幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第5話 幻想縁起

 里を出てから数時間山道を歩いていたのですが、今更ながらに重大なことに気付きました。

 

 アレ? 結局デバイス無いからピンチじゃね?

 なんということでしょう。族長様の言葉が嬉しくて、完全に忘れていました。

 周りはもう日が落ち始めており、段々暗くなっていってます。

 これ以上歩き回るのは自殺行為なので、丁度近くにあった大樹の傍に荷物を下ろし、野宿の準備をします。

 

「デバイス無いけど、フリードがいるから大丈夫、かな?」

 

 そういえば、今の今まで一度もフリードを竜魂召喚していないことに気付きました。

 儀式のときは間違えてヴォルテール喚んで即気絶したんだっけ。

 今日はもう食べて寝る以外に出来る事が無さそうなので、確認のためにフリードを召喚してみることにします。

 ささやき、いのり、えいしょう―

 

「竜魂召喚―フリードリヒ!!」

 

 召喚陣が展開され光り輝くフリード。一際強い光が放たれ、私は思わず目を閉じます。

 光が収まり、そこには真の姿を現した、いつもよりも一回り大きいフリードの姿が

 

「一回り、だけ?」

 

 どう見ても一回りです。体長30センチくらいだったのが、40センチくらいになりました。

 

「フリード、私、詠唱間違っていないよね?」

 

 言葉を理解したのか、フリードは首を縦に振ります。

 

「もしかしなくても、それがフリードの真の姿?」

 

 フリードはもう一度、首を縦に振ります。

 

「Oh……」

 

 どうしてこうなった……。原作では背中に人乗せて飛べるくらい大きかったっていうのに、これだと戦力としてはかなり微妙です。

 いや、落ち着け、Coolになれキャロ・ル・ルシエ。まだ終わったわけじゃない。ここはまず冷静に、今の戦力を分析してみよう。

 

 私 シューター5発くらいが限界。魔力切れ=死亡フラグ

 フリード 精々ブレスでの支援程度。無双とか無理すぎる

 ヴォルテール MP がたりない!!

 

 あ、コレ詰んだかも。こんな状態のフリードが最大戦力とか、もう色々終わってる。

 がっくりとうなだれていた私の気持ちを察したのか、フリードが近づいてきて私の頬をペロペロと舐めてくれます。

 

 励ましてくれてるんですね、ありがとうフリード。

 でもそろそろ止めてください、涎でベチョベチョになってきましたから。

 そろそろシューター浴びせてやろうかと考えていると、何かを思いついたようにフリードが離れ、荷物の方へ飛んでいきます。しばらくゴソゴソした後、あの本を口にくわえて戻ってきました。

 

 おお、まだそれがありましたね。GJですフリード。

 本当なら人里に下りてから、専門の人、例えばフリーのデバイスマイスターに依頼して解析してもらう予定(管理局や聖王教会に頼むと、ロストロギアだ!とかいちゃもんつけられて没収されかねないのでNG)だったのですが、今やそんな悠長なことは言ってられません。族長様は安全だって言ってたので、駄目元で挑戦してみましょう。

 そこまで考えて、私は本に付いていたフリードの唾液を拭き取ってからページを開きました。

 

 本は最初のページに数行だけ文が書かれており、他のページをめくってみると全て白紙でした。

 白紙の部分は置いておいて、とりあえず最初のページに目を通します。

 

「なになに“この書は幻想の力を封じしもの。封を解くことを望むなら、この問いに答え汝の知を示せ”ですか……」

 

 うわあい、胡散臭すぎる。だってこの字……ゴシック体なんです。

 ええ、活字です。見た目古そうな本なのに中身活字なんです。

 そりゃ読める方が有難いけど、信憑性がマッハで下落していってます。

 内容から察するに、どうやらこの下に続いてる問いの答えが、族長様が言っていたパスワードみたいですね。

 もう期待はしてないんですが、一応続きを読んでみましょうか。

 

「えっと“幻想郷はすべてを受け入れる______”?」

 

 あやや、そりゃルシエの人には分からないのも仕方ないですね。

 とにかくこれでこの本の正体が分かりました。

 きっと、第97管理外世界のオタク文化にはまった人が、遊びで書いたんでしょう。

 よく見ると、タイトルがパチモノっぽいです。最初の文もどこか厨二臭いです。

 まあ、暇潰しにはなりました。さっさとパスワード言って内容確認して寝ましょう。

 

 ―それはそれは残酷な話ですわ―

 

 シーン……。

 

 何も起こりませんね。ひょっとして本に直接書き込む方式なんでしょうか?

 ちょっと考えて、止めておくことにしました。

 どうせ大したことは起こらないだろうし、書き込んだ所為でコレ売るときに値切られたら困りますし。

 人里に着いたらデバイス関係の所に売ってしまおうと結論付け、本を枕にして寝ることにします。

 ちょっと肌寒いので、フリードを抱き枕にして早めの眠りにつきました。

 さあ、明日からどうやって生き残っていこうか……。

 

 そして私と一匹は完全に寝てしまったので

 真夜中、本が僅かに発光したことには誰も気付きませんでした。


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