剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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ベルがロキファミリアへ入団した夜


16  緊急会議

ロキのファミリアの会議室に幹部の面々が勢ぞろいしていた。

 

主神であるロキを筆頭に団長フィン。副団長リヴェリア、ガレス。ベート。ティオナ ティオネ姉妹...アイズはまだベルの部屋から帰って来ていない...

 

「さて皆に集まってもらったんはベルのことや。アイズが今いないのはちょうどええわ」

 

 

アイズがいないことを疑問に思っていた幹部達であったがロキのことだからまたなにかよからぬ事を考えているのだろうとスルーした...

 

「ロキ、はやく要件をいえ!」

 

ベートがいらいらしたした口調でロキに説明を促した。ベートはベルの熱い戦いを見た後気合を入れてダンジョンに潜ろうとしていた。装備の手入れをしポーションを数本買いバベルへと向かう途中でフィンのお願いで幹部達を集めていたティオネに捕まりそのまま引きずられてきたのだ。イライラは限界に達しそうだ...

 

「まあまあベート。一旦落ち着こうか。ロキ続きを」

 

ロキは皆を見渡してにんまりする。

 

「実はな...」

 

ごくりと皆の喉がなる。

 

「今日あの後ベルに恩恵を刻んだんやけどな...」

 

プチッッベートの眉間に青筋がたつ

 

「だから早く言えって言ってんだろ!」

 

「わあったわあった。落ち着きいやベート。そんなんじゃアイズたんとベルに嫌われるで?...んでベルやけどスキルが二つ。魔法が1つ発現しとる」

 

(((!!)))

 

「まじかよ...」

 

「すごーいベル!」

 

「どんなスキルなのロキ?」

 

「私はスキルもそうだがベルの魔法に興味があるな」

 

「がっはっはこれから楽しみじゃな」

 

幹部達はベルに興味深々なようだ。いままで恩恵を刻んだ段階で魔法やスキルを発現したものなどほとんどいない。ましてやスキルと魔法両方発現していたのはアイズ以来である。そしてフィンとの戦いで見せた気迫...皆が期待するのも無理はない。

 

「それでロキ。僕たちに何か相談があるんだろ?」

 

フィンが続きを促す。

 

「そやねん...スキルから説明するけどな。まずは一つ目のスキルは【家族の絆】っていうスキルや。」

 

家族(ファミリア)との絆が深まるほど効果は向上。

 

家族(ファミリア)全体のステイタス+補正。

 

家族(ファミリア)の為己の限界を超える。

 

皆がスキルの内容を聞いてうなずく。このタイプのスキルは比較的発現している者も多い。効果の程度はわからないがステイタスの+補正だろうと思っていた...最後の文章、己の限界を超える。このスキルはベルの非常に強い家族への想いが形になったものである。団員達はこの想いを侮っていた...

 

「まあこのスキルはウチもそこまで問題はないとふんどる」

 

唯一ベルと実際手合せをしたフィンだけが何かを考えているようであった。

 

 

「問題は次や。【誓い】っていうスキルや」

 

・早熟する

 

・想いの丈で効果は向上

 

・想いが続く限り効果は持続する

 

「早熟するって...なに?まさか成長速度に関係しているスキルじゃないわよね?

 

ティオネが驚愕の表情を浮かべている。他の皆も同様だ。仮にこれが成長速度に関係するスキルならば前代未聞のスキルになる。数多くの眷属に恩恵を刻んできたロキでさえ見たことがないスキル。超レアスキルといっても過言ではないだろう。

 

「なるほど。今のベルにこのスキルのことを伝えるのは危険かもしれないということだねロキ?」

 

「危険ってどういうことなのフィン?」

 

少々おバカなティオナはよくわかっていないようだ。姉のティオネがフィンの代わりに答える。

 

「ベルがこのスキルの事を知るとするでしょ?私たちは常に目立っているんだから何かあればすぐ他の冒険者や神の目に留まる。そんなことがあればベルにちょっかいかけてくる神も必ずいる。下界の子供は神に嘘がつけないことからこのスキルが露見する可能性が高いわよね?娯楽に飢えている神の誰かがロキが相手でも気にせず行動に移すことがあるかもしれない。だから危険ってことよ」

 

「ああーなるほどね!」

 

ティオナが大きくうなずく。

 

小声

「本当にこの子はわかっているのかしら...」

 

お姉さんは大変である。

 

「ふむ。ベルを手に入れたいと考える神はいるだろうな。すでに神フレイヤがベルに興味を持っているみたいだしな。あの時ベルが魅了されなくてよかった」

 

リヴェリアが安堵の溜息をつく。

 

「んん?いやあの時フレイヤはベルの事本気で魅了したで?ただベルにはフレイヤの強力な魅了が効かなかったんや。理由がわかるやつおるか?」

 

みんなフレイヤの強力な魅了の力を知っている。まだ恩恵を得ていない子供が魅了の力をはねのけるのはほぼ不可能なはずである。

 

「なんやみんなわからんのかいな...フィンとの試験の時ベルがゆってたやろ?スキルに発現するほど強い想い。アイズの英雄になるって想いが魂に刻まれているんやな。その想いがフレイヤの魅了をはねのけたんや。だからフレイヤは諦めて帰ったんやな。あいつ内心悔しかったやろなー」

 

いやらしい笑みを浮かべる。

 

「なるほどー!ベルはアイズが好きってことだね?他の誰かに護られるんじゃなくて自分が護りたいってことでしょ?」

 

ボフッとロキが吹き出す。フィンはにこにこ笑いガレスは大声で笑う。リヴェリアはわずかに頬を染めコホンっと咳払いをする。ベートは舌打ちをし何やら複雑な表情をしている。ティオネはフィンの事を盗み見て私も...と想いをはせた。

 

「ま...まあそれは...ベルの気持ちはおいおいわかるやろ...」

 

ロキもお気に入りのアイズのことで複雑なようだが気持ちを入れ替えて次の説明をする。

 

「後は魔法やな。これや!」

 

(ドゥンデル)

 

目覚めよ(テンペスト)(ドゥンデル)

 

・雷の力を己の体に付与することにより身体能力向上

 

・雷を体に纏う、又は放出する

 

同調(ユニゾン)することにより効果は倍増 

 

 

「ウチが思うにこれはアイズの魔法と同系統の魔法だと思っとる。オラリオ一の魔導師であるリヴェリアはこれを見てどない?」

 

顎に手をあて考え込むリヴェリア。

 

「ふむ。多分ロキの言うとおりだな。まだ実際に見ない事には詳しいことはわからないが...しかしこの同調とは...ん?...そうか!!あの時の!」

 

何かを思い出したリヴェリアがロキを見ると目があった。

 

「そや。あの時のあの魔力交換のような現象がひっかかるやろ?後でアイズのステイタス更新して確認せないかんで」

 

「その時はアイズに聞いて私も同伴しよう」

 

二人で盛り上がっているが実際魔力交換をみていない他の団員達にはよくわかってはいないようだ。しかしベルの魔法をみたいと思っているので魔法を試す際には同伴することだろう。

 

「さて、これからのことやけど...フィンは何か案があるんやろ?」

 

「ああ。まずはベルの世話係を...」

 

バタンッ 会議室の扉が開かれアイズが部屋に入ってきた。

 

「ごめんフィン、みんな。遅くなった」

 

ぺこりとアイズが仲間に頭を下げる。

 

「いや大丈夫だよ。ちょうどいいタイミングだったねアイズ。これからベルの世話係...といってもまだオラリオに来て間もないベルを案内したり世話をするだけだけどその役割を決めるところだよ。......一応遅れた理由も聞いておこうかな?」

 

ええと...アイズが口ごもる。

 

 

 

数時間前まで遡る

 

ベルとたわいない会話をするアイズ。とても幸せそうだ。ベルの住んでいた村の事。ベルのおじいさんの事。

いろいろな話をした。最初は緊張していたベルもいつの間にか自然にアイズと会話ができるようになっていた。

 

(ベルのおじいさん...なつかしい気持ちになるのはなぜだろう...)

 

「いつかベルのおじいさんにも合ってみたい...かな」

 

アイズがためらいがちにベルに話しかける。

 

「アイズさん...今度時間があるときに一緒にあいさつしに行きましょう!」

 

その言葉を聞いて一瞬首をかしげたアイズだったがボンッと顔が赤くなる。

 

「え...えと...その...まだはやい...かな...もっとお互いをしらないと....ごにょごにょ」

 

今度はベルが首をかしげている。しばらく悩んだ後自分の言葉を思い出しベルが顔を真っ赤にする。

 

「あああアイズさん...あの...そういう意味じゃなくてあの...」

 

沈黙が二人を包む。

 

((きまずい...どうしよう...))

 

しばらく気まずい空気が流れていたが唐突にベルがあくびをする。

 

「ベル、疲れていると思うし寝ていいよ?明日は多分忙しくなると思うから」

 

「すみませんアイズさん。ちょっと疲れたみたいです。今日はありがとうございました」

 

「気にしないで。明日から一緒に頑張ろうね。おやすみ」

 

「おやすみなさいアイズさん」

 

すぐに寝息をたてはじめるベル。アイズはベルが寝たことを確認してもふもふしている髪をなでながら時間を過ごした。途中でティオナが会議の事を伝えに来たが時間があったのでそのままベルを撫で続けた。

次第に自分も眠くなりそのままベルのベットに頭を乗せ盛大に寝過ごした...

 

 

 

ええと...もじもじしているアイズをみかねてフィンが助け舟を出す。

 

「まあ今回はいいけど次からは遅れないでくれよ?」

 

「うん。わかった」

 

「じゃあ会議の続きといこうか。誰かベルの世話係をしてくれる人はいるかな?本来なら僕達幹部が新人の世話係をすることはないけど今回は状況が状況なだけに特別だ。それにベルのことはほとんどの団員が認めているはずだからね」

 

「じゃああたしがやっっむぐ」

 

ティオナが空気を読まずに立候補しようとしたのでティオネが後ろから羽交い絞めして止めた。

 

「ベルの面倒は私がみたい...いいかな?」

 

「しばらくはダンジョンに潜れなくなるけどそれでもいいかい?」

 

「問題ない。ベルの訓練もしなくちゃいけないし...いろいろと教えてあげたいの」

 

「いいだろう。ベルの事はアイズにまかせる。他の皆もそれでいいかな?」

 

他の幹部達も問題ないと頷く。

 

「まあ何かあっても僕たちは同じロキの眷属だ。皆もベルが困っていたら助けてやってほしい。それでは今日の会議はこれで終了とする。他になにかある人はいるかい?」

 

「ベルの魔法をベルが起き次第確認をしたい。アイズはベルが起きたら連絡してほしい」

 

「わかった。リヴェリア」

 

「他にないかな?...それでは会議は終了とする。解散」

 

団員達が会議室を出ていく。

 

「おいアイズ!」

 

アイズにベートが声をかける。

 

「その...なんだ...ベルの事しっかりみてやれよな」

 

一瞬きょとんとしたアイズだったが笑顔で答えた。

 

「ありがとうございますベートさん。ベルを心配してくれて」

 

「勘違いすんじゃねえ。同じファミリアになったんだ。無様な真似はしてほしくねえだけだ...じゃあな」

 

ベートはしっぽを振りながら出て行った。

 

その様子を見ていたロキたちは素直じゃないねえっと苦笑していた。

 

「あ...アイズたん。ちょっと確認したいことあるんやけどリヴェリアと一緒に後でウチの部屋に来てくれん?」

 

「ん...わかった。後でロキの部屋いくね」

 

そういうとアイズも会議室を出て行った。

 

「これから楽しくなりそうやな...」

 

ベルがロキファミリアに入団した一日目が終了する。

 

 

 

 




いつも読んでくださっている皆さんありがとうございます。

相変わらずベル君とアイズは元気です。

さて次回は魔法お披露目です。ご期待ください。

個別メッセージも何件かもらいましてありがとうございます<m(__)m>

これからもがんばります!

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