50層《アルケード》転移門広場
転移門広場にある、ベンチにキリトとアスナは腰かけていた。
「グリムロックさんは見つからなかったわ。」
「こっちは、ヨルコさんが」
キリトは最後まで言わずに首を振った。
「どうすれば、圏内事件が起きるんだろう。」
アスナが考え込んでいると、紙袋が飛んできた。
「考えるのは後だよ、耐久値そろそろ切れそうだけど、二人ともごはん食べてないでしょ。」
「サンキュー、ユウキ。」
「ありがとう。」
お礼を言ってから、紙袋の中身の物を取り出した。
「美味しそうね。」
言いつつ、アスナはかぶりついていた、
「おいしい、こんなのお店で売ってたっけ?」
「ううん、違うよ♪」
アスナはその言葉を聞いて頭の上に?マークが出ていた。
「ユウキは料理スキルを持ってて、これも何時かはわからないけど自分で作ったんだろ?ユウキ。」
ユウキは笑顔で頷いた。
「へぇ、これユウキが…って、えええ!?」
アスナは信じられないのか、おかしな声をあげた。
「ユウキの料理はオークションに出したら、高く売れそうだな。」
つい、キリトは思っていた事を口に出した。嫌な予感がして二人を見た。ユウキは不機嫌そうな目付きで、アスナは怒りのオーラが滲み出ている。
キリトは驚いて、自分の分を落としてしまった。
「あぁ!!」
キリトは急いで掴もうとしたが、間に合わず目の前で消滅した。
「おかわりはないよ、キリト。」
キリトは相当なショックなのか、その場で四つん這いになったままだった。
「キリト君?」
「しっ!!」
キリトは、「静かにしてくれ」と左手で表した。
「そういうことか、解ったぞ今回の事件の手口が。」
「本当!!」
「なんなの!?キリト!!」
「圏内ではどうやろうともHPが減らないけど、耐久値は減るんだ、現に目の前でおれの飯は消滅した。」
「そうか!!圏内では減らないのはHPだけで、他の耐久値が減るんだ!!」
「そうだ、多分ポリゴンになったのは二人の服と装備だ」
「でも、圏内に入ったら武器は障壁に阻まれて刺せない筈よ。」
「それはあくまでも、圏内ではだ。圏外から武器が刺さってる状態で圏内に入れば、武器は刺さったままなんだ。」
おれは二人に手口を教えた。
カインズは鎧を着て、顔を見られないようにして、武器を刺した状態で回廊結晶を使って、教会の二回に飛び、あらかじめ用意して置いたロープを使って、窓から飛び降り、装備の耐久値が切れて、四散する前に転移結晶を使い、別のフロアに転移した。
そこまでの説明をしていたらアスナが、
「でも、黒鉄宮に確認しに行ったじゃない。カインズさんは確かに死んでいたし、時刻も死因も一緒よ。」
予想通りの反応だった。
「死亡したのが書かれるのは日にちだけだ、年号は書かれないんだ。それにサクラの月二十二日は昨日で2回目なんだ。それにヨルコさんは、カインズの綴りはKainsと言っていた。念の為、あの後エギルに確認しに行って貰った、カインズの頭文字はKじゃなくてCaynzつまり、Cにもカインズと言うプレイヤーが居たんだ。」
「なら、そのCのカインズさんが、偽装したって、考えるのが妥当だね。」
「でも、ならヨルコさんは?」
「彼女も生きている。まぁ、少し考えれば解ることだったんだ、彼女はおれ達が宿屋についてから一度も背中を見せていなかった。つまり、彼女はおれ達からメッセージを受けたときに圏外に向かい背中にダガーを刺した状態でいたんだ。」
おれは言いながらフレンドのメニューを見てみた。
「彼女達は19層の主街区の少し外にいる、シュミットも一緒に居る、恐らくここがグリセルダさんのお墓だ。」
「なら、これで圏内事件も終わりだね♪」
「いや、おれは嫌な予感がするから、19層に行ってくる。」
「なら、ぼくもついていく。」
「私も。と言いたいけどちょっと用事があるから先に行っておいて、ちゃんと合流する。」
「わかった。」
キリトとユウキは転移門に入り、
「「転移!!《ラーベルク》」」
場所は変わり、同時刻。
「そう言うことか。」
シュミットは圏内事件の手口と行った理由を聞いて納得していた。
「そう、私達があんな事をしたのは、誰がグリセルダさんを殺す事に加担したかよ。」
「でも、シュミットお前は違うんだろ?」
「あぁ、おれのアイテムストレージには、手紙と回廊結晶が入っていて。手紙の内容は《ギルドリーダーが泊まる宿屋の部屋に回廊結晶を登録しろ》と書いてあって、その後に回廊結晶をギルド共通ストレージに入れろと書かれていたんだ。まさか殺…」
ドサッ!!言葉を発している最中にシュミットは倒れた。
(何が起きたんだ!?)
3人は同じことを考えていた。シュミットのアーマーの間にナイフが刺さっていた。
「ワーン、ダウーン!!」
陽気な声が聞こえた方向を見たら、マスクとローブを被ったプレイヤーがいた。暗殺ギルドの《ラフィンコフィン》の幹部、毒ナイフ使いの《ジョニー・ブラック》だ。
二人が呆気に取られている間に誰かが近づいて、ヨルコの腰に掛けている、ギルティーソーンの刺剣(エストック)を奪い取っていた。
「デザイン、は、まぁまぁ、だな。おれの、コレクションに、加えて、やる。」
ぶつ切りの独特の喋り方、エストック使いの同じく暗殺ギルド、ラフィンコフィンの幹部《赤目のザザ》だ。
(まさか、あいつも来てるんじゃ!?頼む来てないでくれ!!)
シュミットの答えを裏切るように声が聞こえた。
「Wow、確かにこいつは大物だ、聖竜連合のタンク隊のリーダーさんじゃねぇか。」
ラフィンコフィン、ギルドリーダー《PoH》そのキュートな名前と裏腹の残忍なプレイヤーで、最重要要注意人物だ。何故、こんな所にラフィンコフィンの3トップが?この3人は前線フロアにしかでない筈だ。
「さて、どうするかなこいつ等?」
「あ!ヘッド、ならあれやりましょうよ。《殺しあって、生き残ったやつだけ生かしてやる》ってやつ!!まぁ、このメンバーならハンデつけなきゃだけど。」
「お前、そんなこと言って前に生き残ってた奴も殺したろうが。」
「あぁー!!それ言っちゃ、盛り上がんないでしょ!!」
恐ろしい内容の台詞を言いながら、聞いているザザは、しゅうしゅうと、笑っていた。
その笑いにも、3人を更に恐怖に落とした。
「さて、じゃあ殺りますか。」
言いつつ、ジョニー・ブラックが近づいてきた。
(もう、これで終わりか。これもグリセルダがおれを殺そうとしたのか、だが、何故ヨルコとカインズまで、二人はあんたを殺した相手を探していたんだ、なのに何故!?)
シュミットがそう考えていると、すぐ目の前にジョニー・ブラックがいた。
「待て。何か来るぞ。」
PoHがそう言った瞬間、二人の幹部は警戒した。
PoHが指を指した方向には、何かがこちらまで走ってきていたのだ。
次回で、圏内事件は終わりです。