剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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夕飯を皆で仲良く食べた。


58 ベルとアイズ

「ベル!それじゃあステイタス更新するで!それと無事ルナと刹那はレベル2にアップや。リリーもステイタスかなり上昇しとったわ。これでもう何人か集まれば中層でも探索ができるようになるで」

 

夕食後に食器の片づけをしているベルの尻を空いている手でさりげなく撫でながらロキは指で丸を作った。

 

「ロッロキ様!!」

 

尻を撫でるのは神の間ではやっているスキンシップの方法やと真顔で言われる。

 

「いやいやベル、尻を撫でるんは子供とのスキンシップなんや。皆冗談で怒っているふりしてるだけなんやで?」

 

「え、でもこの間もロキ様リヴェリア様にぼこぼこにされていたような......」

 

それはリヴェリアの愛情表現なんや、それにいい感じに強く叩きすぎないように調整してるんやで、意外と気持ちいいんや!などとそれから5分ほどベルの反論をうまくかわしつつスキンシップ、もっと仲良くなる方法ということを説明する。理性ではわかっていてもだんだんと自分の方が間違っているのではと思うほどロキの言葉には妙な説得力がある......

 

「そういえば僕がもっと小さいころ、おじいちゃんに遠くの町の酒場に連れて行ってもらったことがあります。僕は果実を絞った飲み物を飲んでいたんですが、おじいちゃんは女性の方と楽しそうにお酒を飲んでいました。その時おじいちゃんが今のロキ様のようにお尻を触っていてとてもうれしそうにわらっていました!」

 

「そ,そうなんや......ちなみになんてお店やったん?」

 

ベルは少し考えた後ポンと手をうった。

 

「たしか兎さんのおしり亭という名前できらきらした看板だったような気がします!」

 

(あんのエロじじい、ベルをどんな店に連れていってんねん......)

 

「面白い名前のお店ですよね、この町にも似たような店があるみたいで僕も一緒に行かないかって誘われました」

 

「!だ、誰がベルを誘ったんや!!」

 

「ラウルさん達です。すごく酔っているみたいでしたが、その時は僕アイズさん達と訓練する予定があったので断ったんですが。今度一緒に行ってみるつもりです!」

 

おそらくベルがそんな店に行ったと知れたら誘った人物は細切れにされることだろう。

今のベルなら店でもモテモテになる可能性は高いがファミリアの皆がそんなことはゆるさない......ロキ自身はそういう展開も見てみたい気もするが後が怖すぎる。

 

「まあ、そういう世界を経験するのも勉強にはなるかもしれんが、行くならリヴェリアに相談してからにした方がええで!そうそう、尻を触るのは仲良くなる為の儀式みたいなもんや。ベルもためしに誰かにやってみぃ。ほれちょうどその辺にいるラウルとかに」

 

ロキは遠くに他の団員と偵察任務を交代して帰ってきたラウルを確認して指をさした。

 

今よりもっと仲良くなる為に必要なことなんやっ、と再度言われトトトっとラウルの方へ。

 

ベルがラウルの方へ歩いていくのを確認して声を押し殺して笑いを堪えるロキ。口に手を当てその後の展開を見守る。

 

「ベル、これからステイタス更新ですか?それならベルもこれでランクアップですね」

 

アリシア達とご飯を食べていたレフィーヤがベルを見つけ声をかける、ちゃんと休んでいますか?ご飯はちゃんと食べましたか?などと姉のような対応だ。

 

「大丈夫です!レフィーヤさんも何か決まったら遠慮なくいってください!」

 

「......お姉ちゃん呼びでも構いませんが......」

 

ぼそぼそとそんなことを呟くレフィーヤ。

 

「あ!そうだレフィーヤさん!少し後ろを振り向いてもらえませんか?」

 

レフィーヤは首をかしげながらも純粋なベルにいわれなんの疑いもなく後ろを振り向いた。

 

それをみたロキが遠くから「ちょっ!待っ!!」と声をかけようとするがすでに遅い。

 

なでなで......

 

「へうっっ!?!?」

 

顔を赤くしたレフィーヤがお尻を抑えながら飛び上がった。

 

「ベッベッベル!?あなたはいったい何を!?」

 

振り向いたレフィーヤは満面の笑みのベルをみて固まる。

 

「ロキ様に皆ともっと仲良くなれる方法だと教わりました!これから他の皆さんにもしてこようかと......」

 

「ロキィィ!ベルになんてこと教えてるんですか!」

 

レフィーヤの怒りの形相をみてベルにウチの部屋で待ってるでぇと言い残し走っていこうとした.......が

 

ドンッ

 

目の前の部屋の入り口から入ってきた人物にぶつかる。

 

「ロキ、またお前は何か騒いでいるのか」

 

部屋の中を見渡して何かを察するリヴェリア。そのまま逃げようとするロキを引きづりながらレフィーヤとベルの元へ。

 

二人とも、何があったか詳しく教えてくれるか?そういわれ素直に全てを話すベルとレフィーヤ、途中ロキのラウルの尻触らせてその後にネタばらしするつもりだったんや!

という言葉を一蹴し続きをうなずきながら聞いていた。

 

「ベルよ、ロキに変なことを言われて少しでも疑問に思うことがあればまず私に相談するといい。それとレフィーヤにもきちんと謝ることだな」

 

ベルはハッとなりレフィーヤの前で土下座した。

 

「す、すみませんでしたぁぁぁ」

 

「ベ、ベル。頭をあげてください!気にしなくていいですよ。悪いのはロキですから」

 

ベルの頭を撫で、立ち上がらせる。

 

「さて、ロキ。私の仕置きが気持ちいいらしいな?」

 

ギロリと鋭い視線がロキを貫くとダラダラとロキの額に汗が流れた。

 

そういえば新しい武器を試そうかと試作品を作ってもらっていてな。実際使ってみたが中々破壊力もあって一考の余地があると判断した。まあ中距離武器の一種だが......

 

仕置き用の杖も大分ガタがきていたから仕置き用にも一つ作ってもらったんだ。もちろん死ぬようなことはない。腰のあたりにベルトで固定されていた物をしゅるりと外すと

ビシッと腕を振るった。

 

スパンッ!!

 

床に叩きつけられた物からものすごくいい音がなる......

 

そう,新しい仕置き用の【鞭】だ。対モンスター用にはミスリルなどが使われるが仕置き用には鞣した皮が使われておりすごく痛いと思うが死ぬことはないだろう......

 

「ちょっ、待ってやぁリヴェリア!鞭って拷問に使われるぐらい痛いんやで!ウチの尻の皮なんかあっという間にぼろぼろやで!......じゃあ鞭でええからこれつけてくれ!」

 

そうすれば脳内で変換できるからとリヴェリアに妙な仮面のような物を手渡す。

 

無言でそれを見つめるリヴェリア......

 

「なるほど、では対モンスター用のミスリルの鞭を使わせてもらおう。私が全力でお前の尻に打ってやる」

 

すみません、なんでもありません。と全力で頭を下げた。

 

「まあおまえの仕置きは後だ。これからベルのステイタス更新だろう?私も行こう。他の皆も待っている、行くぞ」

 

ロキを引きづるリヴェリアの後ろをベルとレフィーヤはついていく。ロキの部屋の前まで行くとちょうど他の幹部達も集まったところのようだ。

 

「やあ、ベル、いよいよステイタス更新だね。僕も今から楽しみだよ」

 

「若者の成長速度には目を見張るものがあるわい」

 

「んと、ベルはすごく頑張っているから。それに......」

 

「これで訓練を更に厳しくしても問題ねえな」

 

「私もそろそろベルと組み手をしてみたいわね」

 

「あたしもあたしも!集団戦闘もやらなきゃね!」

 

「皆さんわざわざありがとうございます。でもランクアップっていつもこんなに人が集まるんですか?」

 

ベルよ。前にアイズに聞いたことがあると思うが現在のオラリオでの最速ランクアップはアイズの一年だ。それを考えるだけで今回の偉業がよくわかると思う。我々もお前に期待しているのだ。とリヴェリア。

 

引きずってきたロキを開放し皆でロキの部屋の中へ。

 

ベルはいつものように椅子に座り上半身裸になる。皆が凝視する中脱ぐのはいつまでたっても慣れない。恥ずかしがって服を脱ぐ様は他の皆の方が照れてしまい視線を逸らすほどだ。

 

ロキも皆が圧力をかけている為セクハラをせずにしぶしぶ自分の指先をナイフで軽く切り血でステイタス更新を始めた。

 

ベルの背中が発行し新たなステイタスが表示される、ロキは目を見開いた。

 

......

 

......

 

......

 

無言で目を見開いたままステイタスを確認しているロキの様子に皆に緊張がはしる。

いつものおふざけが一切ない様子、ピリピリした様子が皆に伝わる。

 

「ありえん......」

 

ぼそっとロキは呟いた。

 

「いや......こんなことあり得るんか......」

 

自問自答している様子に皆の緊張はさらに上がる。

 

ベルは何もいわないロキの様子に緊張を隠せないでいる。そんなベルの肩をがしっと掴みまっすぐに目を見つめる。

 

「ベル、ウチに何か相談したいことは?」

 

ええと......

 

ベルはスキルの事、そしてあの真っ白の空間の中で覚えている限りのことをロキに話した。他の団員達も驚いてはいるものの今は静観している。アイズも今は何も言わないでいる。

 

「扉はどうやって開いた?」

 

ロキがそんなことをベルに聞く。僕の身長ぐらいのところに亀裂が入って......無理やり突き破ったという表現が一番正しいような気がしたベルはそのように話した。

 

......

 

......

 

「確認せなあかん。皆訓練所まで、屋根を閉めて人払いを。リヴェリアは念のため大きめの結界張ってや。レフィーヤは保管してある生命の秘薬念のため持って来てや」

 

ベルの生命力を回復させた生命の秘薬は予備で何本か確保していた。神秘のスキルで作成してもらった瓶に保管している。

 

ロキの異常な焦りを感じおふざけ一切なしで訓練所まで。

 

訓練所にはさきほどロキの部屋にいた人のみ。誰もちかづけないように人払いも完全に行った。

 

「ベル、確認したいことがあんねん。一度その話に出てきた限界突破を使ってみてほしい」

 

「ちょっベルにあれを使わせる気なの!?」

 

当然そのような反応になるが、リスクを完全に知らず使ってしまう方がはるかに危険だ。生命力だけならすぐに回復できるように秘薬が近くにある。

 

「体調は今は大丈夫やな?」

 

「は、はい。大丈夫だと思います」

 

「せやったらウチが止めって言ったらすぐに発動解除できるか?」

 

「多分大丈夫だと思います」

 

皆がベルを囲うように立つ。ロキはベルの正面に立ち腕を組みじっとベルの魂をも見通すぐらい集中した。

 

「ではいきます。【家族の絆限界突破解放】」

 

ベルから闇を全て照らすほどの光が......

 

「止めぇぇぇぇ!!!」

 

その場にいる全員が一瞬固まるほどの大声がロキから発せられた。

 

ベルもその大声に驚き瞬時に解除した。ほんのわずかな時間だった為ベルの体には異常はない。

 

「んだよ、ロキ。んなでけえ声出しやがって」

 

「すごく.....きれいな光だった......でももしかしたらこの光は......」

 

アイズの顔は青ざめ、額にふつふつと冷や汗が浮かぶ。

 

「ベル!こんな技2度とつかったらアカン!!ウチが封印するで?ええか!?」

 

ベルの肩をがしっっと痛いくらいに掴んだ。アイズも後ろからベルの方に手を置く。

 

「ロキ、すまないがしっかり説明してくれ。今の光はなんだ?」

 

はぁはぁと息をつくロキは絞り出すような声で今の光の説明をした。

 

「今の光はベルの生命力、生きる力......そのものや。つまり、ベルは己の器の限界を突き破る為に寿命を削ったんや。どのぐらい長い間使ってたかはわからん、それでも何時間なのか、何日なのか何か月なのか......何年なのか......確実にベルの寿命は削られたことになる。神の血の力を使わずに扉を強制的にぶち破ったんやこれをみてみい!」

 

そういうと先ほどのステイタス更新で紙に移し替えた物を皆に見せた。

 

......絶句

 

「ええか?ベル2度と使おうとも思ったらいけん。わかったか?」

 

......

 

「ロキ様、僕の質問にわかる範囲で答えてもらってもいいですか?」

 

ロキ様は僕について何か知っていることがありますか?

 

その言葉にロキは黙ってうなずいた。

 

「教えてください。お願いします」

 

ロキはフィン達と目くばせをして大きく息を吐いた。

 

「ベル、アイズ、二人ともこれから話すことはショックを受けることかもしれない、知らなくても問題ない。知っても僕達との関係が何か変わることもない。でも君たち二人の関係は......いや......それも変わらないと思う」

 

「「私も、僕も大丈夫です」」

 

「他のみんなもええか?他言無用やで」

 

他の皆も同様にうなずいた。

 

十数年前この都市最強のファミリアがいた。それはゼウスファミリア。そのファミリアの団長である英雄ダグラス・クラネル。そしてその妻、アリア・ヴァレンシュタイン。そしてその二人の子供がアイズや。ゼウスファミリアは世界3大クエストの最後の一つ隻眼の竜に強襲されここから100キロほど北に行った村で全滅した。

 

「俺の故郷の村だ。たしかにあの時は世界3大クエストの陸の王者を潰した帰りに休憩的な目的で一時的にいたんだったな」

 

「そや、武器防具、回復アイテム等かなり消耗していたはずやな。それで隻眼の竜の突然の強襲にあったんや。内通者がいたのかどうかもわからん、本来はそのまま南下してこの都市をつぶしに来ようとしていたのかもしれん。理由はわからんがその場でアイズの両親達は......」

 

ロキはアイズの方を見る。

 

「大丈夫、ロキ。私もちゃんと向き合わなきゃいけないってわかってる」

 

アイズは先を促した。

 

「隻眼の竜に討たれた。どんな戦いだったかはわからん、けど隻眼の竜にも深手を与えたのは事実や、その後援軍の要請を受けてウチのファミリアからもフィン達が援軍に向かったんや」

 

フィン、ガレス、リヴェリア共にうなずいた。

 

「ワシらが現地に着いた時には戦いはすでに終わっていた。村についた火もほとんど消えていた。そこでワシらは生き残った幼いアイズを連れ帰った」

 

村を散会して生存者を探したが粉々になった石像のような物が散らばっていたりとひどい状況だったとガレスは語る

 

「神ゼウスはこの世界における秩序、ルール違反をそこで犯したんや。アリア・ヴァレンシュタインのお腹の中には一つの魂が宿っていた」

 

......あ。

 

「私,そうだ......あの日お父さんが私に弟か妹ができたって......!」

 

「そや、本来なら消えてなくなっていく魂をダグラスの肉体を器にして再構築。人を神の力で転生させた。大罪や」

 

「僕は......アイズさんの兄弟として生まれるはずだった魂」

 

じゃあ僕のおじいちゃんはやっぱり神ゼウスが力を失った姿......僕の本当の両親はそもそも存在していない......

 

ベルは私の兄弟になるはずだった魂......

 

僕は...

 

私の家族は......

 

「「ロキ様、ロキ、ごめん、すみません、少し外に」」

 

二人は顔を見合わせた。

 

「アイズさん、少し外を歩きませんか?」

 

「うん......行こうか」

 

「風よ」

 

二人は訓練所の天井を開け夜の街へ。

 

「少し二人だけにしてあげよう」

 

フィンの言葉に他の皆はうなずいた。

 

しばらくの間二人は無言で夜の街を歩いた。お互いになんて声をかけていいのかわからない。当てもなくトボトボと町を歩く。

 

いつの間にかどこかしらない路地裏へと入っていた。

なぜかわからない、薄暗い路地裏で一言も発しないまま二人の頬を涙が伝った......

 

まだ声はでない、心が混乱していて動く気にもならない。そんな中コツコツという足音が聞こえて二人は瞬時に振り向いた。

 

「おやおや、どうしたんだい?こんなところで何かあったのかい?......いやいや今はいわなくていい。君たちの顔をみればわかるよ。今日はリリ君もいない。おいで僕のホームへ」

 

神ヘスティアは二人の子供達へ手を差し伸べた......

 

 




いつも読んでくださっている皆様ありがとうございます。

皆さんの応援で寝ると続きを書くを天秤にかけたときに書く方へ傾いたので早く書くことができました笑

今のところベル君のふたつ名一名様が当ててくれました。いろいろと絡んでほしいキャラクターがいるようなので話の中でうまくイベントを作って絡む展開を作ります!ちなみに今回のラウルもそうです。

私としても書いていて面白いので問題ありません。

他の方もどしどしメッセージください。

次回は続きです。また更新までお待ちください<m(__)m>


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