剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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物語はダグラスが黒龍撃退の為家を出て行ったところまで遡る。

(嫌な予感がするわ)

夫が出て行った扉を見つめながら息を吐く

(いえ、今はあの人を信じてアイズと逃げないと)

「アイズ、アイズ起きなさい!」

あれだけ大きな音がなったのにもかかわらず熟睡中のアイズ
布団にくるまりながらよだれをたらしている。





3 風よ 

「んー...ねむいー」

 

目をこすりながらアイズが起きたがまだ眠いようでふらふらしている。

 

「おとうさんは?」

 

寝ぼけながらアイズがアリアに問いかける。まだ幼いアイズには今の切迫した状況がわからない。

アリアは表情を引き締めて真剣な眼差しでアイズを見つめた。

 

「アイズ、よく聞きなさい。今すぐにお母さんと一緒にオラリオまで逃げるのよ」

 

アイズは状況がよくわからず母親の緊張が伝わってか泣き出してしまう。

 

「おとうさんもいっしょがいいー」

 

泣きながら父親を探すアイズ。それも無理はない、アイズはまだ3歳なのだ。昼間と違う雰囲気で混乱しているのだろう。

 

(まずは落ち着かせないと...でも時間があまりないわね。今は武器も護身用のナイフくらいしかない)

 

冒険者をやめて3年。休暇でこの静かな村まで来ていたのだからそれも仕方のないことだ。

アイズをどうにか着替えさせ頭をなでながら話しかける。

 

「お父さんはね、お母さんとアイズを怖いお化けから守るために戦いに行ったの。だからアイズはお母さんと一緒にお父さんの邪魔にならないように、村の外までいかなきゃいけないの」

 

アイズは首をかしげ何か考えているようだ...

 

「おとうさん、こわいおばけたいじしたらかえってくるよね?」

 

アイズは震えながら、泣きそうな顔をしてアリアに尋ねた。

もしかしたらアイズは何か感じているのかもしれない。

アリアはアイズを抱きしめながらこう答えた。

 

「お父さんは私の...アイズの英雄でしょ?お父さんを信じてあげましょう」

 

それを聞いたアイズは少し悩んだ後いつものようにニパッと笑って

 

「うん!」

 

元気よく返事をするのであった。

 

(この子だけは守らないと...)

 

アリアは心に誓う。

 

「じゃあいくわよ!アイズ!」

 

アイズの手を引き扉を開けた瞬間...上空から火の玉が飛んでくる。

黒龍の眷属が放ったファイヤーボールだ。

ゴウゴウと燃え盛る火の玉が眼前へと迫る

 

[目覚めよ(テンペスト)(エアリアル)]

 

 

アリアが短文詠唱を唱えた瞬間周囲に風が生まれアイズとアリアを守るようにして全身を覆う。

 

ホーリーウォールとエアリアルまさに鉄壁の守りである。

 

「アイズ!お母さんがいいっていうまでここを動いては駄目よ?」

 

アイズはコクコクう頷いた。アイズがうなずいたのを確認してアリアが動く、その動きはまさに神速の風。

 

風の精霊(シルフ)と呼ばれるだけのことはある。

 

レベル4程度の敵をまるでバターを切るように切り裂いていく。

周囲全ての敵をなぎ倒してアイズのもとに帰ってくる。

 

「さあ、行きましょう!」

 

にこっとアイズに笑いかけるアリア。

 

「おかあさんつよーい!!」

 

ぴょんぴょん跳ねながらアイズが瞳をキラキラさせている。

 

「わたしもあかあさんみたいにつよくなりたい」

 

「どうして?」

 

アリアがアイズに尋ねる。

 

「つよくなってわたしがおかあさんとおとうさんをまもってあげるの!!」

 

(...この子は本当に優しい子ね...あの人にそっくりだわ)

 

アリアはアイズの頭をなでてこう言う

 

「オラリオに着いたらお父さんに相談してみよっか」

 

(あの人のことだから多分反対するんだろうなー)

 

娘を溺愛している夫がそう簡単に許すわけないと苦笑するのであった。

 

 

 

迫りくる敵を倒しながら村の外に走り、村の門がみえる位置まで来たその時...

 

ゾクッッ

 

アリアの背筋に冷たい汗が流れる。周囲は燃えるように熱いのに全身が冷や汗で冷め切ってしまっている。

 

「そこにいるのは誰!?」

 

アリアが叫んだ。

 

建物の影からフードを被った人物がでてくる。

 

「私の気配に気が付くとは、さすがは精霊アリア...といったところか」

 

 

(女性の声?何者? 精霊アリア...なぜそのことを..しかもこの人相当強い...)

 

アイズが服の裾をキュっとにぎってくる。

 

ちらっとアイズを見た瞬間 

 

「私の前でよそ見をするとはいい度胸だ」

 

瞬間的にアイズをかばうアリアだかドガッと背中に衝撃が走った。

 

「なるほど。まず邪魔なガキから始末してやろう」

 

(まずいわね..今の一撃、エアリアルとホーリーウォールがなかったら死んでいたわ。このままではアイズが危険...こうなったら)

 

「アイズ!! 今すぐそこの門から出て南に向かって走りなさい」

 

アイズはぶんぶん首をふって全くいうことをきく気配がない。

 

「アイズ!」

 

パンッと乾いた音がなる。

 

頬をおさえて固まるアイズ。

 

「お願いアイズ。いうことをきいて。必ず迎えにいくから...」

 

アリアも目に涙をためながらアイズを見つめる。

 

「おかあさん...ぜったいだよ?やくそくだよ?」

 

「ええ...約束よ」

 

 

(風よ...私の中の風よ...どうかこの子を守って)

 

アリアの体から淡い光を帯びた白い魔力がアイズの中に入っていく。

 

(あったかい...おかあさんといるみたい)

 

アイズはアリアの頭をなでる。

 

「さあ行きなさい!」

 

アイズは門へ向かって走り門の手前で一度振り返り叫んだ。

 

「おかあさん!がんばれー」

 

小さな背中が門の外へと消えていく。

 

「ガキがそんなに大事なのかい?理解できないね」

 

嘲笑うかのように女が吐き捨てた。

 

アリアはきっぱりと答える。

 

「守るべきがものがあるから人は強くなれるのよ」

 

ナイフを構える

 

「理解できないね、死にな...精霊アリア」

 

アリアの美しい顔が怒りで歪んだ。

 

「その名で私を呼ぶなぁぁぁー!」

 

アリアが激昂する

「私はゼウスファミリア、アリア・ヴァレンシュタインよ」

 

 

ガキィィン!武器が交錯する.....

 

 




なかなか話がすすまない<m(__)m>

読んでくださっている皆さんありがとうございます<m(__)m><m(__)m>

アイズがエアリアルを使えるのはこんな理由ではないか...なんて考えてみました。

次回は決戦黒龍で書こうと思っています。

コメントを頂けると作者の執筆ペースがあがります笑

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