悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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今回の間話4は設定の再確認が主ですので
読み飛ばして頂いても本編に支障はありません。


間話4
悪魔城調査報告書


 

作戦概要

 

 

作戦日時、場所

 

1999年 7月 XX日  東欧A国 古城

 

作戦目的 

 

テロリストの殲滅 施設の破壊

 

 

海兵隊総指揮官 ヘンリー・ティード少将

陸軍総指揮官  リカルド・トランツ中将

 

 

参加人数 

 

海兵隊 87名

陸軍  120名

 

 

状況の推移

 

 

現地時間

 

AM3:00 

・現地到着 ポイントへの進行開始 濃霧のため数名の隊員がはぐれる。

 

AM3:30 

・ポイント到着 先に到着しているはずの陸軍の姿が無い。ティード将軍が作戦本部に状況を説明するが予定通り作戦決行の指示が出る。   

  

AM4:00 

・作戦決行 先行偵察隊13名が城内に侵入。城壁が高く、他の入り口も無いため正門から侵入する。

 

AM4:30 

・偵察隊進入から30分経過も一向に通信が無い。予備隊25名を残し本隊44名が城に突入。

 

AM4:35 

・突入後まもなくクリーチャーと遭遇。また先行した隊員の遺体を発見。将軍城外への後退を指示。しかし突然電子機器が使えなくなる。外部との通信途絶。時計も使えなくなったため以降の時間は体感による推測。

 

AM4:45 

・城門まで退却に成功。だが突然門が閉まり脱出が不可能に。持ち込んだ爆薬を試すが効果無し。突如通信機の受信のみ回復。城外で待機している隊員達が何者かと交戦している音が聞こえる。

 

AM4:50 

・正門以外の脱出口を捜すため城内へ引き返す。この時点の本隊生存者は40名。城内探索中、トラップや怪物との戦いで多数の隊員が負傷する。

 

AM5:30 

・ダンスホール到着。この時点での生存者は17名。

 

AM5:40 

・ベヒモス出現。ティード将軍撤退を指示。以降正確な生存者数は不明。また海兵隊としての行動も不可能に。事実上の壊滅。

       

AM6:00 

・教会関係者と名乗る人間と遭遇。以後彼らと行動を供にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

――この城に突入して数時間。自分はどうにかまだ生きている。

 

 だがこの先の命の保障は無い。記憶が鮮明な内に自身がここまで体験した事を書きとめて置こうと思う。おそらくこれを読んだ人間は俺の事を麻薬中毒者か何かと勘違いするか、さもなければ心を病んだ人間と思うだろう。

 

 事実今の自分は病んでいる。だが今から書く事柄は全て紛れもない事実である。城に入ってから真実に気付いても遅い。どうか以下に纏めた項目に留意し、攻略に生かして欲しい。

 

 

 

◆1.城

 

名称  ドラキュラ城。通称は悪魔城。

    城主はドラキュラ・ヴラド・ツェペシュという吸血鬼。

 

場所  東ヨーロッパA国。トランシルヴァニア地方。

 

環境  山岳と深い森に囲まれた自然溢れる環境。

    霧が発生しやすい。大陸性気候だが気温は低い。

 

外観  中世の一般的なゴシック建築の古城。やや華美。

    濃霧のため正確な大きさは不明。

 

 

 

◆2.城内

 

※注意して貰いたいのは城内では日常我々が経験している”常識”が一切通用しない事である。

 

物理学や化学はもちろん、場合によっては1+1=2といった数学の基礎さえこの城の中では意味をなさない。だがいちいちそれを気にしていては精神をすり減らし、状況を悪くするだけである。

この理不尽さをまず受け入れる事が生存確率を上げる第一歩だと肝に命じて欲しい。

 

 

城内の環境について

 

城内は常に夜である。そのため時間経過が解りづらい。また城内は外観からは想像できないほど広く、内部構造と外観が一致しない箇所も多いため、外側から進路を決める事は不可能。方位磁石もきかない。湿度、気温も場所によって大幅に変動するため冬季装備も考慮すべし。また城の周囲は昼でも常に霧がたちこめており、はぐれる隊員が多い。突入の際は慎重を期する事。

 

 

電子機器について

 

城内では一切の電子機器、機械、コンピューターが使用できない。クォーツ製の時計も不可。

ゼンマイ式の時計の場合どうなるかは不明。ただし銃器類は問題なく使用でき、通信機器なども場所によっては通じる事がある。

 

 

城内での武器使用について

 

あくまで個人的感覚だが城内では我々が使う銃火器、爆弾等の通常兵器は整備不良を差し引いてもその威力が3~4割ほど減退していると思われる。その分弾薬の消費量が多くなるため、それを見越して通常の作戦時よりもより多くの弾薬の携帯、運搬、節約に努める必要がある。

 

反面宗教関係者の使う特殊な武器や護符等は想像以上の効果を発揮している。再び今回のような被害を出さないためにも、軍はこれらの武器に関しても研究される事を切に願う。

 

 

城内での体力減退について

 

城内では普通の人間はいるだけで体が徐々に弱っていき、生命活動に支障をきたす。時間が計れないため具体的な長さは不明だが、新兵の容態から推測すると何も対策をしなければおよそ5時間程度で死に至ると思われる。

 

教会関係者によると原因は城内に充満する目に見えない瘴気。一般人にとっては薄めた毒ガスのような物らしい。ただし本物の毒ガスと違いガスマスクで防げないため、事実上対処法は無い。

 

日本の神官が張った特殊な結界(バリケード)の中では多少進行が遅くなる。また被害には個人差があり吸っても何とも無い人間も存在する。

 

 

ゾンビ化について

 

城内で死んだ人間はしばらくすると復活し生存者を襲い始める。所謂”生ける屍(リビングデッド)”である。

 

具体的な事例は後述するが、主に

 

・知能、人間としての理性、五感の著しい低下

・痛覚の欠如によるタフさ(怯まないだけで体自体は生きていた時に比べ脆い)

・生存者への著しい攻撃性

 

等の変化が上げられる。

 

あくまで動く死体のため元に戻す事はできず、行動を停止させるには動けなくなる位その体を破壊するしかない。破壊する必要がない程死体が欠損しているか、あらかじめ死体を焼却処理しておけばゾンビ化は防ぐ事ができる。

 

 

教会関係者について

 

東方正教会の関係者 およそ25名

日本の神社の関係者 およそ15名

 

以上の人員が我ら軍関係者以外にも城内に乗り込んでいる。詳しい事は不明だが彼らの目的は城主であるドラキュラを倒し城を封印する事だという。

 

退魔の専門家らしく彼らの振るう技は城内では著しい戦果を上げている。軍でも彼らと連携し専門の部署の立ち上げを検討して欲しい。

 

 

 

◆3.施設

 

 

城内は本城を五角形に取り囲むように幾つかの施設が存在している。しかし前述した通り外観と内部構造が一致しない上、施設の位置と間取りは変化し続けているらしい。以下の説明はあくまで参考程度に留めておく事。

 

 

悪魔城本城

 

正門から正面回廊を進んだ敷地の中央にある建物。外周部の施設へは主に一階ダンスホールから回廊を通って移動する。またドラキュラがいる城主の塔へも本城からしか行けないらしい。

上部がどのような構造かはほとんど解らない。最上階に「慈愛の間」という部屋がある事だけが判明している。

 

礼拝堂

 

その名の通りの施設。煌びやかなステンドグラスや装飾がなされている事からカトリックの施設と思われる。何故こんな施設があるのかは不明。トラップはほぼ無い。

神のご加護か比較的弱い怪物しか出現しないが、地下に行くにつれそれも薄くなる。蔵書庫という場所へはこの施設から行くらしい。

 

地下闘技場

 

別名煉獄闘技場。古代ローマのコロッセオのような施設。その名の通り地下に存在し、辿り着くには幾つかのトラップを越えなくてはならない。また好戦的な怪物が多い。

 

時計塔

 

別名機械塔。イギリスのビッグ・ベン のように上部に巨大な時計がある。階段や梯子は存在せず時計を動かす為の歯車や振り子をつたって進まなければならない難所。歯車に挟まれないよう余計な装飾品やひらひらした服は事前に脱ぐ事。また後述するメデューサヘッドには特に注意する事。

 

幻夢宮

 

本城の施設。全体的に薔薇をモチーフとした装飾品が多く、パリのベルサイユ宮殿を髣髴とさせる。

女性型の悪魔しか存在せず、ハニートラップめいた妨害を多くしてくるのでそういった類に弱い者は注意する事。構造自体は似たような廊下と部屋ばかりで迷いやすい他はトラップらしいトラップも無く、攻略は容易な部類に入る。

 

 

 

◆4.トラップ

 

 

吊天井

 

棘のついた落ちて来る天井。コンプレッサーのように常に上下に動き続けている物と、近寄ると突然落ちてくる物の二種類がある。落ちてくるタイプは真下に行かずとも手前まで近づけば発動させる事ができるので、慎重に進む事で回避が可能。

 

 

回転床

 

衝撃を与えると突然回転し、標的を奈落に落とすトラップ。回避の方法は対象の床の上で飛んだり跳ねたりしない事。見分け方は他の床と明らかに色味が違う正方形の模様。もし見つけたら出来る限り近づかない事。

 

 

崩落床

 

回転床とは逆に衝撃には強いが長時間乗っていると徐々に崩れていく床。ヒビが入っていくためトラップだとすぐに気付くが、その時には既に手遅れになっている場合が多い。ひっかかってしまった場合はとにかくすぐに離れる事。また連続で飛び跳ねるなどして足が触れている時間を減らす事で多少崩落までの時間を稼ぐ事ができる。

 

前述の回転床とは違い単独で設置されていることが多い。

 

 

酸のプール

 

城内には通常の水場もあるが極まれに酸のプールもある。主に前述の床と併用されている事が多い。

一目見ただけでは判別がつかないが、物を投げ入れればすぐ解る。どちらにせよ水場にはあまり近寄らない方が賢明である。

 

 

鎖鎌

 

鎖で吊るされた大型の鎌。一定のリズムで振り子運動をしている。切れ味は凄まじく、ケブラー素材の防弾ベストごと隊員を真っ二つにするほど。

 

狭い通路に設置されているため避けて進む事は難しく、また非常に頑強で銃弾を撃ち込んでも弾き返されてしまう。

 

とにかくリズムを掴んで一気に突っ切るしか対処法は無い。掴んで止めようとしても逆に切り刻まれるか別の方向から来た鎌にやられるのがオチである。

 

 

 

◆5.モンスター

 

 

自分が体験した城内のモンスターの対処法をまとめておく。

確実な対処法のみを伝えるためあくまで自身が直接、または間接的に戦った対象のみ記す。

ここで記した魔物以外にもさらに恐ろしい敵がいる事を注意して欲しい。

 

危険度は

 

低 C<C+<B<B+<A<A+<S<S+<S++<EX 高

 

の順。

 

 

 

No.1 ゾンビ  危険度C+

 

特定の場所に多く出現する動く死体。一般的なホラー映画のイメージとほぼ同じ怪物。

 

視覚、聴覚共にほぼ無いと見られ、一定のルートを徘徊し、近づいた者に掴みかかる。

動きは遅いが力は強く、一旦捉えられると簡単には逃げ出せない。

腐っているため体は脆いが痛覚も無い様で、多少のダメージでは怯む事は無い。

 

銃による攻撃よりも斬撃で行動出来なくなる位に切り刻むか、爆風で吹き飛ばすのが最も確実な対処法と思われる。ただし倒しても無限に湧いてくるため可能ならば相手にせず逃げるのが無難。

 

たまにボロボロの服を落とすがとても着る気はおきない。

 

 

No.2 スケルトン  危険度B~B+

 

動く骨。ゾンビに比べ動きは俊敏で、直接殴りかかって来る者、自らの骨を投げる者、剣を振りかざす者等、幾つかの種類がいる。

 

その隙間だらけの形状故、銃による射撃は極めて効果が薄く、火炎放射器等もあまり意味は無い。

 

近づく事が可能なら鈍器による殴打が最も効果的だが、相応の危険を伴うため、ゾンビと同じように爆風による衝撃で吹き飛ばすのが現実的と思われる。

 

ただしそれなりに動きが早いため、手榴弾や固定式の爆弾よりもロケットランチャー等、ある程度狙いのつけられる武器を推奨する。

 

 

 

No.3 吸血こうもり  危険度C

 

城内の天井に多く生息する大型の蝙蝠。翼を広げるとおよそ80~100センチ程。

 

近づくと即座に飛び掛ってくるなど攻撃的だが、反面臆病でもあり、一度すれ違うと再び戻って来る事は無い。耐久力も通常の蝙蝠とさして変わらず、離れた場所からの狙撃で簡単に駆除できる。

 

ただし足場の悪い場所では不意の攻撃をうけ奈落に落とされる事もあるため細心の注意を払う事。

 

狂犬病ウイルスを所持しているかは不明。

 

 

 

No.4 ブルークロウ  危険度B+

 

青色の体色をしたカラス、くちばしの形状からハシブト種と思われる。見た目以外は普通のカラスと変わりないがとにかく凶暴で一度狙いをつけた獲物には対象が死ぬまで執拗に攻撃を加えてくる。光ではなく血に反応するようだ。

 

常に空中を飛び回っているため狙いをつけるのが難しく、無駄弾を消費しやすい。マシンガンで弾幕を張るか、気付かれる前にライフルで撃ち落すか、ショットガンなど面で攻撃できる武器があると尚良い。どちらにせよできるだけ関らないように接敵を避けるのが無難。

 

 

 

No.5 目玉の化物  危険度C+

 

バスケットボール程の巨大な目玉に大きなさそりの尻尾がついたような化物。

原理は不明だがふわふわと宙を飛び、隙あらば尻尾の針で刺そうとしてくる。

 

それほど攻撃的では無く、単体ではあまり恐ろしい魔物ではないが、放って置くと他の魔物を呼び寄せるため、見つけ次第最優先で倒したい。

 

幸い耐久力はそれほどでもなく、どんな武器も通用するが、その不気味な見た目に動揺し射撃を外す者が多い。不規則な動きに惑わされず落ち着いて対処する事が重要。

 

 

 

No.6 リビングアーマー  危険度A

 

動く鎧。中には誰も入っておらず、得体のしれない力で動いているようだ。

斧を投げる個体が多いが、槍や剣を使う者もいる。力はかなり強い。

 

体が鋼鉄製の鎧のため銃による攻撃はほとんど意味を成さない。動きは比較的鈍いのでロケットランチャーの爆風で破壊するのが最善だがそれでも完全に行動を停止させるのに数発の射撃が必要になる。

 

鎧自体を破壊せずとも結合部を外してバラバラにすれば行動不能に追い込めるが、非常に危険を伴うため現実的ではない。

 

 

 

No.7 ゴースト  危険度B+

 

幽霊。見た目は小動物の骨格を青白い炎が包んだような形状をしている。

 

ゆっくりと宙を飛び回り、それほど好戦的ではないものの、物理的な攻撃がほとんど通用しない。我々が持ち込んだ物の中では唯一火炎放射器が幾ばくかの効果を上げたが、数が多い上無限に現われるため燃料の消費量を考えると全て相手取るのは現実的ではない。

 

教会関係者は楽に駆除していたため彼らにまかせるか、動きが遅い所をついて相手にせず逃げに徹した方が良い。

 

極まれに数十倍の大きさを持つ個体がいるが、小さい個体と大きさ以外の違いはほとんど無い。

 

 

 

No.8 半魚人  危険度B

 

魚類と人間の中間の化物。大きさは150センチほど。

 

水辺から突如現われ奇襲してくる。半分は魚なので水の中でも自由に活動できるが、その分地上での動きは遅い。

 

テッポウウオのように水を高圧で発射してくる事がある。威力は水中銃並みでしかも連射が可能。

 

硬い鱗と粘液で覆われているため効かない訳ではないが銃は効果が薄い。火炎放射器で焼き尽くすか、そもそも水辺に近寄らないのが最良の選択だろう。

 

 

 

No.9 骨ばしら  危険度B

 

大型肉食恐竜の頭蓋骨がトーテムポールの様に折り重なって柱を形成しているという、半障害物の様なクリーチャー。

 

移動能力は無く、近づいても噛みついたりはしてこないが何故か一定の間隔で口から火の玉を吐いてくる。回り込もうとしても旋回してこちらを狙って来るためあまり意味はない。

 

火球の弾速はそれなりに早く、威力もグレネード弾並みだが銃床や手近な鈍器、スコップなどがあればタイミングを合わせて振り払う事でかき消す事が可能。手っとり早く倒すのであれば気付かれない程離れた位置から銃器で射撃を加えるのが良い、ただし恐竜の骨だけあって非常に硬く、破壊するには相当量の弾薬がいる。

 

多少危険ではあるがよじ登る事も可能で、頭上には攻撃手段を持たないため一度登ってしまえば高所へ移動するための足場として安全に利用できる。よほど目障りな場所にいるのでなければいっそ倒さずに放置しておいた方がいいかもしれない。

 

 

 

No.10 メデューサヘッド  危険度A

 

ギリシア神話に出てくるメデューサの生首。大きさは人間の頭部とほぼ変わらない、ただし蛇の頭髪を持ち視覚的嫌悪感が凄まじい。

 

こちらも原理は不明だが宙を飛び、通り魔的に体当たりをしてくる。飛ぶスピードは目算で現役のマラソンランナー程度(およそ時速15~20km)。すれ違った後戻って来る事は無い。

 

当たったとしても致命傷ではないし、かわせない事もないがうねうねと蛇行したような軌跡を描く上、やたらと数が多いので全てを避けるのは非常に困難。さらに足場が悪い地帯に生息しているのが拍車をかけている。

 

各自決められた縄張りを巡回しているだけなのでこちらから突っ込まない限りは脅威は無い。耐久力もあまり無く、威力の低い拳銃でも撃破は可能。物量で攻めてくる事を考えるとマシンガンが効率的だが弾丸の消費を考慮すると常にバックアップの人員も用意して置きたい。

 

通常は青い肌をした個体だが、まれに黄色い肌の個体がおり、こいつにあたると触れられた部位が一時的に硬化し身動きが取れなくなる。特に注意されたし。

 

 

 

No.11 プロセルピナ  危険度C+

 

悪魔のメイド。悪魔と書いたが耳が少し尖っている事を除けば人間の少女と見た目はほとんど変わらない。

 

主に空手のような徒手空拳で攻撃してくるが、力は人間の一般成人男性程度しかないので訓練を受けた海兵隊員ならばそれほど脅威ではない。通常の重火器で十分対抗できる

 

ただし前述したように見た目が少女であるため心理的な罪悪感が大きい。敵もそれを狙っていると思われるので攻撃を躊躇すべきではない。だがどうしても倒せないなら逃走も考慮すべし。火気は所持しておらず、着ている服(エプロンドレス)のせいで走る速度もたかが知れているため逃走自体は簡単に成功する。戦闘後の兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害 )に配慮されたし。

 

 

 

No.12 サキュバス  危険度A+

 

蝙蝠の翼を持つ女の悪魔。非常に露出度の高い妖艶な姿をしている。体長は180cm程度。

 

色気を振りまきながら近づき、一旦組み付いたが最後対象が死ぬまで生命力を吸い尽くすという、死のハニートラップを仕掛けてくる。華奢な見た目に反し腕力はヘビー級のプロレスラー以上。

一度組み付かれると振りほどくのは極めて困難。また精気を吸われると一時的に行動不能に陥るため1人だった場合さらに危険。

 

人間型なのでこちらの武器はあらかた通用する。近寄られる前に殲滅するのが最良の対処法。ただしそれなりに耐久力がある事を想定しておく事。

 

余談だが撃破すると薔薇の花びらになって消えてしまう。そのため前述のプロセルピナに比べ心理的負担は少ない。

 

 

 

No.13 魔女  危険度A

 

つばの広い帽子を被った世間一般のイメージそのままの魔女。ただし見た目は20代の白人女性。

 

箒に乗って宙を舞い、幾つかの”魔法”を放ってくる。自分が目撃したのは火炎と白く光る光球。

 

光球の方は木製の手すりを一撃で粉々にしていたのでマグナム弾以上の威力があると見られる。

幸い弾速は遅く20メートル程度で消えるので攻撃されたらとにかく距離をとる事。ただし対象は執念深い性質で、一度ターゲットを決めると執拗に追跡してくる。そのため対象自体からの逃走はほぼ不可能。

 

常に3~4メートル上空に浮いているので銃による射撃が有効。支給されている小銃で十分撃破できる。しかしある程度の攻撃を加えると距離を取り魔法で自身の傷を治してしまうため交戦の際は休む間を与えず一気に攻める事。

 

余談だが撃破すると黒猫になって逃走を謀る。この状態では無力だが非常に逃げ足が速く捕捉は困難。

 

 

 

◆以下は特に危険と判断したもの。または対人用火器では撃破困難と思われるもの。

 

 

 

No.14 ベヒモス  危険度S+

 

体高およそ5メートルの大型の肉食獣。山羊のような角と蹄を持ち、全身が縮れた体毛で覆われたハイエナとライオンを足して2で割ったような姿の四足歩行型の怪物。

 

動作はやや鈍重だが体が大きいため移動速度はそれなりに早い。また圧倒的なパワーを持ち、人間程度ならいとも簡単に蹂躙する。生き残りの海兵隊員17名ほぼ全員がこの魔物に倒された。

 

主な攻撃は巨大な前脚による薙ぎ払いと踏みつけ。顎による噛み付き。角を使った突進。後述するがゾンビ化した際は胃の内容物をショットガンのように吐き出してくる。

 

海兵隊で使用されている自動小銃程度では傷1つつかず、ロケットランチャーでも対人用、かつ当たり所が悪ければかすり傷程度のダメージしか与えられない。撃破には対戦車兵器か、戦車自体の運用が必要と思われる。それが無い場合即座にその場から撤退すべき。

 

一応急所と呼べる場所も存在する。角の付け根、鼻先、眉間が該当する。また一般的な哺乳類と同様に脳と脊髄も攻撃が届けば効果を期待できる。

 

 

 

No.15 ゾンビ(海兵隊) 危険度A+

 

前述した通り死んだ海兵隊員が蘇りゾンビと化した物。

 

通常のゾンビに比べ死んでからの時間があまり経っていないからなのか比較的動きが速く、体も頑丈。また視覚、聴覚、知能もある程度は残っている模様。

 

脅威なのは生前の記憶を有しているのか重火器を普通に使いこなす事。しかも何故か弾薬は無限に補充されるようである。

 

不死身では無いにせよその継戦能力はゾンビ数体で完全武装の海兵隊1個分隊に匹敵する。前述のベヒモスと違い歩兵だけでも倒せない相手ではないが、まともに抗戦した場合かなりの被害が予想される。余計な被害を抑えるためにも遺体の処理は確実に行う事。

 

またゾンビ化は人間だけでなくベヒモスなど怪物達にも適用される場合があり、動きの鈍化、痛覚の欠如、知能、感覚器官の低下等の変化が同様に見られる。

 

 

 

No.16 レライエ  危険度S

 

魔物のスナイパー。見た目は爬虫類と人間を合わせたような姿。自分が遭遇した個体は女性だったが男性の個体がいるのかは不明。

 

あらゆる場所を反射する跳弾を利用し遠く離れた場所からこちらを狙撃してくる。複雑な構造の屋内で攻撃された場合我々の装備では捕捉、反撃ともに不可能。万が一誰かが被害を受け身動きが取れなくなった場合、二次被害を防ぐため見捨てる事も選択肢として考えなければならない。

 

自分のケースでは教会関係者が持つ”跳鉱石”なる同じように反射する武器で事なきを得たが、もし彼がいなかった場合対処の方法が見つからない。糸口があるとすれば跳弾のため我々の使うライフルより幾分威力が弱い事と、狙いをつけるのに多少の時間を要する事か。

 

鹵獲した戦利品の銃を検証した所、射程距離は1500メートル程、実用範囲はその半分。多く反射させるとさらに距離は短くなるようだ。最も使用者の”魔力”という物で射程、威力共に変動するらしく、詳細な解析は専門家に委ねる。

 

 

 

No.17 ドッペルゲンガー  危険度S

 

死んだ人間の姿を偽り騙し討ちをしかけてくる魔物。正体は毛を剃った猿のような怪物で、グレイタイプの宇宙人に近い。

 

見た目だけでなく声や仕草、記憶までコピーできるらしく、実際に倒すまで判別は困難。もし生死不明の味方を装われた場合非常に危険。また死亡が確定していたとしても実際にその姿を見ると動揺してしまい正常な判断が下せなくなる。

 

前者の場合対処法ははっきり言って無い。常に警戒を怠らず仲間といえど不穏な動きをした場合容赦なく打ち倒すしかないが、それで味方同士が疑心暗鬼になってしまっては元も子もない。そういった不和をも利用した非常に厄介な敵である。

 

耐久力は人間とあまり変わらないのが唯一の救いだろうか。むしろその点が判断をさらに難しくしているとも言えるが。

 

 

 

◆以下の魔物は直接戦ってはいないが検分した事を記す。対処法に関しては多分に推測の域を出ないので参考程度に留めておいて欲しい。

 

 

 

No.18 ワーウルフ  危険度S

 

狼の獣人。元は普通の人間だったようだが何らかの技術によって怪物に変えられたようである。体の大きさも人間時より一回り大きくなる。

 

狼の名が示すとおり圧倒的なスピードと反応速度を持つ。主な攻撃は爪による切り裂き。牙による噛み付き。身体能力を生かした体術。

 

あくまで生物であるため対人用兵器で倒せるはずだが、たとえマシンガンでも正攻法では命中は期待できないだろう。囮を配置しつつ弾幕を張るか、離れた場所から狙撃するしかないと思われる。間違っても接近戦を挑んではいけない。

 

 

 

No.19 巨人  危険度S++

 

体長30メートルはあるであろう髭面の巨人。動きは鈍いがその巨体は歩くだけで周囲にM6~7クラスの地震を起こし、踏んだ地面が数メートル陥没する。

 

主な攻撃は巨体を生かした殴打や踏みつけだが、危機が迫ると閉じた右目を開け強力な熱線を発射する。その切れ味は凄まじく、硬い石造りの闘技場(イタリアのコロッセオとほぼ同じ大きさ)を真っ二つにするほど。

 

ここまでくるともはや人間の力でどうこうできる相手ではない。戦車や戦闘機での対処が望ましいがそれもどれほど通用するかは解らない。現時点で確実な攻略法は無い。

 

 

 

No.20 デス  危険度EX

 

巨大な鎌を持ち、紫のローブを纏った骸骨の魔物。見た目はタロットカードの死神のイメージそのままで問題ない。身長は人間より大きく3メートル弱。

 

知能は高いようで、ある程度の意思疎通も可能だが、根本的に人間を見下しているため友好的な関係は絶対に築けない。普段は上空に浮いている他、姿を変える事も出来るようだ。

 

常に不気味な重圧を発し、大抵の人間はその姿を見ただけで金縛りにあった様に身動きがとれなくなる。軍の銃火器が効くかどうかも不明。教会関係者ならば対処できるかもしれない。

 

データも少なく、あらゆる意味で規格外なため確実な対処法は見つけられない。

 

 

 

No.00 ドラキュラ  危険度?

 

この城の城主。千年を生きる吸血鬼にして予言における恐怖の大王とはこの男の事だという。

 

百年単位で復活し、今年が丁度その周期らしい。どのような姿で、どのような力を持つのかなど詳しい事は一切不明。教会関係者はドラキュラを封印するために来た。日食を利用する事で封印できるらしいが原理は不明。

 

 

 

――この他にも巨大なドクロや、不可思議なスケルトン。それ以外にも自分もまだ遭遇していない未知の怪物が多数存在していると思われる。今後も新しい情報を入手次第書き加えるつもりである。

 

 

 

 

 以上が現時点で自身が解る悪魔城の詳細である。出来るならば自分の口で真実を伝えたいが、現状その可能性は限りなく低い。しかし生き残りの海兵隊員として何としてもこの情報を外部に伝えなくてはならない。この城で命を落とした仲間達のためにも。再びこの城に挑むかもしれない後輩達のためにも。

 

この記録が後進の兵達の役にたつ事を……いや、出来るならば役にたたない事を願う。

 

 

                      July, xx, 1999 ラング・ダナスティ  

 

 

 


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