あと、今日は友人とカラオケ、午前は眠りまくるので一話も上がらない可能性があります。春休みの宿題、終わってませんしね。
今回は士道が決意を固める、これまたタイトルどうりの回です。お楽しみを。
「士道、士道。起きてください」
誰かの声とともに体が揺さぶられ、意識が覚醒する。
普段に比べすっきりと目が覚める感覚を感じつつ目を開けば、目の前――おそらく30cmも離れていない――に鞠亜の顔があった。
突然の事に思考がついていけず、鞠亜の顔を凝視したままぴたりと停止してしまう。
「おはようございます、士道」
にこりと至近距離で微笑みかけられる。それは、初恋を経験している真っ最中の士道にはとても刺激の強いもので。
「ーっ!」
恥ずかしさのあまり、布団を引っ張って――あくまで鞠亜に当たらぬよう気をつけつつ――顔を隠す。
この時、士道がよく鞠亜を見ていれば、顔を少しばかり赤らめていたことに気づけたのだろうが、鞠亜の恥じらう姿は誰の目にも見られることは無かった。
――はて。布団をかぶったところで、士道は違和感に気づく。そもそも、昨日ベッドに入った記憶は無い。覚えているのは、公園で鞠奈と話していたところまでだ。
なにかおかしい。そう感じ、先程まで恥ずかしがっていたことも忘れてベッドから起き上がり、部屋を見回す。見慣れた机にベッドと、おかしなところはない。掃除をした覚えもないのに机が妙に片付いていることと、鞠亜がいることを除けば。
士道は、それほどものを散らかすこともなければ掃除をしないわけでもない。だが、自身の目に見えるその机はあまりに片付き過ぎていた。まるで、すべてが新品であるかのように。
その上、鞠亜はネットで話す仲であり、確かに彼女のことを電子の世界で見かけた。だが、自宅に呼んだことは無いし、そもそも――あくまで昨日の鞠奈の弁を信じているからこそ言えることだが――彼女はAIであるはずで、現実に出てくることが出来るわけは無いはずだ。
――ということは、だ。
鞠亜は士道のそんな疑問を察したようで。
「はい、士道が考えている事はおそらく正解です。ここは、あなたが迷い込んだ電子の世界。士道の部屋も、家も、この街並みも、すべて現実ではありません」
どうやら、士道が立てた推測は間違いではなかったようだ。
ということは、鞠亜は――。
「鞠奈からもう聞いたのでしょうか? 改めて自己紹介しましょう。私は、フラクシナス管理AI、或守鞠亜です」
フラクシナス。それは、最初の鞠亜のユーザーネームだったものだ。
それはどのようなところなのか。そう聞いてみたい気持ちを士道は押さえ込む。話せることであれば、きっと鞠亜は話してくれる。士道はそう信じる。だからこそ、彼女が打ち明けてくれるまでは待とう。
だけど、これだけは言わせてもらおう。
「鞠亜がAIだったからって、何も変わらない。鞠亜はここにいて、俺と話してるんだから。」
思った事を口にする士道。しかし、それを言い換えるなら、そんなことは知ったことは無い。一緒に居よう。だなんて言っているようにも取れて、鞠亜は顔を赤らめて、「士道はずるいです」と呟く。
今、なんといったのか。そう聞き返そうとした士道に、鞠亜はこほん、と咳をして話をきりだす。
「士道。フラクシナスは、世界が秘密にしている事に関わっています。そして、士道もそれに巻き込まれたと言っていい状況にあります。ですから私は、士道には知る権利がある。そう思います。しかしこれは、繰り返す様ですが世界が隠そうとしていることであり、知ってしまえばなにかに巻き込まれることがあるかもしれません。それでも知りたいと、あなたはそう思いますか?」
少し重くなった鞠亜の話に、士道は体をこわばらせる。世界の秘密にかかわる。そのようなことに足を踏み込んで良いものかと逡巡し――彼は、深く考えることをやめる。いくら考えたところで、自分で理解出来ることなんてたかが知れている。だから士道は、自らの感情に選択を委ねた。即ち、鞠亜と共にありたいと望むその心に。
「――もちろんだ。」
そうして鞠亜から聞いたのは、まるで嘘みたいな。ファンタジーのような世界の話。空間震の原因だという精霊と呼ばれる存在に、それを別のやり方で止めようとする二つの組織のこと。
「そっか、フラクシナスっていうのはそういう組織なんだな」
鞠奈のいるDEMインダストリーというところや、AST(Anti Spirit Team)が、精霊を殺して空間震を止めようとしているのに対して、フラクシナスは対話によってそれを解消しようとする組織らしい。
「今の話を聞いて、士道はどう思いましたか?」
「フラクシナスの、対話によって止められるっていうならそうするべきだと俺は思う。せっかく言葉も通じあうんだから。それに、精霊達はやりたくて空間震を起こしているわけじゃないかもしれないんだろ?なら、なおさらだ。どうにかして止めてやりたい。手段もなにも思いつかないけど、助けてやりたい。そう思う」
これが俺の答え。理屈ではなく、感情に任せた、だからこそ自ら意思だと胸をはれる、そんな答え。それが正史の彼の抱く思いと等しいということは、やはり彼は彼であるというわかりきった証明になるのだろうか。
「そしてそれは、鞠奈も一緒だ」
言葉を続ける。
「鞠奈は、そのDEMインダストリーってところのAIだ。だけど、鞠奈は人を恋しがってる。俺にはそう見えるんだ。どうやればいいのかとか、何もわからないけど、鞠奈を救ってやりたいんだ。だからさ…」
一呼吸置いて――
「手伝ってくれないか?」
士道は鞠奈を救うことを決意する――っ!
そんなわけで過去編もあと数話(と思われます)。
救い方? そんなの、タグどうりに決まってるじゃないですかー。
そして、原作開始三年近く前から精霊のことを知っちゃう士道である。そして同時に作者の頭からは狂三ルートを過去編でやるという考えはなくなっていく。でも書きたいところもあるんだよね。どうしましょ。
ついでに予約投稿初挑戦。成功してくれえ。