ロキファミリアの夕食の形式は料理が並べられているテーブルから各自が好きな物を好きなだけ取っていくというタイプの形式だ。現在テーブルの上にはベルの作った料理の他にもおいしそうな匂いを漂わせている料理が数多くある。
最初にベルの料理に手を付けたのはロキだ。
「うまそうやなー!これどんな料理なん?」
ロキが料理の匂いをふんふん嗅ぎながらベルに尋ねた。
「これは僕が住んでいた村に昔から伝わる料理なんですよ!滋養強壮?にいいとかで狩りに行く前によく食べていました」
「なるほどな!スタミナ料理っちゅうやつか!ありがたく食べさせてもらうでぇ」
そういってロキは自分の食事のトレイの上に山盛りに乗せて行った。
「あ...あのーロキ様...そんなに量多くないのでほどほどに...」
今のロキのような盛り方では量が全く足りないの事に今更ながら気が付きおろおろしている。
「ロキ...持っていきすぎだよ...ベル、君の料理はとてもおいしそうだ。君が遠征についてこられるようになるのを待っているよ」
「全くロキは...少しは皆の事も気遣って持っていけばいいものを...ベル、お前の料理ありがたくもらうぞ」
「これはうまそうじゃ!がははは、どこかのがさつ者に教えてやってくれい」
団長であるフィンやリヴェリア、ガレスといった最高幹部達に褒められ照れつつ顔がにやけるのを止められないベルである。三人共、皆の分も残そうと量を少なめに乗せて行ってくれた。
当然のことながら他の団員達は幹部達に遠慮して先に他の料理に手を付けている。
「わーおいしそうだね!やっぱりベートの分食べちゃおうか...」
「やるわねベル...私より確実に女子力高いわ...今度レシピ教えてね!」
ティオネ、ティオナの双子もおいしそうな料理にテンションが上がる。
「ミアさんにもいろいろと教わったのでちょっとだけ自信あります」
「ベル...すごいね...」
(ベルの料理絶対おいしいよね...私大丈夫かな...)
アイズは心なしかショックを受けているようにも見える。
「あ...すみません、一応ベートさんの分も用意してありますので席の方に運んで置きますね!」
そういってベートの分が入った器をトレイに乗せて席へ運んだ。
ベルも一通り配り終わりアイズが隣の席を空けておいてくれたのでそこに座り夕飯を食べ始める。
「うまいでぇーーー!ベル、ウチと結婚しよか!」
ゾワッッ
当然皆冗談だとはわかっているがほんの一瞬だけ動揺したものがいた。...もちろん...アイズである。
この動揺に気が付いた者はリヴェリアしかいなかった。
(アイズ...本当に変わったな。母親代わりとして寂しいようなうれしいような複雑な気分だ...)
物思いに耽りながらベルの料理を口に運ぶ。
(う...うまいな...)
「皆さんのお口にあったようでよかったです...ベートさんにも食べてもらいたかったんですが」
ちらりとベートが座るであろう席を見る。
「いいよあんな奴!あたし食べちゃおーーいたぁぁ」
「おい、馬鹿ゾネス!何やってやがる!」
自主トレーニングから帰ってきたベートがゲシッとティオナの背中を蹴りつける
「なによー。ベートが来るの遅いからいけないんでしょ」
「あんだと?」
「なによ?」
「あ...あのーせっかくの夕食ですし楽しく食べた方がいいかと...」
「ベルのいうとおりだ、喧嘩をするなら外でやれ」
ベートもティオナもリヴェリアとベルに言われてしぶしぶ喧嘩を止めることにした。
(しかしこの料理なつかしい匂いがするな...この匂いどこかで...)
「この料理作ったのだれだ?」
「あ...僕です!ベートさんのお口にあうかわかりませんが...」
目の前の湯気が立ち上る料理を一口頬張る。
ドクンッ...
ベートの頬を一滴の涙が伝っていく...
「ちょっ!ベート!?」
(思い出したぜ...この味は俺の村の...)
ベート回想
ベートの両親は村で一番の狩人だった。恩恵の力に頼らず自身の身体能力だけで狩りを行っていた。
もちろん個々での狩りも得意だがもっとも得意なのは集団での狩りだった。ベートの両親は集団での狩りを【和】と呼んでおり仲間を大切にすることをベートにもしっかりと教育していた。
「母さんこれなんて料理なの?すごくおいしいよ!」
ベートは母の手作りの料理にがっつく。
「この料理は昔からこの村に伝わる伝統料理なのよ!狩りに行く前には必ずこの料理を食べて元気を出すの。ベートも今日から一緒に狩りに行くからたくさん食べるのよ!」
今日はベートが初めて両親と仲間と共に森に狩りに行く日だ。狩りに出て成果をあげることが一人前の証なのでベートのやる気も高い。
「今日は絶対成果あげるんだ!」
「ベート。お前の身体能力は年の割に非常に高い、狩りも問題ないだろう。だが大事なのは【和】だ、それを忘れるんじゃないぞ!」
ベートは笑顔で頷く。
「一人はみんなの為に、みんなは一人の為にってことでしょ?」
「そうだ。常に周囲に気を配ることを忘れるな。仲間を大切にな!」
「うん!僕仲間を大事にするよ!」
...時は流れる...
黒龍来襲により破壊される村、いたるところから火の手があがり悲鳴が聞こえる。焦げ臭さや血の匂いで鼻がいかれそうだ...
「ベート!逃げるぞ!こいつらは我々では倒せない」
黒龍の眷属が村を焼いていく、ベートの家も焼かれ両親と共に町の外へ逃げる途中だ...
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう...なんでこんな奴らが村に」
「わからない...だが今この村にはオラリオで最強と謳われるゼウスファミリアの方々が来ている。その人たちならこいつらにも勝てるはずだ...」
「何言ってんだよ父さん、この村は俺たちの村だ!俺たちが村を護らないと!今も仲間が死んでいってる...」
ベートはそういってナイフを持ち上空から来る敵に飛びかかろうとする
「駄目!ベート!」
上空からレベル4相当のワイバーンがベート目がけてすさまじい速さで爪を振り下ろす。
「あ...」
ザシュッッ
ベートを庇った母親の背中を抉ぐる、致命傷だ...血が溢れ血だまりをつくる。
「ベート...逃げな...さい...」
母親の体から力が抜けていく...
「あ...ああ...あああああーーかあさんーー...よくもかあさんを...」
(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ...)
ベートは自分が相手の力量を見誤ったせいで母親をことが死なせてしまったことによりパニックに陥っている
(俺のせいだ...俺が母さんを殺した...俺が弱いせいで母さんを殺したんだ...)
ベートは横たわる母の横に座り込み茫然としている。
ワイバーンは上空を旋回していたが
「ベート!立ちなさい!悲しむのは後だ!」
父親も辛いはずだがワイバーンをけん制する為に弓を放つ。さすが村一番の狩人であるベートの父、的確に相手の動きを先読みしベートに近づけないようにしている。しかし圧倒的なレベルの差がある相手になすすべはない。
(動きが速すぎる...このままでは...!)
「危ない!」
速度を上げたワイバーンの爪がベートに当たる瞬間自分の体を強引にねじ込む。
ドスッッ
「ぐっっう...ごほ...」
「と...父さん...」
(俺が弱いから...弱いから誰も護れない...弱さは罪...弱い奴は屑だ...俺も...屑だ...)
ワイバーンに向かってすごい速さで白髪の男が突っ込んでいき切り伏せる。
ベートを助けた白髪の男が声をかけてくる。
「ここにいては危険だ 辛いだろうが今は逃げなければ」
(うるせえ...)
「俺に触るな こいつら絶対ぶっ殺して父さんと母さんの敵をとってやる」
半ば自暴自棄になりナイフを構え走り出す...
「今は時間がない、すまない」
ドッ
ベートは声を出す暇もなく気絶した...目覚めたのはそれから数日たってからの事である。ベートはゼウスファミリアの救援に来ていたロキファミリアに保護されたいた。
黄昏の館医務室
ベートが目を覚ます。
「ここは...!俺の村は!」
起き上がりあたりを見渡すも今自分が置かれている状況がわからない...
そこへロキファミリアの幹部であるガレス・ランドロックが入ってきた。
「どうやら目を覚ましたようじゃな...具合はどうじゃ?」
「誰だおっさん...ここどこだ?俺の村は...村のみんなはどうなったんだ?」
(このぼうずには全て知る権利があるか...)
ガレスは悲痛な面持ちで後に起きた出来事を語った。村は壊滅、村人は最初の方で逃げた者達以外は全員死亡が確認されたということを話した。
「くそ...ちくしょう...」
「おい...ぼうずどこへ行く!?」
ベートは医務室を出ていく宛てもないまま走り出した。
(どこへ行こうというんじゃぼうず...)
数日後
ベートはこの数日間情報収集をしていた。自分の町の事、強くなる方法、そして誰がこのオラリオで強いのかを...
「おいおっさん!俺と戦え」
遠征の準備で町に出ていたロキファミリアの最高幹部であるガレス、そして団長フィン、副団長リヴェリア
唐突に勝負を挑まれて困惑する。
「こらぼうず、今までどこにいっておったんじゃ!帰ってくると思ったら帰ってこんし心配してたんだぞい」
「そんなことどうでもいい、おっさん強いんだってな?俺と戦ってくれよ」
ガレスは困った顔をしてフィンとリヴェリアを見る。
「きっと彼にもなにか理由があるんだろう...少しだけ付き合ってあげたらどうだい?」
「しょうがないのー素手で相手してやる...打ち込んで来るんじゃ」
「ぶっ殺す...がるるる。うらぁーーー」
ベートはがむしゃらに突っ込みガレスにナイフを叩きつける。
「ふん!」
ガレスは無造作にナイフを掴みそのまま地面に叩きつける。
「がはぁ、チッ...強いな...」
ベートは一瞬で相手との力の差を感じた。
「まだまだぁーー!」
それでもなお突進していく。
何回も何回も何回も...突進してはガレスに倒されるベート...
「もうあきらめたらどうじゃ?恩恵も刻んでおらんお前にはどうやっても勝てん...」
「俺は強く...なりてえんだ...俺が弱かったせいで母さんも...父さんも死んだんだ...生き残った俺が...俺が皆の仇を討つ。その為には自分の強さを証明しなきゃいけないんだ。俺は屑のままで...いたくないんだ...」
幹部三人は神妙な顔つきをしている。家族が...仲間が...死ぬ悲しさは自分たちもわかっているのだ。
「儂らと共に来い...お前を強くしてやる」
「誰がてめえらなんかの力なんか借りるか...」
「お主名前は?」
「ベート...ベート・ローガだ」
「ベートよ少し場所を移動するぞ...ついてこい」
ベートはよろよろとガレスの後についていった。
「ここならいいじゃろ」
ここは町のはずれにある広場、ここなら誰にも迷惑はかからない...
「儂の力を見せてやる...それでも儂に勝てると思うなら好きにするがいい。ただしお前が無理だと判断したのなら儂らと共に来い」
「...わかった...」
フィンとリヴェリアは万が一にも他に被害が出ないように構えている。
「ベートよ...構えておれ」
「ぬおおおおおぉぉぉぉ!」
ゴゴゴゴゴゴ...
ガレスの体がらすさまじい殺気が放たれ周辺にいた鳥は一斉に飛び立った。
「う...あ...くそ...」
ガレスの圧倒的な力の前にベートの体はすくんでしまい動こうにも動くことができない...
「ちくしょう...おっさん、あんた達といけば強くなれんだな?」
「そうじゃ、儂に勝ちたいなら...儂達と共にこい」
「俺はあんたに勝ちたいんじゃねえ、俺は俺に勝ちてえんだ...弱い...自分に...」
そういったままベートは気絶した。
ガレスは気絶したベートを抱え黄昏の館に帰り、後にロキがベートの恩恵を刻むことになる。
それから十数年...一日も休まずただ強さのみを求め体を鍛えてきたベートは若くしてレベル5、第一級冒険者となった。
父や母から教わった【和】の事も忘れただ己を鍛え弱者は屑という考えを持ったままで...
時は戻る
(チッ昔を思い出しちまったじゃねえか...【和】か懐かしいな。)
「ベート...【和】を大切にな」
父と母の声が聞こえた気がした。
(...わかったよ...)
がつがつがつがつ
ベートはベルの料理を一気に頬張る。
「ちょっとベート!一体どうしたってのよ!いきなり泣いたり食べたりわけわかんないわよ!」
「ええと...ベートさん?」
ベートは立ち上がりつかつかとベルの方に歩みよるとベルの頭に手を置いた。
「ありがとうよ...ベル。おまえのおかげで大切なことを思い出したぜ...何かあったら...俺がお前を護ってやる...」
最後の方は声が小さくよく聞こえなかったがベルは首をかしげながらもうなずいた。
ベートは一瞬満足そうな顔をしてそのまま食堂を後にした。
「なんなのよあいつーーー。ベルあいつになんて言われたの?」
ベルはにこっと笑い答えた。
「秘密です!」
ティオナがむむっと頬を膨らませる。
アイズはベートから放たれる気が柔らかくなっている事に気が付いた。
「ティオナ、ベートもベルの事を気に入っているということじゃよ。あ奴もこれまで以上に強くなるだろうな...昔が懐かしいわい、のう?」
そういってフィンとリヴェリアの方を振り向くと二人とも笑っていた。
ティオナはよくわからないといった顏をしていたがそのまま食事の続きをし始めた。
そのまま食事は進み団員達はそれぞれの時間を過ごしていた。
「ベル...明日からベルの訓練をするね、リヴェリアが訓練場の整備終わったって言ってたから明日朝5時にそこでいいかな?」
「はい!よろしくお願いいたします!訓練は何をするつもりですか?」
くすっとアイズは笑う
「秘密!明日のお楽しみ」
アイズの笑顔にドキドキしつつ頷く...
ベルとアイズの壮絶な訓練が始まる...
いつも読んでいただいている皆様ありがとうございます。
今回はベートのお話でした。個人的にベート悪い奴だと思っていないのでこんな感じならいいなという思いです。
次回はアイズとの戦闘訓練。ギルドでの冒険者登録など書いていきたいと思います。
原作読み直すのと 自分の書いている作品と見返して文章頑張って修正したいと思います。
次回更新まで時間かかるかもしれませんがよろしくお願いします。
この部分こう書いたら?等の意見ありましたらどしどし連絡ください。
現在ベルのふたつな ベルの必殺技の名前 まだしっかり決まっていないアイズとのユニゾン魔法の名前 等検討中です。
またそちらも何かありましたら連絡ください。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。
あくまで想像の内容ですので原作は関係ありません<m(__)m>