幼いころのアイズそして未来へ
アイズとベルの関係は...?
アイズとベルの絆の物語です
1 幸せな時間は続かない
ここは、迷宮都市オラリオから100キロほど北に位置する山のふもとの村。
晴天の青空の下、小高い丘の上にそびえる大樹の下で剣を振っているヒューマンの男性がいる。
男性から漂う空気はただものではない。気迫だけで、一般人なら気を失うことだろう。
男性は白銀に輝くロングソードを振り回し、日課である鍛錬を行っている。
静寂の中気合の入った声が聞こえた。
「せいっ!はぁっ!」
すさまじい速度で振られた長剣は落ちてくる木の葉をあっという間に粉々にする。
更に双剣に持ち替えて架空の敵に対してラッシュをかける。
腕の振りが全く見えない……
鍛錬の途中気配を感じて振り返りかえると、そこには愛してやまない家族の姿が見える。
「おとうさーん」
遠くから二つの影がゆっくりと近づいてくるのが見えた。
手を振っているのはヒューマンの親子だ。
ふたりとも金色の髪と金色の瞳をして整った容姿をしている。
ヒューマンの男性が鍛錬の手を止めて大粒の汗を拭きながら手を振りかえす。
「アイズ!」
「アリア!」
アイズと呼ばれた子供が勢いよく走ってきてジャンプした。
「よっと」
そのままふわりと抱きかかえて肩車をするとアイズはきゃははと笑いながら父の白髪の髪をなでた。
「おとうさんの髪ふわふわで気持ちいいね」
自慢の娘が自分の髪をなでている。
(家の娘はなんてかわいいんだ……)
「あらあらアイズはいいわね、二人でいちゃいちゃしてうらやましいわ」
ぷぅ、とアリアが頬をふくらましてジト目で二人を見つめた。いつもは団員たちの前で凛々しい夫が、紅い瞳で我が子をみつめながらデレデレする姿は他の誰にも想像できないだろう。
「アイズ!お父さんは好きか?」
「うん!大好きだよ!」
毎回答えはわかっていることだが聞くたびに顔がにやけてくる。
アイズの笑顔だけで体力回復できるんじゃないだろうか...
「わたしは?」
むうっとアリアがジト目で見つめてくる。
「もちろん、愛しているさ」
照れなのか多少頬を赤く染めながらつづける。
「アイズもアリアも、何があっても俺が命をかけて守る。家族3人いつまでも仲良く暮らしていきたいからな...その為にも...やつを倒さなければならない」
最後は神妙な顔つきをしていたがすぐに笑顔になり我が子をなでる。
「あら、3人じゃないわよ?」
アリアがお腹をさすりながら夫を見つめる。
「子供できたの」
ドヤ顔である。
「えええー!!!」
突然の妻の宣言にダグラス衝撃揺を受けたがすぐに笑顔になりアイズを高く抱きあげる。
「アイズ!弟か妹ができたぞ!」
ああ…なんて幸せなんだろう。たまには休暇をとって家族で出かけるのも悪くないとしみじみ思うのであった。
他の団員達もこの村で十分休息をとっていることだろう。遠征の疲れを少しでも癒してもらわないとな。
明日はアイズとアリアを連れて森にでも出かけようか...
そんなことを考えながら親子三人仲良く手をつないで貸家へと向かった。
その夜
あたりは静寂に包まれ虫の声が聞こえる穏やかな夜だ。
「アイズは寝たか?」
編み物をしているアリアに話しかける。
「ええ。あなたと久しぶりに遊んで、この子も疲れたんじゃないかしら」
アイズの頭をなでながらアリアが答えた。
すうすうと寝息をたてるアイズはまるで天使のようだ。
などど内心思っているとアリアが神妙な顔をして訪ねてきた。
「次の遠征はいつになるの?」
元冒険者であるアリアは鋭い視線で夫をみつめる。
「この前の遠征でも
みんなあんなに大けがして死人がでなかっただけでも奇跡みたいなものよ。
あなただってスキルの反動で本調子じゃないんだから...」
【アリアの夫ダグラス・クラネルのスキルの一つ】
同じ恩恵をもつ範囲内にいる仲間のダメージと疲労を肩代わりする
ダグラスは前回の遠征で、このスキルで死にかけた仲間達のダメージを全てを自分に移し替えるという
荒技をみせている。エリクサーを飲んでも全回復はしていないのだ。
「このぐらい死にはしないさ」
はははっと笑うダグラス。
「あなたは強い。でも戦いにおいて絶対なんてない。もしあなたになにかあったらと考えるだけで私は...」
アリアの頬を涙がつたう。
ダグラスは真剣な顔をして答える。
「アリア...俺はまだまだ強くならなきゃいけない。アリアやアイズそしてファミリアの仲間たちを守る為にもな。
最近、黒龍の動きが活発になってきていると聞く。どうにもいやな予感がしてな」
ランプの明かりの下ダグラスは愛剣である長剣と双剣の手入れをしながら語る。
布で刀身を磨くとまるで息をしているかのように刀身が輝いた。
「黒龍を倒すのは俺の...いや俺たちの悲願だ。アリアもわかっているだろ?」
剣を置き、心配そうな顔のアリアを抱きしめる。
「アリア。次の遠征が終わればしばらくは落ち着くはずだ。もう少しだけ協力してくれないか」
ダグラスの紅い瞳がアリアの金色の瞳を見つめた。
「そんなこといわれたらダメなんて言えないわ。でも無事にかえってき...」
「うっっ」
突然アリアが頭をかかえてがたがたと震えだした。
その尋常ではない様子に心配になり、抱きかかえようとした瞬間冷や汗が流れる。
(なんだ、この禍々しい気配は)
全身の血の気が引くような感覚...階層主と対峙した時の何倍も嫌な感じだ。
すぐに防具と愛剣を装備する。
ドゴォーン!
ものすごい衝撃とともに轟音が響き渡る。
「た、たすけてくれー!」「なんなんだ、あの怪物達は」「空からくる!みんな逃げろー!」
家の外から住人の叫び声や悲鳴が聞こえてくる。
ドタドタドタ
誰かが大急ぎで走ってきた。
「団長ー! 黒龍です! 黒龍が眷属を引き連れて現れました」
汗まみれの団員が息を切らせながら黒龍襲来を告げる。
(黒龍が...なぜこんな村に...いや、考えてもしょうがない)
「この村にいる全団員に号令をかけよ! これより黒龍を撃退、村の住人の避難誘導を行う」
「ハ!」
団員は敬礼をして、外に大急ぎで走って行った。
「あなた...」
まだ顔色がすぐれないアリアが心配そうな声をかける。
「聖なる光よ、その力を持って魔を退ける盾となれ」
短文詠唱をしてアリアとアイズに守護魔法をかける
「心配するな! 俺はオラリオ最強 ゼウスファミリア団長だ
「アリアはすぐにアイズを連れて町の外に逃げるんだ」
アリアを抱きしめて声をかける。
「愛してる。アイズを頼むぞ」
「あなた...どうか無事に帰ってきて!」
目を潤ませてアリアは叫ぶ
「ああ、約束だ!」
そう言って、急いで外にかけていくのであった。
この会話が最後の会話になるとも知らずに....
なかなか話を書くのは難しいなーとか思いました。頭の中でなら情景を思い描いて楽しむことはできるんですがいざ文章にすると厳しいですね「汗」
よろしければコメントいただけるとうれしいです<m(__)m>