城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

24 / 31
二十一話目。かなり短いです。

時間軸が飛んだことについてですが。
後に拾います。すみません。いったん飛ばしています。

次回は閑話最終話を。
今週中に。
本編も上げるかもしれません。


これから。始まる原作期か。
依頼と吸血鬼


 「こ、このちゃん待ってーな!」

 「せっちゃん!はよせな置いてくえー!」

 「はぁ…アリス。ついて行け」

 「うん」

 平和。幼女の笑い声が耳に入る。

 「…何だ?」

 「いや。なに。エヴァンジェリンのお姉さんっぷりを見ていただけだ。」

 「ぐっ…」

 「面倒などと言って結局は面倒を見るな。お前は。いつものことだが。」

 「ケケケ。ゴシュジンハアメーカラナ」

 「うるさいわー!だいたい木乃香の修行も私がほとんど見ているのはどういうことだ!?お前が頼まれたんだろうが!!」

 「二人は一緒にしたほうがいいという私の英断だ。」

 「その答えにお前が師の役目を果たさない理由がどこにある!?」

 「二人の面倒を同時に見ればお前もついてくる。女三人寄れば姦しい。というだろう。何年生きている。知らないのか。愚妹。」

 「……めんどくさくなったという理由を忘れるな。愚姉」

 「ケケケ。コレモイツモノコトダナ」

 

 桜咲刹那。白い禁忌の烏族。烏族では白は禁忌。白く生まれた少女は迫害を受け、里を出た。そこを神鳴流の一人が拾った。今では木乃香の「お友達」兼「護衛」。

 この一年と少しで明るくなった。拾われた当初は死にかけ。肉体も精神も。話によると。経緯を聞いたエヴァンジェリンが自分の弟子にすると急に言い出したらしい。何を思ったか。聞きはしないが。

 その半年後。神鳴流に入ることを志願。何か役に立たないと捨てられる。とでも思ったのだろう。見かねたエヴァンジェリンが「役目」を与えた。それが木乃香の「お友達」兼「護衛」。二人の出会い。このきっかけはよくはないと思うが。あの頃の刹那の様子を考えると。仕方なかった。エヴァンジェリンの判断は間違いではなかっただろう。

 楽しそうに、庭を走り回る。幼女二人。

 

 「ん?」

 何だ。食事には早いが。

 「失礼します。お二人を長がお呼びです」

 「またあいつか…何かある度に私たちを呼びつけおって」

 「ケケケ。アイツハヘタレダカラナ。マタナンカマヨッテンダロ」

 「今度は何だ。」

 「知らん。大方あの二人のことだろうよ。まぁいい。行けばわかる。チャチャゼロ、あの三人を見ておけ」

 「シカタネェナ」

 三人か。間違ってはいない。

 

 「で?」

 開口一番。相手は長。そして一応私たちは客人なのだが。もう今更だが。

 「実は先ほど、お義父さんから連絡を頂きまして」

 「ほう…近右衛門からか」

 近衛近右衛門。関東魔法協会理事であり麻帆良学園理事長。何故西の人間である近右衛門が東の重要ポストにいるのか。一に奴が優秀な人間だからという理由。二に持ち上げられたからという政治的な理由。政治的。東の目的。何のために西とのつながりを持とうとしているのか。いまだ不明。少し情報は入ってきているが。決定打に欠けるのが現状。

 麻帆良へ留学した後。一度京に帰ってきた近右衛門はまた東へ関わった。あれよあれよという間に出世。今では随分と偉くなった。一種のスパイだが。麻帆良には情があるようできちんと仕事はしているが。

 

 「それで?あいつは何だって?」

 「ええ。木乃香は元気にしてるかという旨の内容でした」

 「……それだけか?」

 「はい」

 「……ほう?」

 似合わない低い声で話すエヴァンジェリン。

 「エヴァンジェリン。近右衛門が自分の様子を聞いてこなかったからといって不機嫌になるな。」

 「違うわー!私が言いたいのはそんなことで態々呼び出したのかということだ!!」

 そう言って、詠春を睨みつけるエヴァンジェリン。

 「ええと…今日お二人に来ていただいたのは木乃香と刹那君についてです」

 予想通りだ。予想通り過ぎてつまらん。木乃葉も何故こんなつまらん男と結婚したのか。理解に苦しむ。

 「二人の様子はどうかと思いまして」

 笑ってそう言う眼鏡。やはり。それだけか。

 「…それだけか?」

 一致。

 「ええ」

 イラッ。という擬音が隣から聞こえた気がする。気のせいか。

 「詠春…」

 いや。これは気のせいではないな。だが。私は知らん。

 「な、なんでしょうか?」

 引き攣った顔で答える眼鏡。あの顔を以前見たな。いつだったか。ああ。昔、詠春がへっぽこだった頃。エヴァンジェリンとの特訓でよくあんな顔をしていたか。懐かしい。

 「ふふふ……本来なら道場に来い、と言いたいところだが…今のお前と本気で戦えば道場は壊滅するだろう…だから久しぶりにお前を別荘に招待してやる。喜べ」

 「ええと…何故戦うことになっているのでしょうか?」

 冷や汗。600年程生きているが。滝のような冷や汗など見たことがなかった。貴重。

 「ああ…アリスも連れて行こうか?ここ最近ガキどもの面倒ばかりで暴れたりないようだからな。ちょうどいいだろう」

in別荘。vsエヴァンジェリン&アリス。ノーサンキュー。どうせチャチャゼロもついてくる。

 「ま、待ってください!」

 「遠慮するな」

 「え!?ちょっと!!待ってくだ…」

 眼鏡越しの目と私の目が合う。うむ。行って来い。

 「ちょ…」

 「アリス!!チャチャゼロ!!来い!!」

 ふむ。ガキどもの面倒でも見てやるか。

 

 次の日。

 「行ってくるえー!!」

 「行ってまいります!このちゃん待ってー!!」

 ガキどもを小学校に送り出し、自室に戻る。

 詠春は療養中。あと二日は動けまい。やりすぎだ。長の仕事が滞る。私には関係ないことだが。

 

 「で?」

 「二人の様子はどうでしょう?」

 聞き飽きた。こりない眼鏡だ。ただ高級羊羹を用意したことは評価。エヴァンジェリンも話を聞くことにしたようだ。ちょろい幼女。

 「いままでと変わらん。木乃香には陰陽術の基礎を教えている。西洋魔法についてはまだ何も。刹那も基礎訓練だ。あいつら自身を取り巻く環境についてはほとんど教えていない。まだガキ過ぎて分からんだろうしな」

 「なるほど」

 「…本当にそれを聞くために呼んだのか?」

 「いえ…」

 「何だ。もったいぶるな。とっとと話せ」

 嫌そうな顔で話すエヴァンジェリン。

 「依頼を受けていただきたいのです」

 神妙な顔で話す詠春。

 「内容は?」

 

 「石化魔法の解呪です」

 




短さは話数でカバー。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。