そんなわけで化学の課題諦めて執筆開始した莢那です。明日起きれっかなぁ……?
天央祭の会場となる天宮スクエアは天宮市のちょうど中心辺りに位置する大型コンペンションセンターだ。中央のセントラルステージ、その周囲に大型展示場が広がっているという構造だ。天央祭に用いられるのは主に東ブロックの一号館から四号館だった。
「それじゃあ、行ってくるね」
「何かあったらすぐに知らせなさいよ」
「何も無くても連絡を取り合う方がいいでしょう。常に連絡を取っていれば、万が一にも対応できます」
「うん、分かったよ」
鞠亜にそう返事して、瞳を閉じて感覚を集中させる。礼装を纏っておらずとも、精霊を詳しく調べたならば僅かばかりの霊力が検知されるのだ。それと同等以上の霊力感知が出来る士織ならば、それほど遠くにいない美九の探知など容易なことであった。
攻略にあたっては、士織であることも踏まえて傍に鞠亜達を付けておきたかったのだが、それで士道を連想されて正体がバレてしまってはいけない、という相談があったらしい。
[士織。そちらの様子はどうですか?]
[もう、心配性だなぁ鞠亜は。取り巻きの女の子たちに囲まれて女王様みたいだねー]
[周りに人がいる状態なのは少し不味いわね。離れたタイミングで声をかけるなさい]
鞠奈の指示に従い、少し離れた所で待つこと数分。美九が取り巻きに何か話しかけたかと思うと、取り巻きがまとめて歩いてゆき、その反対方向――士織のいる方へと歩いてきた。
[き、来たよ!]
[何も言わず、横をそっと通り抜けてみてください。彼女の性格であれば、士織の容姿が目にかなえば呼び止められると予想できます]
[スルーされたら面倒だし、こっそりと物を落としてみたらどうかしら?]
士織は二人の指示に従い、美九へ視線を向けながら横をそっと通り過ぎる。美九の視界に入った時点で自らの後ろに隠すようにして電子情報化していたハンカチを実体化させる。
「あーっ! ハンカチを落としましたよぉ?」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえー。それより、あなた可愛いですねぇ。前はいませんでしたけどぉ、来禅高校の委員さんなんですかぁ?」
「その、以前にいた男子の代理として呼ばれたんです。ええと、よろしくおねがいします!」
「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいですよー。大きく年も変わらないんですから、もっと気楽に話してくださって結構ですよ?」
「う、うん。分かった。よろしくね?」
「はぁい、よろしくおねがいしますぅ」
フレンドリーな美九はパーソナルスペースがとにかく狭いようで、士織に少し体を当ててくる。これが男だったら――士織は士道でもあるのだがまあ――見た目としてはまさに「当ててんのよ」状態と言えなくもない。まあ、こんなにも近寄られるということは気に入ってもらえているということなのだろう。
『士織! 好感度は高い値をキープしてるわ! このままいきなさい!』
[気に入られたみたい?]
[良かったようなちょっと嫌なような、微妙な気分ねぇ]
[スムーズに話が進んで良かったと言ったところですね。ひとまず、下手なことを言わないようにだけ気を付けるべきでしょう]
「とと、自己紹介がまだでしたね。竜胆寺学院の誘宵美九です。よろしくお願いしますねー。一緒に天央祭を成功させましょぉ」
そして手を差し出される。
「来禅高校の五河士織です。よろしくおねがいしますね!」
軽く微笑みながら握手を返すと、美九がぷるぷると震えだした。何か不味いことをしたかな? と士織が冷や汗をかきかけたその時、バッ、という擬音が付きそうなほど俊敏に美九に捕まえられた。
「み、美九さん!? どうしたんですか急に!?」
「あぁんもう可愛いです可愛すぎます士織さんっー!」
『……はぁ。士織、朗報よ。美九の好感度が一気に上昇してるわ。このままいけば今日中に封印することも――』
[急に抱きしめられたんだけど、どうしたらいいかな?]
[はぁ!? キミ、何されてるのよ!?]
なんだか混信してきた。美九の女性的な体つきやにおいは士織で無ければ耐えられなかったかも知れない。
「ほら、落ち着いてください美九さん。びっくりしたじゃないですか、もう」
最後にあざとく「もう」と付けたした事で美九の好感度がまたしても急上昇しているが、士織にはわざとらしさも何も無い。素がこれなのだ。
「士織さーん! どこですのー!」
美九にもう一度抱かれかけた所で狂三の声が聞こえてきた。事情を知る彼女が呼びに来たということは美九か士織が探されているのだろうと判断する。
「あららー、探しに来ちゃいましたねぇ」
「狂三ちゃんが探しに来たみたいですね。それじゃあ、、ごめんなさい。行ってきますね?」
掴みは上々だったか、なんて考えながら士織が離れようとしたところで、服の裾を美九に掴まれた。
「その、これ私のハンカチです。また今度、これを返しに来たと言って私とあってくれませんか?」
「うん、もちろんだよ! 近いうちに向かうね!」
名残惜しげに手を振る美九に手を振り返しながら士織は来禅高校のブースへと戻ってゆくのだった。
寝落ちして学校行ってから残りの執筆しました。明日から授業だぁ。
優しくて包容力がありあざとい完璧な士織によって美九さんが堕とされ始めました。まあ、洗脳でもして自分のモノにしようとするんだろうけど()
美九メインなのでサブタイは「誘宵」という感じで。