〇月×日 八雲 藍
今日、結界の見回りをしていた際に子供を見つけた。
霊力は弱々しく、どうやら生まれた直後らしい。
食われたり野垂れ死ぬのならそれまで、と言いたいが相手はまだほんの赤子。
このまま見捨てるのも何となく寝覚めが悪くなりそうなので、とりあえず拾う事にした。
明日あたり人里に行って、受け入れ先を探す事にするか。
〇月×日 八雲 藍
予定が変わった、というのも昨日拾った子供について。
短刀直入に言うと、紫様があの子に興味を示した。
私にはタダの子供にしか見えないのだが。
今晩のおやつにでもするのだろうか?
子供の肉は柔らかいし、あながち有り得ない話でもない。
とりあえず、いつ捌けと命令されても良いように包丁を研いでおくとしよう。
同日 ???
目が覚めたら、いきなり赤ちゃんになってた。
混乱する私の目に飛び込んできたのは、どこかで見た事のある格好の女の人達だった。
何が何だか訳が分からず泣こうとしたけど、その寸前で思わず息を飲み込む。
お尻の辺りから大量の尻尾を生やした人が、鉈のような肉切り包丁を研いでいたから。
尻尾? それにあの格好……。じゃあひょっとして、ここ東方の世界!? ってか転生!? しかも、私いきなり食べられちゃうの!?
有り得ない、そう思いたいけど、私の体が赤ん坊なのも、目の前にいる人がどう見ても八雲藍にしか見えないのも事実な訳で。加えて言うと、さっきから私を抱いている人が八雲紫にしか見えないのも、どうしようも無い事なんです。
これから私、どうなっちゃうんでしょうか?
シャッ!!(包丁を研ぐ音)
ひっ!!
同日 八雲 紫
昨日、藍が赤子を拾ってきた。
おそらくは外の世界から幻想入りしてきた子供。
子供、大人を問わず幻想入りした人間の末路は大きく分けて三つある。
妖怪の餌になるか、運良く人里に入る事が出来るか、外の世界に戻れるか。
この子は二つ目。なまじ生まれてきたばかりの弱々しい姿だからこそ藍の目に留まった。
弱さは時には武器になり得るという事ね。
……と、本来はそうなる筈なのだけど、私はこの子から奇妙なものを感じていた。
境界を操る妖怪だからこそ分かる、この子の違和感。
既に物心がついているのか、目はぱっちりと開き、その表情からは喜怒哀楽があるのが読み取れる。
感じるのはちっぽけな霊力と魔力、そして妖力。
人間なのか妖怪なのかその辺りもよく分からない、存在自体にちぐはぐな印象を受ける。
まだ調べ足りないので、当分の間は家で預かるとしよう。
久し振りに面白い事になりそうだ。
……藍、何を勘違いしているのか知らないけどこの子は食べないわよ。
包丁を研ぐ音が聞こえる度、この子が震えるのが面白いから指摘しないけど。
〇月×日 八雲 紫
あの子について色々調べてみた結果、色々と面白い事が判明した。
初めてあの子を見た時に感じた違和感、その正体はあの子の魂と肉体にあった。
詳しく調べてみた所、あの子の体は人間のそれではない。
各種データが普通の人間のそれとは明らかに異なっており、どちらかと言えば私達妖怪に近かった。
しかしその中身、つまり魂は間違いなく人間そのものであった。藍がこの子を人間と判断したのも、これが原因。
通常、これは有り得ない事。
人間の体には人間の、妖怪の体には妖怪の魂、それがこの世の法則。
その点からすると、この子は例外に該当する事になる。
明日辺り、藍には彼岸に行ってもらうとしましょうか。
とりあえず今日は、もう少しこの子の事を調べよう。
〇月×日 八雲 藍
紫様の指示で彼岸へ出かける事になった。
いつものように眠りこけている死神を起こし、閻魔様宛ての手紙を預けた。
何の手紙かと訝しんでいる様子であったが、それはこっちが知りたいくらいだ。
ここ最近の紫様は、つい前に拾ってきた子供に付きっ切りである。
となると、この手紙も恐らくはあの子に関連する事なのだろうが、何についてなのか見当がつかない。
前に聞いた時は「まだ調べ終わっていない」と有耶無耶にされてしまったが、つまりは調べる必要の有るような何かがある、という事になる。
あの時は追求しなかったが、今日帰ったらもう一度詳しく聞いてみよう。
同日 八雲 紫
お使いから帰ってきた藍が、あの子の事について聞いてきた。
最近の私があの子に付きっきりなのが気になっているみたい。
藍には悪いけど、この件に関してはある程度調べが付いてから言うつもり。
今日は何を調べようかしら?
……そうね、頭の中でも見てみますか。
仕草や視線を見た感じ、この子は明らかに知性を持っている。
妖怪ならまだしも、この子の魂は人間のもの。
となると、知性の元となる経験は一体どうやって会得したのかしらね?
〇月×日 ???
紫さん(おそらく確定)が私を抱きながらブツブツ言っている。
いきなり怖い顔になったと思ったら次は笑い出して、それが落ち着くといつもの胡散臭い微笑みに戻っていた。
ちょっと前から気になってたけど、これ明らかに私の事調べてますよね?
「あなたは一体何者かしらね」って、知りたいのはこっちの方ですよ。
結局の所唯の赤ん坊に過ぎない私には、何も出来ないんですけどね。
〇月×日 八雲 藍
いつもの見回りを終えた後、私は一通の手紙を携えて紫様の所へと向かう。
手紙の送り主は閻魔様。まだ封を開けてはいないが、おそらくは先日頼んでおいた件についての返答があるのであろう。
私に手紙を頼んでから今日までの間、紫様はあの子を付きっきりで世話している。
小さな体を腕の中に抱いて可愛がる姿は、まるで本当の母親のようだ。
この前これを指摘したら、無言で弾幕が飛んできた、解せぬ。
どうしてそこまで拘るのか今まで聞きだせなかったが、いい加減教えて貰っても良い頃だと思う。この手紙を渡す時に、それとなく聞いてみよう。
〇月×日 八雲 藍
まぢですか?
同日 ???
昨日、紫さんと藍さんが何やら話し合ってました。
詳しい内容までは分からなかったけど、どうやら私に関係することみたい。
時々漏れて聞こえてくる単語から判断するに、どうやら私はこれからもここで生活する事になりそうです。
〇月×日 八雲 藍
今日は色々と忙しい日だ。
というのも、本来なら昨日のうちに片付けておくべき仕事が終わっておらず、その分の皺寄せがかかってきているからである。
昨日は丸一日、まともに仕事をこなすことが出来なかった。
何をするにしても上の空で集中できず、どうでもいいミスを連発していた。
まさか、あんな事になっていたとは予想だにしていなかったな。
……と、いかんいかん、また考えてしまっていた。
まずは目の前の仕事に集中しよう。
同日 八雲 紫
あの話をしてから一日明けて、ようやく藍は平常運転に戻った。
全く、あれ位の話で動揺するなんて修行が足りないわね。
見た所まだ消化しきれていないみたいだけど、それも時間が解決してくれるでしょう。
となると、後はこの子。
手足こそまだ満足に動かせないものの、この子に知性があるのは確認済み。
だとするとこの子にも権利がある。藍にした話を自分も聞く権利が。
「ねえ、ちょっと聞いてくれるかしら?」
「?」
ちょこん、と顔をこちらに向けた赤子を抱いて、私は語りかける。
「貴女は知りたいかしら? 自分がどうなっているのか、どういう存在なのか?」
返事を待たず、私は語り始める。こんな問いかけは愚問でしかないのだから。
事実、この子は私と目を合わせ、一語一句聞き逃すまいと目で訴えてきている。
こうまで真剣に聞いてもらえると、話し手冥利に尽きるわね。
「いい? 貴女は―」
同日 ???
なぁにそれぇ!?
……うん、落ち着いた、もう大丈夫。
いきなりな話で動揺したけど、一応は理解できた。
正直な話、まだ自分の中で消化しきれてはいないんだけど。
とりあえず整理する意味も含めて、一つずつまとめていこう。
まずは、私の状態から。
紫さんが言うには、今の私は妖怪の肉体に人間の魂が入っているらしいです。
普通、こんな事は有り得ない事らしいです。
人間の体には人間の魂、妖怪の体には妖怪の魂、そうでないと「合わない」。
生き物としてあるべき姿に収まっていない歪な命、それが今の私らしいです。
P○3にスー○ァミのROMが刺さってる感じかな? なんて考えてたら
「大体合ってるわね。フフフ……」
ですって。サトラレたよ、畜生!!
……閑話休題。
次に、そんなややこしい事になった経緯について。
あくまで推測に過ぎないけどねと前置きして話してくれた内容は、これまた突拍子も無い話でした。
まず前提として、この世界には輪廻転生の概念があります。
人間、妖怪問わず、死を迎えた生き物の魂は肉体から離れていきます。
そして三途の川を渡り、閻魔様の裁きを受け、記憶云々といった情報をリセットされた上で新しい命へと生まれ変わる、それが輪廻転生の基本的なシステムです。
この際、当たり前の事ですが、前世と同じ種族になるとは限りません。
人間であったり、他の動物であったり、虫だったり妖怪だったり。この世界に生息している生物の種類だけ、その可能性はあります。
そうなると、問題になるのは先ほど言ってた魂と肉体の関係。
転生先が異なる種族になる場合、双方の間で不具合が発生する事になります。
なら、その問題はどうするのか?
結論から言うと、転生の輪を潜る際に、新しい肉体に馴染むように調整するのだとか。
記憶をリセットすると同時に魂のマッチングをする、もっと厳密に言えば、魂を調整する際、記憶の消去が半ば必須になっているらしいです。
記憶、言い換えればその生物に蓄積された情報はその存在の定義に関わるものなので、違う生物のそれが残っていると色々と不具合があるみたいです。
まあ、それを抜きにしても転生の際には記憶を消す、というのが常識となっている為にそこまで深く考えなくてもいいんですが。
と、ここまでが前置き。言い換えると常識の確認。
そして、ここからが本題。なら、私は一体何なのか?
私にはちゃんとした記憶がある。ここに至るまでの十数年の経験がある。
それを元にして考えると、むしろ今の状況は夢だとか言われた方がよっぽど説得力がある。
そして、その事と紫さんの話の内容は明らかに矛盾しています。
転生時に記憶を失うのなら、こうして考えている私は何なのか。
もし転生していないとするのなら、今の私は一体何なのか。
輪廻転生と記憶保持、それらは一部の例外を除き、決して両立する事が無い筈なのに。
稗田阿求さんのような例外もいますが、それだって生前から準備をしたり、死後に閻魔様の手伝いをしたり、短命になったり、挙句の果てに、そこまでやっても全部の記憶は受け継がれないといったデメリットを乗り越えて初めて獲得できるものであり、そんな事をした心当たりなんて無い私には、当然無関係です。
ふと思ったんですけど、阿求さんが人間にしか転生できないのって、魂と肉体の関係のせいなのかもしれませんね。
同じ種族への転生なら比較的簡単にマッチング出来るとしたら、それでもどうしようの無い部分がある為に記憶の欠損が起こるのだとしたら、色々辻褄が合いますから。
そもそもただ記録を残したいというのなら、長命な種族になる方が効率が良い筈。
幻想郷縁起は人間の視点で書かれるべきだ、という事もあるのかもしれませんが、もしかするとそれは建前で、人間視点でしか書く事が出来ないのだとしたら?
これは勝手な推測でしかありませんが、記憶という情報に縛られているせいで長命な種族になれない、という可能性は否定できませんね。
……閑話休題。完全に関係無い話でしたね。
とにかく、私はこんな準備をした覚えはありません。
だったら、私は何なのか?
その答え(仮説って言ってましたけど確定でしょう。だって紫さんだし)は、これまた突拍子も無い事でした。
「最初に感じた違和感はその存在。魂と肉体が歪に絡まり、それでありながら一つの命として完結している奇妙な状態。」
ここまでは今まで説明してもらった通り。
今まで考えないようにしていましたが、どうしてそんな状態でありながら私は生きていられるのか、以後の説明には、それに対する答えも含まれていました。
「次に感じたのは貴方の記憶。記憶を保持している事も驚きだけど、それよりも重要なのはその内容ね。私達の事を「作品内の人物」として認識している。もっと言うなら「観測者」としての視点、次元から、私達の事を知っている」
やっぱりと言うか何と言うか、紫さんには私の記憶は筒抜けになっているみたいです。
前からそんな素振りはあったので覚悟はしてましたけど。
……これが原因で歴史が変わったら私の責任ですか?
「当然じゃない」
……そこは嘘でも、「大丈夫だ、問題無い」とか言ってくれる場面じゃないんですかねえ?
「輪廻転生の法則がある以上、記憶の保持は有り得ない。魂と肉体で種族が違うなど有り得ない。ましてやそんな歪な状態で、一つの命として安定するなど有り得ない。けど、ここに貴方の記憶を放り込むと話が変わってくる。貴方の記憶に嘘偽りが無いとして、「観測者」の次元、世界が存在していたら? そこから何らかのイレギュラーで、魂だけがこちらの世界に来てしまったとしたら?」
そんな事はあるんでしょうか? って言いたくなったけど、それも今更だと思って黙って話に集中します。
おそらくはこの先に、私の知りたい答えがあるから。
「そうやって、貴方は現世に降り立った。輪廻の輪を潜っていない以上、記憶の欠損など起こる訳が無い。こんな方法で記憶保持に成功するなんて、稗田家の者が知ったら怒り狂うかもしれませんわね」
それは勘弁、なんて考えながら、話の内容を反芻していく。
……うん。確かにそれなら説明は付くかもしれないです。
でも、それだけじゃ足りない。だって―
「だけど、そのままだと貴方は剥き出しの魂のまま。当然よね、輪廻の輪を通っていない以上、新しい肉体を手に入れる術は無いのですから」
ですよねー。
だとすると、この体はどうしたんでしょうか?
「ここからは本当に荒唐無稽な話。様々な事象に対して妥協点を見出す為に考えた、ある意味辻褄合わせにも似た推論。それでも宜しくて?」
いちいち勿体振らないでください。こっちは最初から聞くって決めてるんです。
紫さんの推論なら、それは限りなく正解に近い筈ですから。
「貴方が魂だけの状態で降り立ったとして、それは有り得る事、言い換えると、「有り得ても良い事」では無かったとしたら? もっと具体的に言うなら、世界がそれを認めなかったら?」
紫さんの言った事を噛み砕いて考えてみる。
難しい事は分からないけど、要するに「魂だけとかありえないから!」って事でしょうか?
「その通り。そこで法則に沿うように、世界からの働きかけが起きる。つまり、魂に合う肉体を見繕うことになる。けど、ここでも一つのルールが邪魔をする。曰く「何も無い所から人間は生まれない」」
確かにその通りです。
幻想郷だからといってキャベツ畑からコウノトリが運んでくる、なんて事は無くて、あくまで人間の子供が生まれるのは【ニャーン】と【ニャーン】が【ニャーン】した結果であると。
「……続けますね?」
あ、紫さんちょっとだけ赤くなってる。意外とウブだこのひと。
勝手に人の心読んだりなんかするからそうなるんですよ?
「だとしたらどうすれば良いのか、世界は考えた。その答えが発想の転換。曰く「何も無い所から発生する生物は妖怪である」」
……うん、大丈夫、理解できた。
紫さんが突飛だと前置きしていたのはこれですか。
確かに強引だとは思うけど、現に私がそうなっている以上、安易に反論できません。
「そして世界の修正力とでもいえるものが働いた結果、貴方は妖怪の肉体を得るに至った。けど、まだ問題は残る。人間の魂に妖怪の肉体、このままだと、一つの命として成立していないままになってしまう。○S3に○FCのROMが刺さっている、というのは言い得て妙ね」
……結局はそこですか。
前提がおかしい以上、いくら辻褄合わせをしても矛盾は残る、そういう事なんでしょう。
あと、蒸し返さないでください。さっきの仕返しですか?
「このままだとどうやっても矛盾が残ってしまう。ならどうすればいいのか? 世界が行ったのか、それとも貴方の生存本能が、その状態に適応するために編み出したのか、いずれにせよ目的は一つ。存在を確定させるために「それ」が為されたと私は考えているわ」
そして紫さんは、私の存在が安定している理由を語ってくれました。
それはある意味、今日聞いた話の中で、最も衝撃的な内容でした。
「要因はどうであれ、貴方は能力を手に入れた。それは「矛盾を受け入れる程度の能力」。言い換えるなら「境界を無視する程度の能力」。それを使い、貴方は無意識のうちに人間と妖怪の境界を誤魔化しているわ。矛盾を解消する為に更なる矛盾を重ね、最後にとびっきりの能力(インチキ)でラッピングされた存在。それが貴方よ」
紫さんの顔は胡散臭そうに笑っていて、それでいて心から笑っているようにも見えて。
「経緯は異なっていても、貴方には力がある。私と同じ境界に関わる力が。言うなれば貴方もスキマ妖怪。今までスキマ妖怪は一人一種だったから、貴方は私の子供って事になるのかしらね?」
スキマ妖怪は一人一種。紫さんから見れば、私は生まれて初めて出会えた同族という事になる訳で。
貴方はどう思う? と言った紫さんの顔が、今でも鮮明に頭に焼き付いています。
おまけその1 能力解説
矛盾を受け入れる程度の能力
キャロがこの世界に誕生した時に獲得した能力。
獲得した経緯については不明。世界からの働きかけか、それとも現状への適応行動なのか、恐らくはそのどちらかだと考えられる。
キャロがその存在を保っていられるのは、この能力で人間の魂に妖怪の体という矛盾を誤魔化しているおかげである。
また、この能力は言い換えるなら「境界を無視する程度の能力」でもある。
人間と妖怪の境界を無視する事により存在を維持していると解釈してもいい。
この時のポイントは、あくまで境界は無視しているだけであり、境界自体は依然として存在するという事。
境界を操ったり消している訳ではないので、物事の概念が揺らいだり混ざったりする事は無い。これが「境界を操る程度の能力」と比較した際の最大の相違点である。
重なってるのに混じっていない、例えるなら、コーヒにミルクを入れてもいつまでも混ざらないようなもの。正しく矛盾している。
と、一見凄い能力に見えるが万能とはほど遠い。
東方キャラの能力の多数が「○○を操る程度の能力」であるのに対し、この能力は「受け入れる」事に限定されている。
早い話、効果範囲は自分だけ、他者への干渉は不可能、能動的な行使も不可能と、これ単体では何の役にも立たなかったりする。ぶっちゃけ戦闘においては「花を操る程度の能力」以下。
応用次第では夢想天生モドキも出来るかもしれないが、今のレベルじゃ使えないのは明白。
唯一覚える特技の習得Lvが80越えとか色々終わってる。
藍が隠してたのはこれも理由。使いこなしても戦闘力には殆ど影響しない上、調子に乗って暴走させると命がマッハときたら誰だって教えない。
もっともこれは今現在の話であり、これから先、キャロの成長により能力が発展する可能性も十分に有り得る。が、それも数十年、数百年先の話。あと1時間ちょいで最終決戦が終わってしまう本編には一切関係の無い話である。
おまけその2 デバイス解説(真)
夢幻珠
キャロが持っているデバイスで待機状態は数珠。
一応、一般に出回っているデバイスの機能も搭載されているが、それは本体ではなく外付けのオマケ程度。
その性能からユニゾンデバイスのようなもの、と説明されてきたが、中身は全くの別物である。
中には分霊体が入っており、それと融合する事で基礎能力アップ、技能の習得、「○○程度の能力」の付与といった恩恵が受けられる。
これらが可能になるのは、言葉の通り融合した状態になっているから。「キャロ」であり「チルノ」なのだから、「冷気を操る程度の能力」が扱えるのは当然である。
また、これは技能習得にも有用である。分霊体の情報に含まれている各種経験を気づかないうちにダウンロードしているおかげで、能力に依存しないスキルなら高速で学習、修得できる。
ちなみに性格変化が発生するのもこの影響。大かれ少なかれ何らかの影響は受ける。
チルノ? あれは例外。
ただし、そうそう良い事ばかりではない。
融合騎とはいうものの、ユニゾンデバイスが実際に行っているのは対象とデバイス間の同調、調和(unison)であるのに対し、こちらは完全に融合(fusion)である。言うなれば、フュージョンデバイスといったところか。言い換えれば融合事故発生率100%。普通の魔道師がこれを使ったら、まず間違いなく自我を侵食されて精神的な死を迎える事になる。
唯一の例外がキャロ。自身の能力で魂の境界を無視する事により「融合してるのに混ざっていない」という矛盾でこのデメリットを解消している。
もっともキャロにその自覚は無く、実際に手綱を握っているのは藍である。キャロの能力に干渉し、その能力で融合を制御するなんていう何とも面倒な事が出来るのは、彼女か彼女の主くらいのものであろう。分かりやすく言うと二人羽織がこれに近い。
受け入れるだけで何一つ戦闘に転用できないキャロの能力。
性能は凄いが誰にも扱う事の出来ないキ○ガイデバイス。
どちらも単体では何一つ役に立たないが、それが揃った結果は御覧の通りである。