76層アークソフィア
「キリト君、ユウキ。」
「なんだ?」
「何?」
「今日、攻略組に入れて欲しい、て言ってるプレイヤーがいるんだけど。」
「おぉ、良いじゃないか。攻略組の犠牲も75層だけだったし、増えるなら良いだろ。」
「それで、どれくらいの腕前か見たくて、ユウキとキリト君なら、そこら辺は私より大分上だし、お願い!!」
「良いよ♪」
「で、今日の何時なんだ?」
「後30分かな。」
「じゃあ、行くか!!」
最前線85層
「どんなやつなんだ?」
「え~と?金髪で眼鏡をかけてた気がする。」
「この世界で眼鏡の意味ないのに。」
「あ!いた。」
「やぁやぁ、初めまして。《アルベリヒ》と申します。」
「初めまして、攻略組に希望された方ですよね。」
「はい。」
「では、少し試験的な物をします。試験と言っても、今から私とデュエルをして貰います。」
それを聞くと、アルベリヒは少し嫌そうな顔をし、おれの方を見てきた。
「では、黒の剣士様とやらせて貰えないでしょうか?」
「はい?」
「私はいくら試験でも、女性の人相手に勝負するのはちょっと。」
「その気持ちはわかる。じゃあ、そこで構えてくれ。」
構えてくれ。と頼んだのは、どれくらい戦いに馴れているか見たい為だ、装備を見ると、どれもレア装備の物ばかりだ。だが、アルベリヒの構えは、
明らかに初心者だ、フェンシングの構えをしているだけだった。この世界では、教科書通りの構え等は意味がない。
「じゃあ、初撃決着モードで、」
「アスナ、半減決着モードにしてくれ。」
「え?あ、うん。」
「確かに、すぐに終わっては面白く無いですからね。」
先程とは違い完全に油断しているのは確かだった。カウントが0になった瞬間、アルベリヒは突撃してきた。
(早い!!パワーもあるな。おれ達よりもレベルは上だ。だが、なんだこの攻撃は?こんなもの傘を振り回して遊ぶ子供のように単純だ。しかもソードスキルを使うような気配は全くない。使い方を知らないのか?)
「どうです?ぼくの強さは。あの黒の剣士様も全くと言って良い程手も足もでない!!」
アスナ達も違和感に気付いたのか、観察をしている。
「この程度の手捌きで良く攻略組に入ろうとしたな。お前なんか攻略組の一番弱いヤツでも楽勝に倒せるぜ。」
「言ったな!!なら本当の戦いを見せてやる!!」
そう言うとアルベリヒは地面の砂を蹴って目に砂を入れ、視覚を奪った。
(目眩ましか?こんな幼稚な物が聞くと思うのか?)
キリトは目を閉じながら意識を集中した。システム外スキルの《超感覚》(ハイパーセンス)を使った。
このシステム外スキルは使うのも困難とさえ言われている。ハイパーセンスは言わば第六感のような物で、音、空気の流れを果ては殺気さえも感じ取れるスキルだ。だが、これを意識して使おうとしても、集中力が無いと失敗する。しかし、ユウキとキリトはこれを意識して使えるプレイヤーはいる。
空気の流れを読んで見ると後ろから空気を切り裂く音がする。
「そこだ!!」
一気に剣を振ると、そこにあったのはアルベリヒの細剣だった。
「ち!偶然当たったのか!!」
「おい、本当の戦いを見せてくれるんだろ?じゃあ、お前の本気はその程度の物なんだな。この三流剣士。」
「なめやがって!!これがぼくの全力だ!!」
一気に後ろに飛んだ為、フラッシングペネトレイターを警戒したが、ただの突きだった。それをかわすと、細剣を前に構えた状態のアルベリヒは勢いを止めた。
「遅い!!」
バーチカルで細剣の脆弱部位に当て、アームブラストにより細剣は粉々に砕けた。
「お前の敗けだ。」
「ぼくが敗けるなんて、一体どうなっているんだ!!このゲーム、完全にクソゲーじゃないか!!」
遂には自分の敗けた理由をゲームのせいだと言い始めた。
「アルベリヒさん、あなたの攻略組の入団は延期にします。もっと剣技を磨いてから来てください。」
アルベリヒは何も言わずに立つと、転移門に行くのか歩き始めた。途中にアスナの横を通るとわざとおれ達に聞こえるように言った。
「では、また今度、《結城明日奈》さん。」
「え!?あなたまさか、《須郷》さん。」
アスナはアルベリヒから遠ざかる様にユウキの後ろに隠れた。
「アスナ、まさか、今の結城明日奈って?」
「ええ、私のリアルの名前よ。」
「簡単に言っちゃ駄目だろ。」
「良いのよ、ユウキとキリト君なら名前を教えても言わない信頼出来るし。」
「須郷って、確かレクトの開発者だったよな。なんであいつがアスナの名前を知ってるんだ?」
「私、実はそのレクトの社長の娘なの。」
「「ええええええ!!」」
「私、このゲームをやるのも、兄さんのを借りたの、母さんは、程々にしときなさいよって、でもまさか二年近く使っちゃってるからね。」
「なら、来年になるまで4ヶ月だから、その内にクリアしようぜ。」
「にしても、アルベリヒってやつおかしいよね。あんな腕前で最前線に来れる訳ないのに。」
「アルゴが情報を持ってるかもな。エギルの店に呼ぼう。」
「じゃあ、帰ろっか。」
3人は転移門に向かい、エギルの店でアルゴを呼ぶことにした。