デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 ソロでラーメン屋に行ってきました。寂しい。でも旨い。


約束

 

 

 突如、校舎を凄まじい爆音と振動が襲った。少しばかり霊力を開放し、衝撃などでは揺らがぬようにする。

 

 「爆撃か…?」

 『士道、床に伏せなさい』

 

 琴里の指示に、疑問を挟むことなく従う。十香の体を抱き寄せ、十香も伏せさせておく。以前の自分であればへ? などと惚けていたのだろうか、と思いつつ数秒待てば、ガガガがガガガガガガーッと、けたたましい音とともに銃弾が教室の窓ガラスを割砕き、向こうの壁にいくつもの銃痕を刻んだ。

 

 「ずいぶんと手荒なやつらだな」

 『あら、案外冷静じゃない。外から攻撃して精霊をいぶり出す――もしくは、校舎を潰して隠れ場所をなくすつもりなんでしょうね』

 「無茶なことをするもんだな」

 『今はウィザードの災害復興部隊がいるからね。すぐに直せるなら大丈夫ってことでしょうが、予想外ね。こんな強硬策をとるなんて』

 

 [全く、物を直すのにも電脳世界と違って金がかかるんですから、もっと税金を払う国民のことを考えて欲しいものです]

 [キミ、籍は作ったけどなんやかんやで税金免除してたじゃないのよ]

 

 

 銃声は聞こえども銃弾はこちらへは来ていなくて、いつの間にか立ち上がっていた十香が、士道に対するものとはまるで違う、ひどく痛ましい表情をして、ボロボロになった窓の外へ視線を放っていた。

 

 「十香」

 

 半ば思わずして、先程のように抱きしめる。

 

 「早く逃げろ、シドー。わたっ!?」

 

 悲しげにここから離れろ、と言おうとする十香が見ていられなくて、言葉を遮るように人差し指を十香の唇に当てる。

 

 「俺のことを心配してくれるのはありがたいけど、今は十香とのお話タイムだ。外のことなんて気にしなくていいさ」

 

 とはいえここじゃ外から丸見えだな、と銃弾によって破壊された教室の外壁に目をやる。避難してなきゃいけない俺がこんな所で精霊といるのが見つかってしまったら一大事だろう。しかし、

 

 「視線もだけど、銃弾もどうにかしなきゃならないか」

 「む?」

 

 俺の言葉に反応するようにして、目に見えない程度に十香が周囲に霊力を張り巡らせば、夥しい数の銃弾が二人を避けるようになった。なかなかに便利な力だ。

 

 「ありがとう」と頭をなでてやれば、顔を満面の笑みに変える十香。耳と尻尾が見えた気がした。

 

 後は視線を逸らすだけなので、霊力の一部を使い、教室に自身の領域を広げる。そして、霊力で認識を変化させる。

 これがどんな力なのかと言えば、限定的に常識を改変する力だ。催眠といって差し支えないかもしれない。

 例えば、私服で学校に行ったとしても、この力を使えばそれが普通なのだと勘違いする。そして、その時の記憶は都合のいいように補完される。つまり、この場合であれば、他人からはちゃんと制服で登校していたとみなされる。そんな力だ。

 

 しかし問題もあって、これは認識を操作する力でしかなく、ここに人はいないと操作したとしても接触はするし、それによって能力が解けることもある。それに、現実から大きく離れた事は決してできない。人が許容できないことはたいてい無理だ。

 ただまあ、相手の視界に入るだけで効果を発揮する力なので、こういった場面では最適だろう。今は、この教室には人がいない、と操作を施したので、直接こちらに触れない限り見つかることはないだろう。そして十香の力もあるのでまあ安全だ。

 

 「さて――なにか聞きたいことはあるか?」

 

 ひとまず、人との会話をしてこなかった十香と話すことにした。

 

 

 

 

 会話の内容自体は大したことのないものばかりだった。この世界で生きているなら簡単に知り得るような、しかし十香がこれまで誰にも聞けなかった事を尋ね、俺が答える。ただそれだけというのに、十香は満足そうに笑った。

 

 

 そしてどのくらい話した頃か。

 

 『数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみてちょうだい』

 

 と、言われたものの何も思いつかない。これほどまでに無知な十香の事だ。それほど自分のいた隣界のことを把握しているとも考えにくい。そこで思いついたのは

 

 「なあ、十香」

 「なんだ?」

 「美味しいもの…ってさ、食べたことあるか?」

 『ちょっと士道? 何を聞いてるのよ』

 「シドー、なんなのだ、それは」

 「よし、分かった。じゃあまた今度、食べに行こう。ASTにばれずにこちらに来てくれたら、その時にでも案内するよ」

 「む…よく分からんが、メカメカ団に見つからなければその美味しいものとやらを食べさせてくれるんだな?」

 「まあ、そうだな」

 

 メカメカ団という十香のネーミングに苦笑しつつ、頷く。

 

 [鞠奈、士道が十香に餌付けするつもりですよ。鞠奈も先にしてもらったらどうでしょうか?

 [ちょっと! なんでそこで私にふるわけ!?]

 [鞠奈が羨ましそうにするから…]

 [してないわよ! というか、別に美味しいものなんて欲しくないわよ]

 [そうでしょうね。鞠奈は士道とデートをするのが羨ましいんですからね]

 [うっ………]

 

 「約束だぞ! シドー!」

 「おう、約束だ」

 

 ハイタッチを交わした直後、琴里から呆れたような声が届く。

 

 『士道ってば、すんなり精霊をデートに誘ったわね』

 

 てか、自主的に言わなかったら結局やらされていたような気が。

 

 なんてことを思いつつ、その後十分程をまた話に費やして、十香は隣界へと消失(ロスト)していった。




 認識操作は鞠亜が電脳世界で使っていたのを見て思いついたやつですね。使っていれば撹乱できるけどもちろん攻撃とかしたら相手も気づくだろうしとそんなに使い勝手は良くないけどスニーキングにもってこいなこの能力。しかも特殊系(贋造魔女)的なイメージなのでテリトリーも霊力もスルーして当てられる系。案外後半まで使う…かな? 予定は未定。

 来週も見てくださいな

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