デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 今日は上がらないと言ったな。あれは嘘だ。
 って言ってみたかっただけです。まあ、この後に更新できる可能性はほぼぜろでしょうが。
 (おそらく)また明日か明後日に更新頑張ります。

 では、どうぞ。タイトルどうりの回です。ネーミングセンスがないからシンプルになっちゃうんだね。


脱出

 

 

 士道が鞠奈を救うべく、鞠亜が立てた作戦はこうだ。

 まず、鞠亜がフラクシナスの本体へとアクセスを行う。この時、鞠亜は無防備となり、おそらくはその隙をつきに鞠奈がやってくる。そこで士道が彼女を会話で説得するといった手順だ。

 

 もちろん、士道はこの作戦に反対した。当然だ。鞠亜を危険に晒すこととなるのだから。しかし鞠亜は、「大丈夫です。そのための対策もしてありますから」そう言って押し切られてしまったのだ。

 

 そうして、作戦は決行される。

 

 

 鞠亜がアクセスを開始し、周囲に文字の壁とでもいうべきものが展開される。その文字が半透明でなければ鞠亜の姿さえ見えないほどの量だ。

 そして、電子の塊が目の前に出来たかと思えば、鞠奈が目の前に現れる。

 

 その直後、視界に――いや、世界全体にノイズが走る。

 急速に鞠亜の周囲の文字列が失われ、鞠亜の体にもノイズが見られる。

 

 「やっと、か。それほど待たされなかったね」

 

 そう鞠奈は言い放つ。

 

 「鞠奈! 話を聞いてくれ!」

 「どうしてキミの話なんか……」

 

 なんか、で言葉が止まる。なにがあったのかと不審に思っていると、鞠奈の顔が赤く染まり――そして元の色に戻る。この間、およそ30秒。そして何事も無かったかのように鞠奈は言葉を続ける。

 

 「ま、まあ、キミがどうしてもっていうなら、一つくらい聞いてあげなくもないけど?」

 

 どうして意志が百八十度変わったのかはわからないが、このチャンスを利用しないわけには行かない。

 

 「どうして…こんなことをするんだ?」

 「どうして、か。質問を質問で返すようで悪いけど、一ついいかな?」

 「別にいいけど…?」

 

 何を聞こうというのか。

 

 「一番最初に子供を褒めてくれるのは、誰?」

 「親…かな」

 「そう、だから私はそのために頑張ってるの。それが答え」

 

 つまり、あの寂しげな鞠奈の瞳の理由は――!

 幼いながらに士道の気づいたその事実は、とても悲しいもので。

 

 「あ……っぁ!」

 

 しかし、鞠亜の辛そうな声で、意識をそちらへと持っていかれる。

 

 「大丈夫か! 鞠亜!」

 

 慌てて駆け寄り、地面に倒れこもうとする鞠亜を支える。

 

 「はい、士道。私自身は平気です。ですが、私の持つ権限のほとんどが奪われてしまいました」

 「それは…鞠奈にか。」

 「そうだよ、五河士道。私が本来の管理者であったその子から、権限を奪い、私が管理者になったの。でも、それも等価交換とも言えるんじゃないかな?」

 「どういう…ことだ?」

 

 なぜそれが等価交換となりうるのか理解出来ない。

 

 「だって、あたしが与えたんだもの。この子――鞠亜が、鞠亜としていられるための情報を。声も、姿さえも。本来なら、鞠亜は存在しなかったんだから」

 「何だって!?」

 

 DEMの鞠奈と、対立しているというラタトスクの鞠亜。接点なんて見つからない。

 

 「あたしが初めてここに侵入してみたとき。だいたい三ヶ月くらい前だったかな?その時にフラクシナスのAIが私に対抗するべく自己進化して生み出されたのがその子ってこと。まあ、あたしがやりたくてしたことでもないし、ただの偶然なんだけどね」

 「それは、本来私が存在し得ないもので、あなたというイレギュラーによって生み出されたと。そういうわけですか?」

 「まあ、そのとうりだね。だから、その対価を受け取ったようにも見えるでしょう? それじゃあね、二人とも。この世界は終わる。もう会うことも無いだろうけど」

 

 そう言って、鞠奈は姿を消した。

 直後、世界に小さな亀裂のようなものが大量に生まれ始める。

 

 「士道。ここまであなたを巻き込んでしまって申し訳ありません。ですが、今の私には士道一人を帰す力もありません」

 「謝らなくていいさ。俺のせいでこうなっちまったんだから」

 

 話せばきっとわかってくれる。そう思っていたのは間違いだったのか。いや、そう信じるわけには行かない。自身の行動が間違いでなかったと証明してみせる!

 

 「鞠亜、なにか手は無いのか…?」

 「限りなく可能性の低い…いえ、この世界の崩落を止める手段はもう存在しないでしょう」

 

 「そんな…」と思わずつぶやきつつ、手を握りしめる。

 

 「ですが、士道がまた鞠奈と話したいというなら、それだけは叶えられます。」

 「っ! 本当か!」

 「はい、この空間の裂け目…これは、世界の中心部、マザールームへと通じています。そこにはきっと、鞠奈も」

 

 

 方法も何もわからない。だけど、自分はあの少女を救うと決めたから!

 

 「頼む、鞠亜! 案内してくれ!」

 「仕方ありませんね、士道は」

 

 そうして彼女の手をとった瞬間、想いが流れ込んでくる。

『もっと士道を知りたい。もっと士道のことを教えて欲しい。士道とずっと一緒にいたい。そして、士道を――愛している』

 

 これは…!?

 理性ではなく、直感が、これの正体を鞠亜の感情であると告げる。

 こんな状況だと言うのに、両思いだったのだとわかってしまい、顔に熱が集まるのを感じる。

 

 「鞠亜」

 

 駆け出すのを中止し、鞠亜に呼びかける。もしかすれば消えゆくかもしれないのならば、この想いを伝えておきたい、なんて思って。

 

 「好きだ。愛してる」

 

 ひたすらストレートに、士道は言葉(あい)を告げる。

 

 「なっ!?」

 

 鞠亜の顔がみるみるうちに赤く染まり、動きを止める。

 すかさず、鞠亜の体を抱きしめる。その体は、どこか震えているように感じる。たっぷり、数十秒間経った後、

 

 「私も…です。私も、士道の事を――愛しています」

 

 鞠亜はそう返事を返し、こちらに口付けてきた!

 途端、まるで自らの内にあった力が流れ出すような感覚がやってくる。同時に、なにかが流れ込んでくる感覚も。

 

 これはなんだ。そう言葉にするより早く、鞠亜の服装に異変が生じる。

 

 これまでの修道女らしき白い服に、機械のパーツのようなものが付け加えられる。円形のパーツが上部につき、さらには尾のようにも葉のようにもとれる不思議なパーツがつけられる。また、服も多少変化する。

 

 「これはっ!?」

 

 狼狽した声を上げるのは、鞠亜の方が先であった。

 

 「どうやって!? いえ、しかし…」

 

 ひとりで思考の海へ埋没してしまう鞠亜。

 

 「鞠亜、どういうことかわかるのか?」

 

 おそるおそる声をかけてみる。

 

 「理屈はわかりませんが、私とフラクシナスの間にあった経路(パス)が、切れ、士道につながったのです」

 「…え?」

 「ですから、今の私はもうフラクシナスの管理AIではありません。士道のものです。」

 

 まて、その言い方になにか語弊を招くようなニュアンスを感じる。とは口にしないでおいた。

 

 「ともかく、そろそろ急ごうか」

 

 改めて口づけをし、手を取り合う。

 

 

 そうして、不思議な通路らしきところを駆け抜け、たどり着いたのはマザールーム、中心だ。

 

 「へぇ、二人とも来たんだ」

 

 そういう鞠亜の姿は、金色の目の瞳孔が黒く染まり、髪の一部が金色に染まり、全身にコードが巻かれ、コードで編まれた翼を広げ、服装のみだったバグが肉体にまで進行している姿へと変貌していた。つまりすごく変わってる。

 

 「でも、キミにもう付き合ってはいられないんだ。ごめんね、五河士道」

 

 親の期待に応えるため、鞠奈は決断をくだす。そうして、彼らの背後に大量の鞠奈のコピー体とでもいうべきものが現れる。

 

 「っ、士道、ここは任せてください! 士道は鞠奈を!」

 「わかった!」

 

 そうして、五河士道は駆け出す。少女を救済するため。

 そして、決断をした鞠奈の攻撃が放たれる。

 どさり、と、鞠奈の目の前で士道は倒れる。鞠亜は、周囲を囲む無数の鞠奈の分身によってそれに気づけていない。

 

 「さよなら、初恋の人」

 

 そう呟き、鞠奈は士道の死体に口づける。その時、奇跡は起こる。

 

 鞠奈は、士道に十分な好意を抱いていた。ならば、もし士道が死んでいなければ、どうなっただろうか。

 彼に宿った精霊の力は、心臓を打ち抜かれた士道を少しずつ癒してみせた。しかし、鞠奈はそれに気づかなかった。それによって何が起こるのかといえば…封印だ。

 鞠亜に封印を施した時、パスが士道へと切り替わった。それは鞠奈でも同じことだ。DEMとのパスが切断され、鞠奈が死んだと思っていた士道に繋がれる。いつの間にか彼の傷は癒えていた。

 そして、五河士道は立ち上がる。今になってやっと気づけたことがあるから。

 それは、彼の論理感にとっても、十分におかしなことであると思えることだ。しかし、その気持ちは揺るぎのない、本物だ。

 

 「なっ! これはどうしてっ!? っ!? どうしてキミは生きてっ!?」

 

 狼狽の声の止まらぬ鞠奈を抱きしめ、右手で頭を撫でてやる。そして、鞠亜とおなじように、感情が流れ込んでくる。

『もっとあたしを見て欲しい。愛情を与えて欲しい士道を愛してる。でも、お父様の――』

 葛藤するようなその想いは、しかと伝わった。

 

 「大丈夫だ、鞠奈。俺がずっと傍にいるから。絶対にこの手を離さないから。だからさ、俺と一緒に居てくれないか?」

 

 本日二度目の告白。二股というやつである。これが士道の罪悪感に訴えてきたのだ。しかし、それでも士道は、自身でも自覚しないあいだに鞠奈の事()好きになってしまっていたのだ。

 

 「ほん…とうに?」

 「ああ、絶対だ!」

 

 そう言ってもう一度キスをする。そして、鞠奈は脱力し、士道へと崩れるようにしてもたれかかる。

 

 「やっぱり、ですか。士道の事ですから、そうなるとは思っていましたけど」

 

 呆れたような鞠亜の声が聞こえる。本当に鞠亜には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。鞠奈の分身はいつの間にか消えてしまっている。

 

 「すまん、鞠亜。二股なんてな」

 

 言い訳などしない。なにせ、全て事実なんだから。

 

 「いいえ、それは構いません。士道ならこうなるとは思っていましたから。ですが、ちゃんと私に構ってくださいね?」

 

 まさか簡単に許されるとは思っていなかったので、拍子抜けである。

 

 「ああ、もちろんだ」

 「ちょっと、あたしにもちゃんと構いなさいよね? 一緒にいてくれるんでしょ?」

 「ああ、こんな俺ですまないけど、三人でずっと一緒にいよう」

 「ええ、それはとても楽しそうですね」

 「まあ、それには同意するかな。さて、それはさておき、これからどうするつもり?」

 

 そう、この世界は今にも崩壊へと向かっているのである。

 

 そして士道は、自らの想いを解き放つ。

 

 俺をこの世界に連れてきてくれた、その変な力ってやつがあるのなら! いますぐ、俺達がここからぬけだせるような力を貸してくれよ!

 

 そして、その想いは叶えられる。

 

 目を開けばそこは、自室であった。電子の世界と違って、生活感とでもいうべきものが溢れている。違和感などない。二人の人物を除けば。

 

 「ねぇ、士道。あたし達、肉体が…あるのよね?」

 「そうみたいだな」

 「士道、これはなぜなのでしょうか?」

 「知らねぇよ!? まあでも――」

 「「でも、何なんでしょうか?(何なんだい?)」」

 

 まるで姉妹のような二人に、笑みがこぼれる。いや、ここでは二人は本当に姉妹なのだ。そう有る事だって無理じゃないはずだ。

 

 「みんな一緒にいられる。そうわかっただけで十分だろ?」




 そんなわけで私的には多めのボリュームでお届けしました過去編。後は出てからのことを整理して少しデートをしたら原作に入るつもりです。学校とかに通わせたいけど、そのへんどうやるか考えなきゃなぁ。
 原作(ゲーム)とは多少の違いがあったり。鞠亜の権限が全部一気に取られてたりね。
 士道が灼爛殲鬼に覚醒して頑張るのも考えたけど好きな女の子をコピー体とはいえバッタバッタ焼いたりすんもなぁと思い直してこうなりましたが作者的にはいい感じ。

 えと、士道から力の流れていく感じであったり、パスの接続先の変換。一応こじつけの話は考えてるので聞いてやってください。
 まず、士道から力が流れ込んだの。これは、士道が瀕死で描写こそありませんでしだが鞠奈にもありました。これは霊力です。灼爛殲鬼一体分の霊力ですが、封印状態の精霊は燃費とかもいいでしょうし、リアルでは賄えると思ったので霊力を士道が渡し続けてリアルでは存在することとなります。肉体も霊力で作られた感じ。一時的なものではなく肉体そのものを作り出していますので、本来の精霊と変わりありません。魂を元に肉体を灼爛殲鬼が復元した(というか作り出した)感じだと思ってます。灼爛殲鬼さんまじおつかれさまっす。一応、パスが切れても数日は平気です。電脳世界で鞠亜が霊装に変わったのは、霊力を摂取したためだったんですね。霊力なくても使えてましたが(間違ってないよね?)、それを霊力で無理やり起こしたというか強化したというか。そんな感じです。
 そしてパスの変更。これは、士道が二人を封印する時に、本当の精霊でない二人はパスをつなげない。たりないなら別のところから持ってくる理論でパスを流用した結果、元のところと途切れるということになりました。なんていう設定を考えてたり。無茶苦茶だけどね。
 鞠奈が親のことをすんなりに諦めたのは、パスの切断によって唯一の縁とてもいうべきものがなくなったからでもあり、士道と一緒にいたい気持ちが親への愛を求める心を上回ったからでもあります。つまり思い切りと愛情。
 士道も二股をずいぶん気にしてたり。でも二人とも別におっけーだったんだけどね。これ以上増やすのもなんだしくるみんはまた機会があればで。

 そんなわけで、今話は頑張ってみました。少しゲーム版のセリフも採用してみたりと、作者的にずいぶん楽しくかけました。楽しんでくれると幸いです。

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