ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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書きあがりました

またも戦闘描写で頭の神経が焼き切れそうです

でもやはり戦闘シーンは観るのも書くのも楽しいです。なんだこの無限ループ

ではご覧ください




第十五話 黒と紅の剣舞

―……ト

 

 

 

―……リト

 

 

朦朧とする意識を呼び起こすように誰かが何かを言っている。

 

「キリト!」

 

目を開けるとおぼろげに映ったのは、パートナーの少女。

心配そうな表情で黒の少年、キリトを覗き込むように見ていた。

その瞳からは涙が今にも零れそうだった。

キリトは頭を押さえながら上体を起こす。

 

「ユウキ……? 俺……どれくらい……意識失ってた?」

 

辺りを見回しながら言う。

ユウキは涙を拭いながら

 

「ほんの数秒……バカ!」

 

そう言ってキリトに抱きついた。

彼が生きているのを確かめるようにユウキはキリトの胸に顔を埋める。

そんな彼女に

 

「……そんな締め付けたら俺のHPがなくなるぞ?」

 

苦笑いでキリトは言った。

 

「お疲れ様」

 

言いながらソラがハイポーションを差し出してくる。

キリトはそれを受け取り口に含んだ。

数ドットだったHPが緩やかに回復していく。

そうしているとクラインが歩み寄ってきた。

目を伏せて

 

「コーバッツと……あと、2人死んだ……」

 

そう報告するように呟いた。

キリトも一度眼を伏せる。

 

「そう……か……ボス攻略で犠牲者が出たのは67層以来だな……」

 

「こんなんが攻略って言えるかよ……コーバッツのバカ野郎が、死んだらなんの意味もねぇだろうが……」

 

悔しさが含まれた表情で言うクライン。

視線を変えると、仲間の死に悲しんでいる『軍』のプレイヤーが見える。

クラインは気持ちを切り替えるように首を振り

 

「それよかなんだよ! お前等のあのスキルは!?」

 

キリトとソラに問いかける。

2人は微妙な表情で顔を見合わせて

 

「言わなきゃだめか?」

 

キリトがそう尋ねる。

 

「ったりめぇだろうが! 見たことねぇぞあんなの!」

 

言うまで納得できないと言う感じのクライン。

他のプレイヤー達も同じような雰囲気だ。

2人は観念したように

 

「……エクストラスキルだよ。『二刀流』」

 

「同じく、『抜剣』です」

 

そう口にした。

騒然とするクライン達。

 

「出現条件は!?」

 

慌てたように聞いてくる。

キリト達はまた首を振って

 

「わかってりゃ、とっくに公開してるさ」

 

キリトがそう言い、肯定するようにソラは頷いた。

クラインはメニューを開いて、公開されているスキルリストを閲覧していく。

しかし、そこには『二刀流』も『抜剣』も乗ってはいなかった。

 

「情報屋のスキルリストにも載ってねぇ……って事はお前ら専用のユニークスキルじゃねぇか!! 水臭ぇな、そんな大技黙ってるなんてよぉ?」

 

クラインは苦笑いでそう言った。

 

「半年くらい前に、何気なくスキルリストを見たらいつの間にか取得していたんですよ」

 

「けど、こんなスキル持ってるのが知れたら……俺達の周りにも迷惑掛かるかもしれないからさ……」

 

キリトとソラは言いながら苦笑いする。

クラインは腕を組み、ウンウンと頷きながら

 

「ネットゲーマーは嫉妬深いからなぁ。俺は人間が出来てるからいいが、妬み嫉みはそりゃあるだろうよ。それに……」

 

そこまで言ってニヤリと笑う。

彼に抱きついたままのユウキを見ながら

 

「ま、苦労も修業の内だと思って頑張りたまえ、若者よ?」

 

意味深にそう言った。

キリトは呆れたような表情で

 

「勝手な事を……」

 

そう返した。

傍らでソラは苦笑いをしている。

 

「お前ら、本部に戻れるか?」

 

クラインは『軍』のプレイヤーに向かいそう尋ねる。

すると一人のプレイヤーが前に出た。

 

「あ、ありがとうございました」

 

「礼ならあっちの奴らに言いな」

 

頭を下げてくるプレイヤーにクラインはそう言ってキリト達を指差す。

『軍』のプレイヤー達は次々にキリト達に礼を言いボス部屋を出ていく。

回廊に出て順番に転移結晶を使って脱出していった。

 

「さて、転移門の有効化(アクティベート)はどうする?」

 

『軍』が撤退したのを見届けたクラインが尋ねてきた。

キリトは首を振って

任せるよ、俺はもうヘトヘトだ……ソラはどうする?」

 

「僕もクラインさんに任せようと思う。今回の事を、団長にも報告しないといけないからね」

 

2人の言葉にクラインは頷き

 

「そうか。じゃ、気ぃつけて帰れよ」

 

そう言って、75層に続く螺旋階段に向かい歩き出す。

が、ふと足を止める。

 

「なぁ、キリトよ……」

 

振り向かずに声をかけてくるクライン。

キリトは疑問符を浮かべて

 

「なんだ?」

 

問い返した。

 

「おめぇがよ、『軍』の連中を助けに飛び込んだ時な……オレぁ、なんつうか……嬉しかったよ。そんだけだ。またな」

 

振り返らずにクラインは手を上げて螺旋階段に歩いていった。

それを見届けて

 

「じゃぁ、僕も本部に戻るよ。キリト……ユウキを悲しませるなよ?」

 

ソラはそう言ってボス部屋から出ていき転移結晶で55層グランザムに戻っていった。

広いボス部屋にキリトとユウキだけが残される。

ユウキは未だにキリトに抱きついていた。

 

「ユウキ?」

 

キリトが問いかける。

 

「……怖かった……キリトが死んじゃうって思って……凄く怖かった……」

 

そう言っている彼女の体は震えていた。

キリトは呆れたように

 

「先に飛び込んでいったのはユウキだろ?」

 

そう言った。

すると

 

「……いやだよ? いなくなっちゃ……いやだ……ボクを置いていかないで……」

 

そう言って彼の背に回した腕に力が籠る。

彼女の言葉を聞いてキリトは、以前ユウキから聞かされた事を思い出した。

 

(そうだった……ユウキの家族は事故で亡くなったんだ……)

 

思考を巡らせる。

大切なものが突然理不尽に消えてしまう苦しさと悲しさ。

彼女はそれを知っているが故、キリトが消えてしまう事を恐れていた。

そんなユウキの気持ちを悟ったキリトは

 

「大丈夫……俺はもういなくなったりしない……ここにいるよ」

 

安心させるように呟く。

そしてユウキの頭を優しく撫でたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2024年10月19日 第50層 アルゲード

 

翌日、キリトとユウキはエギルの店に訪れていた。

正確に言えば避難しにきたである。

先日の青眼の悪魔との戦闘で自身のユニークスキルを晒したキリトとソラ。

それが尾ひれをつけて新聞に出回っていたのだ。

その新聞をエギルが見ている。

正面ではキリトが片肘つきながら苦い表情をしていた。

 

「『軍』の大部隊を全滅させた青い悪魔。それを撃破した『黒の剣士』と『刃雷』の50連撃ねぇ……こりゃぁ、ずいぶんと大きく出たな?」

 

「尾ひれがつくにも程がある……おかげで朝から情報屋や剣士やらに追いまわされて(ねぐら)に居られなくなったからな」

 

不機嫌そうにキリトは言う。

彼の後ろにあるベッドに腰掛けてたユウキは彼の言葉を聞いてジト目になり

 

「自業自得だよ。ボクにまで内緒にしてたんだから」

 

少し冷えた声でそう言った。

 

「それは悪かったって言ってるだろ? アイテムならいざ知らず、ユニークスキルじゃ、後の事を考えたら流石に……な?」

 

「……わかってるよ。でも、巻き込まれる身にもなってよね?」

 

そう言ってユウキはベッドから立ち上がる。

その時だった。

メッセージの着信アラームが鳴り響く。

キリトはメニューを開いて内容を確認した。

送り主はソラ。

内容はこうだ。

 

『ヒースクリフ団長が君達と話したいと言っている』

 

それを見たキリトは溜息を吐いて椅子から立ち上がった。

第55層 グランザム 血盟騎士団本部。

塔の最上階の会議室、ここにキリト達は訪れていた。

半円形の大きなテーブルにはギルド幹部がそれぞれ座っている。

その中央で両手を組み合わせ彼らを見ている人物。

血盟騎士団・団長、ヒースクリフその人であった。

彼の右隣りには副団長であるソラが着席していた。

 

「君とこうして話すのは初めてだったかな?」

 

キリトを見ながらヒースクリフは口を開いた。

 

「いえ、67層の対策会議で一度話しました。ヒースクリフ団長」

 

キリトはポーカーフェイスを装い応対する。

隣ではユウキが何とも言えない表情をしていた。

 

「あれは辛い戦いだったな。我々も危うく死者を出すところだった……トップギルドと言われていても戦力は常にギリギリだよ。それ故、今でも団員の勧誘は行っているがね」

 

それを聞いてユウキは表情を曇らせる。

そんなユウキを庇うようにキリトは一歩前に出て

 

「それなら勧誘係の人選は慎重にした方がいいですよ」

 

睨みを利かせ、少々冷えた声で最大の厭味を口にする。

 

「クラディールが君達に迷惑をかけた事は謝罪しよう。しかし、我々も今後の攻略を考えると戦力の補強はせざるを得ない……故に」

 

そこで一度区切るヒースクリフ。

 

「キリト君、私と戦いたまえ。君が勝てば君達の望みを一つ、可能な限り叶えよう。しかし、君が負けた場合は、君はユウキ君と共に血盟騎士団に入るのだ」

 

キリトをまっすぐ見据えて言う。

あまりに突拍子もない事に隣に居たソラは立ち上がり

 

「団長! それはいくらなんでも……」

 

そう抗議しようとする。

しかし

 

「わかりました」

 

それをキリトが遮った。

 

「剣で語れと言うなら望むところです。デュエルで決着をつけましょう」

 

ヒースクリフを真直ぐ見据えながらキリトは言いきった。

それを聞いたヒースクリフは微笑を浮かべて

 

「では、明日の正午に75層のコリニアの闘技場で行うとしよう。楽しみにしているよ、キリト君」

 

そう言って席を立ちあがり、会議室を後にする。

続く様にソラ以外の幹部も会議室を後にした。

残されたキリト達。

 

「ちょっとキリト! なに勝手に決めてるの!」

 

「いや、売り言葉に買い言葉で……ついな」

 

それを聞いたユウキは盛大に溜息を吐く。

キリトは苦笑いだ。

そんな彼らにソラは歩み寄り

 

「悪かったね、2人とも」

 

そう言ってきた。

 

「まぁ、言っちゃったもんは仕方ないさ。勝てばいいんだよ」

 

キリトはそう言ってソラに向かい合う。

 

「けど、ホントに大丈夫なの?」

 

そんなキリトにユウキは不安そうに問いかける。

 

「キリトの『二刀流』見た時さ、別次元の強さだと思ったよ……けど、ユニークスキルは団長さんだって持ってるよね?」

 

「あぁ、攻防自在の剣技『神聖剣』だな」

 

『神聖剣』とはヒースクリフが持つユニークスキルだ。

攻撃と防御を自在に操る剣技。

その攻撃力も然ることながら、こと防御に於いては無敵ともいえる性能を発揮している。

彼のHPがイエローにまで落ちたのを見た者は誰もいないと言うほどだ。

それ故に、『生ける伝説』とまで呼ばれている。

おそらくは現アインクラッドで最強とも言えるだろう。

 

「難しいだろうけど、簡単に負けるつもりはないさ」

 

不安そうなユウキの頭に手を置いてキリトは言う。

優しく撫でられて、ユウキは少し安心したような表情を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2024年10月20日 第75層 コリニア

 

 

先日有効化され、開通した主街区。

転移門広場のすぐ目の前に設置されているのは巨大な闘技場だ。

古代ローマを思わせるその造形はキリト達を圧巻させた。

しかし、彼らはそれ以上に驚くものを見せられる。

闘技場の入り口にはいくつもの露店が並んでいた。

そして溢れかえる人、人、人の群れ。

さらに入り口に大きな看板が掲げられていた。

 

『黒の二刀剣士VS紅の騎士。最強剣士決定デュエル!!』

 

書かれているものを見て2人は絶句する。

そんな二人にソラが苦笑いで歩み寄ってきた。

 

「2人とも、大丈夫か?」

 

「おい、どういう事だ?」

 

ジト目でソラに視線を向けるキリト。

ソラは苦笑いのままで

 

「いやぁ……あの後のギルド会議で団長が君とのデュエルを発表しちゃってね……経理のダイゼンさんが特急で情報を流した結果……」

 

「こうなったの?」

 

ユウキに問われ頷くソラ。

キリトは頭を抱えて

 

「逃げたい……」

 

そう呟いた。

そんなやりとりをした後、キリト達は控室に案内される。

メニューを操作して、自身のステータスの再確認をキリトは行った。

 

「よし!」

 

メニューを閉じてキリトは表情を引き締める。

 

「じゃぁ、行ってくるな」

 

「危なくなったらリザインしてよ?」

 

ユウキは不安げにそう言った。

キリトは安心させるように微笑み

 

「大丈夫だよ。さて、一暴れしますか!」

 

そう言って控室を後にした。

闘技場の中に入ると大きな歓声が聞こえてくる。

円形の決戦場を囲む観客席は多くのプレイヤーで溢れかえっていた。

ゆっくりと中央までキリトは歩いていく。

反対側からはヒースクリフが歩いて来ていた。

ローブ姿ではない、紅の甲冑に十字の描かれた大きな盾を装備している。

ボス戦でしか見た事ない紅の騎士、その姿に多くの観客が――沸きあがった。

中央位置で2人は相対する。

ヒースクリフは周りを見回して

 

「すまなかったな、キリト君。こんな事になっているとは思わなかった」

 

その表情はどこか楽しそうに見える。

キリトは苦笑いで

 

「ギャラは貰いますよ?」

 

そう言うと

 

「いや……今日から君は我がギルドの団員だ。任務扱いにさせてもらおう」

 

そう言ってメニューを操作してデュエルの申請を行った。

キリトの目の前に表示されたデュエル申請。

それを彼は『初撃決着モード』で受諾する。

カウントダウンが開始され、ヒースクリフは盾に納められている剣を抜き放った。

応じるようにキリトも背の鞘に納められた二刀を抜き放つ。

互いに愛剣を構え、時を待つ。

カウントがゼロに近づくにつれ、観客席にも緊張が奔った。

そして、時は来る。

カウントがゼロになり『DUEL!!』と表示された。

瞬間、2人の剣士は同地に地を蹴った。

低い体勢からキリトは駆け、ヒースクリフ目掛けて一閃を放つ。

それを盾で受け流した。

怯む事なくキリトは連撃を繰り出す。

が、それも全て盾で弾かれた。

キリトの攻撃が止まった瞬間、ヒースクリフは地を蹴る。

斬撃が来ると予想しキリトは剣を身構えた。

しかし、繰り出されたのは斬撃ではなかった。

ヒースクリフが動かしたのは右の剣ではなく、左の大きな盾だったのである。

予想外の攻撃にキリトは眼を見開く。

一瞬、反応が遅れるも、何とか剣を交差させてそれを防いだ。

だが、思いのほか威力があったようでキリトはそのまま後方へと圧し飛ばされる。

それを利用し、キリトはヒースクリフと距離を取って構えた。

二刀の剣が赤いライトエフェクトに包まれた。

追撃のために駆けてくるヒースクリフ。

迎え撃つためにキリトも地を蹴った────瞬間、彼の両手の剣がライトエフェクトに包まれる。

時計回りに螺旋回転しながら左の剣が左斜め上から右斜め下に振り抜かれる。

その斬撃に対し、ヒースクリフはブレーキをかけて停止し、盾を構えた。

ガギンと鈍い音が響き渡る。

キリトの左の斬撃はヒースクリフの盾によって防がれていた。

しかし、左の斬撃が終わっても彼の螺旋回転は終わってない。

時計回りの螺旋回転は未だ続いており、次いで右の剣がヒースクリフに襲いかかる。

これこそ二刀流重突進ソードスキル『ダブルサーキュラー』である。

コンマ数秒の差で放たれる右の斬撃がヒースクリフに襲いかかる。

しかしこれも素早く盾を引き、右に握っている剣で斬撃を受け、あっけなく防がれてしまった。

すり抜けるように交差し、距離を空けて2人は止まる。

不敵な笑みを浮かべるヒースクリフ。

 

「素晴らしい反応速度だ」

 

「そっちこそ堅すぎるぜ」

 

応じるようにキリトも口を開く。

直後に2人は勢いよく駆けた。

互いに一歩も譲らずに繰り出される斬撃の応酬。

キリトは二刀でいなしながら、ヒースクリフは盾で受けながら。

ぶつかり合う度に激しい剣戟と火花が散る。

それは黒と紅が繰り広げる剣舞だった。

滅多に見られない攻防に観客達のテンションも最高潮の盛り上がりを見せる。

その様子を決戦場の入り口でユウキは不安そうに見ていた。

2人のHPが斬撃の応酬でジリジリと削られていくなか

 

(まだだ……まだ上がる!)

 

キリトの斬撃の速度はさらに上がっていった。

その内の一撃がヒースクリフの頬を掠める。

僅かにHP減少し、彼の表情からは笑みが消えた。

それを動揺と読んだキリトは勝負に出る。

 

「おおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ぬぅっ!」

 

二本の剣が蒼いライトエフェクトを纏いだす。

放たれたのは二刀流上位ソードスキル『スターバースト・ストリーム』

降り注ぐ流星のような連続斬撃、計16発。

蒼いエフェクトがいくつもの線を描いてヒースクリフに襲いかかった。

それを彼は盾で防いでいるが、縦横無尽に繰り出される斬撃の嵐は徐々に彼の盾を圧していく。

 

(抜ける!)

 

十五発目の斬撃がついに彼の盾を弾いた。

ヒースクリフは大きく体勢を崩されてしまった。

そして、無防備な彼に最後の一撃が振り下ろされた。

その時、世界がブレたようにキリトは感じた。

自身を含んだ世界の全てが止まっているような感覚。

ただ一人、ヒースクリフを除いて。

弾かれた筈の盾が瞬時に移動する。

それは最後の一撃を完全に防ぎきった。

大技後の硬直でキリトは動けない。

そこをすかさずヒースクリフの剣が突き出る。

避ける事が出来ずにキリトはそれを受けた。

HPがイエローになり、デュエル終了のシステムメッセージが表示された。

沸き上がる観客達。

しかし、キリトは座り込んだまま先程の現象を不思議がっていた。

視線を上に移すとヒースクリフが目に入る。

その表情は少々険しく見えた。

キリトを一瞥し、ヒースクリフは背を向けて歩き出す。

キリトとヒースクリフのデュエルは、キリトの敗北という形で幕を閉じた。

しかし、彼は大きな疑問を抱える。

 

(あれは……明らかに人間に許された限界速度を超えていた……ありえるのか?)

 

彼のもとに走ってくるユウキを視界に入れながら、キリトは思考を巡らせたのだった。

 

 

 

 

 




思いもよらぬ罠

向けられる兇刃

鋭い殺意は少年を貫く

次回「殺意の刃」

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