本編の合間にちょくちょくこの幕間を入れたいと思ってます
今回はユニークスキルのお話です。
オリジナルユニークスキル出しました。
ではどうぞ~
2024年 4月16日 第50層 アルゲード
主街区の一角にある建物。
その日、二階の自室でキリトは自身のスキルウィンドを開いて難しい顔をしていた。
「なんだ……これ?」
様々なスキルが表示されている中に彼の見覚えのないスキルが混じっていたのだ。
そのスキル名は『二刀流』
情報屋のスキルリストも確認してみるがどこにもない。
「エクストラスキルなんだろうけど……これ、補正凄いな……」
スキルの内容を確認して驚いたように呟くキリト。
その時、メッセージの着信を告げるアラーム音が鳴り、スキルメニューを閉じてキリトはメッセージを確認した。
送り主はソラ。
送られてきたメッセージの内容を確認し、キリトは息を吐いて立ち上がった。
出かけるために一階に降りていく。
下ではユウキが今日の昼食用の弁当を作っていた。
二人は今、この建物を
「ほぇ? キリト出かけるの?」
降りてきたキリトにユウキは料理を中断し問いかけた。
「ああ、ソラが二人だけで話したい事があるからって」
「じゃあ、今日は攻略はお休みにするのかな?」
そう言いながら作りかけの弁当を見る。
圏内事件の一件でユウキが料理スキルを取得している事を知ったキリトは彼女に毎日弁当を頼んでいた。
あの時のバケットサンドがそうとう美味しかったのだろう。
今日も攻略に行くのだろうとユウキは張り切って調理していた。
「うーん、攻略は休みにするけど弁当は欲しいかな。もしかしたら厄介事かもしれないし」
「じゃぁ、ソラの分も作ろうか?」
「ああ、とびきり美味いの頼むな」
「らじゃ!」
そう頼まれてユウキは嬉しそうに可愛らしく敬礼してみせた。
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第59層 ダナク
アルゲードから転移してキリトは辺りを見回す。
目的の人物はすぐに発見された。
白と赤を基調とした装備なのでトコトン目立つ。
「よ、ソラ。相変わらずの白赤装備だな?」
「ずいぶんだね。真っ黒のキリトに言われたくないよ」
キリトの軽口にソラは苦笑いで返してきた。
「それで、話ってなんだよ?」
「あぁ、ここじゃちょっと話しづらいな……場所を変えて話そう」
そう言ってソラは移動を促す。
キリトは疑問符を浮かべながらも
「人には聞かれたくないって事か……わかった、主街区の外れに行こうぜ。ユウキの弁当でも食べながら話そう」
そう言って歩き出した。
移動したのは以前、キリト達が昼寝をしていた木の陰。
そこに二人は腰を下ろした。
キリトはメニューを開き、ユウキの手作り弁当をオブジェクト化する。
その一つをソラに渡した。
「いいのかい?」
「ああ。ユウキの作った飯は美味いぞ?」
言いながらキリトは包みを開けた。
出てきたのはハンバーガー。
香ばしい肉の香りが食欲を誘う。
続くようにソラも包みを開けてそれを頬張る。
「……うん、これは美味いな」
「だろ?」
そのまま二人はハンバーガーを食べながら
「で、用件はなんなんだ?」
キリトは問う。
「あぁ……実は……」
問われたソラは辺りを見回す。
そして、先程より声を小さくして
「妙なスキルが追加されてたんだ」
そう言った。
それを聞いたキリトは
「ま、マジか……?」
問いかける。
ソラは無言で頷く。
キリトはハンバーガーを食べきって
「それって、スキル名は?」
再び問いかける。
「『抜剣』って言うんだけど、補正が他のスキルと比べ物にならないんだ。情報屋のスキルリストにもないし」
「……確かに聞いた事ないな。実を言うと、俺も妙なスキルが追加されててさ」
それを聞いたソラは驚いた表情を見せて
「どんなスキルだい?」
「『二刀流』っていうんだ」
それを聞きソラもまた唸りはじめる。
情報屋のリストにも載ってないうえに、他のスキルより補正が大きい。
これはある可能性を指している。
「ユニークスキル……」
「だろうね……」
───ユニークスキル───
数多あるスキルの中にはエクストラスキルと呼ばれるものが存在する。
条件を満たせば取得できるスキルは強力なものが多い。
そのなかでも、一人しか取得していない状態のスキルはその人物専用・・・すなわちユニークスキルと呼ばれていた。
現在そのスキルは一人の男が取得している。
スキル名は『神聖剣』
攻防自在の超剣技で、特に防御に於いてはチートともいえる程の高性能だ。
しばらく唸っていた二人だが
「……試しに行くか?」
「そうだね……使ってみない事には解らないし」
そう言って立ち上がる。
「なるべく人目につかないダンジョンに行こう」
「そうだね」
そうして二人が赴いたのは35層、迷いの森。
このエリアは地図がないと突破不可能な事で有名である。
故に訪れるプレイヤーも限られていた。
「さて、一応スキルの確認しとくか……まずは俺の『二刀流』だが……専用のソードスキルが威力+大。上位剣技は硬直時間が長いがその分手数が多く高火力になってるな。スキル名通り剣が両手に装備可能になる上に武器防御も補正が+中ってとこだ」
「次は僕の番かな。スキル名『抜剣』、専用ソードスキルの威力が+中、スキルによる技後硬直は通常の半分だね。後は盾を装備できない代わりに鞘を装備できるみたいだ。専用ソードスキルは納剣時にしかモーションが起こせないみたいだけど、鞘の耐久値が+特大ってとこだね」
互いのスキルの説明を終えてキリトは苦笑いになった。
「間違いなくユニークスキルだな……」
ソラも苦笑いで頷く。
「それじゃぁ、ソードスキル使ってみるかい?」
「だな。スキルセットして適当なモンスターを探すか」
言いながら二人はスキルのセットアップを行う。
キリトはストレージから今の愛剣より前に装備していた剣を選択し左手に装備する。
ソラも左手には今の剣の鞘が握られた。
「まずは僕から行こうかな」
そう言って辺りを見回すと、ドランクエイプが現れた。
ソラは愛剣を納剣し、構える。
そのままドランクエイプに駆けだした。
「はぁぁ!!」
発動するソードスキル。
鞘から刃が超高速で抜き放たれた。
それは縦方向への垂直斬り。
一見普通の斬撃のように感じるだろう。
しかし、そのスピードは通常のソードスキルの比ではなかった。
ドランクエイプはHPを一瞬で吹き飛ばされ、その身体を四散させた。
「なんだよ今の……目で追うのがやっとだったぞ?」
「今のは『飛燕一閃』ていうソードスキルだけど、なんて言うか……チートだよ」
ソラ自身もこのスキルの異常性に驚いている。
「んじゃ、次は俺かな」
そう言った直後にもう一体のドランクエイプが出現した。
二刀の剣を構え、モーションを取る。
スキルが立ちあがり右の剣を突き出す形で突進した。
黒い刃がドランクエイプを突き穿つ。
だがそこで終わりではなかった。
今度は左の剣が突きでてきた。
それは見事に命中する。
同じようにHPを一瞬で吹き飛ばされ、ドランクエイプは四散する。
その直後、キリトの左手の剣にノイズが奔る。
それは光を帯びてポリゴン片となり砕け散った。
「キリトのも凄いな……LV差を差し引いても異常だよその威力は……」
「……これは思った以上だな……」
二人は何とも言えない表情でそう言った。
「ともかく、これはバレたら相当ヤバい事になるな」
「特に『軍』と『聖竜連合』には気をつけないといけないかな」
言いながら二人は剣を納めた。
「ユウキにも秘密にしておくのかい?」
ソラはそう尋ねる。
キリトは少々苦い顔をして
「アイテムならともかく、スキルは流石に言えないな……ばれた時の周りの反応が怖すぎる」
そう言った。
超級アイテムの取得なら、まだ自分が狙われる程度で済むがスキルとなるとそうはいかない。
ネットゲーマーの嫉妬深さは蛇でさえ生温いほどだ。
もしこのスキルがばれて、ユウキもこのスキルのことを知っていたのが広まれば、彼女もまたスキルの出現条件を知っていたのではという疑惑に晒されてしまう。
それだけはどうしても避けたいとキリトは考えていた。
「そうだね、危険は少ないに越したことはないかな」
「このスキルは、俺達個人で見つからないように熟練度上げしていこう。使うのは本当にヤバくなった時……だな」
「了解だよ」
そう言葉を交わしながら二人は迷いの森を後にした。
そして二人は各自でスキルの熟練度上げを行った。
誰にも見つからないように。
しかし、半年後。
思わぬ出来事が二人のスキルを晒すきっかけになってしまう事を彼らはまだ知らない。
次は本編が書きあがり次第うpします