感想でもご指摘を受けましたが、テンプレ展開になる予定はありません。
とは言ってもネギまの二次創作は星の数ほどあるので、全く新しいのを期待されても困りますが。
出来る限り面白いものを書けるよう頑張ります。
主人公と吸血鬼
「ふぉふぉふぉ。よく来たね、ネギ君。儂が麻帆良学園学園長の近衛近衛右門じゃ」
「は、はい!初めまして!ネギ・スプリングフィールドです!!よろし……あ、あなた方は!?」
ネギが来た。学園長室に集まった私たち。ネギは大きな目を目いっぱい見開いている。馬鹿面。
「久しぶりだな。」
「え、えっと!あ、あの!お会いしたかったです!!」
私は別に会いたくなかったが。言わないのが大人だ。
「何よ、あんたアイリスちゃんたちとも知り合いだったの?」
ネギの隣に立つ神楽坂明日菜。アスナ姫。ウェス何とか王国の王女。ナギの言う「鍵」の可能性。タカミチの希望によって魔法とは無縁の生活を送っている。だが、皆それは叶わないと知っている。
「はい!えっと…昔助けていただいたことがあって」
「ふ~ん」
魔法無力化体質だったか。魔法や気が効かない能力。アリカと同じ。ネギのパートナーになれば、奇しくもナギらと同じか。まぁ。そんなことはどうでもいい。私には関係のないこと。大事なのはこいつが「鍵」かどうかだ。
「けど何で麻帆良にいらっしゃるんですか?」
「ふぉふぉふぉ。今、アイリス殿らは麻帆良に住んでいらっしゃるからの」
「そ、そうなんですか!?」
何の感情か。憧れと期待と言ったところか。それにつられたか、こちらをチラッと見るタカミチ。言いたいことはわかるが。知らん。
「私たちはもう行く。」
「ふぉ?そうですかの」
「え!?も、もうですか!?」
ここで特にすることもない。私と話したい奴もいるようだしな。
「ではな。」
そう言って部屋を出た。ついて来たのは妹たちと茶々丸。そして、タカミチ。
「…ネギ君の師になっては頂けませんか?」
「くどい。」
そんなことをしても意味がない。
「対価は払います」
対価。対価か。私が今求めるのは始祖の情報のみ。
「お前に払えるのか。」
「くっ」
無理だろう、タカミチ。お前がアルビレオやナギ以上の調査力を持っているはずがない。木乃香とは状況が違うのだ。
「ナギさんはあなたにネギ君を託したのではないのですか!?」
えらく噛みついてくるタカミチ。そんなにネギが大事か。
「託されてなどいない。」
私がナギに頼まれたのはネギを育てることでも守ることでもない。そんなにネギを強くしたいならアルビレオかラカンにでも頼め。
「アスナを私に渡すならネギを鍛えてやっても構わんが。」
「なっ!?」
「くくく…まるで悪役だな」
うるさいぞ、エヴァンジェリン。アスナが欲しいのは真実。手段を選んでいるだけ真っ当。
「あいつも木乃香と同じだ。遠ざけても無駄。わかっているくせに足掻くな。」
ナギ、詠春、タカミチ。親というのは面白い。それぞれ考え方が違う。ナギは子を信頼し、それゆえに誰にも託さない。詠春は子を心配し、私に預けた。タカミチは、こいつ自身が子供。
「それでも…」
ネギが来たということはアスナもこちら側に来るだろう。タカミチが、紅き翼の面々が何と言おうと、アスナは引き入れる。手段を選んでいるだけ、真っ当。
「話は終わりだ。ネギの師は他の人間に頼め。」
タカミチを放って、城に戻るため足を進める。学園の廊下。がやがやとした喧噪。注目されるのも仕方ないが。鬱陶しい。
「どうだったネ?ネギ坊主ハ」
そんななか。私たちに話しかけてきたのは超鈴音。数年前に城を訪ねてきた未来人。こいつのことはぼんやりと覚えている。時間操作能力者。
「ふん…見ていたくせに聞くな」
不機嫌そうに言うエヴァンジェリン。事実。超は学園長室をご自慢の機械で覗いていた。
「それはそうだガ、あなた方の感想を聞きたいネ」
「ただのガキだろう」
「英雄の息子に手厳しいネ。アイリスはどうカ?」
感想か。
「特にはない。」
「こっちも相変わらずネ…どうせアリスに聞いても答えは返ってこないだろうシ、面白みのない人たちネ」
余計なお世話だ。そんなことより。
「準備は進んでるのか。」
超が城を訪ねて来た時。超が話した計画。
「フフフ…もちろんヨ!楽しみにしておくネ、アイリス!」
楽しみか。確かに楽しみだ。その時は。始祖の情報。聞かせてもらおうか、超。
ホームルームがどうこうと言って超は教室に戻っていった。廊下を歩きながら考える。超の持つ情報。どんなものかはわからない。もしかすると嘘の可能性もある。だが、その対価は「動かないこと」。超の作戦決行の時に何もしないこと。それだけで情報が手に入るなら安い買い物。それに超がダメでも、本命がある。
ナギが言った「鍵」。おそらくアスナだろう。というより魔法無力化能力か。ネギに関わることで魔法に関わる。確か原作ではそうだったはず。そして、あいつらは魔法世界に行く。その時。「鍵」として使わせてもらおうか。紅き翼の顔を立てて強引な手段は取らない。姫を攫う悪い吸血鬼はキャラではない。600年も生きてきたのだ。一年くらいどうということもない。
「あの坊やの師は誰がするんだろうな?」
「アルビレオだろう。」
ラカンは魔法世界から出てこれない。タカミチは呪文詠唱ができない。近衛右門はない。あいつはネギを鍛えるつもりなどない。友人の子を預かったという程度の認識だろう。一応心配はしているだろうが、それ以上の干渉はしない。本国からの要請を適当にこなすだけだろうな。
「くくく…吸血鬼が英雄の子の師とはな…それにアルの正体を本国の連中が聞けば、卒倒するな」
英雄、紅き翼のメンバーの一人であるアルビレオが吸血鬼だと知っているのは私たちと紅き翼の仲間と近衛右門のみ。
愉快そうに笑うエヴァンジェリン。本来ネギの師の役はお前に配役されていたこと。いや、まて。確かにネギとアスナは魔法世界に行く。エヴァンジェリンが師ならば。だが。アルビレオが師になったとして、あいつらは魔法世界に行くのか。
「どうした?人の顔をじっと見て」
師をさせるべきか。
「いや。気にするな。」
ネギは誰が師であろうと魔法世界には行くだろう。どうせその時は私も行かなければならないのだ。面倒だが、何かあれば私が動けばいいか。と思い、言うのをやめた。
「ふん…ならいいが」
何にせよ。私のために働け、ネギ。