城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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八話目。どうしてこうなった。

活動報告でも書きましたが。
fate出します。

まだですけどね。


彼女と彼

 『最初の頃、彼らとの生活はあまりうまくいかなかった。予想はつくとは思うけど、私が吸血鬼だからという理由だった。吸血鬼は魔法世界で最強種の一角として名を馳せている。数はかなり少ない、といよりほぼいないね。吸血鬼は私たち始祖、真祖、眷属の三種類いるんだ。けど始祖は同時期には一体しか存在せず、真祖も私の知る限りではいない。眷属は私が眷属化させた一体のみだ。吸血鬼は人間だけじゃなくて亜人からも恐れられているからね。生まれてもすぐに排除される。君も気をつけるんだよ。吸血鬼が目の敵にされる理由は、血を吸うからとか強すぎるからだけではないんだ。多くの人にとってはそもそも「吸血鬼」という種族自体がダメなんだけど、これは今は置いておこうか。

 ともかく共同生活は困難を極めた。こちらが近づけばみんな逃げるし、話しかけてもほとんど答えてくれない。まぁそんな対応には旅で慣れていたから辛くはなかったよ。けれど、彼らのなかでも私と関わってくれる子がいた。その子は長寿を種族特性とした亜人でね。名をイリアといった。彼女は姉と共に故郷の村から追い出され、ここで暮らしていた。両親は村に住んでいる時に病気で亡くなっていたそうだ。彼らのなかではイリアはまだ恵まれた存在と言えた。家族を殺され、命からがら一人で逃げてきたという者もいたから。彼女の種族特性が長寿だったのが追放ですんだ大きな理由だろう。

 亜人は基本的に人間より高い能力とそれぞれの種族に合わせた種族特性というものを持っているんだ。種族特性というのは長寿や読心、獣化といったようなもの。吸血鬼の種族特性は不老不死、吸血になるのかな。ともかく、この種族特性というのが亜人が迫害を受けた最も大きな理由だ。自分たちより強くてその上に固有スキルまで持っている亜人は、人間にとっては恐怖を煽る存在だったんだね。それだけじゃなくて、亜人の中には血が薬になる種族や角が最高級の杖の材料になる種族なんかもいる。彼らは特に人間たちから狙われた。もともとは魔法世界は亜人しかいなかったそうなんだけど、どんどん人間が増えてきて、その数が逆転した場所も現れ始めた。特にそういうところは迫害がひどくね。城はそういう場所に近かったから、自然と彼らは城に集まった。

 それでイリアのことだったか。イリアは毎日のように私に話しかけてきてくれた。彼女がまだ幼かったというのが私を怖がらなかった理由だろう。その証拠に彼女の姉は、私を恐れていた。私は城にいる間、執筆を続けていた。イリアは遊んでくれとそれをよく邪魔しに来たものだ。

 イリアはその愛らしさから皆に愛されていた。だから、心配した人たちが私と関わるのはあまりよくないと何度も言っていたようだ。けど彼女はそれを聞かなかった。彼女はいつも私についてまわってね。そんな姿が可愛くて、私もついつい甘やかしてしまったよ。魔法が使いたいと言われれば、魔法を教え、かわいいペットが欲しいと言われれば、おこじょ妖精を捕まえてきて。

 私の城での生活は、彼女と共にあった。彼女は長寿だから歳をとるのが遅かった。彼女の種族は寿命が300年くらいで、当時の彼女は10歳くらい。まだまだ子供だった。変化もあった。どんどん年を経ていく毎に少しずつ、他のみんなとも関わるようになった。彼女が苦心してくれて。50年ほどして彼女が成人を迎えるころには、私も皆に受け入れられつつあった。

 ある時、彼女は私に言った。「ねぇ、カイロス。私も吸血鬼にしてくれない?」と。私は何故と彼女に聞いた。彼女は答えた。「あなたが好きだから、あなたを愛しているから。私もあなたと永遠を生きたい」と。私は迷った。私も彼女を愛していた。だからこそ彼女を吸血鬼にしていいのか分からなかった。不老不死なんて、吸血鬼なんてそんなにいいものじゃないと私は知っていたから。彼女と彼とは違うんだと自分に言い聞かせて、私は彼女の願いを断った。

 それからまた50年くらい経ったある日のことだ。あの日から何事もなかったかのように私と彼女は過ごしていた。皆も代替わりをして、彼らの子どもたちが元気に暮らしていた。すると急に体に電流が走ったような感じがした。何故かは本能で理解した。吸血鬼が生まれた。そして、場所は城のすぐ近くの森の中。私は急いでその場所へ向かった。

 そこには血だらけのイリアがいた。彼女の綺麗な金髪もその小さな体も、そして目の色までも赤くした彼女が。森の中で一人、佇んでいた。

 

 彼女は吸血鬼になっていた。もちろん私は彼女を吸血鬼になどしていないし、彼女に真祖化の魔法も教えていない。真祖化に関する本は封印をかけてあるから、彼女には読むことなんてできない。つまり誰かが彼女を吸血鬼にしたということだった。彼を疑ったが、彼ではない。彼の居場所はある程度だが把握しているし、そもそもそんな人物ではない。

すぐに疑問の答えなどでないと思った私は、いまだ茫然と立っている彼女に声をかけた。「カイロス。私、吸血鬼になったよ。あなたと同じだね」。彼女が私に言った言葉。その言葉は、無理やり私の耳に入ってきた。私は彼女にまた聞いた。何故と。彼女は答えた。「あなたが好きだから、あなたを愛しているから。私もあなたと永遠を生きたい」。

 私は何も言えなかった。』

 




私も自分で何がしたいかわかりません。

イリアはあのイリヤとは関係ないです。
名前も拝借したわけではないです。
偶々です。
本当です。

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