デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 さあて、新章だー。と行きたいところですが、進行上今回は大したこと無いです。
 作者の力不足もあり、他人視点ではそれほど改変を行えないことからほとんど他人視点は用いず、いても士道がいるか、鞠亜か鞠奈のどっちかがいるかくらいじゃなかったけ? ASTで何か書いたような気もする。

 まあともかく、そういう風にしてきたんだけど、今回は先の都合もあってAST側の折紙視点から始まります。ちょっと先の話なんだけど、琴里が力開放してない以上先になるのよね。
 書く前の予想だけど多分分量足りなくなるから狂三の能力を掌握するあの夢的なのやると思われる。


肯定

 

 ――夢を、見ていた。

 折紙がまだ小さかった頃の。火の海を舞う天使によって、両親が殺されたその時の夢を――。

 

 「……っ、……っ」

 

 激しく鮮烈な夢から意識を取り戻し、カッと目を見開く。

 つい今の今まで眠っていたにしては呼吸が荒い。

 消毒液の臭いを感じて見れば、ここは病室らしい。何度も世話になっている自衛隊病院の個室だ。

 夢が原因であろう寝汗に湿りを気にかけつつも、その意識は――少なくとも折紙の主観としては――つい先程のことを思い出す。

 

 「士道……!」

 

 折紙の愛しい恋人(予定)の名前を呼ぶ。真那に続いて登った屋上にて、狂三と交戦し、気を失ってしまったのだ。

 士道と真那の安否。それに狂三の動向が気にかかった(屋上には恋人(予定)の士道を寝取ろうとする泥棒猫二人やゴミと見間違えてしまうような何かがいた気もするが、重要なことではない)。

 

 ひとまず、なんとかして情報を集めなくては。

 精霊の情報は、精霊と戦う組織に。そう考え、立ちくらみを無視して歩きだそうとし――点滴に引っ張られる形でベッドに尻餅をついた。

 優先するべきは、体を治すことらしい。

 

 その後、恋人(予定)の士道と運良く出会ったものの、クラスメイトという程度の接点しか持たない折紙に軽く会釈をするだけで行ってしまった。あの泥棒猫さえいなければこんな自体にもなり得なかったはずで、今頃イチャイチャラブラブの学生生活を送れていたはずなのだ。絶対に許されない。

 

 

 

 その翌日。偶然にも夜刀神十香と〈ハーミット〉、或守鞠亜に或守鞠奈の四人と外出する恋人(士道)を見つけたが、精霊があれだけ直近にいる手前下手な刺激を与えるわけにも行かず、コンタクトを断念。おのれ〈ハーミット〉。

 しかし一目彼を見ることが出来たことを幸運に思いつつ、やってきたのは天宮駐屯地。

 

 「折紙!? あんた、退院したなら早く連絡しなさいよ」

 

 CR-ユニット格納庫に顔を出すと、AST隊長である日下部燎子がそんな声を上げてきた。

 彼女の格好が作業ズボンに黒のタンクトップであるという事は、何かの搬入チェックでもしていたのだろう。デリケートかつ秘匿性の高いCR-ユニットは触れることの出来る人間が少なく、実戦要員であるASTの隊長ですらこのような雑務をこなしたりもする。

 

 そこで軽く話を聞くに、DEMのウィザードですら三○分で廃人と化すほどの高性能でリスキーな――理論上単体で精霊を倒すことが可能なレベル――装備が送られてきたらしい。

 

 「一昨日の記録は――ある?」

 「一昨日? ええ、一分程度のもので、そこからはカメラが壊れたみたいだけど一応あるわよ」

 「お願い。その映像を見せて。――今、すぐに」

 

 

 

 

 「…………っ」

 

 仕事中の燎子を無理矢理ブリーフィングルームまで引っ張ってきた折紙は、プロジェクターでスクリーンに映し出された映像を見て、言葉を失った。

 

 「これ、ひどいでしょ? なんでも、ある時間に突然周囲にあった観測機器が全て停止したらしいわ。学校を中心としてたから、霊力によるものなんじゃないかって話だけど実際はどうだか。それで、その範囲外から撮影したものをなんとか大きくしたのよ」

 

 そう言って彼女が見せる映像は、ひどく解像度が低い。中途半端な時間から撮影が始まっていたらしい上、それほど遠くにあるにも関わらずカメラが破壊されたらしく、中途半端な場所で終わっていた。

 だが、折紙は気づいた。気づけてしまった。

 顔など解像度の低さ故に潰れてしまっていて、本来なら誰にも判別できなかっただろう。ならば、その髪の長さを見て誰もが女性と判断するはずだ。

 しかし、彼のことをよく知る折紙のその直感が、この炎を纏った精霊(・・・・・・・)こそが彼であると分かってしまった。

 五年間、ずっと追い続けてきたその炎の精霊。しかし、折紙の記憶が確かならば、彼である筈がないのだ。

 

 「……っ、どういう、ことっ」

 

 襲ってきた頭痛に顔をしかめつつ、折紙は家へと帰った。

 

 

 

 

 その夜。彼女の耳元に、こんな声が届いた。

 

 【――ねえ、君。力が欲しくはない? 何者にも負けない、絶対的な力が。もしかしたら、彼を救えるかもしれないよ?】

 

 折紙が選ぶのは――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、闇の中にいるかのような夢だった。

 これまでの夢なんかと違って、街にいる訳では無い。平衡感覚も何もかもをなくしてしまいそうになる、真っ黒なのに形が理解できる不思議な世界。大地も空も全てが単色の黒に覆われた、と言った感じだ。

 そして、目の前にある――辺りの色が色であるために浮いているようにも見えるそれは、身の丈の倍近くはあろうかという巨大な文字盤。細緻な装飾の施された古式の歩兵銃と短銃を針とした、天使。

 

 「〈刻々帝(ザフキエル)〉……」

 

 他とは異なる『時』という代償を求める、異質な精霊。それを前にして、思わず言葉がこぼれる。

 

 そして、それは唐突に始まった。

 カチ……カチ……

 カチカチカチカチ

 非常に遅く、巻き戻る針は、黒いもやを周囲に吐き出しながらその針が反対に回ることをやめない。それどころか、どんどんとその速度は上昇していく。

 そして、長針が一周し、そのもやが形をなした。

 「オォォォォォォ」

 と、怨嗟を込めた呪いの声を響かせる、虚ろで半透明な人の形をしたナニカ。こちらを見ることもなく、ただ俯いて声を響かせるそれの見た目は、会社勤めのサラリーマンのようである。

 そして、先程よりも早い時間で逆回転した長針は、同じく呪いの声を響かせる女性のヒトガタを生み出す。

 やがて、長針は恐ろしい勢いで逆回転を初め、その身をもやで覆いながら無数の――視界に捉えきれないほどのナニカ達を生み出し、そしてそれらから上がる無数の怨嗟の声が響き渡り、士道の耳へと届く。

 

 士道は、これらの事を理解していた。

 これは、狂三が奪った人の時間。寿命であり、未来なのだと。

 それらを奪われた彼らが、呪いの声を上げているのだと。

 

 士道には、彼らをどうこうしてやることが出来ない。

 当然だ。彼らはもう、死んでしまっているのだから。

 

 そして、彼は自らの想いを解き放つ。

 それは、これまでにも紡がれてきた誓いの言葉であり、最も新たな言葉だ。

 

 「人を殺す災厄だとか、これまで人を殺してきたとか、そんな事は関係ないんだ」

 

 誰かに言い聞かせるように。自分に言い聞かせるように。

 確かにそれは罪であろう。犯罪なのだ。だが、 そんなことを彼女に強いた世界が間違えていたのだ。

 

 「過去は変わらないし、変えられない。なら、前を向いて生きていくしかないんだ」

 

 その思いは、彼の過去に起因する。親が死に、世界に絶望した彼が子供ながらに悟ったセカイはそうだった。

 

 「だから――俺は。俺達だけは、アイツを肯定してみせる!」

 

 響く呪いを打ち消す様に叫びを上げる。

 世界に否定される彼女らの。自分だけでも味方であるのだという宣言であり、彼自身に打ち立てた一つの誓いに等しい言葉。

 ――だから

 誰にも邪魔をさせない為に。彼女らの道を閉ざさないために力を求めよう。未来を切り開くための力を。

 

 「〈刻々帝(ザフキエル)〉!!」

 

 確信をもった士道の声に答えるかのように、ヒトガタは黒のもやへと戻り、時計ではなく士道に吸い込まれる。

 

 世界の欠片が落ち、世界が少しずつ崩壊してゆく。

 左目が疼く感覚と共に、士道の意識は闇に落ちた。




 そんな感じで攻略順序変更入りマース。ま、折紙が何を選んだかなんて皆分かるよね。しかし時間遡行が出来ないんだけどどうしよう。人の霊力使うから封印されてても霊力さえ借りれれば実は使えるってことにでもしてやろうか。でも七罪もいないのにどうするんだよ、となるわけで。ま、行き当たりばったりやっていきます。
 彼を救えるかもしれないよ?byファントム。まあ、霊力大量に集めれば排出できるのは原作でも言われてることだし、それに救うったっていろいろ形があるわけだから騙したとは思ってません。意図的に勘違いさせようとはしましたがね。

 そして後半の士道覚醒シーン。時を戻して死者を出すってのは結構思いつきが強いけど狂三を肯定するのは前々から決まってた事です。死者のもやに感謝を告げるシーンもあったんだけど書き直してもしっくりこないから全カットしたりもしたよ。何か違ったんや……。

 そして刻々帝の完全掌握。狂三の時を体験したために二人の時間は共有されました。士道はこれまでにストックされた分なら時間使えます。
 電子の力で人を丸々コピーしてそこから時間を取るっていう手段を思いついたんだがどうだろうか。精霊の力がネット内に設定されてるわけじゃないってことは或守インストールの最後の戦いとかから電子の世界でも霊力は通用すると見ていいわけだし、分体は霊力が尽きるまで動けるわけだから霊力を寿命に変換できるんじゃないかと考えるのよ。まあ、普通は無理だろうけど無茶な設定でやってくこの作品では可能ってことで。だつて〈刻々帝〉の能力カッコイイし。使わせたいし。でも改心したのに人殺させたくないし。
 ってわけで無理やりな理由付けもしたのでこれからは時間なんて簡単に扱えます。まあ、流石に時間遡行とかは自重させるけど。あと原作に出てない能力を適当に当てはめたりはしないよ。

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