デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 琴里って士道のこと、何って呼んでたっけ…。黒モードは士道呼び捨てだったはずだけど、白は…お兄ちゃん? おにいちゃん?


和解

 

 

 

 

 そして、鞠亜、鞠奈と別れ、士道は家に帰った…のだが。

 

 「おーい、琴里ー?」

 

 琴里の姿が見当たらない。というか、靴がない時点でいないことは分かっているようなものなのだが、それでも探さずにはいられなかった。

 家中の部屋を探し回り、分かったことは琴里がいないという事実のみ。

 

 まあ、〈フラクシナス〉での出来事もあったので顔を合わせにくい、とかそういうことなのかもしれない。

 ―しかし、士道の脳裏には、五年前のことが思い出されていた。

 一人、公園で泣きじゃくる琴里の姿が。

 

 「――っ!」

 

 それを思い出し、兄の勘とでも言うべきもので確信へと変わった瞬間、士道は乱雑に靴を履いて外へと駆け出し…立ち止まる。泣いている琴里を泣き止ませることができるかもしれない一手――ちょっとしたいたずらにとれるようなものを思いついたのだ。

 

 

 

 

 「はぁっ、はぁっ、はあっ…」

 

 全力で公園まで駆けた士道は、泣きじゃくる赤髪の少女…琴里を見つける。

 

 「…ぐすっ…へ? ……ぐすっ…お兄ちゃん?」

 

 ひとまず無言で抱きしめる。そして、ポケットから素早く二つのものを取り出し、迅速に作業を行う。琴里が困惑しているようだが、まあ、一人でわけのわからん組織に関わってたお仕置きみたいなものだ。

 

 「お兄ちゃん、なにして…」

 

 無言で手鏡を取り出してみせる。少し見ずらいだろうが、琴里の頭についていたリボンを黒に取替えた事にすぐに気づいたようで。

 

 「士道、あなた何してるのよ…」

 

 泣きはらした顔のまま、しかし〈フラクシナス〉の時のような口調に戻ったことで、ようやく確信できた。

 全く、兄貴だってのに妹を信じられないとはな、なんて思いつつ、またリボンを外す。

 

 「…はっ、おにいちゃんーっ!」

 

 やはり、いつもどうりの方が安心するな。

 

 

 

 

 琴里が泣き止むまで相手をしてから、やっと話を切り出す。

 

 「それでさ、話があるんだ」

 

 琴里の体がぴくりと震える。予想がついていたんだろう。

 

 「それは〈ラタトスク〉に関する話?」

 「ああ、そうだ」

 「んー、ちょっと待ってねー」

 

 そしてリボンを付け替える琴里。めんどくさくないんだろうか、なんて的はずれなことを考える。

 

 「はい、もういいわよ、士道。で、話ってなんなのかしら?」

 「ああ、俺達は…」

 

 〈ラタトスク〉に協力してもらう…いや、信じることにしたよ。

 そんな言葉に、琴里の瞳は揺れ動く。

 

 「さっきはあれだけ否定的な事を言っていた割に、ずいぶんな意見の変わりようね」

 

 どうするのかと問われ答えられなかった自分を自嘲するように言う琴里。

 

 「まあな。でも、疑ってばかりじゃダメだって、そう思うから」

 

 まあ、結局三人でやるつもりだったことだから手伝ってもらうつもりでもあるんだけどな、と付け足せば、琴里はくすりと笑う。

クリティカルそんな姿を見て、士道は一人、やっと元に戻ってくれたと、そう思う。リボンのことだとか、そういう訳じゃなくて、雰囲気の問題なんだけども。

 

 

 

 しばらく公園に留まって、精霊だとかは関係の無い、たわいない話をして。

 

 「じゃ、帰るか」

 「うん、お兄ちゃん!」

 

 

 

 そして、琴里はこう思う。

 ――三人だけでやろうとするなんて、本当にお兄ちゃんらしい。だから、私はお兄ちゃん、いや士道を……

 

 

 

 

 

 愛してるんだ。




 きりがいいので今回はここまで。

 「鞠奈、二人はもう大丈夫そうですね」
 「そう…ね」
 「鞠奈? どうして顔を引き攣らせているのでしょうか?」
 「あのねぇ、キミ、どうして私達がこんな覗きみたいなことしなきゃならないのよ」
 「鞠奈も心配だと言っていたではありませんか」
 「ええ、確かに言ったわよ? でも、覗きに行こうだなんて一言も言ってないわよねぇ?」
 「あら、そうでしたか? 覚えていませんね」
 「むうぅ、今日という今日は許さないんだからね!」

 今回は出られなかった二人はこんな感じだったりします。地の文っていうんだっけ? それ挟まないとずいぶん楽にかけましたね。
 次回はラタトスクと晴れて合流で、次次回あたりから原作の流れに復帰というところでしょうか。

 では、また次回~

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