城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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十話目。もう十ですか。文字数が少ないのであっと言う間。

久しぶりに書くと、主人公の口調がわからなく。
ヤバイ。

あと誰だ。こいつ。


確かに。私は吸血鬼だ。
真祖と吸血鬼


 手紙を読んでから数十年。私は、その時間のほとんどを魔法の勉強に使っていた。先代の話から、中級魔法をメインに学んだ。どうも始祖は一度に発する魔力が多いため、消費魔力が少ない初級魔法が暴発してしまいやすいようだ。だから中級魔法から学んだ。しかし、始祖である私は魔法に対して優れた才能を持っていた。中級魔法でも少しの練習で容易に使える。まさに天才。本を次々読破。魔法を次々吸収。だが書庫にある魔法関係の本は量が多すぎて、読み切るには何年かかるか。不明。そして、確実に読み終えた本の数を増やしている私は、ここに彼女が近づくのを、感じた。

 城の外に出る。結界の存在を知覚。その境界。終わる一歩手前に、立った。目線の先。私より小さな体、私と似たような金髪、私と同じ赤い目をした、しかしその全てをボロボロした少女がそこにいた。

「あなたは、私と同じですか?」

 少女は泣きそうな声で私に問いかけた。問われた私は少女に問いかける。

 「君はどう思う。」

 少女は一呼吸おいて。問いに答えた。

 「私と同じ、吸血鬼だと思います。」

 同意見。私はあの本にあった魔法を発動し、結界を緩める。

 「ここは私の家だ。だから君を客人として招こう。私は吸血鬼だ。君は、吸血鬼とともに暮らせるかい。」

 「私も吸血鬼です。あなたは吸血鬼と一緒に暮らしてくれますか?」

 彼女の姿を見て、断ることはできなかった。

 私たちは、ともに暮らすことにした。私は、この世界で生きることにした。

 

 城には多くの部屋がある。彼女の住む部屋をともに決めた。部屋は簡素なベッドと机がある部屋。といっても住める部屋は全てそんなものだが。そこで二人で話をした。

 「あの、お名前を聞いてもいいですか?」

 「え。」

 「え?」

 困った。名前。名前を考えてなかった。どうする。名前がないとでも言うか。それか記憶喪失。いやおかしいだろう。どう考えても。どうする。唸れ、前世の記憶。良い名前があったろう。何でもいい。それっぽい名前。

 「あ、アイリス。」

 「アイリスさん、ですか。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダヴェルと言います。」

 知ってる。

 「えっと。私、20年くらい前、目が覚めたら吸血鬼にされてて。それで、色々あって。吸血鬼になってからなんだか不思議な感じがしていたので、その感覚を頼りにここに来たんです。ごめんなさい。言いにくいことかもしれませんが、アイリスさんも誰かに吸血鬼にされたんですか?」

 なるほど。彼女は私も真祖だと思っているのか。これは彼女にはわからないのか。それとも自分とは違う、何か変な感覚でもあるのか。だがそれが何かは分かっていないだけなのか。ふむ。まぁ、隠すことでもあるまい。

 「いや。私は生まれた時から吸血鬼だ。始祖というらしい。君は真祖。始祖の方が上等だ。あぁ。ちなみに私はかれこれ、400年は生きている。」

 「始祖…ですか。そんな存在が。ならあの、アイリスさんは吸血鬼、いえ、真祖を人間に戻す方法を知りませんか!?」

 真祖を人間に戻す方法。あの本に書かれていたことの一つ。未完だが。真祖化の魔法はこれ以上ないくらい複雑な魔法らしい。先代も研究したが、真祖化の魔法は習得できなかったそうだ。それを解くものは言わずもがな。そして無視か。いや。構わないが。

 「真祖を人間に戻す方法か。すまないが、知らないな。」

 「そう…ですか。」

 彼女のテンションが目に見えて下がる。

 話題転換。

 「風呂。風呂に入ってくるといい。そんな余裕もなかったのではないか。」

 「あっすみません。私やっぱり臭いますか?お風呂とか全然入れなくて。ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。」

 「一階の東側の奥に風呂場がある。ゆっくりするといい。私は待っている。」

 「はい、ありがとうございます。」

 そう言って彼女はゆっくりと部屋を出た。一人。考える。どうするか。彼女という存在は原作には必要だと思う。なら彼女は原作に送り出すべきなのか。ここは麻帆良。去ることを前提として過ごしてきた。だが、先代が城を移動させたということは私にもおそらく出来る。城とともに麻帆良を去ることも可能。私は麻帆良を去れば原作には関わらないで済む気がする。だが。彼女は。彼女はどうか。よくある修正力などというものはないのか。先代の話からは分からない。彼女が原作から逃れられないなら、ともにいては巻き込まれる。なら。

 

 いや。やめる。彼女を見た時、それは頭のなかにはなかった。なら、それでいい。もし原作に関わることになったら、降りかかる火の粉は払おう。今、私にはその力がある。それに、あとの時間でもっと盤石にすればいいではないか。そう自分に言い聞かせ、エヴァンジェリンの帰りを待った。

エヴァンジェリンが帰ってきた後、私は書庫に彼女を案内した。書庫の大きさに彼女は驚いていた。自由に使っていいと彼女に言い残し、その日を終えた。

 

 ある日。書庫。

 「あの、アイリスさん。真祖化についてなんですけど、真祖化についての本ってここにはないんですか?」

 「真祖化に関する本か。数冊あったと思うが。なかったか。」

 「いえ、あるにはあるんですけど。」

 そう言って、エヴァンジェリンは数冊の本を私の前に置いた。

 「真祖化の術式について詳しく書かれているものがなくて。」

 真祖化の術式。そういえば。ここには一冊もなかったか。真祖化に関しての本がここに無いのは不思議だが。先代が手紙とともに残した本には少し書いてあったな。そう思い、本の山からそれを取り出す。

 「これ。少しだが書いてある。」

 「ありがとうございます。」

 それぞれ、また目線を下に。日常。

 

 また、ある日。

 「アイリスさん。魔法を教えてくれませんか?」

 「魔法か。使えるのではなかったのか。」

 「少しは使えるんですけど、基本的なものばかりで。」

 「ふむ。まぁ構わない。外に出ようか。」

 日々の練習で私も下級魔法を扱えるようにはなっていた。さすが天才。コツさえ覚えれば簡単だった。初心者エヴァンジェリンは下級魔法と中級魔法を数個使えるようだった。真祖の魔力量ではきちんとやりさえすれば暴発はしないということか。

 そして、エヴァンジェリンに魔法のレクチャーをしている時。気づく。自身を鍛え、彼女を鍛えたところで、二人だ。戦力が少ない。これから、何があるかわからない。ならそれ相応の力を持つ必要がある。私たちは、吸血鬼。個々の力では最強。しかし、数が少ない。無敵ではないと先代も言っていた。ならもっと戦力を持ったほうが。いいのでは。どうするか。考える。原作ではエヴァンジェリンは従者を持っていた。しかし。強かったかと聞かれれば。

 ふむ。強い仲間が欲しい。そう結論付け、眉間にしわを寄せてうんうん唸る小さな影に、声を掛けた。

 




エヴァンジェリンです。
原作のような感じではありません。
仕様です。

いいですか。
わかりません。

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