デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 流石に今回は原作手元に無きゃきついぞ……。とか思ったけどループ一周目だと〈ファントム〉と会うことすらないのか。ちょっとそのへん考えなきゃ(遅い)。
 今回、狂三の会話が『』、鞠亜達は[]ですが鞠亜たちのほうは念話ではなく、スマホに話しかけてる感じです。傍から見れば電話だろうね。それもビデオ電話。

 ていうか気づいたんだけど折紙が精霊ってことに驚いてなかったな……。まあ、琴里の前例で人が精霊になることには耐性があったということで。


過去

 ここが、――五年前の世界。

 

 [士道。ひとまず、南甲町へと向かいましょう]

 『士道さん。行動を開始いたしましょう』

 

 折紙が狙うのは彼女の両親を殺した精霊。おそらくはあのノイズであり、あれが現れるのはあの公園。つまりはそこへ向かえば、きっと何か――彼女が反転するに至った原因が見つかるはずだ。

 ちなみに狂三が鞠亜と鞠奈の実体化を提案したのだが、二人はに霊力を分配した状態で来た以上下手に三人に力を分けるよりもひとりにまとめておくべきだという考えによって却下された。

 

 霊力を限定的に使い、身体能力を強化。【十二の弾(ユッド・ベート)】と言えど、制限時間がある以上一刻も速い行動が求められる。士道は傍目に見て以上なほどの速度で駆け抜けた。

 

 

 そしてたどり着く、見覚えのある場所。火災に見舞われる前の町の風景。懐かしい、そう感じさせる町並みだ。

 

 [士道、あれは――]

 [どうしたのよ、キミ? って、あれは――]

 「あ……」

 『どうかしましたか、士道さん』

 

 鞠亜が見つけたのは、五年前まで士道が住んでいた家であった。

 郷愁の念に駆られるが、少なくとも今の士道に過去を変えてしまうつもりなんてない。だって、こうして手に入れた力がなければ鞠亜、鞠奈を救うことも、こうして触れ合うことも。ほかの精霊を救うなんてことも無かったことになってしまうのだから。

 出会う筈だったことを台無しにする。それは、一見起こる不幸を回避しているように見えて、しかし新たに選んだ世界にはまた不幸が待っている。手放した幸せと同等の幸せが待っているだなんて限らない。時間とは、そんなにも不確かに進んでいくものなのだから。

 

 「ひとまず、アイツに出会って話をする」

 『話を――ですの?』

 「ああ。本当にアイツが折紙の両親を殺すのかも分からないんだ。聞いてみたいこともあるし、出来るのなら――話をしてみたい」

 『それは無駄だと思いますわよ? 確かに、進んで人を殺すような方ではありませんでしたが、煙に巻かれてしまいますわよ』

 [……。ねぇ、狂三。キミってばアレと知り合いなわけ?]

 『ええ、まあ。私と会ったときも常にあのノイズに覆われていて、詳しい事は何も知りませんけど』

 「……まあ、とりあえず行ってみよう」

 

 

 それからおよそ五分後。士道は公園の植え込みに身を隠しながら、ブランコの――幼い琴里のいる方をじっと眺めていた。

 

 [そんな熱心に見つめるんじゃないの。確かに、あんな沈んだ表情してたら気になるのもわかるけど、そんなに凝視して変質者として通報されても知らないわよ?]

 「うっ、わかってるよ…」

 

 確かこの時の自分は琴里にリボンを買いに行っていたはずだが、こんなにもさびしそうにしているとは思わなかった。

 

 

 そうして四人、注意を払いつつ話をしていると――

 

 [来たわよ!][来ました!]『来ましたわ!』

 『人間を精霊にする』。そんな超常的かつ理不尽極まる権能を傍若無人に振るう怪物。琴里を精霊に変え、士道の人生を良い意味でも悪い意味でも変えた張本人。

 それが今、目の前に姿を表した。

 何かを琴里と話したかと思うと、その手のひらに差し出したのは赤い霊結晶。琴里がそれに触れた途端、彼女の体からは炎が漏れだし、その服は和服のような霊装へと変わる。

 

 「――待ってくれ」

 

 その場を立ち去ろうとするソイツに、声をかけた。

 

 [待ってくれ、って、それで待ってくれるやつがあんなことしないでしょ……]

 【――――――え?】

 

 ソイツは、小さな声を発し、微かに体を揺らす。立ち去ろうとするその動きがピタリと止まる。それと同時、まだ距離があるために小声で話す鞠奈の声も止まる。

 無論、その身体はノイズに覆われたままで、モザイク状の空間の歪みが動いたようにしか見えない。――だが、士道には何故かそれが動揺や狼狽に属するものだと確信できた。それは、まるでこちらを知っているかのような、唐突に声をかけられたことに対する驚きとはまた違ったもので。

 

 [……どうして止まるのよ、コイツ]

 【……うそ――、君は……どうして、君が……】

 「お前……俺を知っているのか……?」

 

 驚いている、と判断できたのは俺だけらしい。鞠奈の言葉に答えている暇はなく、ソイツから続いて上がる困惑の声に対し、より一層確信にも近い感情を込め、そう尋ねる。

 しかし、答えない。だがそれは、士道に情報を与えないためなどではなく、ただ呆然としているのだとやはり確信できた。

 突如、地面を滑るかのような動きで動き出すソレの後を追う。立ち止まったのはそれほど離れてはおらず、しかし琴里からは見えない位置。下手な影響を与えないためだろうか? ずいぶんと気遣いのできるヤツだ。

 

 突如として立ち止まり、こちらを見て呟く。

 

 【……ああ、そうか、やっぱり、君は】

 

 得心がいったように頷く動作を作った後、その身体からノイズの膜が消え去っていく。頭の中には、狂三の驚く声が響く。声こそ聞こえないがきっと、鞠亜達も驚いているのだろう。距離は先程よりも近く、いくら小さい声で話すといえど限界がある。それで何も話してこないのだと予想する。

 

「……まだ君に『私』を見せるわけには行かないから、仮の姿で失礼するけど――せっかく君と話ができたのに、障壁越しというのも味気ないからね」

 

 見える姿は、女子高生のようなものだ。ピンクのふわふわとした髪に、穏やかな顔つき。

 

 「君は一体いつから来たの? その姿を見るに、五、六年後っていうところかな?」

 「質問しといて答えを出すなよな」

 「ふふっ、それもそうだね」

 

 落ち着いたのか、次々と話し始めるソイツの言葉に苦笑しつつそう返せば、向こうも小さく笑い声を上げる。

 

 「全く関係ないことなんだが、一ついいか?」

 「……? なんだい?」

 「名前……あるか? どう呼んでいいのか分からなくてな」

 「ぷっ、ふふっ。私の名前ね。今はまだ教えてあげれない。でも、そう。識別名のようなものを名乗るとするなら――」

 

 〈ファントム〉。いずれ私の名前を知るその時までは、〈ファントム〉と呼んでくれていい。

 

 [全く、急に何を聞き始めるのかと思ったら名前だなんて]

 [確かに、ノイズ、では何かわかりにくいものがありましたから、識別名とはいえ呼び名は必要だったかも知れませんね]

 「――――え?」

 

 再び上がる、狼狽の声。ノイズがなくなったこともあり、その表情は確かなものとして読み取れる。というか、鞠亜達、向こうにバレないようにしていたんじゃなかったのか? さっきまで話しかけてこなかったのに。

 

 「私の……知らない精霊? どういう……こと? ね、ねえ、君たちも精霊なの?」

 [ええ、そうよ。と言っても、DEMインダストリーが第二の精霊を元に作り上げた人工精霊なんだけど]

 [私はその情報を元に作られた元AIです。一応、人工精霊ですね]

 「――そう。存在し得ない筈の精霊、か」

 

 独り言のように呟いた〈ファントム〉は。

 

 「君たちの存在が、士道の未来を明るくするよ」

 

 そう、言い放った。

 

 「……それで、私に何の用かな? 時間遡行の弾を使ってまでこの時代にやってきたんだ。ただの観光っていうことはないよね?」

 

 目的は知らないが人を精霊に変えた存在だ。狂三がまたしても狼狽の声を上げるが、そういう存在である以上ほかの精霊の力を把握しているというのもある程度予想できることだろう。

 

 「俺をどうして知っているのかとか、俺の力は一体何なんだ。そういうことを聞きたいが――時間が無い。頼みがある」

 「それはなんだい?」

 「まあ、色々あるんだが結局のところ、ここに居られると未来で不都合があるから一刻も早くここから離れて欲しい」

 

 話をしている限り、この精霊が人を殺すなんて有り得ないことだと思う。しかしそれと同時に、何らかの原因でもある筈なのだ。だからこそ、彼女を遠ざける。

 

 「いいよ――と言ってあげたいところだけど、私にもやることがある。だから、ごめんね」

 

 最後に、一言。

 

 「もう絶対離さないから。もう絶対間違わないから」

 

 謎の発言を残し、動き始める〈ファントム〉。しかし、その歩みは一○秒としないうちに止められてしまう。それは、ちょうど五年前の自分たちの視界に入る所で。

 

 天上から一条の光線が降り注いだかと思うと、〈ファントム〉の姿が掻き消えた。

 士道の脳裏に蘇る、五年前の光景。五年前、確かに〈ファントム〉目がけて空から光線が放たれたのだ。

 高速で働く思考は、まさか五年前から、時間遡行が行われることさえ規定のことだったのかと推測を立てる。歴史の修正力、なんてSF作品にあるような設定が頭をよぎる。

 士道は、バッと顔を上げた。光線の来たその先を探るように。

 そこには、幻想的な白のドレス――おそらく、反転する前の本来の霊装なのだろうそれに包まれ、幾つもの『羽』のようなものを従えた折紙が、いた。その貌は、憎悪や憤怒によって忌々しげな色に染まっている。

 

 そして、高速で繰り広げられる戦闘。空中で繰り広げられるその戦いの後を追うように走っているその時、声が聞こえた。

 

 「折紙!」

 

 四人ともが、「え?」と、困惑の声を上げる。

 その視線の先には、小さな頃の折紙であろう少女と、その両親らしき姿が見える。

 

 一瞬して、空で光が放たれる。バラバラに降り注ぐそれは、ちょうど彼女の両親を貫くような線を描く。

 諦めるつもりは無い。霊力を全力で開放し、そこへと手を伸ばす。だが、致命的なまでに距離が足りない。テレポートをしているほどの時間の余裕すらない。

 

 それは、運命に定められたことだから。

 この時間軸にいる士道には、その時期が早まろうとも、霊力を自在に扱えど、覆せない。彼が彼女の両親を救うには、更なる時間遡行が必要となる。そうでなくては、救う事は出来ないのだ。

 

 そして、彼女の両親は、天より降り注ぐ光によって殺されてしまう――筈だった。もし、士道が一人であったのなら。

 

 死の運命に待ったをかけたのは、〈ファントム〉が本来存在しないはずだ、と言った二人の精霊。本来の流れには存在せず、それゆえに自由に動くことの出来る二人は、士道とのパスを通じて霊力を確保。携帯電話から出て実体化する座標をそのまま光の真下にして、霊力と霊装の防御力任せにその攻撃を受けきった。

 

 その代償は、腕の怪我。もともと戦闘に向いた精霊ではない二人には、折紙の放つ技の余波であっても強すぎるものであった。直後、パスを通ってきた暖かい霊力が二人の腕に伝い、再生の炎の形をもって顕現する。不思議なことに、熱さは感じない。

 

 少女の折紙がナニカを言おうとしたその瞬間、士道達は元の時間軸へと引き戻された。




 ちょっと長めに過去編を詰め込みました。原作から拾い出したい部分が多かったので原作そのまま採用されてる部分が結構あったり。
 鞠亜達が救うのは決めてた。本来、次の時間遡行をしなければ救えない筈の人をイレギュラーな二人が救うって展開、良くない?

 反省というか気になる点としては、オリジナルで入れるセリフが少ないあたりかな。狂三とか結構空気感。……すまない、力不足だ。
 過去が違うから折紙の未来も違うわけだけどそんな高等技術ないので結局原作よりになるかも。

 抜き出したい点だけ書きだして、残りは布団で書いていった今回。楽しんでいただけたら幸いです。戦闘もなしに(まあ折紙さん戦ってましたが)それなりに長い回になりましたね。あくまで私基準ですが。
 あと結構急いで書いたのでフリックミス(スマホ投稿です)とか多いかも。誤字気になる人は報告お願いします。
 ああ、眠たいしアップロードだね。あとがきはこんなもので。
 ではまた次回。

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