(うー視線が気になる...)
黄昏の館を出発してから今現在に至るまで、老若男女問わずほぼ全ての人が3人が通り過ぎた後振り返っている。オラリオ一の魔導師【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン 【豊穣の女主人の男の娘】ベル・クラネル...
若干一名かわいそうな呼び名がされているがこの三名が並ぶと男からも女からも視線が集まる。二人が有名なのはもちろんのことであるが意外にも豊穣の女主人で働いていたからなのかベルもなかなかの人気が出ている。一部の神からは危ない目つきで自分のファミリアに勧誘されていた。特に【太陽神】アポロンからはしつこく勧誘を受けていたがその度にミアが庇ってくれていた。ロキファミリアに入った今ならいくら神とはいえどそうそう手を出せはしない。
アイズとリヴェリアはいつものことなので平然と歩いているが周囲の視線になれていないベルは恥ずかしそうだ。
「ベル、男なら下を向かず堂々と前を向いて歩くものだぞ?いつの日かおまえが英雄と呼ばれる存在になった時そんなことでは恰好がつかんぞ?」
穏やかな笑みを浮かべるリヴェリアにドキドキしながらもなんとか姿勢を正して前を向いて歩き出す。隣のアイズも満足そうだ。
そうこうしている内にギルドに到着した。3人でギルドの受付に並ぶ、順番が回ってくると一人のハーフエルフの女性が対応してくれた。
「これはリヴェリア様、ヴァレンシュタイン氏、ようこそおいでくださいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
端正な顔立ちをしてメガネをかけている女性が丁寧に対応してくれている。
「久しいな、エイナ。今日はロキファミリアの期待の新人を連れて来た、冒険者登録を頼む。ダンジョンの知識等は私が直々に仕込んでやるつもりだから安心してくれ。ベル、エイナは私の親友の娘だから安心していいぞ」
(...一人の新人にロキファミリアの幹部が二人も!?それにリヴェリア様が直々に指導するなんて...この少年は一体...)
「ほら、ベル。お前も自己紹介くらいしないか!」
二人のやり取りを茫然と眺めていたベルがハッとなり自己紹介をした。
「ベル・クラネルです。ロキファミリア所属です、よろしくお願いいたします!」
ベルは元気いっぱいである。エイナはニコリと笑い自己紹介した。
「ギルド所属、エイナ・チュールです。これから私がクラネルさんの担当になりますのでよろしくお願いいたします」
(クラネルという家名...たしかギルドの資料で見た記憶が...)
過去の記憶を思い起こすエイナだが難しい顔をしているとリヴェリアと目があい頷かれた。無言の圧力を受け今は考えることを止めた。
「それではクラネルさん、これより手続きを行いますので少々お待ちください」
エイナが手元の資料を確認しギルドの印を押すことによってベルの冒険者登録が完了した。
「それでは本来ならこれから講習があるんですがクラネルさんはリヴェリア様の講習を受けていただければ問題ありません。むしろ私より厳しいと思いますので頑張ってくださいね!」
こくこくとベルは頷いている。
「二人とも、少々私はエイナに用事があるから向こうのソファのところにいてくれないか?」
ベルとアイズは頷いて二人で歩いて行った。その様子を横目に小声で話し始める。
「エイナ、最近何か変わったことはないか?特にソーマファミリアに関してだ。私の気のせいならいいのだが何やら妙な動きをしていると報告が入っているのだ」
「そう...ですね。あまり大きな声ではいえないんですが...最近妙に羽振りがいいという噂を聞いています。あ、今もちょうどあそこで魔石を換金していますよ」
換金所ではソーマファミリアの団員が袋に入った大量の魔石を交換しているところである、換金が終了し袋に詰まったヴァリスが手渡される。
「230万ヴァリスになります」
ギルド職員が事務的に対応している。
「ぐっへっへっへ、本当にぼろ儲けですぜ。こんなに楽に金が手に入るならアーデの奴はもう用済みだな」
獣人の男性が大声で下品な笑い声をしている。
「おいカヌゥ!あまり大きな声を出すな。さっさとホームに帰るぞ、団長である私がわざわざ来ていることを忘れるな」
「わかってまさぁ、荷物はお持ちしますぜ」
そのまま二人はギルドを後にした。
「たしかに妙だな...ソーマファミリアは団長でもレベル2だったはずだが。それにしても先ほどの魔石を見る限り明らかに良質な物が含まれていたな。あれは深層に近いところでしか手に入らない物だが...自分たちで探索したものではないと考えると
(だが何故わざわざ魔石で支払う必要がある?...自分では魔石を交換できない?そんな奴がいるのか?...いや考えすぎか。ふーむ...念の為ロキに相談しておくか...)
「ふむ、エイナまた何かあったら私に連絡をくれ。なに、お前の立場も私はわかっているつもりだ。公に公表できることだけでよい、では頼んだぞ。二人とも時間を取らせたな、我々もホームに帰ろう」
ベルの冒険者登録も無事に終わり、多少気になることはできたが黄昏の館まで帰ることにした。
「二人とも腹は減っていないか?黄昏の館まで帰る前にどこかで食べて行くとしよう」
気が付けば少々お昼には早いがいい時間帯になっていた。午後も訓練を控えている二人の為にリヴェリア母さんは何か御馳走してくれるようだ。
「んと...ここからならじゃが丸くんの屋台が近い」
「じゃが丸くん...アイズが以前大量に買ってきた物だな。あまりあればかり食べるのも良くないが...ベルは食べたい物はあるか?」
「僕もじゃが丸くんがいいです!」
先日アイズと一緒に食べたときにベルも気に入ったようでアイズに賛成した。
「そうか...二人共食べたいというのであれば私も異論はない。アイズ、案内してくれ」
「ん、わかった」
アイズは左手にリヴェリア、右手にベルの手を握りじゃが丸くんの屋台に向かった。
「いらっしゃいませー!お客様何になさいますか?」
ツインテールの少女、神ヘスティアが元気いっぱいに接客している。
(あ...いつもの店員さん)
(あ...この間の人だ)
(なぜ神がこんな露店で...?)
「おおっと、いつも来てくれてありがとぅ!この間の少年も一緒だねぇ。おばちゃんには内緒でおまけしてあげるからどんどん買って行っておくれよー!...そういえば自己紹介したことなかったねぇ。ぼくはヘスティアっていうんだ。これでも一応神なんだぜ!」
胸をたゆんたゆん揺らしながら腰に両手を当てて自慢気だ。
「アイズ・ヴァレンシュタインです」
「ベル・クラネルです」
「リヴェリア・リヨス・アールヴだ」
三人とも簡単に自己紹介をした。
「どこかで聞いたことのある名前の気もするけど...きっと気のせいだね!君たちはどこかのファミリアに入っているのかい?入っていないなら僕のファミリアに入らないかい?君たちのような子供達なら大歓迎だぜ!」
「申し訳ないが我々三人とも既にファミリアに属しているのでその提案に乗る訳にはいかない」
「そうなのかい...いや、いいんだ。僕もよそ様の子供に手を出すようなことはしたくないからね!気にしないでおくれ」
「そういっていただけるとありがたい、その代わりといってはなんだがじゃが丸くんとやらを買っていこう。二人ともどうするんだ?」
「「小倉クリーム、クリーム増量あんこ益々で!!」
「な...なんだその呪文は...」
ベルとアイズの息の合った返答に面食らいながらもリヴェリアも同じ物を注文した。
その後三人仲良くじゃが丸くんを食べながら黄昏の館まで帰ったのであった...
いつも読んでいただいている皆様ありがとうございます。
今回はエイナさんが登場しました...がリヴェリア様がいるので出番はあまりないかと思います。
ソーマファミリアが出てきてますねー彼らの動きにも要注目です。
次回かその次くらいにまた挿絵が入りますのでご期待ください!今回はほのぼの系です