剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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眼前の黒龍

思いもよらないことが起こる...


4 激闘

ゼウスファミリアと対峙する黒龍。

重い空気が全身を包んでいく。

団員達は息を呑んだまま硬直していた。戦闘態勢にはいっているにもかかわらず、誰も動けないのだ。全身が金縛りにあったように動きが鈍くなる。

武器を握る手には汗がにじみ、吐く息は荒いものになっていく。そんな中団長であるダグラスが先陣をきって飛びかかろうとした瞬間、思いもよらないことが起こった。

 

「主ら何者だ?」

 

低音で重厚感のある声が直接脳内に響いてくる。

 

「な、なんだこれは...黒龍の声?嘘だろ」

モンスターが人間の言葉が話せるという事実に驚愕を覚える。

 

「主らから感じる力は先ほどまで相手をしていた雑魚どもとはあきらかに違う。あの忌々しい神々に近い力を感じる。反吐がでるわ。我らの同胞を地下に閉じ込めてのうのうと暮らしおって。貴様らには絶望を与えてくれる」

 

(先ほどまで相手をしていた...?)

 

黒龍の圧倒的な存在感に目を奪われていたせいで回りを見れていなかった団員達だが、周囲をよくみると蹂躙されたであろうおびただしい血痕や引きちぎられた肉片、武器が散乱している。この村にはゼウスファミリアの団員しか戦える者はいない...

 

ギリッ

 

誰ともわからず歯ぎしりが聞こえた。仲間があきらかに格上であろうこの化け物に挑んでいたんだ。仲間の戦いぶりを想像して涙を浮かべた。

 

「そういえばあの雑魚ども面白いことを喚いていたな。団長達がくるまで死守しろだの、団長さえくれば必ず倒せるだの、なかなか泣ける話じゃないか。奴らは暇つぶしにじわじわなぶり殺しにしてやったわ」

 

黒龍は嗤った。仲間の死を嗤った。こいつだけは絶対に倒す。

 

「てめえぇええええ!!」

 

筋骨隆々のドワーフの戦士が頭に血をのぼらせてバトルアックスを背負い、叫びながら黒龍に向かって突進していく。黒龍の周りにいるワイバーンをなぎ倒し、黒龍の体にバトルアックスをたたきつけた。

ガギン 

 

鈍い音が響く。黒龍の鱗には傷一つつかずに体制だけが崩されてしまう。黒龍はその巨体からは考えられないスピードで腕を降り、ドワーフの戦士に叩きつけた。

 

ドゴッ

 

「ぐぅぅううう」

 

アダマンタイト製の鎧をへこませながら吹き飛ばされ、民家に叩きつけられた。苦痛の表情を浮かべるが、すぐにハイポーションを飲み戦線に復帰する。この戦士の耐久力はゼウスファミリアでもトップクラスだ。

 

「あいつの鱗は硬すぎる...生半可な攻撃だと今みたいに反撃されることになるな」

 

ドワーフの戦士は己の耐久力が高いことを自覚している。故に先陣として相手の力量を図る意味でも今の突進は無駄ではない。全員で突っ込んだ場合、防御力が低い者は今の一撃で致命傷になりかねない。個々の役割を理解し、それを最大限生かすことができる。これがゼウスファミリアがオラリオ最強と言われる由縁である。

 

ダグラスが今の攻防をみて指示をだした。

 

「前衛!黒龍の攻撃を死守、やつの鱗は硬すぎる。魔法で弱らせるぞ!中衛は周りの眷属の殲滅とアシストに回れ!」

 

「「「ハ!」」」

 

隊列を変更させ魔法での攻撃に切り替える。通常攻撃でダメージを与えにくいのなら魔法で体の内部を攻撃しようという考えだ。ゼウスファミリアの精鋭である3人の魔法使いが詠唱を始める。

 

「古より伝わる浄化の炎よ...」

 

「裁きのとき来たれり、帰れ!虚無の彼方!...」

 

「聖なる剣よ、我に仇名す敵を討て...」

 

詠唱を確認した黒龍は自ら魔法使いを殲滅しようと襲い掛かってくる。

黒龍の口の奥に紅い炎が見える。

 

「ブレスが来るぞ! 盾かまえ!」

 

ダグラスは指示と同時に詠唱を行う。

 

「聖なる光よ その力をもって魔を退ける盾となれ」

 

聖なる守護盾(ホーリーウォール)

 

仲間の体を包むように光の膜が生じる。

 

盾を構えた数人が3人の魔法使いの前に立ち、その体を支えるように他の仲間が並ぶ。

黒龍の口から咆哮とともに炎が放たれる

 

影炎火球(シャドーフレア)

 

放たれた火球は黒龍の黒いオーラを纏い黒い炎となってダグラスたちを包み込む。

まさに灼熱。盾は徐々に溶けはじめ、支えている腕は焼かれていく。

 

「ぐぅううぅぅ!」

 

「なめんなぁぁぁぁー!」

 

激痛に顔をゆがめながら必死に炎に耐える。焼き尽くされた盾の代わりに自分の体を盾にして仲間の為に耐え続ける。

ぶすぶすと煙をあげながら必死に耐えたところで詠唱が完成するろ

 

3人のエルフの魔同士が唱えるろ

 

「来たれ 古代の炎(ヘルプロミネンス)

全てを焼き尽くす業火が黒龍の体を包み込む。

 

「消え去れ 破滅の重力(グラビティープレス)

黒龍の真上と真下に魔方陣が広がり、すさまじい重力で圧縮される。

 

「突き刺せ 聖なる剣(シャインセイバー)

遥か上空から数十本の光の剣が黒龍に降り注ぐ。

 

三人の魔法が黒龍に炸裂する。周辺にいた眷属たちは今の魔法で殲滅することに成功した。

黒龍の体は地面にめり込み、ぶすぶすと煙を上げ、鋭い剣に突き刺されている。

 

「やったか?」

 

黒龍の生死を確認しようとした瞬間

 

【ドクン】 

 

な なんだ? 一瞬黒龍の体が痙攣したように見えたが...

 

【ドクンドクン】

 

(まだ生きている 今のうちに止めを)

 

ダグラスが剣を握りしめ黒龍の首をたたき切ろうとした瞬間

 

「ぐおぉおおおお!」

 

咆哮をあげながら黒龍が上空へと飛び立つ。

突風とともに血をまき散らしながら翼を羽ばたかせて旋回する。

 

 

「我が遊んでやっているとも知らずに調子に乗りおって...この屑どもが...我の力をみて絶望し、そして貴様らの仲間ともども死ぬがいい」

 

黒龍の右目に魔方陣が浮かびあがり、全身を包んでいた黒い霧のような魔力が一点に集中していくのがわかる。 

 

(やばいやばいやばいやばい!)

 

ダグラスの頭の中で警告音が鳴り響いている。黒龍が何をしようとしているのかはわからないが

絶対に阻止しなくてはならない。

 

「黒龍に次の攻撃をさせてはならない。なんでもいい、奴を止めるんだ!誰か俺に槍を貸してくれ」

 

団員たちが空中にいる黒龍に向かって弓矢や魔法で攻撃をしかける。しかし距離が離れすぎていてダメージがうまくはいらない。

ダグラスが渾身の力を込めて槍を投げる。空気を切り裂いて黒龍の右目に向かって一直線に飛んでいくが、槍は寸前のところで黒龍が前足でかばい、右目を潰すことができなかった。

 

「終わりだ... 喰らえ 呪いの魔瞳(イービルアイ)

 

黒龍の右目から放たれた魔力がゼウスファミリアの仲間を襲う。

黒い霧のような魔力が背中に染み込んでいく。

 

(な、なんだこれは、力が抜けていく...?)

 

黒龍が上空からおりてきて嗤う。

「この技はお前たちのようなファミリアだのとかいう神の眷属という忌々しい者どもをを皆殺しにすることを目的に考えた技だ。技の効果は強制的なレベルダウン。お前たちがいくら強かろうと、いくら連携がとれていようとこの技の前では無意味。この技の面白いところは今この場でこの技を受けていなくても同じ神に恩恵を受けているかぎりその効果は伝染する。この村にいるものなら全てこの影響を受けるだろう。

今頃この村にいるお前の仲間はレベルダウンのおかげで我が眷属によって殺されているはずだ。さてお前たちも絶望とともに死ぬがいい」

 

黒龍が大きく息を吸い込んだ。喉の奥には紫色の霧のようなものが見える。しかしレベルダウンというイレギュラーにさすがのゼウスファミリアの団員達も動揺が隠し切れないようで対応が遅れてしまう。

 

呪毒の息(ポイズンブレス)

 

黒龍の口から吐かれた息は猛毒の霧となってあたりに立ち込める。あわてて解毒にしようと団員たちはポーションを飲む。

 

「グッガハ...」

 

(解毒のポーションが効かない?そんな...)

 

団員たちは血を吐きながら茫然となる

黒龍のブレスの毒は【呪毒】。普通のポーションでは回復は見込めないのだ。

 

≪余談であるが呪毒のポーションは万能者ペルセウスによって10年後に作成される≫

 

ダグラスは考えていた。

(解毒ができないのならもはやこれまで...さらばだ、愛しき我が妻アリア、そして我が子アイズ。そしてまだ見ぬ我が子よ。私の命に代えてもこいつはここで...)

 

仲間を見渡すと全員がうなずく。

未来の為自分に残された最後の力を使い立ち向かっていく...

 

 




黒龍とのバトル描写もっとうまく書きたい...勉強します。<m(__)m>
読んでいただいている皆様ありがとうございます。

黒龍のレベルダウン攻撃がなければゼウスファミリアなら倒せてたのでは?という妄想のもとこのネタ考えていました。

次回でゼウスファミリアの話は完となる予定です。

PS アリアさんも戦闘中ですが今の状態で互角なのでレベルダウンの効果で悲しいことになるかもしれません...

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