幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第11話 ちょっと借りただけですよ

「ん……こう、かな?」

 

「いいよ、その調子で」

 

「こうやってこうやって……ああもう、面倒臭い!!」

 

「キャ、キャロ、落ち着いて!」

 

「バインドブレイクなんかやってられるかあー!」

 

「ああ、やっぱりこうなるんだ……」

 

 こんにちは。キャロ・ル・ルシエ改めキャロ・シエルです。名前については前回参照です。

 

 あれからギンガさんに色々教えてもらいました。本当、何でそこまでって位親切に。最初逃げようとしてマジごめんなさい。

 今やっていたのはバインドブレイクの練習です。

 ギンガさんにバインドを掛けてもらって、それに干渉、解除するんですが、これが結構難しいんです。

 夢幻珠アリならパワー系の形態で力任せに脱出したり、モード「七曜」(火水木金土日月を操る程度の能力)か「人形」(人形を操る程度の能力)で即座に解除したりできるんですけど、それだとすっぴん状態で応用できないですからね。今は地力を付けるのが第一目標なのです。

 え、「霧雨」は、って?

 攻撃しかできない形態でどうしろと? パインドにマスパぶっ放せばブレイクできるだろうけど、そんな痛いのは嫌です。

 

「まあ、キャロはまだ4歳なんだし、始めたばっかりなんだからゆっくりやっていけばいいと思うよ。じゃあ、いつもみたいにラスト1本やって終わろうか」

 

「はい!」

 

 ラストはいつも、ギンガさんと実戦形式で打ち合います。

 ちなみにユニゾンはしません。一応、非ユニゾン時でも、身体強化くらいなら夢幻珠で行使できるので、ソレを頼りに戦います。

 

「いくよ、キャロ」

 

「いつでもどうぞ、ギンガさん」

 

 そう言ってお互い構えます。こっちの戦いのベースは太極拳、向こうはローラーブーツを履いてのシューティングアーツ。自然と、突っ込んでくるギンガさんとカウンターで迎え撃つ私、という図式になります。

 

「はああああっ!」

 

「華符「破山砲」!」

 

 とまあ、こんな感じの日々を過ごしていたんですが

 

「お金が無い、だと!?」

 

「このままだと、あと数日で底をつきますね。どうしますか、マスター?」

 

 ルシエを出てから数ヶ月、宝物庫からお借りした宝石類、それを売って作ったお金が今にも無くなりそうです。

 

「どうしてこんな事に……」

 

「いや、収入が無い以上、いずれこうなるのは必然でしょう?」

 

 藍のもっともな指摘に、ですよねー、と心の中でで返すも現状は変わらず、対策を考えますが、なかなかいい案が思い浮かびません。

 まともに考えて4歳児を雇ってくれるところなんてある訳無いです。

 あーでもないこーでもないと考えている間にも、時間は無情に過ぎていきます。

 

「考えても仕方ないかなあ。とりあえず出かけよ。働き口か儲け話、どっちでもいいから探さないと」

 

「ですね」

 

 そうしてクラナガンへと出かけた訳ですが、まあ予想通り、そう簡単に仕事が見つかる訳もなく

 

「これで20件目。当たり前っちゃあ当たり前なんだけど」

 

「元気出してください」

 

 求人広告を見て行ってはみるものの、就業年齢にすら達していない幼女が雇って貰える筈も無く、面接すら受けさせてもらえませんでした。

 こんな時、能力でササっと解決できればいいんですけど、LUKに関係する能力は今のところ役立たずです。

 「運命を操る程度の能力」は今の私には扱いきれないし、「人を幸運にする程度の能力」は何故か効きませんでした。どうやら「人」っていうのは他人のことらしいです。

 

「これだけやって駄目なら、もうアレしか無いかなあ?」

 

「……!? 何をするつもりですか!?」

 

「どうしたの、藍?」

 

「いえ、何でも。(何だか凄くイヤな予感がしたのだが……)」

 

 

 

 

 数時間後……

 

 

 

 

「ふう、こんな所かな」

 

「あああ、やっぱりこういうオチか……」

 

「文句言わないの。コレしか無かったんだから」

 

「それは分かっています。ですけど、やっぱり盗みは……」

 

「人聞きが悪いですねえ。「ちょっと借りた」だけですよ。出世できたら返します」

 

(顔なんて覚えてる訳ないのに……)

 

「ん、何か言った?」

 

「い、いえ、何でもありません」

 

 藍は複雑みたいです。まあ仕方無いですよね。

 あれから街の人ごみに潜り込んだ私は、「千里先を見通す程度の能力」のちょっとした応用で、隙の無さそうな人や取りにくい所に身につけている人以外で、すれ違った数名から財布をお借りしていきました。

 あくまで借りただけです。許可取ってないし、期間が無期限ですけど、借りたんです。

 ……ゴメンナサイ、やっぱり嘘です。藍ほどじゃ無いけど罪悪感感じてます。

 うん、コレは本当に切羽詰った時だけにしよう。とりあえず気を取り直して財布の中身を確認します。

 

「現金がちょっとと、他は……アレな店の会員証ですね……」

 

 どうやら私がお借りした相手は、相当ハイレベルな紳士だったみたいです。何だかさっきまで感じていた罪悪感が薄れていくのを感じます。紳士ならこの位構わないですよね。

 

「それにしてもロクな物入ってませんね。財布の中身まで見通しておいたほうがよかったなあ。ん?」

 

 がっかりしながらサイフを振っていると、カード入れの隙間から紙切れが落ちてきました。

 何でしょうかね、これは……チケット?

 

 

 

 

「えっと、……『クラナガン地下秘密闘技場』?」


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