デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 速攻で感想来てテンション上がってやる気出した莢那です。

 そんなわけでゲーム版の展開に近しいものをしつつ、鞠奈の攻略どうしようかと行き当たりばったりに悩んでおりますが、まあ見てやってください。


恋心

 

 光に包まれたその直後、オレが目を見開けば、そこは見慣れたとも言える天宮市だった。しかし、どうも様子が変というか、あまりにも街がきれいすぎる(・・・)

 人の暮らしている以上、汚れなんかは必然的につくものだろうに、それが見当たらなかったのだ。

 ――訳の分からない状況なせいかむしろ冷静になっているんだなぁ、と客観的に考察できる程度には彼は落ち着いていた。

 それにより、やはりここはさっきの不思議な体験―どうも夢であるようには思えない―の続きであると思われる。

 

 「ひとまず、鞠亜を探そう」

 

 目的を口にして、すこし歩き出す。やはり、というべきか、人っ子一人見当たらない。

 

 そうして歩き回った先の公園で、士道は鞠亜ではなく、鞠奈の姿を見つける。

 

 「やあ、またあったね、五河士道」

 「ああ、そうだな、鞠奈」

 

 先ほどと違って敵意らしいものも見られず、普通に接してくるところからは、やはり彼女が敵であるとは考えにくい。というよりも、あんなに寂しそうな目をする彼女を敵だと思いたくない。

 

 「なあ、鞠奈。教えてくれないか。お前が何をしようとしているのか。それにこの場所のことも」

 「お断り…と言いたいところだけど、今はやることないしね。特別に教えてあげる」

 

 

 そうして鞠奈から明かされたのは、ここがやはり、というべきか、電子の世界であるということ。そして、鞠亜、鞠奈は共にAIで、作られた企業が対立しているようなものなのだということだ。

 正直に言わせてもらえば、多少精神の成熟が早いからと言って、まだまだ幼い士道に理解し切れる話ではなかった。

 だけど、多少ならわかった。そうして、親の愛情を求めるこの少女を救いたいという気持ちがさらに強まる。

 

 「だから、キミはもっと私を警戒しなさいってこと。わかってる?」

 

 今は、公園のベンチで、二人横並びに座っている状態だ。

 しかし、そう言う鞠奈の目が、どうも離れて欲しくない、そう告げているように見られて。

 逡巡するように空中に手をさまよわせ…士道は、鞠奈の手を握りしめる。

 

 「っ!?」

 

 驚いたような声を上げつつ、それを振りほどこうとしない鞠奈。そんな鞠奈に、士道は告げる。

 

 「鞠亜も鞠奈も、複雑な事情があるってことも、二人ともがAIだってことも、なんとなくだけどわかった。でも俺は、二人共が仲良くやっていけると信じてる」

 

 言葉に背を押されるように、少し強く、鞠奈の手を握りしめる。すると、無意識にかそれに反応して、すこし士道の手を握り返す。

 そうするほどには、鞠奈も士道に気を許していた。

 

 彼女にとっての士道は、一言で表すなら不思議な少年と言ったところだろう。

 現実に存在する少年であるはずなのに、どういうわけか電子の世界に入ってきた上、本人はそれをどうして出来たのか理解していない。

 そして、公園で自らに目的を尋ねて来た時は、純真な少年だと思ったものだ。鞠亜の味方であることはほぼ確定だろうに、こちらを気にかけてくるのだから。

 そして今は、その少年に手を握りしめられている。それがどこか心地よくて、心が安らぐようで。どこか暖かい(・・・)気持ちにさせられた。

 

 鞠奈は、その感情の正体に気づいていない。その感情に名をつけるならば――

 

 「そうだっ、キミは…」

 

 聞きたいことが見つかり、士道と呼ばれていたその少年に声をかけたのだがしばらく思考に時間を割いていたせいか、気づけば士道は眠ってしまっていた。こちらの手を握ったままだ。

 そして、こてんと頭をこちらに預けてくる。

 その様子に、鞠奈はくすりと笑う。警戒しろと忠告したというのに、手を繋いでくるところかそのまま眠ってしまうとは。

 

 そして、鞠奈は、本能とでもいうべき自らの感情に従い、士道を抱きしめる。何かをするためではなく、そうしてみたいと、単純にそう思ったのだ。しかし、その理由にまでは鞠奈は気づけていない。

 そうして士道少年を抱きしめてみれば、なにか体温に不調を感じる。電子の世界だというのに、まるで感情が高ぶっているかのように。

 

 その思考の正体とは、と思考しようとした鞠奈は、ある気配を察する。

 

 「ここにいましたか、士道…眠っている様ですね。鞠奈は寝込みを襲おうとしていたのですか?」

 

 そんな理由はない。この少年に自分が好意を抱いているなど…。

 好意、という言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、鞠奈の思考は加速する。

 

 相手のことを思い、体温を上昇させる。そばにいて心地よい、そう思えるということは、自身がこの士道少年に好意を抱いている(・・・・・・・・)ということに他ならないのでは無いだろうか。つまり自分は――!さらにはその少年を抱きしめている。

 

 そこまで思考が至った瞬間、鞠奈は本当に顔を真っ赤にして、寝ている士道を起こさないよう丁寧かつ迅速に寝かせて、鞠亜の言葉に反論することなくテレポートした。

 

 その後、どこかの家の布団が、まるで誰かが恥ずかしさのあまりにのたうち回ったかのような、そんな状態になっていたそうだ。




 というわけで、どうしてそんなにも早く落ちてしまうんやというハイペースなこの話です。
 作者自身、恋に落ちるの早くね、と思うくらいなのですから、読者の皆様はさらに思っていることでしょう。しかしコンセプトの都合上云々。(言い訳)

 まあでも、親からの愛も何もなくてそれに飢えてて、そんな時に純粋な好意(ラブではないにしろ)を向けられたのですから、仕方ないんじゃないかなぁ。ゲーム版も一緒にいる時間でいえばものっそい少ないわけだし。他キャラに比べればだけど。

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