ソードアート・オンライン 黒と紫の軌跡   作:藤崎葵

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書きあがりましたので投下します!

あ、人物設定を微更新しました。詳しくはそちらか活動報告を見てください。

では始まります



第八話 黒の剣士と絶剣

2024年2月24日 47層 フローリア

 

使い魔蘇生アイテムを手に入れるためにキリト達は第47層の街『フローリア』に訪れた。

眼の前に広がる辺り一面の花畑。

シリカは眼を輝かせて

 

「夢の国みたい!」

 

辺りを見回す。

 

「この層は通称『フラワーガーデン』と呼ばれてて、街だけじゃなくフロア全体が花だらけなんだ」

 

「いつみても綺麗だよね~」

 

キリトの言葉に続けてユウキが言った。

ふとシリカは周りに居るのが皆、男女のペアである事に気付く。

この層はデートスポットとしても有名なのだ。

みるみる顔を赤くしていくシリカ。

そんな彼女を

 

「シリカ?」

 

キリトは不思議そうに呼んだ。

慌ててシリカは

 

「い、いえ! なんでもないです!!」

 

振り返り手をぶんぶんと振って答えた。

キリトは疑問符を浮かべながら

 

「? まぁ、いいや。思い出の丘に行こうか」

 

そう言って背を向けて歩き出す。

 

「待ってよキリト~」

 

ユウキは急いでその後を追いキリトの隣に並んだ。

そんな二人をシリカは後ろから眺めながらついていく。

 

(キリトさんとユウキさんって……お付き合いしてるのかな?)

 

気さくな会話をしながら前を歩く二人を見ながらシリカは思考を巡らせる。

無理もない、ただのコンビにしては仲が良すぎるように見えるのだから。

やがて主街区を出て、思い出の丘の入り口の橋に辿り着いた。

そこでキリト達は立ち止る。

そして転移結晶を取り出して

 

「これを」

 

シリカに差し出してきた。

当の彼女は疑問符を浮かべている。

 

「君のLVと今の装備なら、ここのモンスターは問題なく対処できると思う。でもフィールドじゃなにが起こるか解らない。俺達が逃げろと言ったらどこでもいいからこれを使って転移するんだ」

 

キリトは真剣な表情でそう言った。

当のシリカは戸惑いながら

 

「あ……でも……」

 

「大丈夫だよ、ボク達なら心配ないから。ね、キリト?」

 

不安そうなシリカを安心させるようにユウキは言う。

キリトも頷いて

 

「ユウキの言う通りだ。だから、約束してくれ」

 

言葉を紡ぐ。

シリカは頷き転移結晶を受け取った。

 

「よし、行こうか」

 

言ってキリトとユウキは歩き出す。

シリカもその後をついていった。

しばらくフィールドを歩いていると、シュルっと何かがつたう音がした。

直後

 

「ぁわ、きゃぁぁぁぁ!!」

 

響き渡るシリカの悲鳴。

 

「どうした!」

 

「シリカ?!」

 

振り返ったキリトとユウキ。

その視線の先には食虫植物に似た巨大なモンスターによってシリカが宙づりにされていた。

逆さに吊り下げられている為スカートが捲れないように片手で押さえている。

下を見るとモンスターが巨大な口を開けた。

それを見てシリカは鳥肌を立たせて

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

絶叫しながら短剣をブンブンと無造作に振り回した。

 

「いや────!! キリトさん助けて!! 見ないで助けて─────!!」

 

その嘆願にキリトは眼をそむけながら

 

「いや……それ無理」

 

「キリト?目、開けちゃ、駄目だよ?」

 

後ろからはユウキが剣を抜き放ってそう言った。

何故か剣先はキリトに向けられている。

 

「シリカ! それすっごく弱いから!!」

 

「は、はい! このっ! いい加減に……しろぉーーーーーーー!!!」

 

ユウキに言われ、スカートを押さえていた手を離し、足をからめとっているツタを掴んで引き寄せてから短剣で斬った。

そのまま落下しながら短剣ソードスキル『ラピッドバイト』を発動させてモンスターに叩きこんだ。

HPを削り切り、モンスターは四散する。

着地したシリカは振り向いて

 

「見ました?」

 

と頬を赤く染めながら尋ねてきた。

 

「み、見てない……」

 

言いながら目を逸らすキリト。

その後ろでは

 

「だよねぇ~? 見てたらキリトのHP全損してるもんねぇ~?」

 

とユウキが未だに剣先をキリトに突き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

 

 

 

 

 

それから幾度か戦闘をこなして思い出の丘の道を歩いていると

 

「あの、キリトさん」

 

不意にシリカが声をかけてきた。

キリト達は振り返る。

シリカは意を決したように

 

「妹さんの事、聞いていいですか?」

 

そう尋ねてきた。

 

「何で急に?」

 

キリトは疑問符を浮かべる。

 

「あたしに似ているって言ったじゃないですか。現実の事を聞くのはマナー違反ですけど……いいですか?」

 

「へぇ~。キリトって妹がいたんだ? ボクも聞きたいな!」

 

シリカの言葉に同調するようにユウキも言う。

キリトは少し困った顔をして

 

「うーん……まぁ、いいか。いい機会だからユウキにも話すよ。歩きながらでいいか?」

 

二人は頷く。

キリトは再び歩き出しながら

 

「妹って言ったけど、本当は従妹なんだ」

 

そう口にする。

 

「え?」

 

「生まれた時から一緒に育ったから向こうは知らないけど、その所為かな……俺の方から距離を取っちゃってさ……」

 

懐かしむような、それでいて後悔しているような表情でキリトは言う。

 

「祖父が厳しい人でね。8歳の時、俺達を近所の剣道場に通わせたんだ。でも俺は二年でやめちゃって……そりゃぁ祖父に殴られたよ」

 

「そんな……やめただけで?」

 

ユウキが表情を曇らせて問う。

キリトは頷いて

 

「そしたら妹が「私が二人分頑張るから叩かないで」って俺を庇ったんだ。それからあいつ頑張って、全国大会まで行くようになってさ……」

 

「すごいじゃないですか!!」

 

シリカの言葉にキリトはまた表情を曇らせて

 

「でも、俺はずっと妹に引け目を感じてたんだ。他にもやりたい事があって、俺を怨んでるんじゃないかって……シリカを助けたくなったのは、妹への罪滅

ぼしをしている気になってるのかもしれないな……」

 

そこで一旦区切り

 

「ごめんな、シリカ」

 

苦笑いでそう告げた。

 

「キリト。妹さん、きっとキリトの事怨んでなんかないよ」

 

その時ユウキが口を開く。

続くように

 

「ユウキさんの言う通りです! 好きでもないのに頑張れないですよ。きっと、剣道が好きなんですよ!」

 

シリカもそう言った。

 

「そうか……そうだといいな」

 

キリトは微笑みながら

 

「二人ともありがとな?」

 

そう返す。

 

「よーし! あたしも頑張りますよー!」

 

そう言ってシリカは元気よく歩いていく。

その姿を見ながら

 

「キリト。現実に帰ったら、妹さんとちゃんと話してみるといいよ。きっと判りあえる筈だから」

 

ユウキは微笑んでキリトに言う。

 

「あぁ……そうするよ」

 

キリトも笑顔でそう答えた。

更に道を進み何回か戦闘をこなして思い出の丘の頂上に辿り着いた。

視線の先には台座のような岩が浮いている。

 

「あ、あれですか?!」

 

「そうだよ」

 

それを聞いたシリカは走る速度を速めて台座の前に立つ。

するとそこに一輪の花が咲いて出た。

シリカがその花をそっと掴むと『プネウマの花』とアイテム名が表示された。

 

「これでピナが生き返るんですね?」

 

「ああ」

 

「よかったね、シリカ」

 

花を抱きしめるようにしてシリカは喜びを噛みしめる。

そんな彼女に

 

「でも、ここだと強いモンスターも多い。生き返らせるのは街に戻ってからにしよう」

 

そう言って促す。

シリカは涙を拭って頷いた。

幸い帰り道はモンスターとエンカウントする事はなかった。

相棒が無事戻ってくる喜びでシリカは始終笑顔だ。

やがて街の近くの橋まで辿り着く。

そこでキリトはシリカを制して

 

「そこで隠れている奴、出てこいよ」

 

そう告げた。

シリカは疑問符を浮かべる。

そんな彼女をユウキは自分の後ろへと下げた。

すると橋の向こうにある木の陰から女性プレイヤーが現れる。

 

「ろ、ロザリアさん?!」

 

シリカが驚いたように声を上げた。

現れたのは昨夜、35層の街に居たロザリアなのだから。

対してキリトとユウキはさほど驚いてはいない。

私の隠蔽(ハイディング)を見破るなんて、中々高い索敵スキルね剣士さん達。侮ってたかしら?」

 

言いながらロザリアはシリカに視線を向けて

 

「その様子だと、首尾よく『プネウマの花』をゲット出来たみたいね? おめでとう」

 

そう微笑み

 

「じゃぁ、さっそくそれを渡してちょうだい?」

 

それを醜悪な笑みに変えて問いかける。

 

「な、何言ってるんですか!?」

 

「そうはいかないな、ロザリアさん。いや、犯罪者(オレンジギルド)『タイタンズハンド』のリーダーと言った方がいいかな?」

 

驚くシリカを余所に、キリトは言いながら数歩踏み出す。

ロザリアの眉が少し動き

 

「へぇ?」

 

笑みが消える。

 

「で、でも、ロザリアさんはグリーン……」

 

驚きが収まらないままのシリカはロザリアのカーソルを見る。

何度見てもその色はグリーンだ。

 

犯罪者(オレンジ)ギルドって言っても全員がそうじゃないんだよ。グリーンが獲物をみつくろって、待ち伏せのポイントまで誘導するんだ」

 

シリカの疑問にユウキが答える。

それを聞いたシリカは

 

「じゃあ……この二週間の間、一緒のパーティにいたのは……」

 

「そうよぉ。あのパーティの戦力を分析するのと同時に冒険でお金が貯まるのをまってたの」

 

言いながらロザリアは舌なめずりをする。

その様子にシリカは悪寒が走った。

 

「一番楽しみな獲物のあんたが抜けちゃってどうしようかって思ってたら、なんかレアアイテム取りに行くっていうじゃない? それにしても、そこまで判っててその子についてくるなんて、あんた達馬鹿なの?」

 

嘲るようにロザリアは言う。

だが、キリト達は首を振り

 

「いいや、そうじゃない」

 

「ボク達は貴女を探してたんだ」

 

そう言い切る。

ロザリアは疑問符を浮かべ

 

「どういう事かしら?」

 

尋ねた。

 

「貴女、10日前に『シルバーフラグス』っていうギルド襲ったね? メンバー4人が殺されて、リーダーだけが脱出した……」

 

ユウキが険しい表情で言う。

 

「ああ、あの貧乏な連中ね」

 

対してロザリアは興味なさそうに答えた。

 

「リーダーだった男はな。毎日最前線の転移門広場で、泣きながら仇撃ちをしてくれる奴を探してた。けど彼は、依頼を受けた俺達にあんた達を「殺してくれ」とは言わずに「牢獄に入れてくれ」って言ったんだ……あんたに彼の気持ちが分かるか?」

 

静かな怒りを込めてキリトはロザリアに問いかける。

それを聞いたロザリアは

 

「解んないわよ。マジになっちゃってバッカみたい」

 

そう言って吐き捨てた。

その言葉にキリト達は更に怒りを覚えた。

だが、ロザリアは気にするでもなく

 

「ここで人を殺しても、ホントにそいつが死ぬ証拠なんてないし。そんな事より、あんた達の心配した方がいいんじゃない?」

 

不敵な笑みを浮かべて指を鳴らした。

すると木の陰からぞろぞろとプレイヤーが現れる。

皆頭上のカーソルはオレンジだ。

その数は7人。

それを見たシリカは後ずさる。

 

「に、人数が多すぎます! 脱出しないと!!」

 

慌てるシリカに対し

 

「大丈夫、問題ないよ」

 

キリトは漆黒の剣を抜きながら集団に向かい歩いていく。

 

「そうそう、シリカはボクの後ろに隠れてて?」

 

ユウキも優しく言いながらシリカを庇うように前に出る。

 

「でも、ユウキさん! キリトさんも!!」

 

そう叫ぶシリカ。

その時、彼女が叫んだ名を聞いたプレイヤーの一人が

 

「ユウキ……キリト……?」

 

二人を見比べ後ずさった。

 

「黒尽くめ装備に盾無しの片手剣……それに、同じ盾無し片手剣に紫基調の装備をした女プレイヤー……まさか、『黒の剣士』と『絶剣』!!?」

 

慌てた表情でプレイヤーは

 

「や、やばいよロザリアさん! こいつらコンビで最前線に挑んでるビーターとビギナーの……()()()だ!」

 

そう叫んだ。

それを聞いたシリカは

 

「攻略組……キリトさん達が……!」

 

二人を交互に見て驚いたように呟く。

それもそうだ。

攻略組、それも二つ名付きが二人も目の前に居るのだから。

デスゲームをしていてもやはりゲーマーの性というものはなくならない。

ただでさえ実力が抜きんでている攻略組の中でも、更に一目置かれている者はいつしか二つ名が付けられていた。

それが『黒の剣士』キリトと『絶剣』ユウキである。

頭一つ以上の実力差のある彼らにプレイヤー達は動揺を隠せない。

しかし

 

「攻略組がこんなトコに居る訳ないじゃない!! ただの仮装野郎どもに決まってる! さっさと始末して身ぐるみ剥がしな!!!」

 

ロザリアがそう叫んだ。

 

「そ、そうだ! 攻略組なら、すっげぇレアアイテムを持ってるかもしれねぇ!!」

 

一人がそう叫んだのを皮切りに

 

「死ねよやぁ!!」

 

7人はキリトに向かい駆け出す。

それぞれの武器がライトエフェクトに包まれ、連続してキリトに浴びせられた。

 

「やめて! キリトさんが! キリトさんが死んじゃう!」

 

シリカがそう叫ぶが攻撃は止まらない。

 

「ユウキさん! このままじゃキリトさんが!!」

 

そう訴えるシリカ。

しかし、ユウキは落ち着いた様子で

 

「大丈夫だよシリカ。キリトのHPをよく見て?」

 

そう言って指差した。

言われるままに見るとシリカは眼を見開く。

確かにダメージは与えられている。

しかし、それは瞬く間に回復し最大の状態に戻っていく。

 

「ど、どういうことですか……?」

 

目の前で起こっている事に、シリカはただただ疑問符が浮かんだ。

やがて

 

「何やってんだアンタ達!! さっさと殺しな!!」

 

苛立ったロザリアの声が響く。

プレイヤー達は攻撃を止めて異常なものを見るようにキリトを見ていた。

 

「10秒あたり400ってとこか……それがあんたら7人が俺に与えるダメージの総量だ」

 

周りを見回しキリトは告げる。

 

「俺のLVは78、HPは14500。さらに、『バトルヒーリング』スキルによる自動回復が10秒で600ポイントある。何時間やっても俺は倒せないよ」

 

それを聞いたプレイヤーの一人が信じられないものを見るような目で

 

「無茶苦茶だ……アリかよ、そんなの!」

 

そう言う。

そのプレイヤーにキリトは視線を移し

 

「アリなんだよ! たかが数字が増えるだけで無茶な差が付く。それがLV制MMOの理不尽さなんだ!」

 

実力差を思い知らせるように言った。

忌々しげにロザリアは舌打ちする。

そんな彼女らを余所にキリトは

 

「これは俺達の依頼人が全財産をはたいて買った回廊結晶だ! 監獄エリアが出口に設定してある、これで全員牢屋に跳んでもらう!!! 逃げられると思うなよ? コリドーオープン!」

 

プレイヤー達を見回した後、回廊結晶を展開した。

 

「ちくしょう……」

 

諦めたように呟き一人、また一人とコリドーへと姿を消していくプレイヤー。

その光景をロザリアはおもしろくなさそうに見ていた。

 

「あんたはどうする?」

 

キリトは視線を向けて問いかけた。

 

「はっ! それで勝ったつもりかい? 言っとくけど私はグリーンだ。手を出

せばあんた達がオレン────」

 

そこまで言いかけた刹那。

一陣の風が吹き、鋭い剣先が向けられていた。

視線の先にいたのはユウキ。

 

「あんまり甘く見ないで? ボク達はコンビだから、一日二日オレンジになっても問題はないよ」

 

発せられる声は普段の彼女からは考えられないくらい冷めている。

 

「ぁ……」

 

突然の出来事に声が出ないロザリア。

それを畳み掛けるように

 

「それと……ボクは君みたいな人達が嫌いなんだ。大事なものを理不尽に奪って笑うような君達が!」

 

放たれる怒気。

それを感じたロザリアは力なく槍を落とした。

ユウキはロザリアの襟首を掴んでコリドーまで歩いていく。

そのまま彼女をコリドーまで放り込んだ。

それを最後にコリドーは閉じていく。

ユウキは腰に手を当てて一息ついた。

キリトは彼女に歩みより

 

「ユウキ、脅しすぎ」

 

そう言って苦笑いした。

ユウキは頬を膨らませ

 

「だって、ムカついたんだもん!」

 

そう言ってキリトを見る。

彼からは乾いた笑いが零れた。

そんなやりとりをして後、座り込んでいるシリカのもとに二人は歩み寄る。

 

「ごめんな、シリカ。君を囮にするような事になっちゃって……」

 

「ボク達が攻略組だって言うと怖がらせちゃうと思ってさ。ごめんね?」

 

二人は微笑んでそう言った。

シリカは首を振って

 

「大丈夫です。お二人はいい人達ですから」

 

そう答えた。

 

「じゃぁ、街まで送るよ」

 

ユウキがそう言うと

 

「あ、足が動かなくて……」

 

シリカは顔を赤くしてそう告げた。

二人は笑って手を差し出す。

シリカはそれを取って立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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35層 ミーシェ

 

宿に戻った三人は部屋を取り、ベッドに座っていた。

少しの沈黙。

それを破る様に

 

「行っちゃうんですか?」

 

シリカが問いかける。

 

「ああ、5日も前線を離れちゃったからな」

 

「すぐに戻らないとね」

 

それを聞いたシリカは悲しそうに俯いて

 

「そう……ですよね……凄いですよね、攻略組なんて。私なんかじゃとても……」

 

そこまで言った時

 

「レベルなんてただの数字さ。この世界での強さは単なる幻想にすぎないよ。そんなものより、もっと大事な事がある」

 

「次は現実世界で会おうね! そしたらきっと、また友達になれるよ」

 

優しく微笑んで二人は言う。

それを聞いたシリカは笑顔になり頷いた。

 

「さぁ、ピナを生き返らせてあげよう?」

 

ユウキが促す。

シリカは頷いてメニューを開く。

オブジェクト化した羽根にプネウマの花から零れる滴をかける。

すると羽根は大きく光り輝いた。

 

(ピナ。いっぱい、いっぱいお話ししてあげるからね。今日の凄い冒険の話と……たった一日だけのお兄ちゃんとお姉ちゃんの話を)

 

輝く光を見ながらシリカは心の中でそう語りかけたのだった。

 

 

 

 




吊るされた男性プレイヤー。

胸に刺さるのは刺々しい短槍。

悲痛な声とともに、男は四散し消えてゆく。

次回「圏内事件」

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