このまま美九編でも良かったんだけど、歌が聞きそうにない折紙と狂三……十香は知らんがともかく完全に戦力過多なのを考えたりエレンさんを偶然も噛み合ったとはいえ一度は撃退してるしでどちらにせよオリジナルになりそうだしと書いてみます。
いやしかし、正直言わせてもらうとネタが無い。オリジナルの敵を挿入するのは個人的にやりたくないし、士道強化したこの作品だとそもそも敵を用意しにくいし。最強の魔術師もやられましたし。そりゃあ怪我一つで〈プリンセス〉十香の全力に分が悪いとか言い出す彼女が精霊複数体(全力)に何度も挑んだところで……ね?
専用艦使ったところで絶滅天使まで加わった以上無理ゲーにも程がある。霊力含んだ雨で常に邪魔しつつ絶滅天使の閃光で撃ちまくり十香が接近して飛ぶ斬撃を放ちまくり狂三の弾に当たれば艦ごと時が止まり灼爛殲鬼の砲が必殺の威力を以て迫り分体の自壊によるマイクロブラックホールで消され、さらにはその領域が支配されてエレンでも干渉出来なくなる。なんと恐ろしい。鞠亜と鞠奈は霊力総量の都合上観測支援役ですかね。
随意領域無視してエレンを幼児化させれた七罪が本気出せばみんな赤ちゃんにでもして攻撃不可にして勝利、なんてことも不可能ではないのかも?
――ああ、またこの夢か。
折紙を封印してから数日後。士道は夢と自覚できる夢を見ていた。
それは、全てを滅す極光にしかし滅されること無く飲み込まれる事から始まった。
「まぶしっ」
網膜が焼かれるような痛みに驚いて目を閉じる。
光が収まった時にはもう、辺りは一変していた。
周囲に何の規則性もなくただ散らばるのは元建物であったモノの残骸。人より大きいものから拳ほどの大きさのものまで大量に転がっているのはいわゆる瓦礫というもの。
空は暗い、夜の色をしている。だと言うのに、ここいらはまるで日でも差しているかのように明るい。それは、辺りに際限なく広がり、街を無くさんとする炎が照らし出しているから。
五河士道は、まさしく五年前の災害の再現を見ていた。
「過去で見たままの景色だな……」
このような景色を見るのはもうこれで三度目だが、ここには他の二度と違って人がいない。燃え盛る街に一人取り残されたかのような錯覚に襲われる。
突然に、炎の光を切り裂いて目の前に極光が降り注いだ。その距離、約一メートル。その割には衝撃波など無かったがまあ、なんでもありな精霊の能力に説明を求める方が無駄だ。
天から一直線に、まるで地面に突き刺さった剣のように降り注ぐ極光を道の如く通って士道の目の前に現れたのは一人の天使――否、精霊。
花嫁衣装のような霊装に身を包み、『羽』を周囲に展開し。人形のような端整な顔立ちで、線が細く。色素の薄い、異国のお嬢様か姫か。そんなものを思わせる短髪の、どこか既視感のある少女。
というか、折紙だった。
「どうしてここに……?」
「私の記憶は確かにもう一人の私と混ざりあった。しかし、私の本能が消えたわけではない。そして、その私は霊力と共にもう一人の鳶一折紙の肉体に入った。ならば、この力と深く結びついているのは私であり、ここに私がいるのはむしろ自明の理とも言える」
「は、はあ」
理論武装といえば良いのか。なんとなく理解出来ないでもないが、やはり納得しがたいような気分でもある。
「こうして出てきたけれど士道に力を譲り渡さないわけがない。だから、受け取って」
「ああ、ありがとう」
「――ただし」
よしのんの時のように質問でもされるんだろうか。
「私とキスして欲しい」
「……へ?」
ぱーどぅん。
「キス。それも出来ることなら――いや、対価として舌で私の口腔をぐちゃぐちゃにかき混ぜるくらい熱いキスを要求する」
「え、ええと……」
「大丈夫、これは夢だから士道がしたことは無かったことになる。だから、士道はあの女どもの事なんて気にしなくていい。夢だからキスをした事実も無くなるし、どうせなら私を襲ってくれても構わない。大丈夫、これは夢だから」
夢だからをプッシュしてきすぎでは無いだろうか。というか、折紙ってこんなキャラだったか……?
「駄目だ。夢の中でも、俺は鞠亜達を裏切るつもりは無いからな」
「むう、それは残念」
本当に残念そうな表情をした折紙は仕方ない、と言うような表情を見せ、その頭に乗っかった冠を手に取る。
「これが私の力。私の天使。貴方の身を守る力になれば良いけれど」
「ありがとうな、折紙」
折紙の手から、この世のものとは思えない謎の物質で生み出された綺麗で繊細な冠が乗せられる。そして流れ込んでくるのは暖かな霊力。
そして災害に包まれた世界にヒビが入り、徐々に世界が崩壊してゆくにつれ俺は夢から覚めていた。
――不安.鞠亜ver――
「士道。少し、私の話を聞いてくれませんか?」
「……? 別に構わないけど」
わざわざ切り出して言うほどの話が来るのかと、少し身構える。
「士道は、沢山の精霊に好かれていますね?」
「それなりに自覚できる程度には、な」
鞠奈の時と僅かな既視感が。
まあ、それも仕方のない事だろう。何せ、彼女らは同じように生まれたものなのだから。
「私は、電子から生まれた精霊です。それを知った上で士道が一緒に居てくれている、その事は理解していますし、士道の愛を疑うつもりもありません。――ですが」
一呼吸おいて
「士道は、誰にでも優しいんです」
「うーん、そうか?」
そんなに自覚していることでは無いのだけど、鞠亜の表情が凄く真剣なもので、不安になって記憶を掘り返す。
「見ず知らずの精霊を助けようとすることも、困っている人に手を差し伸べることも素晴らしい事ですし、それは美点だとは思います。しかし、私は少し不安になったんです。私達が初めに出会っていなかったら、士道を好きになった誰かがきっと士道に告白していて、きっと士道と一緒になっていたのでは、と」
「鞠亜、それは――」
それは、有り得ない過程だろう。しかし、電子精霊として生まれた鞠亜にとって可能性というものは見過ごせないものなのだ。だからこそ、奇跡的なバランスの元になりたち続く現実が一歩でも違ったら、なんて不安を抱いてしまう。
さすが姉妹と言うべきか、鞠奈と同じような悩みで――
「そう考えると私は怖かったんです。士道がどこかへ行ってしまうという可能性を考えただけで、胸が締め付けられるみたいに痛くなって。そうしていたら、いても立ってもいられなくて、ついこうして話してしまいました」
そう、士道の愛は疑うまでもないほどに大きいものだ。しかし、それが他へと向く事が悲しいと思える。つまるところ、電子精霊であり士道を優先してきた鞠亜の独占欲で、初めて見せるわがままだ。
「士道の『証』はもう貰いました。でも、足りないんです」
意を決するかのように間を開けて。士道もその瞳から目線を逸らさない。
「お互いに溺れるくらい、深くまで。戻れなくなるくらいまで士道で満たしてください」
不安そうに告げられるそのお願いを、士道が断れるわけもなかった。
士道、もっと、確かめさせて――
いつまでも、三人で――
いつもの投稿量の半分位覚醒で使ったので導入に足りるか不安ということで鞠奈で書いた以前のやつを。
ナニがあったかは省略しますが、彼女達の心がより開かれたために鞠亜と鞠奈が士道と繋ぐ特殊なパスはより太いものとなりました。これにより、霊力総量は変わりませんが士道が封印した精霊の力を鞠亜達も使えるようになります。
戦力過多なのに増やしてどうするんだよ、とか、鞠奈は結構昔じゃね? とか言わないでくれ。今思いついた行き当たりばったりの設定であり、同時に三人きりで戦うことも多いので、その時にせめて力だけでも他の精霊をだしてやろうという気づかいなんです。まあ、ほとんどの理由は趣味ですけど。花嫁衣装の鞠亜と鞠奈、いいでしょ? 拘束具っぽいのとか、ちょっとクルものあるでしょ?(完全に作者の趣味)
そんな感じで鞠亜の不安と言ったところですね。誰にでもある独占欲を、電子精霊故に吐露できなかった――しようと思わなかった彼女が初めての一歩をすすんだ、そんな感じのパートでした。
さて、次回から八舞編……ですがテスト二週間前(先日から)なので次週と次次週はお休みです。なんでしばらくお待ちをって感じで。
サブタイは後半の独占欲、から「独占」で。シンプルが一番です。