デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 眠気に負けそうになりつつ0時過ぎに執筆開始。月曜の午後に投稿されてたら寝落ちして翌日書いたと判断してくれ。(執筆前)

 ついに四糸乃が出てくるわけだが…眠たいので短くしちゃうかも。そうなったらすません。

 サブタイは今回よく使った漢字です。(執筆後)
 無事終わったよ。


困惑

 無駄な努力をしつつ、自宅への道を三人で走っていると。

 

 「女の――子……?」

 

 前方に、降り注ぐ雨よりもさらに気になるものが現れ、士道は足を止める。

 可愛らしい意匠の施された外套に身を包んだ小柄な影。ウサギの耳のような飾りのついたフードで顔は隠れてしまっている。その左手にはコミカルなウサギの人形(パペット)が装着されている。

 そんな少女が、雨の降る中楽しげにぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 

 まあ確かに、少し妙な光景ではあるが、士道が足を止めた理由はそうではない。

 ――霊力。様々な用途に使われる未知の力であり、隣界より現れる精霊(・・)の持つ力。

 その力が前方の少女から感じられたのだ。

 

 つまり彼女は…

 

 「どうかしましたか? 士道」

 「キミ、急に立ち止まって……あの子…?」

 

 霊力に敏感なのは俺だけなので、鞠奈達にはあの少女が精霊だと分かっていないだろうが、それでも雨の中一人で遊んでいるというのは目立ってしまう。

 

 「あの子は多分――」

 

 精霊だ。その言葉に、二人が緊張し、体を少し硬直させる。

 もう雨の冷たさも、濡れた服のことも気にならなくなっていた。

 空間震警報も無かったし、自らの意思でやってきたのだろうか…?

 

 そして、俺達はその少女の方へと向かい――

 

 ――ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!

 

 少女が盛大にこけた。

 

 三人同時に走り出し、二人が女の子の方へ向かっているのを確認し、少し逸れてその子の手からすっぽ抜けたパペットを拾い上げ、軽く払ったりする。(とはいえずぶ濡れになってしまっているが)

 

 そして彼女のもとへと近づくと、その顔がわかる。

 琴里と同じくらいの年に見える外見。ふわふわとした海のような青い髪に、桜色の唇。長い睫毛に、蒼玉(サファイア)のような瞳。

 しかし、その少女の顔は困惑しているように見える。体制からすると少し距離をとり、いかにも警戒してますよーっと言った感じなのだが。

 また鞠奈が何か言ったのか。そう思ってしまうのは十香の前例があるからだろうか。

 

 

 「え……ええと……そ、……その」

 

 困惑したままで、どうしていいのか分からない様子の少女に、取り敢えずパペットを差し出す。

 

 「はい、どうぞ」

 

 なるべく優しく話しかけたつもりなのだが、こちらを警戒したように近づいて来ようとはしない。

 

 「ほら、渡してあげるって言ってるんだから、受取りなさいよね」

 

 どうして鞠奈が渡すような口調なのか。

 ともかく、鞠奈の言葉に背中を押されたのか、まだ警戒の色を滲ませながらもこちらに近づき、すぐさまパペットを装備する。

 すると、突然少女がパペットの口を動かし始めた。

 

 『やっはー、悪いね、お兄さんにおねーさん。たーすかったよー』

 

 やけに甲高い声を発するウサギに少し困惑する。

 

 『――ぅんでさー、起こしたとき言ってくれたのはー、どーいう意味?』

 

 やっぱ何か言ったのかぁーー!

 

 「キミが痛くしないでっていうからするつもりなんてないって応えただけじゃないの。それとも何? みーんな自分をいじめてくるー、なんて被害妄想でもしてるの?」

 

 罵倒と取れなくもない言葉に、少女も呆然とする。

 

 「……え、…えっと……」

 

 小さく、困惑する少女自身の声が聞こえた。

 

 「士道」

 

 鞠亜に促され、少女に語りかける。

 

 「俺達は別に痛いことをしに来たわけじゃない。せっかく知り合えたんだし、友達にならないか?」

 

 十香のときと同じ一言。同じでもあっても、それは士道の心からの言葉だ。

 士道の言葉に込められた意思に動かされたのか。はたまた、気まぐれなのか。士道の差し出した手に、そろそろと近寄り、パペットがその手を掴む。

 

 [士道。もう片手も差し出してください]

 

 鞠亜からの念話が届き、理由は分からないが鞠亜の助言はだいたい正しい。それを信じ、もう片手も差し出す。念話は霊力を使うのでよろしくないのだが、霊力を放つ少女が目の前にいるわけだし大丈夫だろうか。

 

 ともかくその行為に、困惑よりも驚いた表情になった少女は、先程よりも慎重にその手を掴んだ。

 同じ行為を鞠亜と鞠奈にも繰り返し、『ぅんじゃね。またねー!』というパペットの声と共に、少女は去っていった。

 

 「――ああ…」

 

 気づけば、服はもう余すところなくびしょ濡れになってしまっていた。鞠亜達も同様だ。

 

 もう諦めるしかないと判断し、ゆっくりと歩き始める。

 

 「そういえばさ、どうしてもう片手も差し出したんだ?」

 「これは私の収集したデータによる推測なのですが、おそらくあの少女は二重人格です」

 「「なっ」」

 

 鞠奈と声がかぶる。二重人格だって?

 

 鞠亜の話によれば、あの少女の識別名はハーミット。空間震の規模は小さく、攻撃を受けても反撃をしない精霊であるらしい。

 

 「霊力を使い確認しましたが…」

 

 霊力によりフラクシナスのパラメータ等のようなチェックを行ったところ、意識の部分に二重のグラフが見られたらしい。というか、鞠亜一人でフラクシナスの役割を果たせるのか…。

 そのことを本人に言ってみれば、フラクシナスとはスペック差などもあって流石にかなうものではないらしい。とはいえ、パラメータ一つ分くらいなら再現できるそうだ。

 

 いつの間にか鞠亜の手に入れていた特技のことを話しつつ、家へとたどり着くのだった。




 よしのん難しいんだが。原作ちょこっと変えるだけでもこれほどとは。鞠奈の率直さで四糸乃とよしのん両方と仲良くなりました。
 鞠亜がチート臭い? フラクシナスがいらない子? だが、少し待って欲しい。鞠亜はフラクシナスのAIであり、計算機能さえあれば同様のことはできるのであり、あの船では生成魔力をつかってそうしてたんだから霊力があれば同程度のこともできるんじゃないか? という発想とよしのんはともかく四糸乃をどうするかというところで困った作者の思いつきです。結局こじつけなんだがな。
 フラクシナス自体は裏のパラメータ(よしのに隠れた四糸乃のパラメータ)も観測できてたんだからあの時点で鞠亜が話せたりしたら二重人格って早めに発覚してただろうし。

 そんなわけで、それなりに鞠亜の活躍した回でした。次は…十香がやってくるのか。お楽しみに。

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