城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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ノスタルジーです。
アンケートへのご協力ありがとうございます。
こんなに多くのレスポンスがあったことに大変驚いています。
振り回してすみません。駄作者。

結局。2が圧倒的に多かったので2となりました。
期待されていた方はすみません。
それで、これからの大まかな展開については皆様の予想通りだと思います。

十二話目。

夜。それまでに返ってきた回答からおそらくこうなるだろうという予測に基づき。
すでに結果が出る前に書いていました。
何だそれは。ふざけんな。本当にすみません。

もうアンケートはする予定ないです。
私としてはしたいんですが。
しません。

アンケートと設定のページについて。
見て、勘違いされる方がいては困るので適当に修正しときます。


二人の吸血鬼

 その日から研究を始めた。魔法の練習をしながらも、1年ほどかけて書庫にある降霊術や伝説、歴史に関くる本を読み漁った。

 降霊術と悪魔召喚との違いは、契約の重要性。悪魔召喚は召喚した悪魔に魔力を供給し、契約する。契約の内容は様々。願いを叶える対価に生贄を月々五人や処女の生き血などを要求される可能性も。あるのか。不明。ともかく、その契約を順守しなければ、悪魔は召喚者に従わない。対して降霊術。言ってしまえば、降霊術は降霊をするだけ。その降霊された霊がどんな行動を起こすのかは霊次第。一種のギャンブル。契約を結ぶかどうかも本人たち次第。魔法で無理やり縛ることも可能だが、そんな不安定な関係性でこれからやっていくのは。不安。それに確固たる自我を持つ伝説級の霊を縛る力量は、現在ない。したがって、降霊する霊の選択に、二人で頭を悩ませていた。

 「アイリスさん……結局のところ強くて、吸血鬼に好意的な霊って、いったい誰なんでしょうか?」

 知らん。というか私が知りたい。それに、懸念材料もある。

 「下手な霊を呼び出せば、その場で戦いになることもあるかもしれん。」

 「もし、その場合……勝てますか?私は自信ないですけど……」

 伝説級の霊と戦う。無理。エヴァンジェリンも私も生まれてから20年と少し。エヴァンジェリンはここに来るまで逃走一択。私は引きこも、ではなく研究一択。戦闘経験がない。勝てるか。勝てない。

 「エヴァンジェリン。」

 「はい」

 「私には好きな言葉があるのだ。聴いてくれるか。」

 「はい」

 「保留、だ。」

 保留。先送りとも言う。

 エヴァンジェリンはこちらを見た後、黙って魔法生命体に関する本を読み始めた。

 何だ。その眼は。

 

 どうもエヴァンジェリンの私に対する尊敬度が低い。気がする。どういうことだ。日々下がっている。気がする。どういうことだ。振り返る。ふむ。最初の出会いは、どうだったか。始祖としての威厳に溢れていたはずだ。あの時点で失敗していたら。先代のせい。私は悪くない。それからは、真祖化について知らなかったことか。確かにそれは尊敬できまい。しかし、仕方がないだろう。私は本来、君より年下だ。エヴァンジェリン。言わないが。他は、日常生活面か。普段の生活。書庫に引きこ、ではなく研究のために缶詰。怒られる。食事を忘れる。怒られる。風呂に入らない。怒られる。掃除しない。怒られる。ふむ。何を作ろうか。本を探す。

 

 エヴァンジェリンは人形を選択したようだった。人形。確かに命令に忠実、凡庸性にも優れる。無難な選択だ。魔法生命体といえば、ゴーレムをはじめとする「人形」を誰もが思いつく。エヴァンジェリンの趣味にもぴったりだ。趣味のせいか、彼女の部屋は実にファンシー。いつの間に改造した。家主に許可を取れ。いや、まぁいい。私はどうするのかが重要だ。今は。

 魔法生命体。大きく分ければ「人形」、「インテリジェンスアイテム」、「その他」になるか。「人形」はゴーレムやキリングドール、ホムンクルスなどといった存在。魔力供給さえ行えば稼働し続ける。作るのが難しいが、強いだろう。「インテリジェンスアイテム」は意思をある程度持つ剣や鎧、魔道書といった道具。使うときに魔力を供給すれば性能が発揮される。もちろん常に動かし続けてもいい。利点は作りやすく、魔力消費量が少ないということ。だが、そもそもこちらは自立、単独行動を前提としていないものも多い。そして、どちらにも属さないものもある。例えば「ミミック」。どう使うのかしらんが。必要なのか、あれは。

 ならやはり「人形」か。無難に。「人形」。どうせ作るのなら出来る限り性能を上げたい。そういえばちょうどエヴァンジェリンが城が広くて掃除が大変だとぼやいていた。手伝いが欲しいとも言っていたな。人型の万能なやつにするか。戦闘要員兼手伝い。原作にもいた気がするが。一人より、二人。

 それか、エヴァンジェリンの「人形」にあわせたインテリジェントウェポンという案もあるか。どちらにするか。迷いどころ。時間だけはあるのだから、最終的に両方作るというのも出来るか。なら始めは人形にしようか。とりあえず。家事手伝い。

 

 端的に言おう。無理だった。材料、知識、技術。全て、足りない。エヴァンジェリンも壁に頭を打ったようだ。当然。始祖より優れた真祖など、存在しない。

 しかし、どうするか。書庫がある。知識は何とかなるだろう。問題はあとの二つ。材料と技術。こんな城の中で製作のため材料など易々と手に入るわけがない。それに「人形」など作ったことはない。技術面は時間の問題としても、材料か。旧世界では手に入らないものが多い。なら、行く必要があるか。魔法世界。

 

 「どうやって行くんですか?」

 何を言っているのだ。この始祖は。という顔。

 「だから、魔法世界へどうやって行くんですか?」

 何を言っているのだ。この真祖は。という顔。

 「はぁ」

 おい。

 「魔法世界までの転移魔法なんて私たちは使えません。となると世界に数カ所あるワープゲートを利用しなければ、魔法世界には行けません。でも私たちは吸血鬼なんですよ?人間でもほとんど使わせてもらえないのに、吸血鬼がどうぞどうぞと言ってもらえるとでも?」

 思っていらっしゃるのですか、始祖様か。なるほど。相も変わらず頭が回る。

 やっぱり私がしっかりしなきゃという声を、吸血鬼の優れた聴覚が捉えた。

 

 エヴァンジェリンとともに魔法の研究と習得。100年ほど経った。一つ言えること。二人とも魔法バカだった。一日中魔法漬けの日々。そして、私も彼女も魔法に関しては天才。と言っていい。100年もあれば、出来ないことの方が少なくなった。特に私。だが、真祖化についての研究は全く進んでいない。彼女は手が空いたら調べているようだったが。まだ未練があるのか。単なる興味か。不明。

 

 エヴァンジェリンは闇と氷の属性を得意としている。私は闇と水と風。闇は吸血鬼なら皆が使えるのか。そしてやはりというか、属性には得意不得意があるらしい。

 吸血鬼にデフォルト装備されているらしい「闇」、そして対極の「光」は他の属性に比べ安定性に欠ける。術者の感情や時間帯にさえ影響を受けるらしい。だが、オールマイティ。「火」は文字通り火力。つまり殲滅力。しかし、防御性能に難あり。それもそうか。「水」は幻覚や治癒が得意。パワーはない。小細工でカバー。「風」は万能。特にスピードは利点。欠点は「水」と同じくパワー不足。「雷」は「火」に次ぐ殲滅力と「風」に勝るスピードを持つ。だが、特化しすぎとも言える。「土」は攻撃、防御共に得意。大ざっぱなことしかできない。「氷」は少し特殊。凍らせるというメインウェポンが利点でもあり、欠点でもある。他にもいくつか属性はあるが、それらは亜人達がオリジナルで使うようなもので、普通は適性がないらしい。

 私の問題はパワー不足だ。間違いない。いや。それも過去の話だったか。今やそんなものは児戯に等しい。吸血鬼としての身体スペックと天才的な魔法の才を持った私に敵う奴など、そうそういるまい。と自画自賛。そして先代が使っていたと思しき、転移魔法(長距離用)を見つけ、それを、習得。自画自賛。

 

 「行こうか。魔法世界へ。」

 「うん。けど、ほんとに大丈夫?」

 「大丈夫だ。私の魔法の才は知っているだろう。」

 「それはそうなんだけど……」

 歯切れが悪い。幼女。そして、タメ口。一回話し合う必要があるな。

 「ジャングルの中とか海の中とかに飛ばさないでよ?」

 心外だ。

 「安心しろ。エヴァンジェリン。私を信じろ。」

 「はぁ」

 おい。

 「とりあえず、目的は魔法生命体の製作の材料を手に入れるってことでいいの?」

 「そうだな。」

 他にすることは特にない。しいて言えば、魔法世界に行くこと自体が目的。興奮する。いや。もう一つあったか。まぁ。それは今は置いておこう。

 「行こうか。」

 「うん」

 そして二つの小さな影は、巨大な魔法陣が発した光に、消えた。

 




方向転換は無理やりですが。
ご容赦ください。

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