「ここから先がコンソールの近くにいけるよ。」
指示に従うと、目の前にあったのは転移装置が置かれている。
「なぁフィリア、その虚ろを狩る者だけど、もしかしてあいつなんじゃないか?最初におれとフィリアが倒したやつじゃないか?」
「あぁ、あいつね。でもなんで?」
「虚ろを狩る者は恐らく和訳だ。英語になおすと、ホロウリーパーになるんだ。おれたちは75層でスカルリーパーって言う、ボスと戦ったんだ。それで最初にあいつを見た時におれはスカルリーパーって思ったんだが、よく見ると違う点がいくつもあった。」
「なるほど。じゃあ、この先にいるホロウリーパーは最初に戦った時のやつより強いよ。フィールドにいるモンスターはあくまでテスト用のモンスターだから。」
「じゃ、最初はボスの動きを見るぞ。」
「OK」
「装備の点検はしたか?」
「「大丈夫。」」
「カウントダウンで入るぞ。5、4、3、2、1、」
息を大きく吸ってから吐くと同時に、
「GO!!」
転移装置の上に乗ると一瞬で別の場所に転移された。
75層のボス部屋に限りなく近い形のステージだった。
「上だ!!急いで下がれ!!」
75層でアスナが上の天井に張り付いていることを見破ってくれたお陰で、攻略組の殆どを不意打ちによる攻撃で死なずにすんだ。あそこでアスナが気付いていなければ攻略組が全滅した可能性があった。
予想通りホロウリーパーは天井に張り付いていた。
「あれ?HPゲージが2本?」
「え?」
充分な距離をとってから振り向くとHPゲージが表示された。
2本、たったの2本だった。試しに投擲スキルでピックを頭にめがけ打ち込んでみると、ゲージが僅かに減った。
キリトは投擲スキルを持っているものの、ろくに使わないために威力事態は大したことはない。だが、鍛えられた敏捷度による補正によって威力をブーストしている。ユウキも同様で全く使うことはない。以前のラグー・ラビットの時は敏捷度に傾いているユウキに任せたのだ。
「こいつ、ひょっとして大したことないんじゃ。」
「うん。」
「終わらせようか。」
さっきまでの集中していた自分達が恥ずかしく思い、恥ずかしさをまぎらわすために一気に沈めた。
「さっきの気合を入れた意味はなんだったんだ。」
「もう忘れよう。」
「二度と思い出さないようにね。」
「さっさとコンソールのデータを消して帰るか。」
「「了解」」
いまいち気が入らない状態で話を続け、コンソール近くまで歩いた。
「じゃあ、消すか。」
溜め息混じりにコンソールを弄ると。ビー、ビー、ビーと警戒音がなった。
「キリト。」
「おれはなにもやってないぞ!!」
振り向くとフィリアとユウキは倒れていた。視線を合わせるとHPゲージとアイコンが出てきた。麻痺のアイコンだった。
「なんで!?」
「は!!こんな所で終わるわけねぇだろ!!おれが無策でただ殺られたと思うか!!」
声が聞こえた方向を見ると、そこにあったのは、コンソールから聞こえている。音声文章を残していたのだ。
「PoH!!こんな所まで罠を!!」
「キリト、後ろ!?」
「後ろ!?」
急いで横に避けると、白い剣がおれの横を通りすぎた。この白い剣。キリトは知っていた、名前も知っている。何故ならこの剣は、
「ダークリパルサー、だと。」
ダークリパルサー、文字化けしていても、今もキリトが背中に納めている、エリュシーデータと共に使っている剣、この剣はリズに頼み作って貰った、ワンメイク物の剣、これを作るのは最早不可能と言っても良い、だが、その剣があるということは、
「最後の罠はまさか!?」
後ろには二本の黒い剣と白い剣を持ち、黒い服、そして二本の剣を持っていても、極自然な立ち姿。
「おれだと。」
間違える事はない、《黒の剣士キリト》
「PoHのやつ、コンソールに触ったやつのホロウが出るように仕組んだな!!」
無表情の顔の自分のことを見ていてもなにも始まらない。
「はぁ!!」
気合を乗せた一撃を簡単に避けられた。そうすると向こうからの攻撃をこちらも避けることができた。
(いくらデータだからって、相手はおれだ、お互いの攻撃のパターンを知り尽くしている!!)
体にそう言い聞かせ、攻撃の手数を上げていく。だが、ホロウも同じように手数を増やしていく。
(待てよ。おれと思考力が同じなら。)
キリトは攻撃をやめ、防御に専念した。いくら手数が多くとも、速くとも、相手は自分。動きは知り尽くしてる。防御の時でも、僅かな隙を見つけ、鋭い一撃をあびせる。
「なんでキリトは攻撃をしないの?」
「解った。キリトがやろうとしていること。」
「え?」
ホロウからの攻撃を受けていると、顔は無表情だが、剣の動きに動揺が現れるかのように、雑になってきた。
(ここだ!!)
ホロウは剣を腰の位置まで下げ、一気に向かってきた。二刀流最上位剣技ジ・イクリプスの初動だ。だが、それはおれが誘導したものだ。ヒースクリフとの勝負の時、ヤツはおれにソードスキルを使わせるように誘導された。おれはまんまとその誘導に乗ってしまい。危うく負ける所だった。思考回路がおれと同じホロウなら、この手が通じる予感があった。
おれはジ・イクリプスの初動を見た瞬間、射程圏外にバックステップした。見事に届かず。27連撃全てを当てられず硬直、そこですかさずおれもジ・イクリプスにより攻撃。反撃をされないように両手を切り飛ばした。
自分を切る程、不快な物はない。だが、その思考をも止め、攻撃を続けた。
「おれの勝ちだ!!」
HPゲージを0にする瞬間、ホロウの顔を見ると、今まで無表情だった顔が笑っていた。そして、こう言った。
「次に会うときは、こうもいかないからな。」
「何!?」
そこで勝負は終わった。キリトは最後のホロウの台詞が気になりつつも、コンソールを操作し、データを削除。ホロウデータの紋章を削除。そして、ホロウデータがコンソールに接近出来ないように設定、フィリアと先程のホロウとの勝負でオレンジになったカーソルをグリーンに戻し、最後に二人の麻痺を解除した。
目の前にフィリアのカーソルが表示されるとグリーンだった。そしてシステム窓が開き、先程の自分からドロップしたアイテムが自動的にアイテムストレージに格納された。ヘルプを開いて見ると、文字化けしたアイテムをなおせるアイテムだった。制限は同じ層にいるプレイヤーのしか治せないらしい。
まだ、76層は攻略されていないため戻ったら使う事を決めた。
「で、どうする?」
「帰ろうか♪」
「よし、じゃあ帰るぞ。行くぞユウキ、フィリア。」
「でも私は。」
「もうカーソルはグリーンだよ。圏内に戻っても何もされない。それにフィリアはプレイヤーだ。おれはコンソール近くにホロウデータが接近すると遠くまで強制転移になる設定をした。でも、フィリアは飛ばされていない。つまり君は、現実に体がある本物の人間だよ。」
「だから、一緒に帰ろうよ。フィリア♪」
「…ありがとう。」
「じゃあ、行くぞ。誰が一番先に管理区につくか競争だ!!」
「あ!!待って、ぼくまだマップ覚えてない。」
「スタート!!」
「待てえええ!!」
「二人共、本当にありがとう。」
その場から動かず泣きながらお礼を言う、フィリアに気づかずキリトとユウキは。
「「フィリアー!!置いてくぞ「よ」ー!!」」
「今行くー!!」
涙を拭ってキリト達を追いかけた。
76層アークソフィア
「ついたな。」
キリトはついた瞬間、アイテムストレージからさっきのアイテムをオブジェクト化し、叫んだ。
「修正!!」
アイテムは粉々に砕け散った。
「何今の。」
「後で解るよ。」
「私、宿ないんだけど、どうしよう?」
「宿なら、おれ達が泊まってる宿があるし、今の時間じゃ、皆飯食う時間だから、紹介するには良い機会だな。」
「う~、緊張する!!」
「大丈夫だって、悪いヤツは居ないよ。」
「あ、でも、クラインには気を付けた方がいいよ。」
「なんで?」
「会ったら解る。」
「こっちだ。」
エギルの店
「皆ただいまー!!」
「早速だけど、この子がフィリアだ。皆仲良くしてやってくれよ。」
「よ、よろしく。」
「緊張しなくても良いわよ。ここは基本無礼講なんだから!!」
「酒飲みながら言うなリズ、お前の場合は本当におっさんに見える。」
「なんだってー!!」
「おい!!樽投げるな!!」
「おいおい、空の樽だからって投げるな!!」
エギルが止めに入っても、リズが尚も樽を投げている。
「いつもこんな感じだよ♪」
呆気に取られながらも、一人一人に近付いて、フィリアは自己紹介をしていった。
申し訳無いのですが、ホロウフラグメントを一度もやったことないので、階層をいくつか飛ばす形になります。なので、70層から次の話が80層に飛んでいると言う可能性があります。
ぼくの身勝手な理由で方針を変えて申し訳ありません。
もちろん、メインイベントとギャグイベントは入れていきます。