剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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時刻は午前3時ロキファミリアの皆が寝静まる頃ベルは目を覚ました。


始まり
22 訓練開始


目を覚ましたベルは自分の部屋にある時計に目を向けた。

 

(まだこんな時間か...目も覚めちゃったしどうしようかな...)

 

時刻は午前3時、田舎育ちで朝の早いベルでもこの時間に起きることはない。しかし、アイズとの訓練を控えた今興奮して目が覚めてしまったようだ。

 

(んー...よし。着替えて先に訓練所に行ってこの前あまり試せなかった魔法を使ってみよう)

 

以前魔法を試した際、自分の魔法の効果を全て確認していなかった。というのもアイズとのユニゾン魔法を使用した反動でマインドダウンをおこし気絶していたからだ。どの程度の効果がありどのようなことができるかどうかベルは試してみたかったのだ。

 

(よし。準備はいいかな、皆まだ寝てるだろうしあまり音をたてないようにしなきゃ)

 

ベルは兎鎧(ぴょんきち)を装備し白狼を腰のベルトに収納し部屋を出た。

ドアを開けると当然のことながら辺りは静まり返っている。ところどころに魔石を使用したランプが設置されており通路を照らしている為問題なく訓練所まで行くことができるようだ。中庭を抜け訓練所へと入った。

先日のアイズとベルのユニゾン魔法で破壊された訓練所の外壁はリヴェリアの指示により建築専門のファミリアが完璧に修繕を施していた。外壁の魔法体制をあげるために深層域で入手できる魔鉱石を使用し強度アップにもぬかりはない。

 

(とりあえず一回魔法を発動してみよう)

 

目覚めよ(テンペスト)(ドゥンデル)

 

ベルの体を雷の魔力がバチバチと音を立てて包む。

魔法に憧れていたベル、魔法を使うのは2回目だが顔がにやけてしまう。

 

(やっぱり身体能力アップなのかな...他になにかできることは...)

 

ベルは自分の意志で雷の魔力を操作できないか試してみることにした。体全体を覆っている魔力を足に集中しようと魔力を操作する。

 

(くっっただ魔力を操作するだけなのにすごく集中力がいるみたいだ...でも何とかできそう)

 

体全体を覆っていた雷の魔力が足に集中する。

 

(できた...このまま走ってみよう)

 

ビュンッッといままでとは比べ物にならない速度で移動することができた。しかし勢いがありすぎてブレーキに失敗してしまう。

 

 

ズシャァァァ

 

「いだぁぁぁぁっっ」

 

全力で動いたベルはそのまま派手に転倒してしまう。魔力一点に集中すると他の部分の魔力による防御力は落ちるようで防具のない掌を盛大にすりむいた。

 

ふーふー

 

涙目になりながら掌に息をふきかて考え込むベル

 

(んー魔力の調整が難しいけど一か所に集中すると威力が増すみたいだ)

 

その後も足に集中したり手に集中したり逆に広範囲に薄く広げたりと試行錯誤を続けた。

 

(こんなところかな。まだまだ考える余地はあるけど後はこれを実践にいかせるかどうかやってみなきゃ...うーん...昔おじいちゃんに聞いたお話に出てくる英雄達は掌から魔法をドーンって感じで放っていたけど僕にもできないかなー...)

 

祖父から聞いたイメージを実際に頭に思い浮かべ、右手の人差し指をたてて魔力を込めてみた。すると...小さいが雷の魔力の籠った球体が空中に現れた。

 

ベルは興奮してつい叫んでしまう。

 

「で...できたぁーーーー!」

 

「うおっっいきなり叫びやがって驚かせんな」

 

「え!?ベートさん!?こんな朝早くどうしたんですか?」

 

突然ベートが現れたことにより驚くベル。ベートは自己鍛錬でダンジョンに潜っており、熱が入り過ぎ今黄昏の館に帰ってきたところだ。そんな中訓練所にベルがいることを見つけ声をかけようとしたところのようだ。

 

「おまえこそこんな朝早くなにしてやがる。フィンに聞いたが今日からアイズと訓練なんだろ?」

 

「はい。そのことで緊張したせいか目が覚めてしまって、大分時間があったのでこの前できなかった魔法の確認をしてました」

 

そういうとベルは魔法を発動させてみせた。

 

ベートは少し考え込んでからベルに提案をした。

 

「どうせ試すなら相手がいた方がいいだろ。お前がどうしてもっていうなら俺が相手してやるが...」

 

「ええ!?僕はベートさんと訓練できるならうれしいですがベートさん寝てないんじゃ?」

 

「おまえ程度の相手するのに問題はねえ。それにアイズが来るまでだ。やるのかやらねえのかはっきりしろ」

 

ベートはそっぽを向きながら言った。しっぽだけがゆらゆらと揺れている。

 

「...ベートさん。よろしくお願いします」

 

ベルはぺこりと頭を下げた。

 

「ったくしょうがねえな。見てやるよ」

 

しっぽの動きが激しくなる...

 

ベートは腕組みをしつつベルに魔法を使ってできることを一つずつ試してみるように命令した。

ベルはベートが来る前に試したことをもう一度最初から繰り返し一つ一つベートに見てもらった。

 

「なるほどな。お前の魔法はアイズほどの威力はないがその分応用が大分効くみたいだな。だがまだまだ改善の余地がある。まずその足に魔力を集中しての移動だ。それを使って俺に攻撃をしかけてみろ」

 

ベルは頷き魔力を足に集中させ白狼を構えベートに突進した。

当然のことながらレベル差もありベートに攻撃が当たることはなく、全ての動きは見切られ避けられてしまう。避けると同時にベートはベルの正面に拳を突き出す。

 

ドガッ

 

「ぐっっ...」

 

ベートの拳がベルの腹にめり込みくぐもった声をあげる。

 

「おまえその動きの弱点がわかるか?」

 

ベルは魔法の維持に集中力を使っている為自分の動きを客観的に見ることができない。

 

ベルは首を横に振った。

 

「お前のその動きの弱点は今のところ2つある。まず魔法の維持に集中力を使いすぎて相手の動きを見れていねえ、まあそれはこれから練習していけばいい。もう一つは動きが直線的過ぎる、直線に進んでくるなら手を出しとくだけで勝手に当たるってことだ。動きが速くても来る場所がわかってんならなんの脅威にもならねえ」

 

ベートの的確な指摘にベルは落ち込んでしまう。それを見たベートはこう付け加える。

 

「俺のレベルは5だから簡単に避けられるだけだ。同じレベルなら今のままでも十分通用する威力はある、そんな落ち込んだ顔してんじゃねえ」

 

今までのベートならもっと痛烈な言い方をしたかもしれないが、フォローを入れるあたりベートも少しづつ変わろうとしているのかもしれない。

 

(直線的にならないようにフェイントとかも入れてみろってことだよね...上手くコントロールできるように練習しなきゃ。僕はもっと強くならなきゃいけない)

 

その後も何回もベートを相手に攻撃をしかけ今の自分でできることを確かめ鍛錬をした。

 

「はぁはぁはぁ」

 

荒い息をつくベルだがその表情は自分の力を試すのが楽しいという表情をしている。ベートもまたレベル1であるのに自分のアドバイスを理解し工夫しながら向かってくるベルに驚きと大きな期待を持つようになっていた。

 

「もうすぐでアイズが来る時間だから次が最後だ。さっき空中に魔力を維持していただろ?それを俺に向かって全力でぶつけてみろ。遠距離からの攻撃もできれば戦いの幅が広がる」

 

「わかりましたやってみます!」

 

ベルは魔力を集中させ空中に電気の魔力の球体を出現させる。その球体をベート目がけて投げつけた。

バチバチと音を立てながらベートに迫るが目の前まできたところですさまじい勢いの蹴りが球体を捕え別の方向へ弾き飛ばした。

 

「これじゃまだ実戦じゃつかえねえな、スピードも威力もまだまだだ。手数も少ねえ、上層では通用するかもしれねえがお前が更に上を目指すならもっと工夫してみろ」

 

そういってベートは疲労でその場にへたりこむベルに1本10万ヴァリスもするハイポーションを投げてよこした。

 

「あ...あのこれは?」

 

「今のままじゃこれからアイズと訓練するときに動けねえだろ。それ飲んで回復しとけ」

 

「あっありがとうございますベートさん」

 

そういって笑顔でベートにお礼をいった。

 

「勘違いするんじゃねえ、お前が疲れて訓練できなかったらアイズに何されるかわかったもんじゃねえからな」

 

そういうとベートはポケットに手をつっこみ訓練所を後にした。

 

ベルはベートを見送った後も指導してもらった事を思い出し、球体を出す時にかかる溜めの時間や戦闘の際にどう応用しようか考えながらアイズが来るまで頭をひねらせていた。

 

(僕とアイズさんのユニゾン魔法...二人の魔法の特徴が混ざるとしたら...魔力を打ち出すことも可能なのかな...)

 

ベルはアイズとの魔法の威力をまだ知らない...

 

アイズ視点

 

(明日からベルとの訓練...楽しみ...)

 

アイズは自室のベットに寝転がりながらベルとの訓練について考えていた。ベルの為にも心を鬼にして厳しく指導するつもりだ。

 

(私との訓練で流す汗と血の量だけベルのダンジョンでのケガをする可能性は低くなる...だよね、フィン)

 

アイズは自分がまだかけだしだった頃に団長であるフィンから指導を受けていた事を思い出していた。

 

(フィンや皆に厳しく訓練してもらったから私は今まで生きてこられている。...でも厳しくしてベルに嫌われたらどうしよう...)

 

アイズは枕を抱きしめベットの上を転がり目を瞑ればそこにはベルの笑顔が浮かぶ。

 

(まだあって数日なのに私毎日ベルの事を考えている...ベル...ベル・クラネル...そういえばベルの家名はお父さんと同じクラネル。クラネルって家名珍しくないのかな...お父さんに似ているベル。もしかしてベルはお父さんの生まれ変わり?...もしくわ私の弟だったり...そんなことある分けない...よね。ベルはベル。私たちロキファミリアの仲間で私の英雄になってくれると言ってくれた大切な人...絶対に死なせたくない)

 

アイズはベルを死なせない為にも厳しく訓練を行う事を改めて決意して眠りについた。

 

翌日

 

時刻は午前4時

 

アイズは目を覚まし、ベルとの訓練の為に準備を始める。顔を洗い美しい金色の髪を整える。ベルに眠そうな顔など見せられないようで今日は一段と用意に時間がかかっている。

愛用の鎧と剣を装備しリヴェリアとフィンから訓練をするならと渡されたポーションが詰まったバックを肩にかける。時間の確認をすると現在の時刻は午前4時30分。まだ時間があるのでベルを起こしに行こうと部屋へと足を運ぶ。

 

コンコン

遠慮がちにノックの音がする。

 

「ベル起きてる?」

 

扉を開けるとそこにはベルの姿はなくきれいに整えられたベットが置かれているだけだった。

 

(ベルがいない..)

 

ベルの寝顔を見ようと思っていたアイズは少しだけ残念そうだ。

 

(先に訓練所にいったのかな...私も早く行こう)

 

アイズは足早に訓練所へと向かった。

 

 

 

 




読んでいただいている皆様お久しぶりです。兎魂です。

修正していたデータが吹っ飛び心が折れておりました。文章もまだまだ上手くなっていませんがまた少しづつ勉強しながら書いていこうと思っております。

さて今回はベルとベートの訓練風景?でした。ベルの魔法は応用力がある...それだけです<m(__)m>少々強引かもしれませんがこんな魔法だったらいいなという感じで書きました。

次回はアイズとの訓練です。

これからも頑張りますのでよろしくお願いいたします。

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