黒と紫のソードアートオンライン   作:壺井 遼太郎

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75層ボス戦

55層グランザムKoB本部

 

「先程のメッセージでも書いた通り、問題が起きた。75層の迷宮区のマッピングは慎重に行われていた、迷宮区自体は死者を出さずにボス部屋までついた。だが、偵察隊の半分がボス部屋中央についた瞬間、ボスの出現と共に扉が閉まったのだ、5分後に扉が開いたが、中にはボスもプレイヤーも居なく、転移した形跡もなかった。それで黒鉄宮のモニュメントに確認に行かせたが、」

 

その後は言葉を出さずに首を横に振った。

 

「なんで、そんなことに。」

 

「結晶無効エリア。」

 

「恐らくそうだろう、アスナ君からの報告でも、74層もそうだったように、この先もそう思っていいだろう。よって、今から1時間後に攻略組のトッププレイヤーの編成で、ボス部屋に向かう。」

 

「別にいいが、おれはユウキが危なくなった場合は、攻略組を放っておいて、ユウキを助ける。」

 

「それでも良いだろう。逆に、何かを守ろうとする人間は強いものだ。」

 

ヒースクリフは話すことは無いのか部屋から出ていった。

 

「一時間かー、どうしようか?」

 

「ユウキ、あいつの前ではあんなこと言ったが、今回の」

 

「嫌だよ。それでキリトが帰ってこれなかったら、ぼくも死ぬよ。生きてる意味もないし、待ってたのが許せない。」

 

「すまない、おれ、弱気になってる。」

 

「どっちにしろ、今回のボスを倒さないと、現実のぼく達の体のほうが死んじゃうしね。」

 

「あぁ、でも絶対に死なないと約束してくれ。」

 

「キリトこそ♪」

 

1時間後、75層転移門広場

 

「皆、緊張してるな。」

 

「そうだね。今までのクォーターボスの強さがあるからね。」

 

ボスの前に装備の再確認をするのは当然だが、ここまで緊迫した空気は初めてだった。

 

その時、後ろから肩を叩かれた。

 

「何暗い顔してんだよ。」

 

「クラインにエギルにケイタ達か、お前らも参加するのか?」

 

「おいおい、この状況を見りゃそうだろ。むしろ商売を投げ捨てて来た。この無私無欲を褒めて欲しいくらいだ。」

 

「無私無欲の精神はよーく解った。ならお前は戦利品の分配から外していいな。」

 

「いやぁ、それはだな。」

 

緊張のないやり取りを見て、周りのプレイヤーは笑い始めた。

 

「諸君、よく集まってくれた。これからボス部屋まで回廊結晶で飛ぶ。」

 

ヒースクリフは回廊結晶を取り出すと、75層前に移動した。

 

「この先はクォーターボスだ。逃げ出したいものは今の内に逃げ出しても構わない。」

 

それを聞いても、誰も動こうとしなかった。

 

「では、これから扉を開ける。気を引き閉めたまえ。」

 

「死ぬなよ。」

 

「お前こそ。」

 

「この戦利品で一儲けするまで死ねないぜ。」

 

扉が完全に開ききったとき、

 

「全員、突撃ー!!」

 

それぞれが雄叫びをあげ、ボス部屋の中に入り、全員が入ったと同時に、扉が閉まった。これで、逃げられなくなった。

 

「どこにもいないぞ。」

 

誰かが耐えきれなかったように言っていたが、中にはボスがいる、先程から、何か物音がする。

 

「上よ!!」

 

アスナが叫ぶと、全員が上を見た。そこにはモンスターが張り付いていた。

 

骸骨だ。だが、体は人間の物ではなく、ムカデだ。顔の部分には、四つの目と、その頭の後ろから、カマキリの様な腕が出ている。

 

「スカル」

 

「リーパー。」

 

クラインとキリトが声を出すと、スカルリーパーは落ちてきた。

 

「固まるな!!距離をとれ!!」

 

ヒースクリフが凍った空気を切り裂くと、全員が走り出した、だが、ボスのちょうど真下にいたプレイヤーが動けなかった。

 

「早くこっちに走れ!!」

 

おれが叫ぶと、呪縛が解けた様に、プレイヤーが動き出した。だが、その後ろにスカルリーパーが落ちてきた。刃の部分だけでも、人間の身長と同じくらいの長さを、横凪ぎにした。

 

「うわぁ!!」

 

2人が吹き飛ばされ、それをキャッチしようとした瞬間、2人が四散した。

 

「一撃で!?」

 

「無茶苦茶な!!」

 

レベル制のSAOでは、剣の腕前いかんにレベルが高ければ、それだけ死ににくくなる。それに、今回のボス戦のメンバーはトッププレイヤーのみの編成だ。ボスの連撃の数発程度なら、耐えられる筈だった。だが、それが一撃で0になった。

 

「うおおおお!!」

 

「待て!!クラディール!!」

 

クラディールがスカルリーパーの側面から攻撃しようとしたが、肋骨により上に飛ばされ、尻尾に叩かれ、HPが0になった。

 

「クラディール!!」

 

クラディールはその場で四散した。

 

スカルリーパーは上体を起こすと、プレイヤーの集団に向かった。

 

「うわぁぁ!!」

 

鎌の振り下ろされた下には、ヒースクリフがいた。だが、鎌はもう一本あった。

 

「下がれ!!」

 

おれは体が反射的に動き、剣を十字にし、鎌を止めたが、

 

(重すぎる!!)

 

二本の剣を持つキリトでも、スカルリーパーの鎌は重すぎるのだ。

 

耐えきれないと考えた瞬間、鎌に青いライトエフェクトのスキルが当たり、勢いが弱くなった瞬間に、弾いた。

 

「二人ならいけるみたいだね。行くよキリト!!」

 

「あぁ!!」

 

「鎌はぼく達が食い止める!!その隙に皆は攻撃をお願い!!」

 

「行くぞ!!」

 

「おおお!!」

 

全員がスカルリーパーの側面から攻撃し始めた。だが、先程クラディールを倒した攻撃を食らい、倒れるものが多かった。

 

そこにユウキが気を取られ、反応が僅かに遅れた。ユウキはぎりぎりの所をガードしたが、吹き飛ばされ、HPがレッドまで減った。

 

吹き飛ばされたユウキを見た瞬間、キリトの中で何かが切れた。スカルリーパーはユウキにとどめを刺そうとして鎌を持ち上げた。

 

「おおおおおおおお!!」

 

キリトが絶叫をあげ、プレイヤー所か、スカルリーパーまで止まった。止まった所にキリトは飛び込んだ。

 

キリトは二刀流の上位スキルを叩き込んだ。《スターバースト・ストリーム》《ブラックハウリングアサルト》《シャイン・サーキュラー》《ナイトメアレイン》etc.スキル硬直を体を無理矢理動かし、次のソードスキルに繋げ、怒涛の連続技により、スカルリーパーのHPが一気に4本目から、1本のイエローまで減った。

 

「お前ら!!キリトに続くぞー!!」

 

クラインとケイタが自分達のギルドに叫び、動き出した。それに呼応するかの様に全員が動き出した。

 

「うおりゃああ!!」

 

「せい!!」

 

「おらぁ!!」

 

スカルリーパーは攻撃しようにも、先程から受けているキリトの攻撃により、食らった硬直を受けていた。

 

「ぐるぁぁ!!」

 

スカルリーパーは大声をあげ、四散した。


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