまま2人の顔が近づいていく。

差し込んでくる月明かりに照らされながら、キリト達は誓い合うように唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 




広がる大きな自然

静かなる森の中

朝露の中1人の少女が姿を見せる

次回「朝露の少女」

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