デート・ア・ライブ 電子精霊達と共に   作:神谷 莢那

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 今回、タグ回収します。これだけで内容推測できたらすげぇぜ。作者は確実無理です。

 え?宿題? もちろん、今日提出日と思われる分だけやりました。




覚醒

 

 ――夢を見ていた。

 

 熱く、すべてを破壊する再生の炎の海に沈む夢を。

 ぱちりと目を開けた士道は、そこが見慣れた自身の部屋であることを確認する。時計を見てみれば、時刻はまだまだ朝日の登らない午前四時。先ほどの夢は何だったのだろうかと、すっきりと目覚めてしまった頭で考える。

 自身には暖かく感じられるだけの、しかし触れるものを破壊する意思を秘めた炎。自身を癒す、再生の炎。なにがどうなっているのか、だなんてのは無駄だろう。ただの夢なんだから、変な矛盾があってもおかしいことではない。しかし、鞠亜達と出会ってから三日に一度はこの夢で目が覚めるようになっているのだから、やはりこれは異常なのかもしれない。

 とはいえ、ただの夢で二人を心配させたくもないので話していないし、気づかれている様子もないのだが。

 

 そして、士道はさらに考え込んでいく。

 自分は、無力だ。精霊のこと、DEMや、ASTの事を知った士道は、精霊と呼ばれる存在を救いたい。そう思った。だが、自負にはそれを成す力がない。鞠奈の時だって、偶然助かり、偶然彼女を救えただけだ。

 そして士道は、力に目覚める――

 

 鞠亜のいる、電脳世界に入れたこと。人がそんな世界に行けるなんてこと、ありえるわけはなく、つまりそれは不思議な力、霊力の為ではないかと鞠亜と鞠奈は推測していた。 

 そのような力、見たことも感じたことも無い。

 しかし、あの世界で出会えたことが偶然ではないのなら――

 

 「力を貸してくれ!」

 

 目に見えぬ何者かに、士道は願った。

 それは、守るため。そして、救うため。

 精霊のことを知り、二人のことを知り。士道は、二人を失うのが怖くなった。そう言えるだろう。二人の生まれとも言うべき場所が彼女らを取り戻しに来る可能性もゼロではないのだ。

 だからこそ、それを守る力を欲した。

 世界を変える力も、支配するような力も要らない。

 しかし、二人を守るための力ならば、貪欲に欲して見せよう。

 そして、出来ることなら――精霊たちを救いたい。

 

 そんな士道の願いに呼応して、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉――精霊としての識別名、【イフリート】――は、目覚めた。

 

 音もなく、周囲を燃やすこともなく士道は炎に包まれる。それはまるで夢の再現のように。

 そして士道の意識は炎に沈んだ。

 

 

 

 

 鞠奈とのデートが行われた翌日の深夜、鞠亜と鞠奈は突然発生した霊力を感知して、ぱっと跳ね起きる。

 

 「鞠奈」

 「ええ」

 

 一瞬で意思疎通を済ませ、何故か士道の家、それも士道の部屋から発せられるその霊力に焦りを覚えつつ、服を着替えることなく家を飛び出す。

 士道とキスをすることによって繋がった経路(パス)から流れてくる霊力を使用し、体を電子と変化させて士道の家の中へ転移する。これが、現実において二人に出来る唯一の技だ。

 

 そして、彼の妹たる琴里のことなど考えもせず、「「士道!!」」と二人同時に声を上げて踏み込んだ士道の部屋では――

 

 士道は、熱くない炎の繭とでも言うべきものに包まれていた。

 

 

 

 

 士道は、街の中に立っていた。火に包まれたその街を、士道は知っている。大火災にあっている最中の天宮市だ。

 

 どうしてこんなところにいるのかは朧気ながらに覚えている。夢から覚め、力を願った途端、炎に飲まれたことも憶えている。起きたと思っていたのもまだ夢の中だったのか、と一瞬思ったが、士道の直感はそうではないと告げる。

 

 「なんだっ!?」

 

 突然、火災の炎がまるで意思を持ったかのように自身を取り囲む。

 そして、士道は炎に飲まれた。

 

 ――熱くない。はじめに士道が思ったのはそれだ。まるで炎ではないかのように熱さを感じないのだ。

 直後、頭をガツンと殴られるような感覚と共に、言いようの無い衝動が自身に生まれるのを感じる。

 ――全てを壊せ。炎にのみ込め。滅ぼせ。

 灼爛殲鬼の持つ破壊衝動は、士道の精神を蝕む。士道とてやられているだけのつもりはなく、そんなことはするもんか! と破壊衝動を否定するが、とめどなく流れ込む衝動は少しずつ、士道の意識を蝕んでゆく。

 彼の体を操るように炎はまとわりつき、戦斧の形へと変わり、徐々に大砲のような形へ姿を変える。

 その途端、さらに自らへ襲いかかる衝動が強くなる。

 

 これはもうダメなのか。

 そう思った士道の脳裏には、二人のことがうかぶ。

 こんなところで飲まれてたまるかと、必死に抵抗すれば、それは戦斧の姿へと戻り、流れ込む衝動も勢いを減らす。

 

 「俺は――」

 

 守るために力を求めたんだ。

 

 「俺は――」

 

 二人と共にいるために力を欲した。

 

 「俺は――」

 

 破壊するための力なんて要らない。

 

 「「士道!!」」

 

 突然響くのは、愛しい二人の声。幻聴であるかも判別できなかったそれは確かに士道に力を与え、それがキーとなったかのように、士道に力がこもる。

 

 

 「俺は皆を守りたいんだ――!!!」

 

 

 その言葉が発せられると、世界にヒビのようなものができる。それは徐々に大きさを増し、崩れさる。

 徐々に薄れゆく意識の中、士道の体に暖かいものが流れ込んでくる、そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 鞠亜達は、混乱していた。

 もちろん、霊力を感じたことでずいぶんと混乱していたのだが、さらに混乱させられたというべきか。

 部屋に入った途端、士道の周りに渦巻いていた霊力の炎が士道の中に入り込んでいったのだ。そして、士道の服装が見る見るうちに変化し、オレンジ系の和服をアレンジし、足回りを動かしやすいよう短くしたような形になっていた。また髪は赤く染まった上に腰に届くほど長くの伸び、白い角がはえ、天女の羽衣のようなものまで着ている。

 そのとうの本人はといえば、気絶してしまっている。

 

 「鞠亜、これってどういうこと…なの?」

 「さあ、どういうことなんでしょう…?」

 

 そんな士道に、二人は疑問の声を上げることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 そして士道は目を覚ました。いつになく体の調子が良いように思える。目を開き、立ち上がろうとしたところで自身にかかる重みに気づく。

 はて、なにか物でも置いてあっただろうかと思って少し無理に起きてみれば、布団がまくれ、自分を左右から挟み込むように眠る二人がいた事に気づいた。

 

 「へ?」

 

 思わずすっとんきょうな声を上げる士道。鞠亜と鞠奈がどうしてここに…?

 すると、布団がまくれたことで目を覚ましたのか、二人はうっすらと目を開ける。そして、こちらを見て、自分のことを見る。

 

 「おはようございます、士道」

 「――っっっっ!!!!!」

 

 一人は何事も無かったかのように――しかし、頬は赤くなっている――挨拶をし、もう一人は布団に顔を埋めた。

 

 

 

 そして一度鞠奈が落ち着くのを待ってから、昨日――というよりつい先程のことなのだが、眠っていたため感覚がずれている――の出来事について話し合う。士道は、炎に包まれて不思議な世界にいた事を話す。

 

 

 「そんなことになってたのか」

 

 自分がその世界にいる間のことを聞いた士道は、感心するように何度も頷く。そしてさらには服装――寝巻きで寝たはずだったのだが、いつの間にかアレンジされた和服のようになっていた。二人の話では角も生えているらしく、触った感じはそんな感じがする。――が変わっていたことに多少(・・)驚愕する。

 

 「キミ、反応うすすぎない? まだわかってないの?」

 「ああいや、そんなわけじゃないんだけどな。割りと状況が飲み込めててさ」

 

 それには理由がある。士道は昨日、灼爛殲鬼の破壊衝動に勝利し、完全に灼爛殲鬼のことを扱えるようになったのである。それと同時に灼爛殲鬼の扱い方をぼんやりと理解していたために、そう驚く事は無かったのである。

 そのことを話し、霊装を出したり戻したりする。

 

 「キミってばほんと、規格外なんだから」

 「仕方ありません、士道なんですから」

 「ま、それもそうね」

 

 自らの生みの親達との関係すら断ち切ってしまった士道故にそのように言われているのだが、士道自身はなにか馬鹿にされてるような気がしないでもなかった。 まあ、二人に馬鹿にされたところで怒るわけはないのだが。

 

 「二人とも、あのさ――」

 

 自分は二人を守れるだけ強くなりたい。そんな本心を伝える。

 恥ずかしいことを言っている自覚はあったが、これは伝えなければならないことだ。二人は普段よりさらに顔を赤くしてしまっているが、まあ恋人に守りたいなんて伝えられたのだから仕方ないことかもしれない。

 

 「私は士道を応援します。手伝えることは何でも言ってくださいね」

 「無茶だけはするんじゃないわよ」

 

 一人はストレートに、一人は何気なくを装って心配してくれるのだから、自分はとても幸せ者だと士道は思う。

 

 「それなら、士道。電子の世界を利用してはどうでしょうか? それなら私たちも手伝えることはあるでしょうし、精霊の力を訓練するには丁度いいかと思われますが」

 「ありがとう、そうするよ」

 「それなら、ついでに顕現装置(リアライザ)の特訓でもしたら? 電脳世界なら簡単に同じようなものも用意できるでしょ」

 

 

 顕現装置とは、DEMやASTなど、精霊に関わる人々の扱う装置で、コンピューター上での演算結果を物理法則を歪めて現実世界に再現する、いわば科学技術を持って「魔法」を再現する技術および装置の総称、らしい。

 言葉で説明されてもチンプンカンプンなされを扱えるのか、不安こそあるが、こんなにも自分の為を思ってくれるふたりのためにも頑張りたい、そう思った。

 だから士道は――

 

 「二人とも、ありがとう。愛してる」

 

 最大級の感謝と愛の言葉を送った。

 この後、鞠亜までもが恥ずかしさのあまりフリーズしてしまったのは士道にとっても衝撃的であったが、二人は琴里にみつかるまえに無事に家へと帰ることが出来た。




 この始まり方は割と好きだったりします。なんかかっこよくない?夢を見ていたって。あ、かっこよくないのかそうっすか。感性ずれてましたね。
 あとタイトルが厨二くさい。好きだけどね。
 灼爛殲鬼の角って、生えてるんだよね? ついてるだけじゃないよね? なんて不安になってたり。

 そんなわけで今回はなんか指も進んで3975文字もかけちゃいました。構想浮かびづらくて二千頑張りたいなーくらいだったのにどうして倍になってしまったのか。割と無茶なこともしましたが、気にしないように。そういうもんなんです。

 士道くんの迷い込んだ精神世界的なあれ、もちろんこのゲーム版前提な感じの作品を読んでるみなさんなら分かるでしょうが原作にはそんな流れはありません。士道の意識が無意識のうちにそうしていただけで、実際は灼爛殲鬼の破壊衝動と戦っていただけという裏設定。風景は幻視というか、状況をわかりやすくするためのものであって精神世界でも何でもなかったりします。
 そして、これ案外大丈夫なんですが、士道はこの時点で破壊衝動を完全に克服しちゃってます。なので琴里みたいにはなりません。そこ含めると既に琴里よりも強くなっちゃってたり。やり方も分かってるしねぇ。実力だけなら同程度か。まあ、どちらかが霊装付けた時点でもう一人は霊力足りずに出来ないわけですが。
 また、顕現装置の訓練も始めるという…。才能はずば抜けてたりはしません。普通です。ただし霊力もあるので、合わせると最強のウィザード(笑)なんて扱いのエレンさんとも渡り合えるほどになります。まあ、今はまだまだ無理で、他の精霊たちを封印していけばの話でもありますが。

 鞠亜、鞠奈がテレポートしてますが、彼女達は元は精霊でない分、霊力を引き出すのが容易でいつでもテレポートくらいならできます。まあ、霊装もなにもださない状態なら数十mくらいでしょうか。霊装だしたら街一つ行けますもんね。(ゲーム版的な考えではマップのどこにでも行けただろうから)

 士道の霊装は取り敢えず和服、でももあたりまでの長さって考えてただけです。カラーリングは琴里と同じ感じ。髪色も琴里と同じになります。その上髪も伸びます。見方によっちゃ男装した女の子に見えなくもない。てか見えると思う。



 そして、次回からは原作の時間軸となります。狂三ほんとどうしましょ。作者は好きなんだけどなぁ。ちょっと難しいところ。メインヒロイン決まってるし。

 少しだけ琴里にアンチ入るかも。すぐに無くなります。ちょっとした行き違いみたいなもんですから。え?そんな展開見たことあるって? そうですね、きっとその人だと思いますが、その人の影響を受けてまして、確かにそうなるよなぁと納得しちゃってましてね。なるべく被らないよう、オリジナリティを出す努力をします。

 三年近い訓練の集大成はいつ見られるんでしょうか。まあ、最前線に士道が立つってくらいで特に無双させるつもりは無いんですけどね。主人公強化にそれほど深い意味は無いです。まあ、エレンに勝つシーンは書いてみたいし、そのために入れたんですがいつになることやら。今日から学校なので平日はろくにアップできないかも知れません。

 まあ今回も楽しんでくださったら幸いです。

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