デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 昨日は体育祭で疲労その他もありアップできませんでした。が、明日代休なので多分(←これ大事)アップします。出来なかったら寝すぎた後に遊んでると確信して下さい。


入学

 

 

 「………ふはあ」

 

 あの一件から土日を挟んでの月曜日。鞠奈、鞠亜と一泊して時間を確保したり、電脳世界に入って鏖殺公(サンダルフォン)の霊装及び天使の顕現までを行い――まだ剣を使った戦闘など出来そうにないが――ひとまず馴染んだと言って良いだろう。あの一件から琴里の様子が少し変に思えるが、やはり〈ラタトスク〉は忙しかったりするのだろうか。

 

 鏖殺公を扱うにあたって、武器を出すことまでは簡単だったのだが、そこから霊装、及び剣を扱うには以前の灼爛殲鬼(カマエル)のとき同様のことがあったのを思い出す――。

 

 

 

 それは、自分が王であると確信させる、そんな夢だった。

 

 根拠はなく、そう判断するに足る理由もなく、しかし、不思議と自分がこの世界を好きにできる――そう、殺すことすら出来てしまう。そう確信させる夢。

 

 士道が立っていたのは、天宮市。十香と初めて出会った場所で、空間震にやるクレーターも存在している。

 

 どうしてこんな所にいるのかと、そう朧気に考えてみれば、鏖殺公を扱うために特訓していたのだと思い出す。つまりこれは、灼爛殲鬼の時同様の試練のようなものなのだろうか。

 

 突如、士道の体を持ち上げる様にして玉座がせり上がってくる。

 灼爛殲鬼のように、何らかの衝動が襲ってくる訳では無かった。しかし、その玉座から発せられるオーラ、とでも言うべき濃密な気配は圧倒的だ。

 

 つまり、これが十香が王たる所以。立ちはだかるものを粉砕し、突き進む力。それは――なんと悲しい力だろうか。

 

 人とは、手を取り合い、共に歩むことが出来る。士道はそう信じている。しかし、この力は、一人で歩むためのものである。士道はそう感じた。粉砕し、殺す。概念すらも。

 

 そんな悲しい力であっても、士道はそれに手を伸ばす。

 

 ――それはもちろん、自らの為ではない。

 自分を信じ、共に歩んでくれる二人のためであり、自分の手を掴んでくれた十香の為であり、自分を助けてくれるフラクシナス――琴里達の為だ。

 

 灼爛殲鬼の力を手にした時のことを思い出す。

 

 

 「俺は――」

 

 ――守るための力を欲したんだ。それは今も変わりない。

 

 「俺は――」

 

 ――二人と共にいるための力を欲した。そして、十香とも共にいたい。恋人としてではなく、友達として。

 

 「俺は――」

 

 ――破壊のための力なんていらない。だけど、皆を守るためなら。

 

 世界を殺す災厄だとしても、自らのものにしてやる。

 

 

 ――だから。

 

 「力を貸せよ、鏖殺公――――!!」

 

 その言葉とともに、世界にはヒビが入り、また玉座も崩れ始める。

 

 その玉座の欠片が自らの内へと入り込むのを感じながら、士道の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 といったことがあり、士道は無事鏖殺公の霊装を展開できるようになったのであった。

 

 と、数日前のことを思い出しつつ、復興部隊の手によって完璧に復元された校舎にやってきた士道は、ぼんやりと十香のことを考えていた。

 あれからすぐにフラクシナスのメディカルチェック(鞠亜が主体となって行われた)を受け、十香に会おうとしたが検査があると断られ、こうして月曜日になったわけである。つまり、それ以来姿を確認出来ていない。

 ――まあ、土日の間は十香のことを考えもせずふたりとのデートを思いっきり楽しんでいたという罪悪感も多少はあったが。

 

 「どうしたの、士道」

 「鞠奈か…いや、十香はどうしたんだろうかと思ってな」

 「士道、十香なら――」

 

 ガラガラと扉が開き、鞠亜の言葉を遮る。そして、扉を開けてやってきたのは鳶一折紙だった。包帯を額やら手足やらに巻いた状態の。

 

 ――一瞬、教室がざわつく。まあ、無理もないだろう。

 

 しかし、顕現装置(リアライザ)を使っても治っていないとは、どれだけこっぴどくやられたのか。

 

 頼りげな足取りでこちらの前までやってきた折紙は、深々と頭を下げて

 

 「――ごめんなさい。謝って済む問題ではないけれど」

 

 そう謝った。おそらく、十香を狙ったあの一撃は折紙のものだったのだろう。まあ、折紙がASTの隊員であれば、の話だが、それ以外のことで謝られるようなことは――それもあの鳶一折紙となれば――心当たりはない。というか、お腹をぶち抜かれた訳だが折紙はどうやって俺が生きているのかを知っているのだろうか。空間震も起こさずに来た十香を撃つくらいだし、バレてたらもう狙われていただろうし、気づかれてないだろうと確信する。

 

 「ほんと、謝って済むことじゃないわよね」

 「確かにそうですね」

 

 うちの二人は結構好戦的なご様子だが、別に怒るつもりもない。向こうのやり方に納得はできないが、それが一つの答えであることに変わりはなく、精霊に家族を殺されたものだっているのだから、士道の感情が認められなくても、理性の一部はそれを肯定する。

 

 「いや、気にしなくていいよ。もうなんともないし」

 「はあ、キミってば、そんな調子じゃ将来損するわよ?」

 「それは鞠奈達もいるから平気だろ?」

 

 助けてもらうことを前提としたものであり、結構情けない発言かと士道は思ったのだが、鞠奈、鞠亜からしてみれば士道と共にいる将来を想像させるものであり、結果として二人は顔を赤らめることとなった。

 

 「はーい、皆さーん。ホームルーム始めますよぉー」

 

  扉を開けて入ってきたのはタマちゃん教諭。士道の席に集まっていた三人はそれぞれの席に戻る。

 

 「そうそう、今日は出席をとる前に、サプラーイズがあるの!――入ってきて!」

 「ん」

 

 サプライズ、のあたりから猛烈な悪寒があったのだが、入ってきたのはやはりというべきか、十香であった。

 

 「今日から厄介になる。夜刀神十香だ」

 「…どうしてここにいるんだ?」

 

 なるべくの小声で話しかける。

 

 「おお!シドー!会いたかったぞ!」

 

やっとこちらに気づいたらしい十香により、視線がこちらへ集まる。やっぱそうなるか。

 

 「いやだから、どうしてここに…?」

 「検査とやらが終わってな。どうやら私の力の9割が消失したらしい」

 

 小声で話しかけたことをくんでくれたのか、向こうも小声になった。

 「キミ、自分のことにあっさりし過ぎでしょ…」

 「む、貴様は確か、あの時の」

 「はいはい、後で話するから、今は置いといて。で、どうしてここにいるの。それと苗字も」

 「シドーの妹がなにやらやってくれてな。苗字は…なんといったか。あの眠そうな女がつけてくれたぞ」

 

 ありがたくも迷惑な話であった。

 

 ともかく、そういった様子で十香は俺達の日常に加わったのだった。




 後半、改変ポイント見つかんないから駆け足に行きました。ほんと、人なら死ぬはずなのにこの時の折紙さんは何を考えて謝ったのか。どうして生きてるのかとか考えなかったのかと。眠たいからあとがきも手短に。

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