剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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豊穣の女主人から黄昏の館へ帰宅したフィン達。

フィン リヴェリア ガレス ゼウスファミリアの最後を知る三人はロキの部屋に集まった。


11 黄昏の館にて 首飾りの秘密

「さてロキ。話を聞かせてもらおうか」

 

フィンは先ほどのロキのわずかな動揺を見逃さなかった為追及することにした。

 

「なんや3人そろって。なんのことや?」

 

ロキはそっぽを向いて口笛を吹きながらとぼける。だが額の汗は隠しきれていない。

 

「ロキ。僕の目はごまかせないしそもそも僕達3人が来た時点でわかっているだろう?」

 

はぁと深いため息をついてロキが三人に話し始める

 

「まあ、来るのはわかっとったんやけどな。フィン。ベルのこと試す為に最終試験なんていったんやろ?」

 

ロキファミリアにそもそも入団試験という形式のものはない。しいて言えばロキのメガネにかないフィンの面接をクリアすることが試験になる。ただ今回は面接をした後に最終試験があるといって試験の合否を一時保留にしたのだ。

 

「そういうこと。彼の気迫はすさまじいものがあったしね。一応ロキに確認をとっておきたかったのさ。逸材には違いない。しかし何かあるのでは?とね。僕個人としてはアイズをあんなにも幸せそうな顔にしてくれた人物なら是非とも入ってほしい。しかし、団長としては簡単には判断できかねる状況だったんでね」

 

フィンのいうことももっともである。団長として団員の安全を確保することは最優先事項なのだ。不確定要素がある以上その場で即答することはできない。

 

「ロキはあの首飾りの言語が読めたのか?私には理解することができなかったんだが。あの文字の羅列は私がいままで読んだ文献では見たことがない...」

 

リヴェリアは解読ができずに悔しそうだった。少なくともロキファミリアの中ではリヴェリアの知識を上回るものはいない。故にベルの首飾りの文字を解読できるものはいないと思っていた。しかし...

 

「むふふ。ウチには読めるでーーー!というかオラリオにいる神の中でもウチにしか読めん!」

 

「ロキはそんに賢かったのか。普段のだらけている姿からは想像できんのう」

 

ガレスが大笑いしている。他の二人もクスっと笑みをこぼす。

 

「ウチ一応主神やねんけど...まあええわ。これから話すことは他言無用やで?」

 

3人はうなずく。

 

「あんな...実はあの文字はウチとゼウスが作ったものやねん...」

 

(((ゼウス!?....作ったってどういうことだ)))

 

(ある程度予想はしていたけどやはりゼウスとつながりがあったんだねベル...)

 

「昔ウチとゼウスは飲み仲間っていったやん?あのエロじじいと眷属(こども)のステイタスをどう隠すかって議論になってな。ただのロックだと開錠薬(ステイタスシーフ)でばれてまうやん。んで神聖文字(ヒエログリフ)を改良して上手くできんかと模索しててん。んでできたのがこの文字なんよ」

 

ロキは机の上の羊皮紙にスラスラと文字を書いていく。

 

(なるほど。先ほど見た文字と同じだな)

 

「んでこの文字を使って背中にステイタスを刻もうと思ったんやけエラーが出てしもてな。恩恵が正確に機能しないなんて子供達にとって害にしかならんし文字の改良は止めて素直にロックの強化を研究したんよ。んで今ウチの子にはその強化したロックがかかってるっちゅうわけや」

 

「なるほど。ロキの眷属(僕たち)への愛がよくわかったよ」

 

「な...なんやいきなり。照れるやん。まあウチは子供達の為ならなんでもしたる!」

 

神の中でも1、2を争う眷属大好きなロキは、フィンの先制攻撃により不意を突かれわずかに頬を染める。

 

「ありがとう。ロキ頼りにしてるよ」

 

3人はロキファミリアの古株なのでロキとの付き合いも長い。その信頼関係は他のファミリアとはレベルが違う。

 

「それでロキ。首飾りにはなんて書いてあったんじゃ?」

 

「まあそうせかすなやガレス。んじゃよく聞き」

 

以下首飾りに書かれていた内容

 

「儂の思惑通りロキのところに届いたようじゃな。ロキ久しぶりじゃのー。10年以上おまえと酒を飲んでおらん。寂しいものじゃ。まあそれはおいといて。本題じゃがこの首飾りはアリアの風の力に反応して魔力を放出するように造ってある。まあおまえ以外が見てもこの文字は読めないはずじゃからいいんじゃが。結論からいえばベルはダグラス クラネル アリア ヴァレンシュタインの子供...といいたいところではあるんじゃが正確にいえば微妙なところじゃ。黒龍のくそ馬鹿が儂の子供たちを襲った時。儂はダグラスとアリアの子供を救うために神の力(アルカナム)を使った。神の力でアリアのお腹から魂を抜き取りダグラスの体を器としてベルを創った。故にベルは二人の子供であって子供ではないのじゃ。儂は下界で命を創ったむくいなのか天に送還されずに恩恵が与えられなくなってしまった。お前はこの先この下界で一人でいろということかの...ベルは強く誰よりも強くなりたがっている。しかし儂にはベルに恩恵を与えやることができない。アイズを頼んだ手前無理を承知で頼む。ロキ、ベルにお前の恩恵を刻んでやってくれないだろうか。それがもし無理でも手助けをしてやってほしい。儂はこれから来るべき時の為力を溜めておく。この借りは必ず返す。どうか儂の大博打に付き合ってくれ。 親友 ロキへ ゼウス」

 

「あのエロじじいこんな時ばっかり親友とかぬかしよって」

 

ロキはゼウスと飲みながら語り合った事を思い出していた。自分の子供達の自慢話で盛り上がったこともあった。お互いにムキになって喧嘩した事も山のようにある。だがお互い信頼していたし尊敬していた。

 

「フィン。ウチはあいつの大博打ってやつにかけてみたいと思うねん。だが最終判断はおまえにまかせるで」

 

フィンは顎に手をおき何か考え混んでいる。他の2人も判断はフィンにまかせるつもりだ。

 

 

「ロキ。大博打っていうのはベルが英雄になるってことかな?」

 

((!?英雄...))

 

「ウチはそうだと思うで。ベルは英雄になる器だと思うねん。ただちょっとやさし過ぎるとこがあると思うけどな。ウチらの敵は...」

 

「ダンジョンの魔物たちだけじゃない。だろ?それに人型の魔物の存在も確認されている」

 

「そうや。ウチらを恨んでるファミリアもある。あの子に人間と戦うことができるかどうか」

 

ベルは多分魔物相手なら勇敢に戦うだろう。だがそれが同じ人間であったら、相手に意志があったらたたかえるかどうかわからない。意志があればだまし討ちや卑怯な手段も使ってくる。ベルには人間と戦う覚悟が必要だ。

 

「よし!ベルには言葉での覚悟をみせてもらった。明日僕はベルに行動で覚悟をみせてもらうことにする。それで僕がベルの覚悟を認めたら入団を認めよう」

 

全員がフィンの意見に従う。

 

フィンがベルに最初の試練を与える。

 

 

 

 




いつも読んでくださっている皆さんありがとうございます。

今回は話は短いですが黄昏の館でベルの正体が幹部達に伝わりました。

ベル君は最終試験を乗り切れるでしょうか。

そして次回はフレイヤさんがベルと接触するかもしれません。

今後ともよろしくお願いいたします。


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