幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第3⑨話 黒歴史

「ズズズズズ……、ふぅ」

 

 皆さんこんにちは。キャロ・シエルです。つい先日、機動六課の様子を見に行ってからというもの、ずっと暇で困ってます。

 私の立場は民間協力者。しかも、ある意味秘密兵器的な扱いなので、出動が無い限りはやる事がありませんし、出動があっても私の出番が来ない事もあります。

 

 つい先日、フォワードメンバーの初出撃があったのですけど、空中をなのはさんとフェイトさんが担当。電車内を片方がフォワード4人、もう片方をヴィータさんが担当して、アッサリ制圧してしまいました。

 私には出撃命令は無かったのですけど、念のため近くの森に待機してました。もしエリオ君が墜落してきたら御柱でホームランするつもりだったので残念です。エリオ&アギトにチーム分けされてたら確実に出来た筈なのに……、チッ。

 

 そういう訳で私の出番はゼロ。作戦成功を遠目に見ながら、こっそりスキマで帰りました。

 

 六課に行っても他の人の仕事の邪魔ですし、訓練を受ける必要も無し。この時期から民間協力者になったのは早まったかもしれません。こんな事なら、まだ陸士108部隊でギンガさんと一緒にテロリストボコってる方が良かったです。

 

「暇ですねえ」

 

「ですね」

 

 今私は、藍とフリード一緒に、スキマ内でコタツに入りつつ、お茶を啜りながら煎餅を齧っています。

 藍は対面で同じようにお茶を飲み、フリードはコタツの中でぬくぬくしています。

 お茶と煎餅は自宅から持ち込み。コタツはスキマ内にいつの間にかありました。

 

 ついこの間までは自宅で暇してたんですけど、スキマ内で修行する事が増えたので、最近はゲンヤさん達が帰ってくるまではコッチにいる事が増えています。こっちなら藍も堂々と出られますから、空間内に浮かんでいる目に慣れてしまえさえすれば快適です。

 

「やっぱし訓練くらいしかする事無いかあ。今日はどうしようかな?」

 

 「博麗」と「龍」の技能はほぼ習得できた(夢想天生はまだ無理。てかあんなの何年やっても無理)ので、それに釣られて他形態の習熟度もかなり上がってきています。既に低~中ランクのユニゾンなら普通にこなせるし、それ以上となると純粋にMP不足なだけなんですよね。

 なので、現在訓練しているのは、中ランクのユニゾンの中でも癖があったり特殊な戦い方をする物がメインです。

 

「どれにしよっかなあ……。「七曜」はまだ賢者の石が勿体無いし……。」

 

 賢者の石、使えはするんですけど、練習で使用するのは勿体無いのです。

 というのもこのスペルは、事前にカートリッジみたいに石に魔力を溜めておいて、宣言した後に開放するだけ、という方式を取っているからです。

 自分の魔力を使わないで良いのは利点なんですけど、チャージに結構時間がかかるので、なるべくなら温存しておきたい代物です。

 

「となると、「人形」かなあ? ……よし、フリード、今から遊ぶよ。」

 

「!! キュ、キュー!?」

 

 内容が決まったので、コタツから出て準備をします。いっしょに、訓練相手のフリードもコタツから引きずり出しました。

 

「フリード、今から弾幕ごっこね。回避しきれたら、明日のおやつ増やしてあげるから」

 

「!! キュクルー!!」

 

 私の言葉に、どこか不機嫌そうだったフリードが嬉しそうに返事します。

 扱い易いパートナーって素敵です。それじゃ、始めましょうか。

 

「藍、モード「人形」、サブは「境」で」

 

「はい」

 

 モード「人形」。

 そう言っておきながら、付与される能力は「主に魔法を扱う程度の能力」という詐欺形態。

 人形操作は、太極拳と同じ技能に分類されます。

 それでも、ユニゾンによる基礎力増加の恩恵で精密操作が得意になっているので、マルチタスクとの併用で操作自体は問題無くできます。

 サブを「境」にした理由は、普段はスキマ内に保管してある人形を取り出すためです。

 今の場合だと、スキマ内でスキマを開く事になりますけど、実際出来てるので疑問に思わない事にしました。

 

「行くよ、フリード!」

 

「キュクルー!」

 

 フリードの返事を聞き、スペルを発動させます。オリジナルスペル第2号!

 

 

 

 

「魔法少女「全力全壊の生首人形」!」

 

 

 

 

 スペル宣言と同時に、スキマ内から私の作った人形が出てきます。

 そこから出てきたのは―

 

「おはなし!! おはなし!!」

 

「なのは!! なのは!!」

 

「おっぱい! ばすと!! ちくび!!」

 

 うざったい声を上げて私の周りをふよふよ浮遊する生首、所謂「ゆっくり」です。

 栗色の髪をツインテールにした生首がゆっくりなのは、短い手で鎌を持っている金髪がゆっくりふぇいと、ショートカットの狸っぽいのがゆっくりはやてです。

 

 ……いや、最初はちゃんとした人形作るつもりだったんですよ?

 でも、最初に作ったフェイトさん人形の顔部分が終わったあたりで早くも面倒臭くなり、最低限鎌を振れるように腕だけ付けたところ、カービイっぽい胴付きゆっくりふぇいとが完成してしまいました。

 これで開き直った結果、続くなのはさんとはやてさんの人形作成時には、最初から胴体無しで生首だけ作成しました。この二体は魔力弾撃つだけなので胴体は無くても困りません。胴体なんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ。

 そうして完成したのがゆっくり三人娘。この頃にはもう私のテンションがおかしくなっており、ゆっくり特有のうざったい話し方を再現するボイスパッチを実装しました。隣で見守ってくれていた藍の視線が痛かったです。

 

「どう見ても黒歴史だよねこれ……」

 

『まあまあ、そのうち作り直しましょう。とにかく今は訓練です』

 

 フリードを待たせてましたね。じゃあ、行きますか。

 

「「「ゆっくりしんでいってね!!!」」」」

 

 私の操作に従って三体の生首が飛行し、ゆっくりとは思えない素早い速度でフリードを包囲します。そして―

 

「あくせる・しゅーと!!!」

 

「ふぉとんらんさー!!!」

 

「おーーーーーっぱい!!!」

 

 三体の口から弾幕が放たれ、真っ直ぐフリードの方に向かって行きます。

 フリードは素早く飛翔し、弾幕が迫る前に離脱しました。その結果―

 

「ゆ!!!」

 

「あ、やっちゃった。」

 

 ゆっくりふぇいとの放った弾幕が、反対側にいたゆっくりなのはにヒットしました。

 

「ゆ、ゆわぁぁぁぁぁん!!」

 

「にゃのはぁぁぁぁーーー!!!」

 

「おーーーーーっぱい!!!」

 

 ゆっくりなのははダメージ時に設定されている音声で、ゆっくりふぇいとはフレンドリーファイア時に設定されている音声で、ゆっくりはやてはランダム音声でそれぞれ喚いています。なかなかにカオスです。なのはさん人形が泣いてる光景を見ても心が痛まないのは、人形をゆっくりにした唯一の利点かもしれません。

 

「やっぱり連携も絡めると操作が難しいなあ。慣れるしか無いか」

 

 気を取り直して操作再開。今度は同士討ちしないように気を付けながらフリードを追い詰めていきます。でも―

 

「キュクルー!!」

 

「こっちは三体だっていうのに……」

 

 フリードも流石なもので、三対一だっていうのに全く苦にしていません。

 今まで私にピチュらされてきた経験に比べると、操作に慣れていない連携はずっと楽みたいです。時折ブレスで反撃して来るので、こっちも焼き饅頭が出来ないように必死に操作します。

 このままだとフリードの勝ち。……仕方無いですね。

 

「ふぇいと、バインド!!」

 

「ゆっくりそにっくむーぶするよ!!!」

 

 ゆっくりなのはとゆっくりはやてに弾幕を撃たせつつ、ゆっくりふぇいとをフリードに突進させます。

 

「キュ!?」

 

「ゆっくりしんでね!!!」

 

 そしてゆっくりふぇいとの物理バインド―抱きつきでフリードを拘束します。そこに―

 

「でぃばいん・ばすたー!!!」

 

「おーーーーーーっぱい!!!」

 

 ゆっくりなのはとゆっくりはやてからの砲撃魔法が炸裂。フリード撃墜に成功しました。

 

 

 

 

「キュー……」

 

「もっと、ゆっくりしたかった……」

 

 フリードが落ちた地点には、気絶して目を回しているフリードと、焦げ臭い臭いがするゆっくりふぇいとが転がっていました。

 

「今日の訓練はここまでっと。藍、そろそろゲンヤさんが戻って来るし帰ろうか」

 

「はい、マスター」

 

 私はそのままゆっくりふぇいとを回収。フリードはまだ気絶しているので、そのままにしておきました。

 

 

 

 

「おーーーーーーっぱい!!!」

 

 それにしてもゆっくりはやて、それしか喋ってませんね。

 ボイスパッチがバグってるんでしょうか?


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