黒と紫のソードアートオンライン   作:壺井 遼太郎

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圏内事件終了

19層主街区《ラーベルク》近くの森

 

PoHの指した方向には馬が此方に向かって走ってきていた。

 

「ひひぃーん!!」

 

馬が目の前で前足を上にあげ、吠えた。

 

「痛て!!」

 

「わぁ!?」

 

「ぐぼっ!?」

 

馬から落ちたのはキリトとユウキだ。

キリトがおかしな声をあげたのは、馬からキリトが先に落ちてから、ユウキがキリトの腹の上に落ちてきたのだ。

 

「わぁ!?ごめんキリト!!」

 

「痛って~。でも、間に合ったみたいだな。」

 

「Wow、まさか貴様達とはな。」

 

「PoH、相変わらずの糞野郎だな!!」

 

「は!それは誉め言葉として受け取っとくぜ。」

 

「てめぇら!調子こいてんじゃねぇぞ!!」

 

ジョニー・ブラックが怒りながら、毒ナイフを振り回し、ザザはジリジリとカインズ達に距離を詰めていた。

 

「いや、勝てないな。でも、回復アイテムは大量に買い込んだし、耐毒ポーションは飲んでるし、おれが20分は耐えてやるよ。でも、攻略組全員が此方に駆け付けてる。お前達でも、攻略組全員は相手に出来ないだろ?」

 

「……Suck」

 

PoHは悔しそうに声をあげ、指を鳴らし二人に合図を送った。

 

「チッ!!」

 

舌打ちしながらジョニー・ブラックはナイフをしまい、ザザは二人から離れ、エストックを鞘に戻した。

 

「帰るぞ。」

 

3人はキリト達から離れてから、キリトに声が聞こえないように転移した。

 

「はぁ。」

 

「キリト、攻略組が来てるなんて凄い嘘ついたね。」

 

「賭けるものが少なくても、レイズする主義なんだ。」

 

解毒ポーションをシュミットに渡し、ヨルコとカインズに近づいた。

 

「後で、ちゃんと謝りに行こうとしてたんです。」

 

「解ってる、あの《指輪事件》だろ。」

 

「何故それを!!」

 

ヨルコが驚愕の声を出し、聞いてきた。

 

「鼠に聞いたんだ。そしたら、グリセルダっていうプレイヤーは、グリムロックと結婚していて、指輪がドロップした時の会議で売却が決まって、売却しに行って、その日の夜フィールドにグリセルダが横たわっていた所を殺害された。てな。」

 

「で、この時に睡眠PKが出回って間もない頃だから、誰かがフィールドに運んだって思ったわけ。」

 

「そうだったんですか。」

 

「でも、誰がグリセルダを!?殺したんだ!?」

 

「それは、」

 

「この人よ。」

 

キリトがしゃべる前にいつの間にいたのかアスナが誰かを連れて歩いていた。

 

「グリムロック!?」

 

シュミットが声をあげた。

 

「失礼だな、なんで私がグリセルダを殺したと?」

 

「貴方だけだからよ、《ハラスメント防止コード》を気にせずに運び出せるのわ!!」

 

「そう言うことだ、通常、同性相手以外に触られていると起きるコードだが、《結婚》さえしてればそのコードは暴力でも振るわない限り、発動しない。」

 

「本当なのか、グリムロック!?」

 

グリムロックは答えもせずに黙っていた。

 

「その反応を見る限り本当みたいだね。」

 

「グリセルダは、《ユウコ》がまだ私の妻である内に、私の心の中に残すために殺したのだ。」

 

いきなり喋り出したグリムロックは動機を語った。

 

「彼女は、現実でも私の妻だった。」

 

「!?」

 

全員が驚きの声をあげた。

 

「だが、この世界に来て彼女は変わってしまった。彼女はあの日、デスゲームが始まったときに、彼女は現実とは違う、いきいきしていた。だから、彼女がまだユウコである内に殺したのだ。」

 

「そんなことで!!」

 

「そんなこと!?いいや!充分すぎる!!君も同じ立場に立てば解るよ。」

 

「いいや、ぼくたちは解らないよ。」

 

全員を代表したかのように、ユウキが答えた。

 

「ぼくたちはどうあっても、貴方みたいに彼女に対する所有欲みたいに殺しはしない!」

 

グリムロックはその場で四つん這いになり、泣き出した。

 

「私は、私は…」

 

「《キリトさん》、こいつはおれ達に任せてくれ、ちゃんと謝罪はさせにいく。」

 

「あぁ、任せた。」

 

シュミット達はグリムロックを連れて歩いていった。

 

「はぁ、これで本当に終わりだな。」

 

「ええ、でも、ユウキが言っていた言葉、かっこよかったわよ。」

 

「えへへ♪」

 

「さて、行くか。」

 

キリトが主街区に向かって歩こうとした瞬間、腕を掴まれた。

 

「なんだ…よ…」

 

キリトが言葉の中に間があったのは、見たものだった。

 

女性プレイヤーがこちらを見ていた。足元にはグリセルダの墓があった。

 

急いで伝えようとしたのか、手を此方に差し伸べ、おれ達はそれに合わせ、手を出した。

 

同時に太陽が昇ってきて、光が目に当たり、目を一瞬閉じた。閉じる直前彼女は微笑んでいた。

 

目を開いた時には彼女はいなくなっていた。

 

「わかった。」

 

「貴方の意志は私達が受け継ぐ、」

 

「約束する。絶対にこんなデスゲームをクリアする。」

 

そう言い、キリト達はグリセルダの墓を見ていた。

 

「さて、今日はもう帰って寝るか。」

 

「うん、そうしようかもう眠い。」

 

「でも、今週中に、今の層はクリアしようよ。」

 

3人は主街区に向かい、歩いていった。


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