書き上がらないIF集どうしようか。構想は出来てるのにEXTELLAが無慈悲に時間を奪い去っていきます。なんとか11月中には上げるつもりです。
今見直したんだけどもたれかかってたのは手すりなのね。んー、まあ、大して変わりないっしょ?(訂正めんどい)
傷もそこで出来てたのか。読み込み浅いのがバレてしまった。
まあ作者のことなんて置いといて本編、始まります。
反転した折紙を目の前にして、士道は案外落ち着いていた。
〈フラクシナス〉による仮説と想定では、折紙があの姿となれば霊力をもつ対象を破壊しきるまで動きを止めないという。しかし、それはまちがいなのではないか?
なにせ、琴里の話によれば過去の改変により精霊の攻略の際には〈デビル〉――鳶一折紙がやって来ているのだ。それでいて、誰一人欠けることなく
それに、以前折紙が反転した際には、視界から転移で消え去ることによって彼女はその霊力を収めた。
――つまり。
転移等の手段を用いれば、反転体を無力化することは不可能ではなく、鞠亜と鞠奈を封印したことによって転移を得意とする士道であればむしろ容易いことなのだ。
だからこそ、士道が一瞬だけでも彼女の前から姿を消せばこれは解決し、改めて落ち着いた彼女を封印すれば攻略も終わる。
しかし士道はそうしなかった。いや、彼としては出来なかったと言うべきだろう。
「――あ、ああ、あ……あ、あ……」
聞こえた。
反転し、虚ろなままに動くハズの折紙から、確かに。うめくような声が。絶望を深く知る士道それを、助けを求める声なのだと直感した。
だから、五河士道は逃げる選択肢を捨てた。ここで手を離してはいけないと思ったから。彼女を助けるのは今しかないと説明のつかないナニカが確信したから。
「士道!」「大丈夫よね!?」
士道のために転移してきた、白黒二人の少女が彼の横に並び立つ。礼装も展開され、戦う準備は出来ているようだ。
そして同時に、折紙は周囲に羽を顕現させ戦闘体制を整えた。
人を大きく超えた超常の力がぶつかり合う。
先手をとったのは折紙だった。
先端に闇を湛えた無数の羽が、一斉に士道に照準を向ける。
直後飛来する漆黒の光線を、十香の天使〈
「頼む、折紙まで道を空けてくれ!」
助けを求められた士道には分かる。助けを求める彼女はしかし、もう一人の自分の持つ絶望故に自分一人の力ではどうすることも出来ないのだ。ならば、士道が外からも手を差し伸べればきっと、折紙は答えてくれるはずだ。
信頼を込め、二人に助けを求める。理由を語らずとも、あちらもまた士道をこれ以上なく信じている。
「分かりました!」 「こっちも了解よ!」
攻撃を一度防いだ士道を脅威と認めたのか、折紙の行動が変化する。
羽が結集し、翼を形取り、そして先ほどよりも一際強い光線が複数放たれる。
即座に電子の分体を生成し、自壊による空間侵食で光線をかき消す。これで前方の空間が支配されたために、正面からの光線はもう通じない。
支配した空間を通じ、これが機だと一気に接近する。追加で放たれた光線を再度かき消し、十メートルまでに距離を縮める。霊力による補助をもってすれば、この程度は容易い。
接近されたことにさらなる危機感を覚えたのか、翼状に展開されていた天使が形を変え、一つの王冠へと変わる。そして、これまでとは比べ物にならないほどの漆黒の光が収束され始める。
収束された霊力からしてそれは、十香の【
だからこそ、士道はそれに賭けた。それほどの大技であれば、接近する隙があるはず。
支配下においた空間を出て、何の工夫もなくただ一直線に折紙に向かって駆ける。自らの霊力を全て愛する少女二人へと回し、自らは最低限の身体補助のみで突貫する。士道は可能性に賭け、そして二人を信じ、託した。自らの命さえも。
「鞠奈!」 「言われなくても分かってるわよ!」
電子精霊の二人が霊力を振り絞り作り出すのは二人がかりでの強力な随意領域モドキ。本来の精霊に比べ出力の低い電子精霊の二人は、力を重ねることで不可能を乗り越える。
全神経を振り絞るかのようにして注がれた力は確かにその一撃を曲げ、夜空へと消し去った。
そして士道も辿り着いた。折紙のその目の前に。存在したはずの霊力障壁まで今の一撃につぎ込まれたのか、あっさりと接近することが出来た。
接近したのに何かをするでもない士道に、戸惑ったような仕草で折紙は停止する。
それを目の前にし、真っ直ぐに手を伸ばし、叫ぶ。
「手を伸ばせよ、折紙! 俺は――俺たちは! お前と一緒に居たいんだ!」
士道の言葉は、折紙へと響いた。
あとは、彼女がそれに応えるのみ――
◇
折紙の頭の中で、二つの記憶が溶けて一つになってゆく。自分が知らない人間の記憶を見ているかのような奇妙な感覚。しかしそれが自分のものだと何故か確信してしまえるため、奇妙な感覚は止まない。
二つの記憶が混ざることで折紙の困惑は加速する。
両親は助けられた/死んでしまった
両親と幸せに暮らせた/精霊に復讐するためだけに生きた
折紙は幸せを胸に抱いた/絶望の底に沈んだ
両親を殺した/殺してなんていない
二つの記憶が混ざりたい、異なる点が浮かび上がる。それは、大火災が発端だった。あの時、今の折紙は両親を士道達に救われた。しかし、彼女――もう一人の自分は違ったのだ。
地獄のような記憶に、目眩と嘔吐感を感じた。
ありとあらゆる負の感情が、混ざり合うことで折紙にぶつけられる。悲嘆、憤怒、凄まじいほどの感情が混ざり合い、潰されそうになる。しかし、意識を手放したりはしない。
なぜならもう、自分は前を向くと決めたのだ。
恩人に出会えた。彼女達は私の想像を超えるほどに素敵で、いい人たちだった。
人を好きになれた。その人にはもう恋人はいたけれど、だからといってこの気持ちが嘘な訳はない。
だからこそ鳶一折紙は前を向き、手を伸ばす。
今の折紙に出来ることは、せいぜいもう一人の自分の背を押すことだけ。しかし、それだけでは彼女は救われない。
あとは、誰かが――彼女を、私をも救うのは彼しかいない。
「――五河くん、助けて――」
――?
声が聞こえた。そんな気がした。
「――――折紙!」
いや、確かに聞こえた。私の名前を呼ぶ声が。
「五河、くん?」
本当に来てくれたのだろうか。いや、私と彼女の知る彼ならきっと、来てくれると確信した。
「お前と一緒に居たいんだ!」
「――」
彼女は確かに、士道の手を取った。
――何も無かったその空間が、音を立てて砕け散った。
「――折紙」
「士道」
息が切れている理由でもないのに途切れ途切れに、名前を呼ばれた。
「私はっ、私はっ」
「いいんだ、折紙」
不思議そうに、理解出来ない顔でこちらを見つめる折紙。
「人を殺した事実は変わらない。だけど、人は変われる。狂三だってそうだ」
だから。
「人を殺したことを背負って、その分まで生きられるように頑張るしかないんだ」
それはきわめて残酷で、そして今の折紙にとって最も覿面な言葉であった。
「……、あ、うぁぁ……あぁぁぁぁぁっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」
子供のように声を上げて泣き始めた折紙を、そっと抱きしめる。
視線を感じたと思ったら、珍しく鞠亜がこちらをじとっと見つめていた。そんなにして欲しいなら後でするから今は落ち着いてほしい。
「……士道」
「どうした?」
もう十分に泣いたのか、折紙が声をかけてきた。
「私はあなたが好きだった。でもそれは、きっと依存していただけなんだと思う」
「そっか」
そう彼女の中で整理がついたのだろう。攻略という目線ではよろしくないことだろうが、士道個人としては彼女が前自分を見つめ直し、向きになれてよかったと思う。
「だけど」
だけど?
「こっちの私はそうではない。私はちゃんと、五河士道という人に恋をした。この恋は、あなたに恋人がいても関係ない」
不意打ちに、キスをされた。
霊力が流れ込み、いつの間にか純白に変わっていた礼装が空気に溶けてゆく。
白い光に包まれる彼女の姿は、まるで花嫁の様であった。
後処理とかはまた今度に。二時間で三千時超えたので調子良かったです。第一バージョンでは鞠奈、鞠亜だけでなく狂三達まで全員が集まるパターンでしたが全員を活かしきれる技量に自信がなかった(てかできない)ので即座にやめました。
後処理だけして折紙攻略完了ですね。次は誰にしましょうか。私的には原作の流れに戻して八舞姉妹でもいいんですが厨二セリフとか上手くかける気がしないしエレンさん出ちゃったので飛ばそうかとも考えてたり。まあ、予定は未定ってやつです。
サブタイは繋ぐ手と手って感じで「繋手」。折紙が救い出されるシーンなイメージ。