人数やらなんやらは原作とは違いますがそれ以外、会話シーン以外のとこはサクサクと行きますよぉ。その当たりは一緒だしね。
七月十七日、月曜日。飛行機に揺られることおよそ三時間。士道たち来禅高校二年生一行は、太平洋に浮かぶ島に到着していた。
「到着したわね。ここが或美島ね」
「伊豆諸島と小笠原諸島の中間あたりに位置する総面積七◯平方キロメートルの島で、天宮市のように空間震の被害の後に再開発がなされた島ですね。空間震で出来た地形が珍しいものとして日本のみならず海外からも人気なようです」
「再開発された場所だけあって災害対策も万全。避難するなら是非私の胸の中に」
「それは避難できてないだろ……。ま、まあ、何かあったらそこらにあるシェルターに向かえばいい訳だな」
「まさしく見渡す限りの水平線、というものですわね。私、自然の景色をゆっくりと見るのは初めてかも知れませんわね」
「お、おお……!」
空港から出た後、視界いっぱいに広がる光景に各個人が感想や知識を述べる。特に直接海を見たことがない筈の十香などは、ややオーバーに驚いて見せていて、その所作に苦笑してしまう。
「ん……?」
「ぬ……?」
「あら……?」
「何……?」
「今のは……?」
「視線が……?」
直後、妙な視線を感じ、皆がみんな視線の先に目を向ければ――
「「「「「「え?(へ?)」」」」」」
視線が一方向に集まった瞬間、カシャリと音がしてフラッシュが視界を覆った。まだ朝早いのにフラッシュ……? と多少疑問にこそ思いつつ、チカチカとする目を細めながらフラッシュの犯人を見る。
ノルディックブロンドと言うらしい(鞠亜談)淡い金髪を風になびかせた、明らかに東洋人ではない目鼻と白い肌が特徴的な少女で、その手には大きなカメラが握られている。だが、士道はその姿に見覚えがあった。というか、エレン・M・メイザースだ。絶対。
確かに服装は違うし、一目見て受ける印象こそ違えどもその容姿はそう簡単に隠せるものではないと誰か忠告しなかったのだろうか。いや、しかしASTの警戒もかなりザルだと感じている最近の感性からするとその母体というか顕現装置の供給元であるDEMインダストリーというのも案外ポンコツで、実は皆隠し通せると思ったとかそういう事なのでは……? と、色んな邪推をしてしまう迄ある。
「クロストラベルから派遣されて参りました随行カメラマンのエレン・メイザースと申します。今日より三日間、皆さんの旅行記録をつけさせて頂きます」
「あ、ああ、うん……」
隠す気も無かった。顔を知られているというのにその警戒のない仕草に、思わず唖然とした表情になる鞠奈。そんな彼女を横目に見ながら、鞠亜と目線を合わせる。
『――罠か?』
『十香達の調査では無いでしょうか? しばらくは観察に徹してくると思います』
アイコンタクトで高度な会話を交わし、意見を交換。そういうことならとりあえず……
「三日間、よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします。では、お邪魔しました」
ぺこりとお辞儀をして去っていく最強の魔術師。
その去り際に見えた、隠し通せたとでも思っているのだろう自信に満ちた表情を見ると、なんだかポンコツだなぁとか、調査だけなら他の人に任せた方が良かったんじゃ? なんていらぬ心配が浮かんでしまうのだった。
「ねえ、士道さん。まだ……」
「ああ、うん、あれで隠してるつもりらしいから、もう放っておいてやってくれ……」
「確かあれは、さいきょーのうむぐっ!?」
「こら、十香。それを下手に口にしないの。ああいうのはいい気にさせとけばいいのよ」
「とりあえず、様子を見ましょうか……」
「あれでも最強。警戒するに越したことは無い」
皆の対応も、なんだか生ぬるいというか、どうしていいのか分からないと言っているようだった。
「って、あれ、何かしら士道」
「あれって……はぁ!?」
水平線の見える海のその上空。信じられないような――自然界ならば有り得ないような、正しく異常な速度で――渦巻いた灰の雲がこちらへと迫っているのが見えた。
「ひとまずあれが来る前に資料館に向かうぞ」
出会いの時は――近い。
キリがいいのでこんな所できります。サブタイは……正体見破ったってところで「看破」ですかね。
※エレンさんはまじでバレていないと思ってます。「ふふん、私の完璧な変装に全く気づいていないようですね」とかそんな感じですきっと。まじポンコツぅ。次回から八舞姉妹が出てくるのでお楽しみに。