デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 お布団で書いてたら(二段ベッドなのでコード届かない)充電7%くらいから一気に無くなって絶望した莢那です。なんでさ。

 遅れつつも執筆開始ー。


帰着

 

 折紙を封印したその後、俺達は〈フラクシナス〉へと帰艦した。

 目に見える配管が複雑に絡み合い、無機物を突き詰めた美であるかのようなこの風景(屋内だが)もそろそろ見慣れてきたように思う。まあ最近は折紙の攻略のこともあって頻繁に来ていたし、当然の結果なのかもしない。

 

 「お疲れ様、おにーちゃん。鳶一折紙はこれから様々なデータを詳しくとるから、クルー達に付いていきなさい。2、3日かかるでしょうから、学校の方は何とかするけど他にやることがあるのなら今のうちにね」

  「あ、いえ、大丈夫です。最近引っ越してきたばかりで、バイトなどもありませんし」

 

 とのことで、なんともスムーズに折紙は行ってしまった。

 

 

 そしてところ変わって五河家。

 

 「しかし、今回はまあ良かったわね」

 「良かったって何がだ?」

 

 普段から失敗した覚えはないのだけど。

 

 「それは……その、あれよ」

 「あれってなんだ」

 

 頬を赤らめ、視線を逸らすというなんとも古典的な方法をとる鞠奈。こういう時は……

 

 「なあ、鞠亜。あれってなんだ?」

 「わ、私ですか!?」

 

 飛び火させてしまったようで済まない。しかし、あれだなんてはぐらかされたら気にせずにはいられないのだ。二人はツーカーなところがあるので多分分かっていそうなんだけど……。

 

 「え、えっと、士道。耳を貸してください」

 

 一気に顔を赤くした鞠亜が、その唇を耳元に近づける。

 

 「それは、…………で、精霊……て、…………からです」

 

 ……ああ、なるほど。

 

 「折紙の礼装が剥がれた時に裸にならなくて良かったって、まあ確かにそうだけどさ」

 「あっさり言うんじゃ無いわよー!」

 

 イマサラハズカシガルヨウナナカデスカ?

 折紙は礼装こそ纏っていたがその前にはきちんと服を来ていたから、精霊たちみたいなことにはならなかったのだろう。精霊たちの方は霊力で服装をそれらしく整えていただけらしいし。

 

 「でもまあ、とりあえず……」

 

 突然の言葉に疑問を浮かべる二人を抱き寄せると、ふわりと良い香り――例えが浮かばないが、一瞬で自分をリラックスさせてくれるそれ――が鼻腔をくすぐる。

 ぴたりと体を密着させた状態で、告げる。それは、何度も交わされ――しかし色褪せること無く伝えられる感謝の気持ち。

 

 「手伝ってくれてありがとな」

 「士道を助けるのは私にとって最優先事項ですから」

 「ま、そういうことよね」

 

 何よりも自分を優先し、信じてくれているということをもう何度目か再確認し、恥ずかしさを感じる。

 

 「士道! 十香達も記憶……が……」

 

 ガチャリとドアノブを回して慌ただしく飛び込んできたのは黒モードのままの琴里だ。

 というか、後半が尻すぼみになっていて聞き取れなかったんだけどなんなのさ。

 

 「な、何してるのよ貴方達ー!!!」

 

 深夜の住宅街に琴里の叫び声が響き渡った。

 近所迷惑だぞ。

 

 

 

 

 混乱の余りか訳の分からないことまで口走り始めた琴里を3人がかりで宥め、話をさせる。

 

 「え、ええ。士道が鳶一折紙を封印したのと同じタイミングで私達にも元の世界の情報が流れ込んできたのよ。十香や四糸乃に確認したところ彼女達もね」

 

 それはつまり。

 

 「記憶が戻った……ってことか?」

 「まあ、その通りね。少し変な感じもするけれど」

 

 実体験の伴わない記憶というやつなんだろうか。

 

 「精霊と士道の間に存在する経路(パス)を通じて記憶が流れたというところでしょうか?」

 「決めつけるには根拠が無いけど、まあそんな所でいいんじゃないの? 別に、あって困る記憶でも無いでしょ」

 「そういう事ね。それと士道、鳶一折紙の事なんだけど」

 「何かあったのか?」

 

 先ほど検査を始めたばかりだと思うんだけど。

 

 「私達は記憶が流れ込んできた訳なんだけど、鳶一折紙の方は少し違ったみたいなの。自分の中にもう一人の自分がいる感じ、らしいわ」

 「それはまた厄介ね……」

 「そういうことね。話が出来るわけじゃないけど、突発的にもう一人が行動することもある様だから士道達もよく見ておいてあげて頂戴。って士道、どうしたのよ。何か痛々しいものでも見たかのような顔して」

 「ああいや、なんでもないんだ」

 「……? まあ構わないけど。私はもう戻るわよ」

 「おう、頑張ってな」

 

 もう一人の自分、とかそんな痛々しそうなワードを耳にすると何か妙な既視感がしたのだが、もしかしてこれこの世界の元の自分が厨二病だったとかそういうのでは――。

 

 

 

 休日も終わり登校日になる。折紙の検査をとりあえず今日に間に合わせると後に琴里から聞いたのだが、なかなかやって来ない。

 

 「終わらなかったのかな?」

 「〈フラクシナス〉で行われる検査は病院のものと違い専用の顕現装置(リアライザ)まで使用して精霊としての検査など何もかもを検査されますからね。安全のためもあるのでしょうが時間がかかるのも事実です」

 「ま、五河琴里が言ったことを覆すとも思えないし、クルーを蹴飛ばしながらでも急いでるんじゃないかしら? と、来たみたいね」

 

 鞠奈の視線を追えば、その先にいたのは慌てて駆け込んできた折紙の姿があった。

 

 「おはよう、五河くん」

 「ああ、おはよう」

 「おはようだぞ! 折紙」

 「おはようございます、鳶一折紙」

 「んー、おはよう」

 「おはようございます、ですわね」

 

 こうしてみんなで笑って挨拶を交わせるようになっただけでも、過去に戻っ……た……

 

 「って狂三!?」

 「キミ、いつから居たのよ。全然気づかなかったわ」

 「琴里さん達ががんばってくれまして、私、また学校に通えるようになったんですの」

 

 それは、本当に良かった。

 こうして俺達は、日常を過ごしてゆく。




 打ち切りエンドみたいに見えなくもないが気のせいだ。
 後始末なんかも終わって次回から新章。あ、覚醒イベントやってない。それからですね。

 今日明日にもう一話書き上げなきゃ……。
 サブタイは色々あって元に戻ること、という熟語で「帰着」です。

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