76層アークソフィア エギルの店
朝の新聞の見出しは、98層攻略!!アインクラッド残り2層のみ、帰れる日も目の前に!!と書かれていたが、今の攻略組の状態ではしばらくは機能しない。何人かはフィールド攻略により出ているが、それでも攻略組は相当なダメージを受けている。クラインでさえも、「今は馬鹿やる気分にもなんねぇよ」と言い、酒を無意識に飲み込んでいる。
その中で現状を気にせず策を考えていたのは、おれとユウキとユイの3人のみだ。
「ストレアは、今の状態はどうかわかるか?ユイ」
「ストレアさんは、恐らく私の何十倍のバグを溜め込みました。それが原因で記憶喪失により私と同じように、ここアークソフィアを彷徨い、モニターをしていた中で妙な精神パラメーターを持ち合わせたパパとママに引かれパパと出会ったのだと思います。そして、ゴーストアバターに取り込まれ第100層、つまり、紅玉宮の中で記憶を取り戻して、精神に異常をきたし、喋ることも動くことも出来ずに苦しんでいると思います」
「じゃあ、ストレアはどうにかならないの?ユイちゃん」
「ゴーストアバターを倒せば、離れられるかも知れませんが、カーディナルシステムに異常とみなされデータを削除されると思います。それでも長くて5分です。私はパパのナーヴギアにデータを移行されている為、アインクラッドから消去されても何度でも復活できます、なので私が全力でカーディナルシステムを抑えます」
「コンソールが無くても出来るのか?」
「時間はかかりますが、MHCPシリーズには特別なアカウントによりシステムにある程度加入出来ます」
しばし二人は考え込んだが、ユウキはどうにも思い付かなかったのか、息を思い切り、ブハァと吐き出し、ベッドの上に横になり手足を広げた。
そうするとキリトが何かを思い付いたのか、ハッと頭を上げる。
「ユウキ、ナーヴギアを使い始めたのはいつからなんだ?」
横のまま、ユウキは目を閉じ考え始め、5秒後に上半身だけ起こした。
「ソードアートオンラインが発売されてからハードを揃えたからね、でもそれがどうしたの?」
「ユイ、データをナーヴギアに移動させることはユイのアカウントなら可能か?」
「試した事は一度もありませんが、恐らく可能です」
「行ける、行けるかも知れないぞ!!」
「え?どういうこと?」
現状を理解出来ていないユウキとユイは、首をかしげてお互いを見つめ合っていた。説明するべく、攻略組を一度、エギルの店に全員召集させ、ストレアに関する事を話し、そしてそのストレアをどうするかを話し始めた。
「皆、第100層にいるゴーストアバターを倒して、ストレアを助ける方法を見つけた」
まず最初の反応は呆気に取られた様子でいた。すぐに我に帰ると攻略組全員が周りのプレイヤーに質問を始めた。
「まず、ゴーストアバターを倒す。そして、ゴーストアバターからストレアが切り離されたのと同時に、ここにいる。ユイを、MHCP-01がストレアを削除しようとするカーディナルシステムを抑え、尚且つストレアのデータをここに居るユウキのナーヴギアのコアメモリに保存させることでストレアを助けられる」
「で、でもよう、仮にんなこと出来たとしても、そんなのコアメモリに入りきんのか?いくら容量の多いナーヴギアだからって、他のVRMMOのゲームをやってたりしてたらコアメモリがパンクしたりする可能性があるぜ」
攻略組全員の質問を代表で返したのはクラインだったが、確かにクラインの言う通り、下手をすればナーヴギアのコアメモリが破損し、どうなるのかはわからないが、
「その心配はない。ユウキはこのソードアートオンラインが《初めてのVRゲーム》だからだ。確かにクラインの言う通りにコアメモリに人工知能を容れようとすればそれだけでも相当な容量が必要だが、このゲーム自体が初めてならコアメモリには相当な余裕があって、人工知能を入れられる分は足りている」
確かにそうだ、等の賛同の声が上がり、エギルが大声で「なら98層の攻略祝いを今から始めようぜ!!」と言ったのが波になり次々と酒や料理を取り出し、家を吹き飛ばす勢いで騒ぎ続けた。
攻略祝いが終了してから一時間たってからユウキが部屋に戻り、寝ているユイを見つめベッドに座った。
「すごいねぇキリトは、ボクなんて今でも考えても理解できないよ」
「別にすごくなんか無いよ。おれみたいなリアルじゃ廃人ネットゲーマーに出来るのはこれくらいだけだ。こっちの世界じゃ英雄なんて言われてるけど、英雄なんて攻略組皆も英雄だよ。おれだけでこのゲームをクリア出来るなんて最初から思っていなかったし。こんな風に居られるのも、全部一緒に居てくれたユウキのお陰さ」
「そ、そんな事言われると照れるなぁ~♪」
頭を掻きながら顔を紅くして照れるユウキを見てから上を見上げた。
「この世界じゃなきゃ、おれなんてただの子供だからなぁ、ネットゲーマー何かが現実で今と同じような事なんて到底出来ないんだよ」
「でもね、現実で何も出来ないのはボクも一緒だよ。ボクなんか、勉強や運動は結構出来る方だけど、人見知りでいっつも姉ちゃんと一緒にいたなぁ」
おれのベッドに移動して、前からベッドに倒れると、足をバタバタ動かして、話を続けた。
「《来年から中学生》だから欲しいもの買ってやる!!ってパパに言われてこのゲームやりたいなんていった結果これだけど、これはこれで良かったって今は思うんだよね。恋人が出来て、本当に頼れる仲間も出来たし、ボクにとっては最高の思い出だよ」
「そうだなって、え?来年から中学生?」
ユウキがしれっと言った言葉が頭の中で何度も響いていた。下を向き、聞き間違いでは無いのか確かめる。
「ユウキって、今14歳か!?」
「え?そうだけど、キリトと同い年じゃないの?」
「え、嫌、おれ14歳じゃなくて今16歳なんだけど」
「え?えええええ!?キリト年上!?てっきり同い年かと!?」
「それはこっちも同じ事考えてたよ!?小学生にしちゃ身長でかいから中学生だと思ってたよ!?」
お互い指を差し合い口を開けながらシーンとしていたが、ップと吹き出すと、お互い笑い合っていた。
「そう言や、昔なんか母さんに連れられて、スグと一緒に女の子達の所に遊びに行ったりしてたな、バーベキューに呼んで貰ったり、一緒に鬼ごっこやかくれんぼした事があったような?」
「へぇ、キリトもそんなことあったんだねぇ、ボクも人の事言えないけどね、よく少し年上のお兄さんや、お姉ちゃんが遊びに来たりしてたねぇ」
「そうそう、おれも同じ事があったあった、よく遊びに行っては、一緒に遊びまくったけど、相手が女の子達だから急に会いに行きづらくなってきたんだよな。名字は小さい頃だったから読めなかったけど、確かあだ名で《藍ちゃん》と《木綿ちゃん》って呼んでたな」
「え?」
何故か藍ちゃんと木綿ちゃんと聞くとユウキが声をいつもより高くして、声を出した。勿論そんな事を見逃すわけでも無く、
「ど、どうしたんだ?」
「あ、あぁ、何でも無いよ。ボクもそんな風に呼ばれたなぁ、って思って、ボクも小さかったから名字は読めなかったけど、確か《和くん》って呼んだ子がいたなぁ、って思って」
「え?和くん?」
ユウキが当たり前の様に言った言葉を聞いて、二度目の驚愕を味わった。
「ええええええええ!?」
「うわ!?ビックリしたぁ」
「おれ、小さい頃、木綿ちゃんに和くんって呼ばれてた」
「え?」
「そう言えば、なんかよくスグや母さんが、ちょっと遠い所に、双子の髪が紺色の、《元気な女の子》とおしとやかな女の子が居るって聞いたような」
「あ、ボクもママが知り合いになった、奥さんの子供に、《ネットゲーマーの男の子》と《剣道を毎日欠かさずしてる女の子》が居るって聞いた事ある。え?まさかね」
「いやぁ、まさかなぁ、」
「そんなこと有り得ないよねぇ」
「一応聞くけどユウキ、お前の住所って?」
「えっと、」
住所を聞き終わると、頭の中でおれの住所と見比べて見ると、
「き、近所だったのかよ」
「じゃあ、え?もしかしてよく見る大きい道場がある家ってもしかして、」
「おれの家。」
今度は本当に時間が止まったと感じるほど、長く黙っていたが、最初に沈黙を破ったのは、
「は、ははは」
「ップ、ははは」
二人の笑い声だった。
「「あはははははははは」」
お互い、おかしなぐらい笑い声を上げ、ユイが起きそうになくらい笑い合って、涙を片指で拭きながら声を出した。
「まさか、ユウキが木綿ちゃんとは思わなかったなぁ、小さい頃よりものすごく可愛くなってるし」
「ボクも、和くんがここまで綺麗な女顔になってるなんて思わなかったよ♪」
「まさか、こんな所で、しかもお互い二年間気づかないとはなぁ」
「そうだよねぇ、ボクはあの時のたった一人ボクと遊んでくれた、男の子の事、少し好きになってたけど、急に来なくなるからその内に忘れちゃったんだなぁ」
「じゃあ一応、VRMMOの世界の中だけど、久し振り、木綿ちゃん」
「久し振り、和くん♪」
二人は笑い合いながらも、昔の思出話を続けて、眠くなると一緒の布団に入って眠った。
二人は昔一緒に遊んでいた、仲の良かった友達にしてみましたがいかがですか?僕的にはこんな風にしたら良いかなと思って作りました。
※今回で幼馴染みの二人にしてしまったので、1話を少し変えています。