ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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3日! 連続! 更新!!

こんな連続で書いたの久しぶりだよ……連休様々やで



では92話、始まります。


第九十二話 シャムロックとの攻防

レインとフレンド登録をして二日後。

彼女から『シャムロック』の情報を掴んだと連絡があった。

それによると彼らは翌日にレアなクエストを攻略するとのことだ。

そのクエストもクリア人数に制限のある価値の高い限定クエストという事で、是が非でも逃したくないものだった。

なので彼らは『シャムロック』より先んじて、今日中にそのクエストを抑えることにしたのである。

そして今、エギルの店に集合してそのクエストを攻略するための会議を行っていた。

 

「みんな、集まってくれてありがとう。『シャムロック』は、フロスヒルデ南西にある峡谷あたりに進むらしい」

 

「峡谷かぁ……その先に何があるのかはわからないんだよね?」

 

キリトの言葉に、ユウキがそう訊ねてくる。

それに応えたのは今日から本格的にキリト達とパーティを組むことになったレインだった。

 

「峡谷の向こう側まで出られれば、何かわかるはずだよ」

 

「それなら、街で情報を集めてから峡谷に向かった方がいいな」

 

彼女の言葉に、ソラがそう提案してくる。

その提案にキリト達は皆頷いて

 

「よし、じゃぁ手分けして街で聞き込みだ」

 

『おー!』

 

彼らは四人一組に分かれて街で聞き込みを開始。

聞き込みを続けること約十数分。

キリトとユウキ、リーファにレインの四人が宿屋近くにいたNPCから有力な情報を聞くことが出来た。

そのNPCによると、フロスヒルデ南西にある峡谷には強力なモンスターがいて、そいつを倒すには『ブリューナクの輝石』というアイテムが必要だという事だった。

キリト達がわかったのはそこまでで、アイテムの入手法まではわからなかった。

けれど、ソラとアスナ、シノンとエギルの四人が『ブリューナクの輝石』の入手法をゲットしていた。

なんでも『ブリューナクの輝石』は酒場で受けられるクエスト報酬として入手出来るようだった。

集合した彼らは早速酒場へ向かい、そのクエストを探してみると、リストの中にそのクエストを発見。

内容は『ヒポグリフを15体討伐せよ』というものだった。

迷うことなくキリト達はそのクエストを受け、ヒポグリフがPOPするフロスヒルデのフィールドへと赴き、対象を素早く討伐して街へと帰還し酒場へと向かった。

その途中で『シャムロック』のメンバーと思われるプレイヤー達が『ブリューナクの輝石』の入手法について話し合っていた。

どうやら彼らはまだ『ブリューナクの輝石』の入手法がわかってないらしい。

そんな彼らを余所にキリト達は酒場へと向かう。

クエスト完了の報告をし、報酬として『ブリューナクの輝石』を受け取った。

アイテムを入手して外に出ると、キリトはガッツポーズを取り

 

「いよぉっし! 『シャムロック』に勝ったぞ! いやぁ、これだからVRMMOはやめられないんだよなぁ。みんなもお疲れ様!」

 

心底嬉しそうに言う。

 

「ふふ、お疲れ! レインの情報のお陰だねー」

 

「えへへー。お役に立ててよかったよー」

 

ユウキの言葉にレインも笑みを零して返す。

しかし直後に何か思い出したように慌てて

 

「あれ……? ごめん、酒場にちょっと忘れ物したみたい」

 

「わかった。ここで待ってるから取って来いよ」

 

レインにキリトはそう言って返す。

彼女は頷いて駆け足で酒場に向かい、中へと入っていった。

レインの姿が見えなくなったその時、ユウキはふと疑問に思っていることを口にする。

 

「でもさ、レインはどうやってこの情報を知ったんだろう?」

 

確かにユウキが疑問に思うのも無理はない。

この『スヴァルト・アールヴヘイム』は実装されたばかりの新エリアだ。

その最前線であるフロスヒルデの情報はまだそこまで出回ってはいないのが現状である。

『鼠』のアルゴを始め、様々な情報屋がクエストの情報を集めまわっているが、それでもまだ半分も情報公開はされていないだろう。

現にキリトはアルゴに様々な情報を求めてはいるが、彼女もそこまで有力なクエスト情報は得られたないと返されている。

そう言った事情もあり、レインが今回の情報を掴めたことが不思議で仕方がないのである。

 

「さぁ? でも、今回『シャムロック』より先行できたのはレインのお陰だってのは確かだよ」

 

ユウキの言葉にそう応えるキリト。

相も変わらず呑気な姿勢はユウキ達に苦笑いを浮かべさせる。

だが、そこが彼の長所でもある。

 

「でも、この『ブリューナクの輝石』ってなんの効果があるんでしょうか?」

 

そう言ってきたのはシリカだ。

キリトはストレージから『ブリューナクの輝石』を取り出して見せた。

水色の輝きを放つ宝石を見ながら

 

「使い方はわからないけど、貴重なアイテムみたいね」

 

「実際に使ってみればわかるんじゃないかな?」

 

言うシノンにアスナがそう言って返す。

そんなやり取りをしていると

 

「おまたせ~」

 

レインが酒場から戻ってきたようだ。

 

「おう、おかえり。それじゃぁ峡谷に行ってみよう」

 

「おっ……おー!」

 

戻ってきたレインを加え、キリト達は転移門からフロスヒルデへと転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『シャムロック』より先行して『ブリューナクの輝石』を入手したキリト達はフロスヒルデ南西の峡谷へと赴いていた。

峡谷の入り口に辿り着くと、その瞬間モンスターが出現した。

現れたのは中型のドラゴン型モンスターだった。

先に進むためにキリト達は武器を抜き、戦闘を開始する。

攻撃防御ともにかなり高めのモンスターではあったが、連携を駆使して難なく倒すことのできたキリト達。

これで先に進めると思い、一息つこうとした瞬間だった。

ポリゴン片となって散ったはずのモンスターが一瞬で復活したのだ。

目の前の光景にキリト達もさすがに驚く。

このモンスターは普通に戦っただけでは何度も復活してしまう可能性を考えたキリト達は、ここで『ブリューナクの輝石』を使うのではと考え、アイテムストレージから取り出して掲げてみる。

すると宝石が眩く光り、直後にモンスターは光に包まれて砕け散っていった。

どうやらこれで正解だったようで、さらにはここのモンスターを最初に倒したのもキリト達だとユイが告げる。

それによりテンションの上がった彼らはそのまま峡谷奥へ進み、そこでダンジョンの入り口を発見。

そのダンジョンも様々なギミックが用意されていたが、キリト達はなんとかそれを解いて最奥のボス部屋へとたどり着き、出現したボスと対峙した。

同時に出現した取り巻きのモンスターたちをなぎ倒しながら、キリト達はボスを撃破することが出来た。

 

「おっしゃ! クエストクリアだぜ!!」

 

刀を鞘に納めながらガッツポーズを取るクライン。

 

「ここのボスを倒したのはパパ達が最初みたいです」

 

戦闘が終わったことを確認したユイが、キリトのジャケットのポケットから顔を出しそう告げてきた。

このダンジョンも初攻略はキリト達だったようだ。

 

「これもレインちゃんの情報のお陰だね」

 

「あぁ。本当にレインの情報は的確だな。また『シャムロック』先に攻略出来たよ」

 

アスナの言葉にキリトがそう言うと、レインは照れたように頬を掻いている。

 

「でもさ、レインはいったいどうやって情報を入手してるのよ?」

 

「え? えーっと……それは……企業秘密?」

 

不意に問いかけてくるリズベットに、レインは少し目を逸らした後、そう言って返してきた。

その時だった。

ボス部屋の入り口の方から複数人の足音が聞こえてきた。

キリト達が振り返ると、数人のプレイヤー達が部屋の駆け込んできた。

その中には見覚えのある人物もいた。

ソラやアスナと同じく、水色の髪が特徴のウンディーネの青年。

『シャムロック』のスメラギだ。

どうやら彼らも峡谷のモンスターを倒し、このダンジョンに挑みに来たのだろう。

彼らは部屋の中に入ってすぐにキリト達を見つけると、先に攻略されてしまっていたことを悟りメンバーたちは悔しそうにしている。

そんな中、スメラギが一歩前に出てきた。

 

「貴様ら……」

 

「スメラギ。悪いがここは先に攻略させてもらったぜ」

 

前に出てきたスメラギに、キリトは不敵に笑ってそう言った。

するとスメラギは一瞬だけ笑うも、すぐに鋭い視線をキリトに向けて

 

「ふっ。それより貴様、どうやって俺たちの行動を先読みした? 腕の立つ情報屋でも雇ったか?」

 

 

「さぁ? もしかしたらそうかもな?」

 

投げかけられた質問にキリトはそう返す。

それに対し、スメラギもまた不敵に笑い言う。

 

「まぁいい。それも一つの戦略だ。我ら『シャムロック』が提唱するのは、種族が異なるプレイヤーの共存だ。競争に勝った負けたで、俺達から波風を立てるような事はすべきではない。それがセブンの望み」

 

「あんた、中々いい事言うじゃないか。そういう考え方、俺は好きだよ」

 

彼の言葉にキリトがそう答え返すと、スメラギは鋭い視線をキリト、そしてソラにも向けて

 

「ふん……貴様に好かれてどうする。あの時街であった男だな。馴れ馴れしくもセブンと会話をしていたから覚えているぞ。そしてそこのウンディーネの男もな。俺の威圧に屈しなかった貴様も記憶している。貴様ら、名は?」

 

そう言ってきた。

キリトとソラは臆することなくスメラギを見据え

 

「俺はキリトだ」

 

「僕はソラだ」

 

自身の名を名乗る。

それを聞いたスメラギは驚いたような表情を見せた。

 

「キリトにソラ……だと? そうか、貴様らがあの噂の『黒の剣士』と『刃雷』か。聞いているぞ、圧倒的な実力でALO攻略を進めているパーティがいると。そのトップ2の名が、キリトとソラ」

 

「俺たちはギルドじゃないよ。ただの仲良しパーティさ」

 

「だが、君たち『シャムロック』からすれば、僕たちはライバルという事になるかな」

 

「ふっ……ライバルか。いいだろう。その言葉、宣戦布告として受け取ってやる」

 

「なんなら、ここでデュエルでもするか?」

 

言いながらキリトは背の剣に手を伸ばす。

損キリトを見てスメラギは不敵に笑った後

 

「面白い奴らだ。貴様らとはいずれまた会いまみえるだろう。その時は相手をしてやる。どちらでもな」

 

キリト達に背を向けて、『シャムロック』のメンバー達を引き連れてその場を退散していった。

それを見送った後、ふとある事に気付いたリズベットが

 

「あれ? キリトにソラ、あんた達セブンに会った事あるの?」

 

そう問いかけてきた。

瞬間、キリトとソラはしまったという表情になり、リズベットの言葉を聞いて、皆の視線が二人に向けられる。

それを見てエギルはやれやれと肩を竦ませて

 

「早速バレちまったな、お前ら」

 

苦笑いでそう言った。

キリトとソラも同様に苦笑いだ。

その様子を見てユウキとアスナ、リーファは溜息を吐きながら

 

「キリトがセブンと偶然会ったって話は聞いてたけどさぁ」

 

「ソラさんもだなんて聞いてませんよ?」

 

「お兄ちゃんはともかく、ソラさんも結構アレですね……」

 

そう言ってくる。

リーファは呆れ顔で、ユウキとアスナは笑っている。

ただし目は笑ってはいなかった。

それを見たキリトとソラは慌てながら

 

「いやぁ……はははは……すまん」

 

「あ、アスナ。すまない……話すタイミングが中々掴めなくて……」

 

言いながら二人を宥めにかかる。

すると二人はプッと噴き出して

 

「なーんてね。怒ってないから気にしないでキリト!」

 

「ソラさんも、別に疚しいことをした訳じゃないんですから私も怒ってませんよ? でも、ちゃんと話しておいてほしかったです」

 

慌てる彼らに向かいそう言う二人。

キリトとソラは一瞬呆気に取られるも、すぐにホッと息を吐き

 

「ユウキ……悪かったな。リーファもすまん」

 

「君たちにはちゃんと話しておくべきだったな。反省している」

 

そう言って頭を下げた。

と、その時

 

「おいおい、なぁんでお前らが独占してんだよ! セブンちゃんとの繋がりをよぉ!! 黙ってるなんてあんまりじゃねぇか!!」

 

クラインがそう叫びながら二人に食って掛かってきた。

ある程度距離が詰まったその瞬間、ドスリと鈍い音が響き渡る。

 

「おぼぉ!!」

 

「あんたが騒ぐからキリトもソラも言いづらかったんでしょうが!」

 

音の正体はリズベットの肘打ちがクラインの鳩尾にヒットしたもののようだ。

ペインアブソーバーによって痛みはある程度抑えられているものの、それでもやはり痛いのだろう。

腹を抱えて蹲るクライン。

その様子を見て

 

「リズさん容赦ねぇ……」

 

ジュンは戦慄を覚えていようだった。

キリト達にとって、リズベットとクラインのこういったやり取りは日常茶飯事なのだが、ジュンはこの『スヴァルト・アールヴヘイム』からの付き合いだ。

なので未だにこのやり取りに慣れないでいるのだろう。

とはいえ、こうなるのは大概クラインの自業自得だという事はわかってるので同情はしていないようなのだが。

 

「ははは。まぁ、それもあるんだけど。俺個人としては七色博士の提唱する考え方とかに興味あったんだよ。あの子が提唱する、ネットワークにおける社会性ってやつをさ、一度面と向かって深く聞いてみたい……そう思ってたんだ」

 

「それに、あんな年端もいかない娘が研究のためとはいえ、妙に大人ぶってるのも引っかかってるんだろう?」

 

ソラにそう言われ、キリトは頷き

 

「まぁな。ちょっと失礼だけど、なんか可哀想になって放っておけなくてさ」

 

そう言葉を返す。

それに対してユウキとアスナも頷き

 

「確かに、テレビの特番見てても何処か背伸びしてる雰囲気あるよね」

 

「きっと周りからの期待がすごいからだと思うよ。ファンの人とかあの子のこと神聖化してるみたいだし」

 

キリトの言葉に同意していた。

するとユイがキリトのジャケットのポケットから飛び出し、彼の肩に降り立って

 

「でも本当に、最近セブンさんのファンの方々をよく見かけます」

 

そう言ってきた。

それを聞いて呆れたように溜息をついたのはシノンだ。

 

「ファンって言うよりは追っかけでしょう。特に攻略に参加するわけでもなく、あいつらいったい何しに来てるのかしら?」

 

何処か不機嫌そうな物言いをするシノンに、ソラが宥めるように言う。

 

「シノンの言いたいことはわかるが、スヴァルトエリアの難易度の高さは周知の事実だからね。アルゴさんによれば、熱心に攻略してるのは僕らと『シャムロック』を含む上位ギルドくらいしかいないらしい」

 

「ソラさん、それが本当なら今この新エリアにいる大勢のプレイヤーって……」

 

「あの子の追っかけ……クラスタって事ね」

 

それを聞いてアスナは驚きを隠せず、シノンは更に呆れたように呟いた。

同じようにソラの言葉を聞いたキリトはどこか寂しそうな表情で

 

「残念だな……みんなもっとゲームを楽しめばいいのに」

 

そう呟いた後、気を取り直すように表情を引き締め

 

「さて、気を取り直して、『シャムロック』より先に新エリアを攻略しようぜ!」

 

そう言うと、ユウキ達は頷いて見せる。

その後、彼らはさらに奥の部屋へと続く扉を発見し、そこ部屋の仕掛けを解いて出現した宝箱からアイテムをゲットした。

入手したアイテムは異常なほどの熱を発していたため、宝箱ごと持っていくしかなかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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峡谷の奥のダンジョンで手に入れた高熱を持つアイテムを入手したキリト達は、再びフロスヒルデのフィールドを探索していた。

このアイテムを使う場所を見落としていると判断したからである。

探索を続けること十数分。

彼らは巨大な氷に覆われた神殿を発見する。

どうやらこの氷は滝が凍り付いて出来たものらしい。

先程のアイテムをここで使えばいいと考えたキリト達がアイテムを使うと、途端に神殿を覆っていた氷は溶けていき、神殿への入り口が開かれる。

武器の耐久値や、アイテムの残量を確認した後、彼らは神殿に足を踏み入れた。

神殿の難易度はかなり高いものだった。

様々な罠やギミック、そして強力なモンスターと遭遇するも、何とか突破して中間地点と思われる大広間に辿り着いた時だった。

不意にキリトが立ち止まり、来た道の方へと視線を向ける。

それを不思議に思ったシリカが彼に問いかけた。

 

「どうしたんですか、キリトさん?」

 

「複数のプレイヤーがこっちに近づいてくるぞ!」

 

来た道を見たままキリトは言う。

彼の検索スキルは仲間の中で随一だ。

そのキリトが言うのだから間違いはないだろう。

やがて、見えてきた人影を確認すると、またもや見たことのある人物がいた。

鋭い眼光のウンディーネ───スメラギだ。

彼ら『シャムロック』もこの神殿の攻略に来たのだろう。

 

「なかなかやるな、『黒の剣士』に『刃雷』!」

 

視認できる距離まで来て、スメラギはキリト達を見据える。

そんな彼にキリトは不敵な笑みを浮かべて

 

「また会ったな。今度こそデュエルをしようぜ、スメラギ」

 

背の剣に手を伸ばす。

しかしスメラギは鋭い目でキリトを睨み

 

「今はダンジョンの攻略中だぞ! 今はどちらが先にこのダンジョンを攻略できるか、それが勝負だ!!」

 

そう言って返す。

彼にとってデュエルよりもダンジョン攻略の方が最優先なのだろう。

 

「だけどさ……目の前に強いプレイヤーがいるんだぜ。戦いたくなるのは当然じゃないか?」

 

「わからん奴だ……そんなに戦いたいのなら!」

 

一歩も引かないキリトにスメラギは小さく舌打ちをし、腰の両手剣を抜き放つ。

それを見てキリトはニッと笑ってメニューを開く。

コンソールを操作してスメラギにデュエルの申請を行った。

目の前に現れたデュエル申請画面の『完全決着モード』をスメラギが押すと、カウントダウンが開始される。

キリトは愛剣のフロッティを抜いて構えると、スメラギも両手剣を強く握り構えを取った。

 

「あーもう! キリトってば何やってんのさ!」

 

「仕方ないよ。こうなったキリトは簡単には止まらないから」

 

呆れるユウキにソラが苦笑いで言う。

仲間たち曰く、三度の飯よりデュエルが好きなキリトはこうなったら簡単には引きはしない。

ここは彼が満足するまでデュエルさせるしかないだろう。

そうこうしているうちにカウントが一桁になり、その場にいる皆に緊張が奔る。

そしてカウントがゼロになり、デュエル開始のブザーが鳴り響いた。

瞬間、キリトは勢いよく床を蹴って駆けだした。

一気にスメラギとの距離を詰め、下段からの斬撃を繰り出す。

それをスメラギはあっさりと見切って躱し、反撃の斬撃を放ってきた。

その一撃をキリトは素早く引き戻したフロッティで防御、橙色の火花が散り、小気味い金属音が鳴り響く。

防御に成功したキリトは受けたスメラギの両手剣を撥ね退け、数歩後退してから刺突を繰り出す。

それをスメラギは引き戻した両手剣で軌道を逸らし、瞬時にキリトの背後に回り込んで両手剣を振り上げた。

そのまま勢いよく上段からの斬撃を繰り出すも、持ち前の反応速度でキリトはこれを回避。

更には回避しながら身体を捻り、スメラギに向かい反撃する。

が、それは彼には届かなかった。

またもや引き戻した両手剣で防御していたからだ。

受け止めたキリトの剣を力任せに払い、彼の身体ごと後方へと押し返す。

 

「っく!!」

 

押し返されるも何とか踏みとどまって態勢を立て直すキリト。

 

「なかなか腕が立つようだな。噂以上だ、『黒の剣士』!」

 

言いながらスメラギは構えを解いた。

それを見たキリトは

 

「まだ決着はついてないぞ!」

 

そう叫び、再び剣を構えなおす。

しかしスメラギは再び構える様子を見せず言う。

 

「その実力と気概は認めてやる。だが、今はダンジョン攻略が優先だ。我々は組織で動いているからな」

 

「だけどっ……!」

 

「さっきも言ったが、ダンジョン攻略で我々と勝負すればいいだろう」

 

なおも引く様子を見せないキリトにスメラギはそう言って返してきた。

その時だった。

 

「キリト君!」

 

今まで黙っていたレインがキリトに呼び掛けたのだ。

その声を聴いて、スメラギが視線を向けると、その表情が変わった。

まっすぐにレインを見据え

 

「お前は……レイン。嘘つきレインじゃないか!」

 

そう言葉を口にした。

 

「え……?」

 

それを聞いたキリトは間の抜けた声を出し、レインを見た。

ユウキ達も疑問符を浮かべて彼女を見ている。

当のレインはバツの悪そうな表情で頬を掻いて

 

「あ、ははは……いやぁ、まいったなぁ……」

 

そう呟いた。




突然告げられた少女の事情。

それを聞いた少年たちは……



次回「嘘つきレイン」

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