黒と紫のソードアートオンライン   作:壺井 遼太郎

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見慣れないエリアと謎の少女

76層のダンジョン

 

「本当に難易度低いな。」

 

珍しくユウキと別行動をし、ダンジョンに一人来ていたキリトだったが、いくら75層のスカルリーパーが強かった為、それで次のモンスターが弱く感じるのは当然と言ったら当然なのだが、それでも弱すぎる。

 

「もうちょっと奥まで進んでみるか。」

 

キリトは奥に進んでいる内に妙なメッセージが来た。

 

《これより10秒間、あなたはダメージを受けません》

 

「なんだこれ?」

 

急なメッセージに目を奪われ、メッセージを送ろうとした瞬間、目の前が青い光に覆われた。

 

「なんだ?ここ?」

 

青い光が収まると、目の前には洞窟内ではなく、外だったが、明らかに森であった。

 

(メッセージは、使えるな。)

 

ガサガサと森の奥の方でこちらに向かってくる音が聞こえた。

 

「ぐっ!!」

 

「くぅ!!うああ!!」

 

急に現れ、おれとぶつかり、お互い転がった。すると、いきなり切りかかってきた。

 

「あんた?誰?」

 

「それはこっちの台詞だ!!」

 

話しかけられたので咄嗟に答えたが、この時に、相手がプレイヤーだと解った。しかもこの声は女性の物だった。

 

視線を合わせると、カラーカーソルと共にHPバーが現れた。

 

(オレンジカーソル!?犯罪者プレイヤーか!!)

 

キリトがそう考えた途端、なにか大きな音をたて、すぐ隣に落下し、砂埃がたった。

 

砂埃が収まると目に見えた物は、白い骨、人間ではなくムカデのもの、

 

「スカルリーパーだと!?」

 

「ち!!」

 

先程まで、剣と剣をぶつけていた彼女だったが、スカルリーパーを見るなり、舌打ちをし、離れた。だが、スカルリーパーは彼女を狙っていた。おれは反射的に体が動き、鎌を二刀流の剣をクロスさせ止めた。

 

(おれ一人で止められると言うことは、75層より弱く設定されている!!)

 

「なぁ、君!!ここはこんなやつが出るのか!?」

 

「解らない。」

 

「なら、こいつを倒すのを手伝ってくれないか?君だって、死にたくないだろう?」

 

「なんで、私を助けるの?後ろからあんたを斬るかも知れないわよ。」

 

「いまはどうだっていい!!正直、おれもまだ死にたくない。」

 

「解った。」

 

「なら、行くぞ!!」

 

スカルリーパーを共に戦うことを決め、同時に飛び掛かった。

 

数分の戦闘の後にスカルリーパーは四散した。

 

「はぁはぁ、助かったよ。え~と?」

 

「《フィリア》」

 

「サンキュー、フィリア。」

 

先程の戦闘を見る限り、攻略組とほぼ同等の力を持っていることは確かだった。

 

「君はいつからこのエリアに?」

 

「つい一週間程前に。」

 

「そうか。」

 

ホロウ・エリア、テスト終了です。

 

「なんだ?今のアナウンス?」

 

「ちょっとその右手見して!!」

 

「わ!!」

 

フィリアにいきなり腕を引っ張られ、言われるがままに見せると右手には、なにか光っている紋章があった。

 

「あいつと同じ。」

 

「え?」

 

「なんでもない。」

 

「そうか。そういえば、ここって転移結晶は、使えるじゃないか。持ってないならおれのを分けようか?」

 

「いらない、それにさっき見たでしょ。私のカーソル。」

 

「あぁ、オレンジだな。」

 

「なら、解るでしょ。オレンジカーソルのプレイヤーが圏内に入るとどうなるか。」

 

「でも、君はなんでオレンジに?さっきまで一緒に戦ったから解る。君は犯罪をするような人じゃない。」

 

「!?」

 

「じゃあ、転移門が有るところに連れていってくれないか?」

 

「解った。」

 

キリトに道を先導させ、後ろからフィリアはキリトに追いかける形で歩いていった。

 

「ふふ♪」

 

「ん?どうした?」

 

「なんでもない。それより、転移門のある安置はすぐそこだよ。」

 

「解った。後フィリア、フレンドになってくれないか?」

 

「いいよ、そのくらいなら。」

 

フィリアは素っ気なく答え、キリトとフレンドになった。

 

「じゃあなフィリア、次に来るときは仲間を連れてくるよ。」

 

キリトは振り向き、転移門の前に立つと、転移コマンドを探し、声に出した。

 

「あー、あそこの名前ってこうだったのか。転移!!《アークソフィア》!!」

 

一瞬の光で目の前が隠され、次に目に入ったのは主街区だった。

 

「あー!!やっと見つけた!!」

 

「どうしたんだよ、スグ。」

 

「どうしたって、探したんだよ!!お兄ちゃんがダンジョンに出てったきり帰ってこなかったんだから!!」

 

「そんなの《生命の婢》を見に行けば、て第一層に戻れないんだった。」

 

「キーリートー!!」

 

リズに後ろから叩かれ、その場で頭を抑えかがんだ。

 

「どこ行ってたのキリト!!こっちは心配したんだよ!!」

 

「悪い、ちょっと《ホロウ・エリア》に居たんだ。」

 

「ホロウ・エリア?」

 

「説明するから、エギルの店に行くぞ。」

 

エギルの店に行くと、キリトを探していたメンバーに、叩かれるか、怒られるか、はたまた両方があり、落ち着いた所で簡潔に話した。

 

「じゃあ、おれちょっと、確認してくるわ。確か《ホロウ・エリア管理区》だったよな?」

 

「あぁ。」

 

クラインは席を外したが、ユウキ以外の女性陣からは引かれるような視線を、ユウキは落ち込んでいる様子だった。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「キリト、そのフィリアって子、女の子でしょ。」

 

「そ、そうだけど、どうしたんだ?サチ。」

 

「なんでキリトは、女の子ばっかに会うんだろ。ただでさえ、女性プレイヤーが少ないMMOゲームなのに、なんで可愛い子とばっかり会ってるんだろ?」

 

「ユウキまで。」

 

「おい、キリト!!ホロウ・エリア管理区なんてねぇじゃねぇか!!」

 

「え?」

 

「ちょっと来い!!」

 

「おわ!!」

 

クラインに首根っこを掴まれ、転移門前に移動した。

 

「転移。ホロウ・エリア管理区。」

 

なにも起こらなかった。

 

「なぁ、なんもねぇだろ。」

 

「そんなはずは、ちょっと変われ。転移。ホロウ・エリア管理区。」

 

キリトは目の前に青い光が広がった。

 

「なんだ行けるじゃないか。フィリアは…探索にでも行ってるのかな?」

 

周りを見回すと、フィリアの姿はなく、戻ることにした。

 

「な、ちゃんと行けただろ。」

 

「お、おう。」

 

数分後、エギルの店に帰り、情報を伝えた。

 

「解ったことは、キリトしかホロウ・エリアに行けないこと、キリトを含めた二人までなら、ホロウ・エリアに行くことが可能だった。」

 

「なんでキリトだけしか行けないのかしら?」

 

「そこなんだよシノン、多分、右手の紋章があるか、ないかの問題だと思う。」

 

「じゃあ、今度はぼくも付いていくからね。」

 

「なんでだよユウキ。」

 

「キリトが他の子に取られないかと、キリトが浮気してないか確かめるため。」

 

「しないよ、そんなこと。」

 

「本当かなぁ?」

 

その後は、ユウキによる質問攻めだった。それを見ていた他の皆は面白そうに見ていた。


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