剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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魔法を確かめた日の午後


18 ベル・クラネルの一日

「アイズさん...すみませんでした...」

 

ベルがズーンと落ち込んでいる。あの魔法を使った後マインドダウンの影響でかなりの時間膝枕をしてもらっていた。

 

「ん...気にしないで」

 

心なしかアイズはツヤツヤしている。ベルを膝枕している間中ベルの体重を肌に感じてひたすら髪を撫でていたアイズの心はとても癒されていた。その反面ベルはアイズに膝枕してもらっている状況が恥ずかしくて申し訳なくて泣きそうになっていた。

 

「でもベルと私の合体魔法?すごい力だったよ...。リヴェリアからベルがランクアップするまで使用禁止っていわれるぐらい強力...みたい」

 

「そ...そうなんですか...僕あまりあの時の記憶がなくて...そういえばランクアップってどうすればできるんですか?」

 

ベルはアイズに尋ねる。

 

「ランクアップはね...ベル。簡単に言えば自分より強大な相手を撃破すること。つまり偉業といえるほどの事を成し遂げなければならないの。」

 

「偉業ですか...でも自分より強い相手って勝てるんですか??」

 

「自分より強い相手を倒すためにはパーティを組んだりするの。それに自分の実力より強い相手を倒すために技だったり相手との駆け引きが重要になるんだよ。そのことはこれから訓練しながら教えていくね。」

 

アイズは自分の経験からランクアップに必要な事をベルに伝えた。いつもより饒舌なのは気のせいだと思う...

 

「ちなみにアイズさんはどのくらいでランクアップしたんですか?」

 

 

「私の場合は...んと...実際にフィン達と訓練を始めてから1年...かな」

 

ベルは目を見開いた。

 

「ええ!?アイズさんでも1年かかったんですか!?...僕がランクアップするのなんていつになることやら...」

 

ベルはひどく落ち込んでいるようだ。

 

「んとね...ベル。私の予想だとベルは私なんかよりもっと早くランクアップすると思うの。ベルは本当に強くなると思うよ?私を信じて...?」

 

「アイズさん...。」

 

ベルはアイズの気持ちがうれしく落ち込んでいた気持ちも高揚してきた。

 

「そろそろ動けそう?」

 

ベルは立ち上がり動けることを確認する。

 

「大丈夫みたいです!!えと...これからどうしましょうか?」

 

「多分今日は訓練は無理だからロキのところ行ってヘァイストスファミリアに行こうか。」

 

ベルの双剣のこともありへファイストに会う予定だったのでロキの都合がよければこのまま向かうつもりだ。

ベル自身も自分の防具兎鎧(ぴょんきち)の製作者に会いたいと思っていたのでちょうど都合がよかった。

 

トントン、ノックの音がする。

 

「ロキ...いる?」

 

「おお!アイズたん!ベルに何かあったん!?」

 

アイズとベルがロキの部屋へ入る。

 

「ベル!体は大丈夫なんか!?どこか痛いとこないん!?」

 

ロキは本気でベルを心配しているようでふざけた態度は一切見せなかった。

 

「大丈夫ですロキ様。ご心配おかけしてすみません。もう大丈夫です!」

 

「そかぁーーよかったなぁベル。」

 

その言葉に安心したロキはベルの髪をわしゃわしゃと撫でまわす。

アイズも今回ばかりはロキの行為を止めなかった。ロキが慈愛に満ちた表情だったからだ。

ベルもそれを受け入れている。

ひとしきり撫でまわした後ベルを解放した。

 

「ふぅっっー堪能したわぁー」

 

ロキは満足そうだ。ベルは体力を吸い取られたようにげっそりやつれていた...

 

「んでウチになんか用があったんやないん?」

 

「ロキ。ベルが今日はもう訓練できなさそうだからヘファイストスファミリアに行こうかと思ってたの」

 

ベルもアイズの隣でコクコク頷いている。

 

「おお!そうなんか。そういえばファイたんにベルのこと紹介する予定やったわ。ちょうどええ、一緒に行こか!ああ...ベル。双剣忘れんといてなー」

 

ベルは大丈夫ですと背中を向けた。ベルの腰にはしっかりと双剣が携帯されている。ロキは満足そうに頷きアイズとベルが来る前に読んでいた書類を机にしまい、二人の手を握ってヘファイストスファミリアのホームに向かった。

 

 

 

神ヘファイストスのホーム

 

「いらっしゃいま...これはロキ様!ようこそおいでくださいました。」

 

「剣姫!?剣姫が来たぞぉー!」

 

「キャー!かっこいいぃぃー!」

 

周囲にいる他の客が声をあげる。ロキは片手を挙げて挨拶をしアイズはペコっと頭を軽く下げた。ベルはというと周囲をきょろきょろ見まわし改めて神ロキとアイズのすごさを知った。

 

「ロキ様って偉いんですね!それにアイズさんすごい人気ですね!」

 

ベルは素直に感想を述べる。

 

「むふふ。せやろ?ウチの事もっと褒めてええでぇー!」

 

ロキは機嫌をよくしてベルの頭を撫でる。

 

「ん...そんなことないよ...」

 

アイズは特に興味がないようだった。

 

ロキを先頭に通路を進んでいくとヘファイストスの執務室へと着いた。

 

「ファイたん...入るでぇ!」

 

ロキは中にいるであろうヘファイストスが返事をする前に扉を開けた。ヘファイストスは団員と話をしていたようで怪訝そうな顔を向ける。

 

赤い髪をして東方の者がよく好んで着る着物のような服を着た青年も機嫌が悪そうだ。

 

「ロキ、それに隣にいるのは剣姫ね。そしてその隣にいるのがもしかして...」

 

「そや。この子がファイたんの双剣使っとるベル・クラネルや!よく見てみい」

 

ロキが含んだ言い方をする。ヘファイストスはベルの魂を神の目で見た。

 

(美しい魂...こんな美しい魂をみたのはダグラス・クラネル以来ね...なるほど。この子なら使えるかもしれないわね、それにしてもなぜか魂がダブって見えるわね。面白い...)

 

ヘファイストスはロキの方を見てうなずいた。

 

「ベルと呼んでもいいかしら?」

 

ベルは緊張しているようで黙ったまま頷いた。

 

「ベル、この双剣の能力を聞いているかしら?この双剣は...」

 

ヘファイストスは自分の過去の過ちを含め双剣の事を話した。

 

「この話を聞いてもこの双剣を使う覚悟はあるかしら?」

 

「こここここの双剣あの英雄ダグラス・クラネルが使っていたものなんですか!?そんなものをおじいちゃんは何故...」

 

ベルは双剣の能力の事より英雄が使っていたということに興奮しているようだ。そしてそんな大事なものをなぜ祖父が持っているのか考えたがわからないようだった。

 

(お父さんの武器...)

 

アイズも複雑な表情をしている。

 

「もう一度聞くけどこの双剣を使う覚悟があるかしら?」

 

ベルは真剣な表情で考えた後ヘファイストスの瞳を見ながら答えた。

 

「覚悟なら...あります。先ほどのヘファイストス様の話によるとこの双剣は僕を選んでくれたということですよね?少し怖い気もしますし、まだ使いこなせる自信はありません。ですが僕も英雄ダグラス・クラネルのように強くなりたいんです。皆を護れるようになりたいんです」

 

ヘファイストスはベルを見てくすくす笑った。

 

「何を笑っているんですか?」

 

ベルは彼にしては珍しく怒った様子で声を荒げた。

 

「ごめんなさいベル。あなたを笑ったわけじゃないのよ...あなたが今言った言葉と同じようなことをダグラスも言っていたからおかしくなって...」

 

「ええ!?...そ...そうだったんですか。すみません。大きな声を出してしまって」

 

「いいのよ。私が悪かったから。ベル、あなた彼にそっくりよ?外見もそうだけどその心意気まで。きっとこの双剣を使いこなせるわ。ベルに合わせて打ち直すからしばらく時間をちょうだい。この剣の能力もできる限り調整してみるわ」

 

そういうとベルからヘファイストスは双剣を受けとった。双剣は白く光り輝く。

 

「ロキ、他に何か用事はある?ないなら私はこの剣の研究と打ち直しをしたいのだけど」

 

「そやそや。ファイたんのところにヴェルフ・クロッゾってやつおる?」

 

ロキがそういうと先ほどまでヘファイストスの隣にいて今は視線を向けないようにしていた青年がロキに向かって言い放った。

 

「俺は誰になんと言われようが誰が相手だろうがいくら金を積まれようが魔剣は打たない」

 

ロキはいきなり食って掛かってきた青年に対してキレそうになるがベルやアイズの手前我慢する。

 

「何を勘違いしているかわからんしウチは興味もない。おまえそもそも誰や?」

 

「俺はヴェルフ・クロッゾ。あんたは俺に魔剣を依頼しに来たんじゃないのか?」

 

青年もイライラした様子で答える。最近彼の元に魔剣を造ってくれという依頼が多く集められているようだ。

 

「ヴェルフっていったか?みたところレベル1みたいやけど...レベル1の鍛冶師に魔剣なんか打てる訳が...ん?...そういえばクロッゾって家名どこかで聞いたことがあるような気がすんねんけど...」

 

ピリピリした空気の中視線を外したヴェルフがベルの方を向いた...瞬間...

 

「も...もしかして...その防具は俺の兎鎧(ぴょんきち)じゃないか!?」

 

うおーーとベルの方にヴェルフが突進してベルの装備している防具を確認する。

 

「やっぱり兎鎧(ぴょんきち)だ!俺の防具を使ってくれてるのか!使い心地はどうだ!?耐久力は!?ああーーうまくお前の体に合ってないな...すぐ調整しよう!」

 

先ほどの雰囲気とは打って変わりヴェルフは自分の防具を使ってもらえてうれしいようで一方的に話を進める。

 

「ええと...あの...この防具に触った瞬間気になってですね...」

 

ベルはヴェルフの豹変ぶりに戸惑っている。

 

「こら、ヴェルフ。相手が困っているでしょう?自重しなさい!」

 

ヴェルフはハッとなりベルから一歩離れる。

 

「すまねえ...俺の武具が初めて使ってもらえてついつい興奮しちまった」

 

ヴェルフは素直に謝った。

 

「いえいえいいんですよ。気にしないでください。今日はこの防具の製作者であるクロッゾさんに僕が会いたくて来たんです。だからそのー...魔剣?がどうこうというのは違くてですね...」

 

ヴェルフはしまったという顏をした。完全に勘違いをしていたのだ。ただ異常なまでの魔剣に対しての反応はなんだったのだろうか...

 

「す...すみませんでしたぁ」

 

ヴェルフは腕組みをして先ほどのベルとのやり取りを眺めていたロキに対して深々と頭を下げた。

 

「いやウチはおもろい奴は好きやから気にせんでええ。それにベルもお前のこと気に入ったみたいやしな。魔剣がお前にとってなんなのかはわからん。やけどそれほど大事なことなんやろ?」

 

ヴェルフは無言で頷いた。後にヴェルフはベルに語ることになる。

 

「ヴェルフっていったか...ベルも少し二人で話したいようやしウチとアイズたんしばらく外にいるからゆっくり話していいで?」

 

アイズも先ほどのやり取りを見ていてロキと同じ思いだったらしく隣で頷いていた。

 

「なら私もしばらく外に出ているから二人でゆっくり話してみなさいな」

 

ヴェルフはありがとうございますと3人に頭を下げた。扉をあけ3人は退出した。

 

「さて...自己紹介からしっかりやろうぜ!俺の名前はヴェルフ・クロッゾ。ヘファイストスファミリアのレベル1の鍛冶師だ」

 

ヴェルフはそういって右手を差し出した。ベルはその手を握り自己紹介をする。

 

「ベル・クラネルです。ロキファミリア所属のレベル1の冒険者です!」

 

よろしくお願いしますっとベルは頭を下げた。

 

「なあベル!俺の防具のどこがよかったか教えてくれないか?冒険者に俺の防具使ってもらうの初めてなんだ!」

 

ヴェルフは爽やかな笑顔を浮かべてベルに尋ねる。

 

「えと...クロッゾさんの...」

 

ベルがクロッゾという家名を言うとヴェルフは顔をしかめた。

 

「ベル...そのクロッゾさんっての止めてくれないか?そういわれるの嫌いなんだ...」

 

「じゃあヴェルフさん?」

 

「さんづけか...まあ今はいいか...んでどこがよかった!?」

 

うーんと考えた後ベルは答えた。

 

「ヴェルフさんの防具をみた瞬間すごく惹かれて...それで装備してみたらとても軽いのに丈夫で動きやすくて僕にぴったりだと思ったんです」

 

ヴェルフはふんふんいいながらベルの意見を聞いている。

 

「うまく言えないんですが...なにか運命的なものを感じたんです」

 

ふむ...とヴェルフも腕を組んで考え込んでいる。

 

(ベルはいい目をしている、純粋に俺の防具が好きだという気持ちが伝わってくるぜ...こういうやつを俺は待っていたんだ...)

 

「なあベル。お前はロキファミリアだからウチの他の...俺よりもっとすごい職人が作った武具を使える状況にもある。今回ロキファミリアに試作品としてもっていったものの中で俺の防具が一番レベルが低いといっても過言ではない。その中で俺の防具を選んでくれたお前に俺も運命を感じたんだ」

 

ヴェルフの気迫のこもった言葉にベルはごくっと唾を飲み込む。

 

「俺はまだレベル1で鍛冶のアビリティもない職人だ...だがいずれ団長椿・コルブランドを超える武具を造る。そして最終的には神を...ヘファイストス様を超える職人になってみせる。だから...俺をお前の専属として雇ってくれないか?」

 

「あ...あの...ヴェルフさんはなぜ僕にそこまで...?僕はまだダンジョンにも潜ったことがない初心者なんですよ!?」

 

ベルはヴェルフが自分にそこまでいう理由がわからなかった。

 

「こういう職業やっているとな...ベル。使い手を見る目が大事になってくるんだ、自分が魂を込めて造った武器や防具を大事にしてくれるかどうかってさ...。俺は物心ついた時から親父やじいさんの手伝いをしながら武具を造ってきた。その経験が...俺の職人としての血が...魂が...お前を逃がすなっていっているのさ。お前はすげえ存在になるってな」

 

ヴェルフの言葉をきいてベルも己の決意を言葉にする。

 

「僕は...まだまだ弱いですがいずれは英雄と呼ばれる存在になりたいんです!仲間や家族を護れるような存在に...アイズ・ヴァレンシュタインを護れるような存在になりたいんです!」

 

お互い顔を見合わせ笑いあう。

 

「ベル...お前もでっかい夢もってんなー!いいぜそういうの!益々気に入ったぜ!それにしてもあの剣姫の英雄になるなんておまえ...もしかして剣姫に惚れてるのか?」

 

ベルはボフッと吹き出す。

 

「いえ...あの...そういうのじゃなくてですね...あのー...」

 

ベルは顔を真っ赤にして俯く。

 

「はっはっは。いいって!わかったよ!それでどうだ?ベル」

 

「ヴェルフさん、僕もヴェルフさんの神を超える武具を造るって言葉信じたいと思います!まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします!」

 

「おう!契約成立だ!これから俺とお前は対等で仲間だ!俺の事はヴェルフって呼び捨てにしてくれよ」

 

ベルは大きく頷いた。

 

「うん!よろしく...ヴェルフ!」

 

ガシッともう一度握手をした。

 

「ヴェルフ...ひとつ筆問してもいい?」

 

ヴェルフは首をかしげる。

 

「ん?なんだ?」

 

「魔剣ってヴェルフにとってなに?」

 

先ほどのロキとのやり取りをみていてヴェルフにとって魔剣というものがなんなのかベルは知りたかったのだ。

 

ヴェルフの表情が暗くなる。

 

「そうだな...ベル。もう少し俺の気持ちが落ち着いたら教える。...それでもいいか?」

 

ヴェルフがそれほどまでに話さない理由...よほどのことがあるのかもしれない。

 

「うん。わかったよヴェルフ!ヴェルフが話せるようになったら話してよ!」

 

ありがとう。助かる...そういってヴェルフはまた爽やかに笑った。

 

「さてと...当面の問題として俺の実力不足がなぁー俺の力量がベルの命にかかわってくるんだから早くランクアップして鍛冶のアビリティ手に入れないと...」

 

バターンッッドアがすごい勢いで開く。

 

「話は聞かせてもらったぞヴェル坊。手前がお前のランクアップ手伝ってやろう。無論拒否権はなしじゃ!」

 

 

 

 

時は少し遡る

 

扉をでたロキは扉を閉めた瞬間扉にピタッとくっつき中の会話を聞いていた。

 

「くふふ...なんやおもろい展開になりそうやなー」

 

アイズは首をかしげている。

 

「ロキ...?なにやってるの?」

 

にやにやしながらロキは答える。

 

「なんかあの二人ええ感じやん?最初はちょいむかついたけどなんやええ子やないか。なあファイたん?」

 

ロキはヘファイストスの方に視線を向ける。

彼女は額に手をあてて溜息をつきながら答える。

 

「あの子、すさまじい能力と才能をもっているのだけれど...なかなか複雑なのよ...」

 

ロキは何かを思い出したように手をポンっと叩く。

 

「思い出したでぇー!クロッゾの一族...たしかかつて魔剣を大量に造った一族やな」

 

「そうよ。クロッゾの一族...初代クロッゾはただの鍛冶師だった。ただ純粋に鍛冶をするのが好きな男だったらしいわ。ただある日、彼が湖のほとりでモンスターに襲われて大けがをした精霊を助けたの。ただ助ける時に彼も生死を彷徨う大けがをした。その時に精霊が彼に自分の血を飲ませて助けたみたいなの。それ以来精霊の血の恩恵からなのか彼は様々な能力をもつ強力な魔剣を打てるようになったの。ただ...」

 

ヘファイストスは悲しそうな顔をする。

 

「その鍛冶師は自分の力だけで鍛冶師として最高の武具を造ることが夢だったの。それが精霊の血の恩恵でもう夢が叶うことはなくなった。絶望したらしいわ。それ以来彼は鍛冶師を止めて暮らしたそうよ。でも...彼の子供が生まれてその子が鍛冶師になりたいといって剣を打ったの。その剣は強力な力を持った魔剣だった...それ以来代々クロッゾの一族には誰にでも強力な魔剣が打てるようになってしまったのよ」

 

(精霊の血...私にも流れている血...」

 

アイズは自分の手をギュッと握った。

 

「何代目のクロッゾかはわからないけど王国がその魔剣の力に目を付けたの。クロッゾの魔剣は一振りで海を燃やし、一振りで大地を割ったそうよ。王国はクロッゾの一族に貴族の地位を与えて定期的にクロッゾの魔剣を献上させた。金と地位に目が眩んだ一族の者たちは次々に造ったそうよ。王国は他の国を侵略する為にクロッゾの魔剣を何本も使い山を燃やし、大地を破壊し、湖を干上がらせた。エルフの森や精霊達が好んで住んでいた湖を破壊したことが精霊の王の逆鱗に触れたようなのよ。それ以来全てのクロッゾの魔剣は粉々に砕け散り王国も戦争に負けクロッゾの一族は貴族の地位をはく奪された...そして2度と魔剣を打てなくなった。一人を除いてね」

 

大体このような歴史だったと思う、とヘファイストスは語った。

 

「なるほどなぁーあの子、例外的に魔剣が打てるようになってしまった...ということやんな?」

 

ヘファイストスは頷く。

 

「ヴェルフはもしかしたら初代クロッゾと似ているのかもしれないわね...彼も職人気質な性格だから...他の団員達は彼の資質に嫉妬したり彼の態度が気に入らなくてなかなかパーティを組んで冒険ができないのよ...だからいまだにレベル1なの」

 

「難儀な話やな...」

 

そうこうしているとヘファイストスファミリアの団長である椿が前から歩いてきた。

 

「主神様、ヴェルフをしらんかの...おや、ロキに剣姫ではないか。というよりロキは扉に耳をつけてなにをやっておるんじゃ」

 

ヘファイストスが椿に説明中...

 

「あいわかった。ちょうど手前もヴェルフを鍛えてやろうかと探していたところでな、そろそろ鍛冶のアビリティを手に入れないとあやつ程の才能、もったいないからのぉ」

 

椿はそのまま無造作に扉を開けた。

 

 

「話は聞かせてもらったぞヴェル坊。手前がお前のランクアップ手伝ってやろう。無論拒否権はなしじゃ!」

 

 

 

時は戻る...

 

 

 

 




いつも読んでくださっている皆様ありがとうございます。

今回はベル君がヴェルフと会うシーンを書きました。

基本的に一回の更新で10000文字以下にして読みやすいようにしようと考えておりますので
一回この段階で更新いたします。

次回はこの話の続きとオラリオの町散策?アイズとデート?を書きたいと思います。


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